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知性を感じさせる言い方(とは)

超獣戦隊ライブマン』感想・第35-36話

◆第35話「勇介とケンプの約束!!」◆ (監督:東條昭平 脚本:藤井邦夫)
 「悩みがあるならみんなで相談に乗るぜ」
 “10月29日”を前に、何やら考え込む勇介は、ただならぬ様子を心配する仲間達に、4年前の10月29日――ドクター・ケンプがまだ、月形剣史としてバイオテクノロジーによる人間の進化を夢見ていた頃の、青春の思い出を語る。
 「そうすれば人類には、永遠の繁栄が約束されるんだぜ。俺はやる。……アカデミアで勉強して、必ずそれを実現させてみせる。
 「そうか。俺の夢は、人類の平和と未来の為に、宇宙開発する事だ。俺もやるぜ剣史!」
 「ああ。どっちが先に自分の夢を実現するか、競走だ」
 溌剌と互いの夢を語るかつての二人はそうして、4年後の10月29日、必ずまたここで会おうと、固く握手をかわす……
 「冗談じゃないぜ。ケンプは純一のお姉さんと、俺の兄貴を殺したやつだ!」
 ……相談したら、怒られた(人生にありがち)。
 勇介はまだ、かつての友としてケンプを信用しているのか? 鉄也と純一が反発を抱く一方、ケンプは勇介抹殺の為に殺人頭脳獣ギルヅノーを開発。
 「勇介、アカデミア島こそ、おまえの墓場。明日こそおまえの命日だ」
 (……俺は最後の賭けをしてみる)
 ケンプと一対一で決着を付けるために約束の日にアカデミア島へと向かう勇介だが、律儀に約束を守りに行ったと誤解した鉄也と純一は怒りに任せてタートルベースを飛び出していき、卓二と麻理の墓に花を供えていた勇介の前に、姿を見せるケンプ。
 「剣史……来たか」
 「おまえもな」
 「俺は4年前、お互いに語り合った夢と情熱を忘れはしない」
 「俺もだ」
 序盤に全く触れていなかった事もあり、勇介と月形の過去の交友はどうしても捏造感が出てしまうのですが(勇介×月形よりも、丈×尾村を優先した為なのですが、主人公の宿敵だからこそむしろ後半に設定を固めた方がブレが出ないだろう、という判断だったのでしょうか)、バラ回と今回でケンプの過去が掘り下げられた事により、ケンプがかつての夢を「くだらない」と捨てたのではなく、かつての夢も情熱も目的も変わらぬままに、ただ「やり方が変わった」だけなのが強く打ち出されたのは、ライバルとして面白いキャラクター像になりました。
 前半はどちらかというと、“人間性を捨てる”路線だったのですが、(感情を描きにくいなど難しい部分もあってか)「約束」は覚えているがそれは悪の目的の為に利用し、夢をかなえようとするからこそ貴様が死ね!というのが、かつての学友が悪の手先と化す今作の根幹にある要素から、大変邪悪。
 「だが……おまえはその夢を捨てたんだ!」
 「違う! 俺は夢を捨ててはいない。勇介、俺は科学的進化を遂げて、美獣ケンプになれる。真の天才として地球を支配し、永遠の繁栄を、この手に握る。夢は間もなくかなう。ふふははははは! ふははははは!!」
 その胸に抱く情熱は些かも変わらぬままに、「人類」の適用範囲を狭め、高慢な精神に取り憑かれてしまった男の狂ったような笑い声が響き渡り、こうなってくると、月形が「天才以外」に絶望するに至った事件などあっても面白そうですが、さて、そこまで仕掛けてくるかどうか。
 「剣史! おまえの夢はねじ曲がった!」
 「俺の夢を邪魔するものは、死、あるのみ」
 道を違えた青雲の志がぶつかり合い、ケンプがひそませていたギルヅノーが勇介を攻撃。
 狙撃による流血→派手に吹き飛んで建物の天井を突き破って落下→建物が大爆発してドラム缶に激突! と派手なアクションが畳みかけられ、特に爆破で吹き飛ぶ小屋の窓から飛び出す脱出シーンは、迫力のスタントでした。
 勇介がかつての友と一対一で決着を付けようとしていた事を知った鉄也と純一が飛び出し、更に青黄も参戦。戦闘員も交えて廃墟で大乱戦となり、次々と破壊されていく、壁・壁・壁(笑)
 激しく切り結ぶファルコンと美獣ケンプだが、ギルヅノーの攻撃を受けて爆発に呑み込まれ、揃って海落ち。ビアス様は「状況によっては、ケンプもろともでも構わん」と非情な命令を下して強化したギルヅノーを地球へと送り返し、波打ち際に打ち上げられて目を覚ました勇介は、傍らにケンプが倒れている事に気付く。
 「おまえに救いは無い。死をもって、罪を償うんだ」
 勇介はケンプの首に手を伸ばし、気を失っているケンプの首に手をかけて絞殺を図るという、“人間”が“人間”を“直接その手で殺そうとする”シーンは、ヒーロー物としてはこの当時でもかなり過激な描写だったのではないかと想像されますが、それだけの行為に及ぶ説得力としての友人銃殺とアカデミア島大虐殺が、作品の重心として相変わらず非常に効いています。
 今作の優れているのは何よりこのコア部分を見失わず、途中で濁しもせずに走り続けてきたところ。
 だが勇介は無抵抗な人間をくびり殺す事が出来ず、目を覚ますケンプ。
 「なぜだ?! なぜ気を失っていた俺を、殺さなかった?!」
 「ケンプ……俺は正々堂々戦って、貴様を倒す!」
 両者は再び激突し、ズバット大開脚から勇介を刺殺しようとするケンプだが、マゼンダとギルヅノーが乱入し、ケンプはビアスの下した命令を知る。
 「ケンプ! ビアスはおまえの事を道具にしか思っちゃいない!」
 「黙れ……黙れ!」
 ギルヅノーの攻撃を受けて逃げる勇介の元にマシンドルフィンで急ぐ仲間達の姿が挟まれ、勇介とケンプの過去に焦点を合わせすぎると、急な捏造感が上がってしまう危惧はあったのか、過去のドラマは程々に収めて、全体を大アクション祭として組み立てのは、今回の巧かったところ。
 「勇介、あの世から、我々の進化と繁栄を見るがいい」
 ケンプのスプリットカッター炸裂寸前、海からライブドルフィンが飛び出し、5人揃うライブマン
 「もう一歩のところを……!」
 「ケンプ……おまえこそ人類の平和な未来を地獄から見るがいい!」
 この台詞に続けて拳を突き出す変身ポーズに合わせて主題歌がイントロから流れ出し、ヒーローの変身前の啖呵としては、これまで見てきた中でも屈指の破壊力(笑)
 テンポの良さと変身後の三方向からのヒロイックなショットと主題歌バトルの勢いで呑み込ませてきますが、直訳すると、「くたばれ!」です。
 「レッド・ファルコン!」
 「美獣ケンプ!」
 強敵ギルヅノー、ビーム鞭を振るうマゼンダ、そして赤vsケンプ、と激しいバトルが繰り広げられ、数多の死闘を乗り越えてきた経験で、徐々に美獣ケンプを追い詰めていくレッドファルコン。
 「美獣ケンプ! これがおまえの誇る天才最高の力か?!」
 「なにぃぃぃ?!」
 「その思い上がり、叩きのめしてやる!」
 飛び道具の撃ち合いで互いにダメージを負うも、気迫の差で受け身に回ったケンプの体を遂にファルコンセイバーが切り裂き、追撃の飛び蹴りも炸裂。無様に水たまりを転がったケンプは、猛然と迫る赤のトドメの一刀に身をすくませたところをヅノーベースに回収され、ここで主題歌が途切れるのが、劇的な転調。
 ……後の作品でも発揮されますが、広瀬さんは、「傲岸」と「転落」の落差が実に映える役者さんです(笑)
 残ったギルヅノーは、アロー、バズーカ、からバイモーションバスターで粉砕し、挿入歌に乗せてボクサーディメンション。ちょっと苦戦したのでスーパーライブディメンションし、カウンターパンチから超獣アニマルハートで大勝利。
 ケンプは朦朧としながらヅノーベースで目を覚まし、自分がレッドファルコンに完敗した事を知る。
 「天才にあるまじき惨めな姿……見苦しかったぞ、ケンプ」
 画面手前で頭を振って意識をハッキリさせようとするケンプに対し、画面奥で背中を向けているビアス様。
 「ビアス様……!」
 哀れに顔を歪めるケンプと、それを見下ろすビアス様のあおり。
 「その屈辱、死をもって晴らしてやろうと思ったが」
 「ビアス様! この屈辱、勇介を抹殺する事によって、必ず、必ず晴らしてご覧にいれます!!」
 ケンプを見下ろすビアス様の姿を俯瞰で頭上から撮るワンカットを挟んだ後、今度は逆に、かなりのローアングルからビアスを見上げるケンプの姿を描き、両者の関係性を示す映像が強烈。また、ケンプの「勇介を抹殺する……」の言葉が出たところで、顔を背けていたビアス様が口元をニヤリと持ち上げ、必死に訴えるケンプに顔を向け直して無言で頷くのが極めて邪悪。
 「戦え……! 死力を尽くし、どちらかが滅びるまで」
 手を伸ばすケンプを一顧だにせずビアス様は歩き去っていき、カメラワークとカット割りの凄まじさに、ビアス様の妖しい艶めきも最大限に活かされて、今作ここまで屈指の名シーンでした。
 (剣史……俺とおまえの夢と情熱を懸けた約束は終わった)
 そして、科学アカデミアでの青春に一つのけじめを付けた勇介は、夕陽の海を見つめて佇む。
 「俺は必ず貴様を葬る事を誓う」
 ナレーション「勇介は今、激しい憎しみと闘志をもって、剣史と、永遠の訣別をした。負けるなライブマン。地球の、未来の為に!」
 そんな勇介に仲間達が走り寄って、つづく。

◆第36話「激突!友情のタックル」◆ (監督:東條昭平 脚本:井上敏樹
 純一、高校生だった。
 OP映像が拾われ、休学中?の母校を訪れてラグビー部の活動を見つめる純一だが、そこへ突然のトラクター!
 グラウンドにバヤリースのオレンジジュースを投げつけ、耕耘機で荒らし回るのは、足の骨折をきっかけにラグビーを離れ、すっかりやさぐれてしまった、純一の友人・ミノル。
 実は足が治っている事を隠して松葉杖を突くミノルが、突然部活を止めて姿を消してしまった純一を罵っていた頃、ラグビー部の部室では、部員たちがヨロイヅノーの洗脳ユニフォームを着た事により、世紀末ラグビー軍団へと変貌していた!
 「私の可愛い、坊や達」
 作戦を主導するマゼンダはほくそ笑み、トラクター! 不良が大暴れ! 部室の壁を突き破る頭脳獣! ヒャッハー! と刺激物が次々と放り込まれる勢いの良い展開。
 翌朝早く、自分で荒らしたグラウンドを自分で整備していたミノルに話しかけた純一は、試合中の怪我から大好きなラグビーが怖くなってしまったミノルの苦悩を知るが、頭脳獣の攻撃を受けてグリーンサイに変身。そして、そこに現れる世紀末ラグビー軍団。
 「今の彼らに名前は無い! 貴様を、地獄に送る使者なのだ」
 駆け付けた仲間達も洗脳された一般市民相手に手出しが出来ず、鎧ヅノーのアンテナに気付くが、頭脳獣の防御は鉄壁。
 「ヨロイヅノーは、どんな衝撃も弾き返す。貴様たちの攻撃など、花びらが降りかかるようなもの。はははは!」
 大変テンションの高いマゼンダですが、こういった台詞回しの妙味は、第15話(ガッシュターミネーター回)以来の参加となった井上敏樹のセンスを感じる部分。
 超獣戦隊は消毒だー、とタックルを受けたライブマンは派手に吹き飛ばされ、一時撤収。
 「彼らは昔、グリーンサイの友人たち」
 「友情ゆえ、ライブマンたちは手が出せない」
 ヅノーベースでは2回続けて効果的な作戦を立案したマゼンダがお褒めの言葉を預かり、ボルト側が「友情」を悪用するえげつなさが、前回の今回もあって効果倍増。
 一方、凝縮したエネルギーを一点に集中させる事が出来れば、鎧ヅノーの強固な装甲を打ち破る事が可能かもしれない、と分析したコロンさんが、グラントータスの総エネルギーの三分の一を凝縮した陽性子爆弾を発案し、ヒーローさえ怯む爆弾をさらっと作り始めるコロンさーーーん!!
 そのエネルギー消費量ゆえに一発限りの爆弾はくしくもラグビーボール型で、友人たちを助ける為にも爆弾を任せて欲しいと進み出た純一に対して始まる特訓……といえば、落石です!!
 昔のヒーローは言いました。
 「もっと岩をーーー!」
 純一がライブマンであり、ラグビーを捨てたわけではない事を知ったミノルは、この命がけの特訓を目撃。
 「おまえ、怖くはないのか?」
 「……怖いさ。出来ることなら、逃げ出したい。でも、だからこそそんな自分に打ち克ちたいんだ! 怖いからといって、逃げ出したくはない!」
 そこへマゼンダと鎧ヅノーが来襲して追い込まれるライブマンだが、爆弾を完成させたコロンさんがクーガーをぶん回して駆け付けると純一にボールを託し、今回は久々のコロンさん回としてポイントが高かったです(笑)
 「……俺は……俺は、何をやってたんだ!」
 世紀末ラグビー軍団へと突撃していく純一の姿を見たミノルは、大切なものから目を逸らして拗ねていた事を反省し、地獄ラグビーに参戦。純一と華麗なパス回しで世紀末ラグビー軍団の猛攻をかわしていく定番の展開ではあるのですが、多分ミノル、自分が脇に抱えているものの正体を知らない。
 落とせばお陀仏当てれば爆死、友よクボタのトラクター、こいつが必殺ゴールキック! が鎧ヅノーの頭部アンテナに炸裂し、洗脳鎧ユニフォームが剥がれたラグビー部員たちは半裸で地面に転がり映像面のテンションが高い一本(笑)
 新ためて変身したライブマンは鎧ヅノーを撃破し、今回はボクサーで大勝利。
 ミノルは恐怖を乗り越えてラグビー部に復帰し、スポーツ・挫折・不良・男の友情、と定番の素材をそつなく組み合わせた上にインパクトのある映像をまぶして味付けし、ここまでの井上脚本回の中では、一番噛み合ったエピソードでした。
 次回――予告の破壊力が凄まじすぎて、期待大。