『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第21話
◆エピソード21「釣れ、ときどき達人」◆ (監督:坂本浩一 脚本:荒川稔久)
「わたくし、お兄様には、いつもヒーローで居てほしいんです。ふふっ」
突然の水族館デートは、放映が8月最後の日曜日だったからでしょうか……?(もっとも今年は、児童の夏休みが既に終了している地域が結構あったかと思われますが)
充瑠・瀬奈・マブシーナが和気藹々としている頃、お宝を探す宝路は、ヨドン反応の調査に来た時雨と出会うが、肝心のポイントは既に、何者かによって掘り返されていた。
そして突然の、フィッシーング! で市民が空高く吊り上げられ、第13話以来の荒川さん&第4話以来の坂本監督で、開幕からかなりスピーディ。
釣り糸を追いかけた青と銀が目にしたのは、虚空に浮かぶ不思議な穴と、そこに吸い込まれていく被害者の姿。桃と黄も駆け付けるがヨドン反応はあれど邪面師の姿は見えず……そうこうしている内に桃が釣られそうになったところを皆で助け(キラメイジャーの肩アーマーに釣針を引っかけるのは今回のナイスアイデア)、逆に銀が怪力で穴から引きずり出したのは、「磯の波飛沫が俺の化粧水」な釣竿邪面。
掴み技無効のウェットボディに意外な苦戦をしているうちに、偶然、釣竿邪面が魚籠の中に叶えまストーンを持っている事が発覚。どうやらストーンの力を用いているらしい釣竿邪面は虚空の穴に姿を消してしまい、困惑する一同の元に、マブシーナが突如苦しみだし、右の瞳にヨドンの紋章が浮かび上がった、と急報がもたらされる。
「なんだと?! 呪いが……遂に……」
荒川さんが二ヶ月ほど本編に不在だったのは、もともと入っていた劇場版の仕事と公開延期に基づく対応、話数短縮(?)を含めたストーリーの方向性の再検討などがあったのかと思われますが、「発動するかわからない」と曖昧にしていた呪いが早々と発動し、結局マブシーナにも説明する事になったのは、若干のバタバタ感。……まあ元から、宝路の大雑把な説明と、ファイヤーの詳細な説明は別々にして情報量を分散する段取りだったのかもしれませんが、間が短すぎて、呪いの衝撃は今ひとつ効果的になりませんでした。
作り出せ存在感、と説明役を買って出たファイヤーにより、かつてヨドンヘイムの澱みの海の魔女・ヌマージョ(CVは、『ゲキレンジャー』のクラゲ役が印象強い幸田直子さん)がクリスタリア全土に呪いの波動を放っているという情報から、宣戦布告とみなしてオラディン一行が殴り込みを仕掛けた詳細が明かされ、問答無用の先制奇襲攻撃に対する反応が、
「何者だい? この私のヨドン軍幹部招聘記念のささやかなティーパーティを台無しにする奴は?」
なのは、偽情報に踊られていたずらに戦火を拡大したのではと疑念が湧きますが、ガルザの暗躍がどこまで及んでいたのかについては、あれこれと匂わされつつ、次回以降に持ち越し。
歴史とは勝者が作るジャスティス、すなわち結果がオールライト、とオラディン・マバユイネ王妃・宝路・ファイヤー、そしてどんな呪いも浄化する力を持つアクアキラメイストーンからなる征伐部隊がティパーティーを襲撃し、戦闘員を相手の立ち回りはかなりの迫力。
そして、王妃様(マブシーナ母)は、本物の武闘派でした。
誰に断ってウチのシマにクスリ流しとるんじゃ、とヌマージョを追い込むオラディンだが、突如現れた赤い仮面の魔女の不意打ちを受けて《呪い耐性:100%》のアクセサリを落としてしまい、ヌマージョを葬り去るものの、「一番愛する女に発動する呪い」をかけられ、その言葉通りに呪いにかかった王妃が、砂となって崩れ去ってしまう……。
呪いのタイムリミットは、右目にヨドンの紋章が浮かんでから、7日。
宝路のお宝探しとはすなわち、呪いを解く為の叶えまストーン集めであった事もマブシーナに明かされ、釣竿邪面が持っているもの以外の2つを見つけだそうと焦る宝路。
「マブシーナ、おまえは何も心配しなくていい。俺に任せろ!」
「お兄様、それよりも――」
「残る二つを探してくる!」
マブシーナの言葉を最後まで聞かずに宝路は飛び出していき、それを追う充瑠。
「マブシーナ、宝路さんには、いつもヒーローで居てほしい、て言ってた」
「ヒーロー、か……」
自然と分業体制になって、残りメンバーは釣竿邪面(とその所持する叶えまストーン)を捜索するが足取りが掴めないまま一夜が明け……ストーンの時間逆行能力・朝からの雨天・邪面師の体に貼り付いていた広告、のピースを繋ぎ合わせた時雨は、釣竿邪面が“今日”から“昨日”に釣り糸を垂らしていた事に気付き、広告を手がかりに邪面師を強襲。
勢いよく主題歌バトルとなり、釣竿を相手に卓越した剣技を見せるアニキが、最初から最後まで格好いい……?!
「今度出演する、新作釣り映画の決め台詞をお聞かせしよう。――釣られたら釣り返す。今、俺の右手は神になる!」
と思わせて、しっかり自分でオチをつけてきたところに既に高いプロ残念意識を感じますが、人気イケメンアクション俳優・押切時雨、仕事は割と選ばない男。
冒頭で試していたキラメイソード:ゴッドハンド(伸)を用いた青はゴムのように伸ばした切っ先で釣竿邪面の魚籠から叶えまストーンを奪い取り、閃きの赤、戦術の黄、突撃の緑、剣技の青、制圧術の桃、範囲攻撃もとい怪力の銀、とそれぞれのキャラクター性と合わせた戦闘時の強みの色分けは、今作の巧いところ。
キラメイジャーは回収したリバースストーンの力で、釣竿の被害者たちをしっかり昨日に送り返した上で、青が拘束した邪面師の土手っ腹に銀が零距離ドリルをぶち込み、ワンダーーー!
コミカルな割にエグい死に様の多い邪面師の中でも、かなりゴア表現な感じで木っ葉微塵となりました。
「これを見せて、マブシーナを励ましてやりたい」
一同は叶えまストーンを手にしたシルバーを快くココナッツタワーへと送り出すが、闇の保険を最大適用して、クランチュラの気合も高らかに、モーターボート邪面獣が出現。
「今回の邪面獣は、いち、ばん、つよーい!!」
その自信に偽りはなく、地中潜行能力を駆使しながら素早く動き回る邪面獣にキラメイジンは大苦戦。マッハビームも軽々とかわされ、逆にミサイルの集中砲火をあびてしまう。
「はやっ! キングエクスプレスじゃなきゃ無理だよ!」
「けどここにジョーキー来ねぇだろ?!」
君ら、ガルザさんを追加戦士扱いするのはやめてあげて下さい。
……こうなってみると、魔進エクスプレスの追加戦力としては不完全な性質が浮き彫りになると同時に、これまでどれだけ無駄に助けに来てたのガルザ、となりますが、キラメイジンはモーターボートの体当たりを受けて倒れ、げしげし踏みつけにされる大ピンチ。
一方の宝路は、そんな仲間達の苦戦を知らず、笑顔でベースへと駆け戻るが……
「お兄様の馬鹿……!」
「え?」
「街が……大変な事になっているのですよ」
モニターに映った光景に愕然とする宝路に、クリスタリア陥落時も、ガルザにそそのかされて国を離れてしまったのではないか、とマブシーナは指摘し、散りばめられたピースを繋ぎ合わせて、ガルザがかなり遠大な謀略を練り上げていた事に(まあ、下手すると物心ついた頃から蓄積され続けてきたストレスの産物なので、仕方ありません)。
「優しいお兄様。わたくしを、助けたい一心で……」
「……マブシーナ、俺は!」
「ですが! ……わたくしのヒーローではなく、皆様の、ヒーローで居て下さい」
「マブシーナ……」
冒頭から前振りのあった「ヒーロー」という言葉が宝路に突き刺さり、物語としては充瑠よりも先に宝路の横っ面をはたいてきましたが、果たして宝路が選ぶものは何か? で、つづく。
姫様はオラディンの影響と薫陶もあるのでしょうが、ノブレス・オブリージュの意識を持ち、人の上に立つ王族としての覚悟が決まっているタイプであり、自分の命と不特定多数の命だったら迷わす後者を取るであろう精神性の持ち主である事はだるまさんが転んだ回でも片鱗を見せていましたが、一方の宝路は、生まれついての王族ではなく、恐らく帝王学を授けられたわけでもない故に身内を優先する面を持ち、「兄妹愛」と「ヒーローの公と私」の要素を組み合わせてきたのは、ストンと入りやすくて面白いアプローチ。
個人的には、「誰か(特定個人)の為のヒーロー」というのも嫌いではないですが、今作はそういう方向には進まないだろうなと思いつつ、どういう形で宝路のキラキラを表現してくるのか、楽しみです。
ちょっと気になるのは、沼女の最期の言葉が「私の命と引き替えに、一生苦しむ呪い」であり、素直に受け止めれば「対象が死ぬまで」という事ですが(本人死んでいると、「一番愛する女」の定義付けも難しくなりますし)……オラディン存命率が若干上がった気がしつつ、この辺りも次回もう少し言及があるかどうか。
EDおまけコーナー。
「邪面獣! モーターボートバスラ!」
「見よ! この爪、この船、波飛沫!!」
「さいきょーー!!」
あなたがた、本当に仲いいな……。