『仮面ライダーセイバー』感想・第2話
◆第2章「水の剣士、青いライオンとともに。」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:福田卓郎)
「神山飛羽真くん、君の持っているワンダーライドブックと、火炎剣・烈火を渡してくれないか」
「青い……」
「ライオン?!」
店に乗り込んできたライオン強盗に本と剣を要求されるも拒否した主人公は、強盗の上司に呼び出され、店内に作られたゲートを通り、“世界の均衡を守る為”に戦う組織・ソードオブロゴスの北極基地で、諸々の説明を受ける事に。
今作における「仮面ライダー」とは“聖剣に選ばれた剣士”の名として定義付けられ、まあどうせ未来永劫戦い合っているから好きにすれば~、と強盗上司にフリーハンドを与えられた主人公は、人々を守る為に戦うと宣言。青い人と共に、怪人メギドによって書き換えの進む世界へと乗り込んでいくのだが……。
背後にある組織の登場と設定の説明、そして青い剣士の初登場、とかなり“戦隊ぽい”進行ですが、これといって山も谷も波もないまま青い人はのったりと初変身して青い仮面ライダーとなりアリ怪人軍団を撃破 → ほくそ笑む悪役カルテット(前回も思いましたが部屋が狭くて暑苦しそう……) → 取り残された人々を救出する主人公 → いきなりの「絶対に助ける。約束だ」 → 山も谷も波もないままのっぺりと二回目の変身、と脳のシワが消えそうなレベルで躍動感皆無。
第1話の印象はそんなに悪くなかったのですが、急に、ものすっごくテンポが悪くなったというか、リズム感が失踪して音信不通に。
その後、怪人から本が完成間近で「もう手遅れだ」と言われる → 編集者が気絶したので一時退却 → (いきなり北極) → 状況完全無視で敵の目的の説明 → 「急いで戻らないと!」 → バイクでもう一回突撃、の緊張感の切断具合も目を覆うばかりで、村の盆踊りにラッパーとフラメンコダンサーが吹奏楽団を連れて乱入したみたいな事に。
「水勢剣・流水に誓う。僕が必ず、世界を守る」
「絶対に、街と人を救う」
加速シークエンスのない急停車と急な最高速が繰り返され、場面と場面を繋ぐべき主人公たちの心の動きが消失して、場面の都合に合わせてぶつ切りで転がってくるので、盛り上がりの生まれ様のない選手宣誓が深海に虚ろに響くのに続いて赤青のマシンが繰り出され、青のちょっとレトロな風情のバギーにガトリング砲が搭載されているのは、バットモービル感があってちょっと格好いい。
……今回の、唯一良かったところでしょうか。
赤青は書き換えの進行する世界を爆走し、アリメギドとキリギリスメギドの組み合わせから『アリとキリギリス』を連想した主人公が「キリギリスはアリを守ってるんだ」と言い出す理由がよくわからない上に最後まで説明ゼロで困ったのですが……更に、
〔キリギリスはアリを守っている → 女王アリを見つけて青が倒す → 結局キリギリスとも戦って赤が倒す → 青がバギーで残り物のアリを壊滅させる〕
何も考えずに全てのトッピングを乗せていったような展開が異常なまでにテンポが悪く、オーダーされるがままにイベントを詰め込んだけどその間を繋ぐ要素も効果的に見せる工夫も全面的に放棄されている(尺の都合で軒並みカットされた可能性が高そうですが)ので、ひたすら同じトーンのクライマックスが連続する(もはやそれはクライマックスと呼べない)事で最初から最後まで全てフラットになってしまい、純粋に1エピソードとして希に見る出来の悪さ。
……2020年になって、『ストロンガー』第11話とか、『大鉄人17』15話とかと、脳内で比較するエピソードに出会うとは思いませんでしたよ!
「これで私の計画は、加速する。ふっふっふっふっふ」
サウナルームでは、15年前に多くのワンダーライドブックを奪ったとされる、裏切り者の剣士カリバーがほくそ笑み、つづく。
第1話で要素を絞った反動か、青の人の活躍・背景組織の登場と各種設定の説明・バイクとバギー・豆本によるフォームチェンジ要素、の全てを一つに詰め込んだ結果、紛う事なき大惨事。
演技も人格もふわふわしている青い人・既に聖剣に意識を乗っ取られているかのような言動を繰り返す主人公・強引に乱入してきて状況を悪化させるだけさせて途中で姿を消す編集・一方的な上に投げやり気味なロゴス上司、と誰一人として言行がキャラクターの魅力に繋がっていないのも、辛い。
特に主人公は、前回を踏まえて「私」の部分から「公」の部分へと繋げていくのかと思いきや、いきなりパーフェクトに大義の為に戦う強い意志を持ったヒーローが誕生してしまい、前回と今回の間に何をラーニングさせられてしまったのでしょうか(昆虫魂……?)。
怪人を撃破する事で回収された豆本は、剣に読ませると特殊攻撃発動、ベルトにはめるとフォームチェンジのギミックとなり、三色縦ストライブが特徴的だったセイバーは、ベルトに填めた豆本の位置に対応してスーツが変化する事に。青の方は最初から真ん中に填めていたので、今後は胸のアニマルが変わる仕様になりそーでしょうか。
次回、ラストに出てきた絨毯の人ではなく、また別のライダー登場も大変不安を誘いますが、父子のドラマに一縷の希望を見出したいところです(ライダーの統一組織が存在している事で『響鬼』的なメイン以外にもあちらこちらに居る世界観をやりたいのでしょうか)。
そして、これだけテンポもリズムも切り刻まれて物語の態を成していなかった本編の後に見せられるEDダンスが、壮絶な皮肉として機能してしまって、凶悪。