東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

夏の劇場版オルタナティブ

『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第22話

◆エピソード22「覚悟はいいかそこの魔女」◆ (監督:坂本浩一 脚本:荒川稔久
 ヘリコ渾身の乙女のハリケーンで窮地を脱したのも束の間、ミサイル攻撃のダメージで合体強制解除の危機に陥るキラメイジン。ところがモーターボート怪獣はバラバラになった魔進にトドメを刺さずに走り去ってしまい、辛くも一時撤収した5人は、「マブシーナを助ける方法が見つかった」と告げる博多南に迎え入れられる。
 それは、記憶の中の過去に20分だけ戻れるリバースストーンの力を用いて、オラディン王が呪いを受けたヌマージョ討伐ミッションに介入する事。
 だが、下手に過去を変えたら未来にどんな影響が起きるかわからない……為朝の指摘に頷いた博多南が取り出した切り札は、沼女の毒液を浴びて輝きを失った、アクアキラメイストーン。
 「過去はそのままに、未来を変える」
 地球の科学力に希望を託してオラディンから博多南父に預けられていたアクアキラメイストーンを修復する為に、過去の戦いの成り行きそのものには関わらず、沼女の毒の解析に必要な体液の成分――例えば、口をつけたティーカップ――だけを入手する。
 それが、最低限の干渉で最大限のリターンを得る博多南のアイデアであり……地雷が多すぎる時間逆行ネタという事で予告時点でだいぶ身構えていたのですが、これは成る程。
 またこの作戦を、博士ポジションにしてたっぷり思考する時間のあった博多南に一から十まで語らせるのではなく、博多南の示唆に応じて為朝が答を導き出していく形で描く事で、(博多南は既に結論に達しているとはいえ)長官キャラが解決策を一方的に提供するお仕着せ感を巧く減らし、メンバーの主体性を保っているのが非常に巧み。
 もう一つ、デスクに置かれたアクアストーンを前にしたメンバーが一斉に「臭い」のリアクションをする事で、アクアストーンの惨状を映像にプラスして効果的に示すと共に、沼女の嫌な感じと、今回のキー要素である毒液の印象を同時に強めているのが、秀逸な見せ方でした。
 「俺はマブシーナを笑顔にしたい……」
 「だから……」
 「だが、俺が街の人達を見捨てていけば、いくら自分の命が救われてもマブシーナは笑顔にならない」
 ところが作戦を伝えられた宝路は、マブシーナの気持ちに応える為に、現在に残って怪獣と戦うのが自分の役割だと宣言。それを聞いた充瑠は、宝路の代わりにファイヤーの記憶に入って過去に行くと名乗りを挙げ……あ、ファイヤー、役に立った。
 前回、戦闘中は存在感の消失するファイヤーの姿に、タクシー扱い……と密かに涙を流していたのですが、最後に沼女に体当たりを一発決めたので、役に立って良かったなファイヤー……と再び涙をこぼしていたら、それは引っかけで、本命はこちら、というのはしてやられました(笑)
 ファイヤーの同道にしっかりと意味がもたらされ、時間遡行というトンデモ寄りのアイデアを持ち込むにあたって、前後編のパズルのピースの当てはめ方が、実に丁寧。
 「充瑠、おまえがマブシーナのヒーローになってくれ」
 宝路は充瑠にリバースストーンを託し、為朝と瀬奈がそれに同行。ファイヤーに乗り込んだ3人は過去のヨドンヘイムへと辿り着き、為朝と瀬奈はヨドン戦闘員に変装して、広域指定暴力星クリスタリア会の前に立ちふさがる。
 「ペチャット参上!」
 「ペチャット妨害!」
 「「ここから先へは、行かせないペチョー!」」
 崖の上でポーズを取る、あからさまに怪しい蓑笠に仮面……タメくんが同行者に瀬奈を選んだのは、このノリについてきてくれるからでしょーか?(女帝には怖くて頼めず、アニキの場合は演技プランの打ち合わせに数時間がかかる)
 「……陛下? ペチャットって、あんなに喋りましたっけ?」
 ……あ、王妃様、ヨドンの戦闘員(原住民?)とか、見つけたら潰す羽虫だと思ってるニュアンスだ……。
 「んー……突然変異かもしれん」
 オラディン一行に躍りかかると回避メインで足止めに徹する2人だが、私の敵は宇宙の敵だ! と立て続けに放たれるオラディンダイナミックが大地を砕き、予告で見せた大爆発、何から必死に逃げているのかと思ったら、身内(?)の攻撃でした(笑)
 為朝と瀬奈が間違いなくキラメイ史上最強の敵から逃げ回っている頃、充瑠は妹を待つ沼女の元へ辿り着き……やはり沼女さん、「クリスタリアの民の不幸が最高のデザートなのさぁ!」みたいな含みゼロで、本当に「ささやかなティーパーティー」を開いてお互いの近況について女子会する予定だったのでは。
 前回、オラディンを奇襲したと思ったらすぐに姿を消してしまった沼女妹は、話の都合の駒というだけではなく、今後の再登場を期待したいところです(この時点で既にガルザと手を結んでいたりすると、綺麗に繋がりそうですが……さて)。
 身を潜めながら変身した赤は、キラメイブルーの技を参考に「――釣られたら釣り返す。今、俺の右手はひらめキング!」とゴッドハンドでティーカップを釣り上げようとするが失敗。攻撃を受けて景気良く吹き飛ぶと、廃品回収を主張して強引に誤魔化そうとするが、キラメンタルの戦士と匂いでバレて、割と思い切り剣を振り回す沼女と戦闘に。
 ……充瑠の場合、素顔のまま近付いて、捨てられた子犬のようなつぶらな瞳アタックの方が成功確率が高かった気がします(笑)
 一方、居残り組の青桃銀は、エネルギー補充の為に東京湾に停泊して大量の魚を補食しているモーターボート邪面獣を発見し、すっかり大怪獣のノリ。
 待機中にドリジャンで地中から穴を空けてやろうとする銀だが、ガルザ&戦闘員軍団がお邪魔虫に現れて戦闘に突入。ガルザの剣の湾曲部分にドリルをひっかけて奪い取り、それを叩きつけるも受け止めて反撃に転じるガルザと銀の激しい激突、大量の戦闘員を相手に時代劇風のタメを効かせた立ち回りを見せる青、スピーディなカメラの動きに合わせて組技を繰り出す桃、と凝ったアクションが連発。
 そうこうしている内に怪獣が補給を終えてガルザは帰宅し、再上陸した怪獣の破壊シーンを俯瞰で見せるのは怪獣もの寄りの映像ですが、他にも幾つかのシーンで、今季は『ウルトラマンZ』(未見)にも参加している坂本監督が、《ウルトラ》的な演出と《戦隊》的な演出を意識的に交差させているようにも見えます。……まあ今回、どこまでが坂本班で、どこからが佛田班なのかは、ちょっとわかりませんが。
 桃がエクスプレスを召喚して怪獣を追撃するが、地中だけではなくビルを透過して逃げられ、不意打ちを受けてリタイア。戦闘員の囲みを突破した銀がドリジャンを召喚し、戦いは地中戦へと突入する……。
 過去では赤と沼女が激しく剣を打ち合わせ、『ルパパト』でインパクトのあった全方位カメラ的な映像でのアクションとなり、カット割らずにスピーディなアクションを多方向から見せられる一方、露骨に画質が変わるのが弱点でしたが、周囲の風景を異世界にする事で違和感を抑えるのは、見事なアイデア
 地面に落ちたティーカップに手を伸ばす赤だが届かず、魔女の唾液を求めながら背中をピンヒールでぐりぐり踏まれる柿原さんにはお届けできない映像で新世界の扉がひらめキング寸前、自らの「強すぎる」という言葉に、別の可能性をひらめキング。
 なんとか体勢を立て直した赤は、飛び道具で挑発する事で吐かせた毒液をキラメイシールドで受け止めたところでファイヤーに回収され、実力差を認めた上で逆手に取って目的を果たす、のは説得力のある流れになりました。
 現在の地球では、一回限りだと勿体ないと思われたのか地底の巨大戦が繰り広げられるが、ドリラーは怪獣のスピードに翻弄されたまま、再び地上へ。
 「振り向く間もねぇのかよ!」
 一方的に殴り倒されたドリラーはビルに叩きつけられ、一度カットを切り替えてからの、画面を横に長く使ってのモータボートビームが大迫力。遂に完敗したドリラーから合体解除で投げ出された銀に怪獣が迫り、今度は巨大怪獣に追われる銀を全方位的映像で撮るのも、面白い使い方になりました。
 いよいよ追い詰められた銀はモーターボートビームを辛うじてドリルで受け止め……変身解除で済むのが、凄い。
 絶体絶命の死地に、それでもマブシーナの為、街を守る為に怪獣に立ち向かおうとする宝路だが、敢えなく消滅寸前、新たな魔進が飛来する!
 それは、キラメイソードに付着した沼女の毒液を解析した事により復活したアクアキラメイストーンに、さっそく充瑠がひらめキングを発動して誕生した、魔進ザビューン!
 十数年ぶりに目を覚ましたら、いきなり「君はカラットの為、魔進となるのだ」と機械の体に改造されてしまった魔進ザビューン!
 赤の乗り込んだ魔進ザビューンは宝石フォームからサメ列車へと変形してモーターボート怪獣とチェイスを繰り広げ、前編冒頭で紹介されるも使われないままだったロレンチーニ器官が拾われて、弱点をサーチするとミサイル発射。
 改めて今回冒頭でも強調されていたロレンチーニ器官はさすがに伏線でしたが、基本的に特殊能力としては出鱈目の「ひらめキング」の前振りとして、閃きの元になる「知識」を置いてくれたのは(またそれを、水族館見学といった要素と繋げてくれたのは)地味に良かったところ。
 エンジンを破壊されて動きを止めたボート怪獣に対して、ザビューンとキングエクスプレスが合体してキングエクスプレスザビューンが誕生し、第22話にしてとうとう、ジョーキー問題が解決。
 ただ、前回は青、過去に行くのは黄緑、と来て初の合体相手が桃、なのはメンバーの活躍バランスとしては納得できるものの、“物語の段取りと、集約点としてのロボットが微妙にズレる”のは相変わらずで、1人乗りとか単独変身とか2人乗りとかのシステム面が、どうも噛み合いきりません。……充瑠がやってくれた事を見て、気を失った宝路の口に満足げな微笑が浮かんでいるのなんかは、悪くはなかったものの。
 「俺様の早さを刮目して見よ!」
 ちょっとファイヤーと被り気味のテンション高い系なザビューンの力により、水を纏った怒濤の連続攻撃で、キングザビューンはモーター怪獣に圧勝。……次はガルザ相手に、「もうおまえのジョーキーなんて要らないもんねー」とか挑発して、邪メンタルを煽ってあげてほしいですね!
 宝路はベットで目を覚まし、そこには無事に呪いの解けたマブシーナが。
 「お兄様は、わたくしのヒーローです」
 「いや、俺はおまえを放っておいて戦いに行ったんだぞ」
 「皆様のヒーローが、わたくしのヒーローなんです」
 ファザコンの度合いが強いですが、姫様は本当にい子ですね……。
 「……じゃ、そういう事にしておくか」
 「はい!」
 「これから、いくらでも見せてやるよ。みんなと一緒に、ワンダースプレンディッドなヒーローの戦いを」
 お宝探しの義務感から解放された宝路はマブシーナに改めて誓い、「スプレンディッド」の意味はと思ったら「素晴らしい」の事だそうで、つづく。
 爆発、CG数、凝ったカット割りとアクションの数々による多彩な画の数々、と映像面で物凄く豪華な後編でしたが、夏の劇場版の予算がここに流れた、と言われたら信じる内容(笑) 絶好調の荒川さんの帰還に加え、実に坂本監督にあつらえたようなエピソードで、得意方面がフルに発揮されて面白かったです。
 マブシーナの解呪により、ひとまず収集理由の無くなった叶えまストーンですが、「呪いが解けるかどうか」をクライマックスまで引っ張るのはちょっと話が小さいかなとは思っていたので、ここで一旦解決した上で、残り二つの叶えまストーンの存在そのものを今後の大きな広がりの布石に変えるのは、納得。そろそろヨドンヘイム本国も絡んだ動きが、見たくなってくるところです。
 次回――今回ラストからの温度差に困惑しますが、まるまる一ヶ月遅れのお盆回……?