東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

サーガイン、散る

忍風戦隊ハリケンジャー』感想・第43-44話

◆巻之四十三「超合体と大激突」◆ (監督:竹本昇 脚本:宮下隼一)
 「くたばれぃ!」
 サーガインの生み出した究極カラクリ巨人ガインガインにトドメを刺される寸前、召喚したマンモスの援護攻撃で壊滅は免れた地球ニンジャーだが、天雷旋風神がバラバラに吹き飛ばされる完敗を喫し、命からがら撤収。
 ……今作の難点の一つですが(そしてシリーズにおける頭の悩ませどころではあるのですが)、ハリケンジャーは「放置しておくと被害が広がる」状態での割とあっさりした撤退が目立つのは、どうしても気になる点。蛮勇で無駄死にするのは良い事ではありませんし、ジャカンジャの強大さを示す要素ではあるのですが、今作がストレートなヒロイックさを重視する、そして鷹介らがしばしばそれに殉じようとする作風なだけに、撤退する時だけやたら淡泊なのは、もう少し工夫の欲しかったところです。
 一連の戦いを見ていたサメは、地球ニンジャーの背後に、カラクリシステムの秘密を知る何者かが存在している筈、と指摘。
 そしてハムスター館長は御前様から、嘆きの弓のメダルとは、1000年前に地球で発見された“闇石”の事であり、その研究から生まれた技術こそが「忍法」、それを扱うものが「忍者」と呼ばれるようになった歴史の闇を語られる超伝奇展開で、こういう接続の仕方は好きです(笑)
 怒りのメダルが嘆きのメダルと共鳴する事に気付いたサーガインはガインガインで街を蹂躙し、マシンのメンテが終わらないハリケンジャーはカイトとバイクで突撃を仕掛け、今作の特性を活かした非常に格好いいシーン。
 対してサーガインは操縦席を飛び出すと実力で5人を圧倒し、メカを作らせても有能で、直接戦闘能力も高いサーガインが、その向こうを張る格好良さで大満足。
 「みんな、全ては御前様にお任せしてある。リボルバーマンモスが来るまで、頑張るんだ」
 ……いや、その人、信用度ゼロでは……。
 ……後、リボルバーマンモスに、そんなに夢とか希望とか篭もっていないのでは……。
 ギミックを使い切ろうとする意識は前向きに捉えたいものの、絶体絶命の局面で、御前様が準備中のリボルバーマンモスに全てを賭けろ! と言われて、よし頑張ろう! というのは大変頷きにくいところです。
 その上で、闇石のパワーで強化されたマンモスを起動する為に、御前様からハムスター館長に伝えられた指示がおぼろさん経由で皆に伝えられ、「緑と館長以外が御前様を信じていない」ので「父を信じるおぼろさんがいい感じに翻訳して伝える」のは、大変リアルではあるのですが、前段とちぐはぐな上に、この期に及んでそれでいいのか(笑)
 「全ては、この星を守るために」
 コマンド:「いのる」により、力を得たマンモスが再起動し……うーん……段取りがもっと綺麗なら、盛り上がったかとは思いますし……「流派の争いを越えて心を一つにした時に星を守る力が引き出される」のは、集約としては納得できるのですが、“壮大な背景と、目の前で発生している事象のバランスが悪いので、大きな仕掛けが空回り気味になる”のは、90年代《メタルヒーロー》シリーズ終盤でしばしば見えた、宮下脚本の短所と言えるのかもしれません。
 天雷旋風神がマンモスにパイルダーオンし、連コインで全てのカラクリボールを発動・装着すると、究極超忍法・廃課金レインボーの直撃により、ガインガインは大爆発し、吹き飛んだ怒りのメダルを赤が回収。
 満身創痍のサーガインはハリケンジャーに最後の勝負を挑もうとするが、その前に姿を見せたのは、サンダール。
 「貴様の存在理由は、もうどこにもない」
 「な、なに……?!」
 「邪魔なんだよ。ご立派な戦士づらも気に食わん。早いところ――逝け」
 サーガインのメダル解析システムをコピーしたサメは、サーガインの腹を貫くと扇でトドメの一撃を浴びせ、食わせ物の本性(裏切り者、というよりは、忍者らしい感があり)を見せると、哀れサーガイン真っ二つ。
 「む…………無念……ぐぅぁぁぁっ!」
 ここに暗黒七本槍3本目の退学者となるのであった、でつづく。
 普段、いくら悪の怪人とはいえ、生前の趣味などを朗らかに説明するのが軽い恐怖を感じる事があるおまけコーナーですが、今回ばかりは「さらば、偉大なる発明王サーガイン」とナレーションさんにも悼まれ、岡本美登さんパワーも含め、いい悪役でした、サーガイン。

◆巻之四十四「御前様と凶扇獣」◆ (監督:竹本昇 脚本:宮下隼一)
 注目は、御前様の正体が(外見上)若くて綺麗な女性と知った途端、ころっと軟化する鷹介(笑)
 ……いや、演出的には、それだけの「神秘的なカリスマ」という見せ方なのですが、鷹介が鷹介だけに、現金な奴……感が漂うと共に、シュリケンジャーへの視線も平坦になります(え)
 その御前様の元へ怒りのメダルを届ける為に学生コスプレで隠密任務に就くハリケンジャーと、メダル奪還を目論む暗黒七本槍が激突し、護衛の霞兄弟もコスプレで推参。シュリケンジャーは蕎麦屋(演:オーレッドの宍戸勝)に変装して登場し、もはや完全に開き直ったシュリケンジャー人間体の扱い。
 それぞれの激戦が続く中、とうとう強敵サンダールの剣を心臓に突き立てられる赤だが、懐に怒りのメダルを入れていた事で偶然助かり、サメは扇怪獣を召喚。
 次々と繰り出すカラクリボールも通用せず、追い詰められた旋風神は、一か八か怒りのメダルをセットする事で、なんと旋風神が怒りアローを装備! は共通の機構を逆手にとって面白いアイデア
 だが形勢逆転も束の間、闇の力に溺れるハリケンジャーは怒りアローに旋風神のコントロールを奪われてしまい、旋風神は身内を攻撃!
 この事態に地上へ姿を見せた御前様の助力で制御を取り戻した旋風神は、三神合体で扇怪獣を撃破するが、御前様を狙うサメの強襲を退けている内に、新たな扇怪獣により、怒りソードを強奪されてしまうのであった……。
 「我が肉体こそが、闇石の封印」
 御前様の正体は、500年の間、嘆きのメダルを封印し続けてきた巫女・覚羅。ジャカンジャは遂に引きずり出したその身柄に狙いを定め、高まる決戦の気運で、つづく。
 御前様に関しては基本、物語のあれやこれやを押しつける作劇になっていたので、ビジュアルから好印象を持たせようとする判断は良かったと思いますし、一般的な倫理観を逸脱している点は設定で裏付け。どう考えても悲劇的な運命が待ち受けていそうなので、そこを『ハリケン』としてどう見せてくるのかには、期待したいと思います。
 ジャカンジャ側では、己で始末したサーガインの遺品を持ち帰ってハリケンジャーに罪状を押しつけたサンダールに対し、「ちょっと……見事すぎる気もするけど」とウェンディーヌが切り口から微かな疑念を抱く不穏の種が蒔かれ、七本槍それぞれの実力者ぶりの見せ方が丁寧なのは、今作の長所。
 初期メンバーが大事に扱われた結果、ゴウライジャー編の空気を吹き飛ばしてそのまま主導権を握っていくのかと思われたサタラクラの存在感が薄くなる弊害は発生しましたが、サタラクラとマンマルバに関しては、どちらを重く扱うかによる作風の調整弁、の役割もあったのかもしれません。
 そう考えると、序盤から終盤まで一定のトーンを維持したまま作戦に加わり続けたサーガインの存在は改めて大きく(水金に傀儡を貸し出せるのがポイント高い)、あのムカデ様が「惜しい奴を亡くした」というだけの幹部でありました。
 次回――「好きな食べ物は、あんぱんだ」。