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物語の結末は君が決める

仮面ライダーセイバー』感想・第1話

◆第1章「はじめに、炎の剣士あり。」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:福田卓郎
 「俺はなにか大切な事を忘れている気がする。……自分がやらなきゃいけない大事なことを」
 とりあえず本好きとしては、冒頭一番、「本っていいよね!!」から始まったのは、作品に対する好感度が上がりました。
 また、主人公が原稿用紙に万年筆の執筆スタイルと独特のファッションで明治の文豪を気取っている奇人の類ではなく、子供達に好かれている良いお兄さんである事が示されたのは、前作に欠落していた要素である点も含めて、非常に良かった&ホッとした点(奇特は奇特かもですが……)。
 主人公の人間性の担保であると同時に、「本」という要素をメインギミックにするにあたって、その面白さ・素晴らしさを、「誰に一番伝えたいのか」という目線の位置が明確なのは、作品の土台であり足場になってくれそうかな、と。
 主人公による朗読会のシーンや、壊れたビルの表現など、独特のエフェクトは作品の個性を示す映像表現となり、本から構成される怪人・開いた本の形に発生する異世界・謎めいた自動筆記システムなど、劇中ギミックを「本」というテーマに合わせて表現してくれたのも好み。
 また、発生した異空間を「内」と「外」の双方から描いたのは手堅く、後者が抜け落ちる事がままあるので、抑えてほしいところを抑えてくれました。
 謎の異世界側に閉じ込められた主人公は、両親の元に必ず帰す、と少年に約束して周囲の状況を確認している内に、豆本を手にしたゴーレム怪人と遭遇。
 「その本はなんだ?!」
 「本は我らの力。本により世界は我らのものとなるのだ」
 「本を……本を使って人を苦しめるなんて!」
 沸点と順応が早いな(笑)
 某・昆虫学者を思い出します。
 ゴーレムの生み出した巨大生物に編集者が吸い込まれそうになり、同じシチュエーションに陥る事で過去(?)の出来事を思い出すのはわかりやすく、作家魂に燃える主人公は、ゴーレムを追跡。
 「俺は必ず、街を元の世界に戻す」
 瓦礫の下敷きになる主人公だが、謎の豆本の力で助かり、おもむろに開くとその中から炎のドラゴン、そしてその転じた炎の剣が出現して、大地に突き刺さる!
 「世界がほどける時、竜が炎の剣を、呼び覚ます……まさか!」
 ひたすら、舞台袖で目を見開くお仕事担当の青い人が解説を入れ、再び、過去(?)の出来事を思い出す主人公。
 ――「覚悟を越えた先に、希望がある!」
 恰幅のいい中年男性が遺したその言葉に導かれるかのように、燃えさかる炎の中に手を伸ばした主人公が大地に突き立てられた剣を引き抜くと、それは聖剣ソードライバーへと変化。
 「これが俺の戦う力……みんなを守る為の力……俺の剣」
 出だしの世界観の見せ方、主人公への好感の付け方は悪くなかったのですが、「俺は必ず、街を元の世界に戻す」から「これが俺の戦う力……みんなを守る為の力……俺の剣」の間には、かなりの距離があるにも拘わらず、その間を埋める要素、或いはその間を飛び越えるだけの助走と踏み切り板が与えられていなかったので、変身に至る肝心のくだりが劇的さを欠いてしまったのは、勿体なかった点。
 剣を引き抜く前にもう一度、主人公が大切にしているという「約束」を引っ張り出してきても良かったかな、と(「目撃者」としての編集はうろちょろしている一方、少年の存在感が消えてしまったのは、構成として物足りないですし)。
 「何をしようが、我らが勝つ!」」
 「いいや。――物語の結末は、俺が決める」
 暴虐に対して立ち向かうヒーローの決め台詞は綺麗にはまり、腰に巻き付けたソードライバーに赤い豆本をセットした主人公は、頭が大悪獣ギロンのような真紅の剣士へと変身し、肩のドラゴンのつぶらな瞳がチャームポイント。
 「あれは……セイバー」
 事態の影で糸引く悪役カルテットの一人、ナイトローグ似の人がその名を呟き、真紅の剣士セイバーは、剣を振り回してゴーレム怪人と激突。
 とてもベルトには見えないドライバーを躊躇なく腰に巻き、直感的とは言いがたい本のセットから剣を引き抜く動作まで自然にこなす点に関しては一切触れずに突っ切りましたが、“なんとなく見覚えがあって体が勝手に動いた”とか、次回あたりに理由が付けられるのかどうか。
 セイバーの攻撃に苦しむゴーレム怪人は本の力でフィールドを転換し、画面をぐにんぐにん動かしてのCGバトルは、どうしてもゲームのムービー的になってしまうのが難しいところですが、第1話における特殊状況のインパクトとして、大地に突き立つ巨大な剣の、わかりやすい異物感は良かったなと。
 通常空間に復帰すると、高い所に立って
 「俺が、全てを救う」
 とか言い出すのは物凄く唐突でしたが、「普通のホモ・サピエンスには抜けない」聖剣を引き抜いたり、なにかと早い順応力の高さを見るに、超古代に昆虫魂を注入されて誕生した蝶人類(ホモ・パピリア)の末裔なのかもしれません。
 PVやイメージビジュアルからの第一印象は“戦隊寄り”だったのですが、そう考えると実態は『ビーファイター』(まあ、この作品がそもそも戦隊テイストを輸入しているわけですが)なのかもしれず、とすれば作品群としては《メタルヒーロー》シリーズの後継的要素を持つ《平成ライダー》的ではありますし、なんだか光と闇概念の永劫の戦いが背景にありそうな世界観でもあり、終盤には伝説図書館巨神・メガアレクサンドリアとか出てくるのかもしれません。
 ……与太はさておき、「俺は必ず、街を元の世界に戻す」から「これが俺の戦う力……みんなを守る為の力……俺の剣」にしろ、「俺が、全てを救う」にしろ、劇中の飛躍に対する助走不足が平常運行にならないかは、やや不安。
 ドラゴン火炎パンチを浴びせたゴーレムが本の力を集めて巨大化するが、必殺剣でそれをざっくりぶった切ってセイバーは初陣を大勝利。
 謎の世界は修復された後に元の世界へと戻り、親子は無事に再会。主人公と約束した少年が、帰還後に逆に母親を気遣う事で、「ちょっぴりの冒険と成長」を表現する意図そのものは好意的に見たいのですが、途中で少年が完全に消えていたので、とってつけた感は出てしまい、今後の精錬を期待したいところです。
 「この本の続きはまた書けば言い」
 「世界は繋がったのだからな」
 「もう一冊は……間もなく出来上がります」
 「失われた炎の剣が現れたか。これで他の剣士たちも動き出す」
 悪役カルテットが丁寧に伏線を張っていき、色々あったが無事に原稿を編集に託した主人公の元をライオンに乗って訪れる青い人、でつづく。
 ビックリ役だった青い人の最後の笑顔が、どことなく堺雅人を感じさせるのは、流行り物に全力で乗っかっていくスタイルでしょーか(笑)
 少々おっかなびっくりの部分がありつつ見た第1話でしたが、入りとしては、なかなか悪くなかったです。
 今作と同プロデューサー×同脚本家による『ゴースト』の際は、特撮ヒーロー物初参加の脚本家に、第1話から「初めての変身」&「初めてのフォームチェンジ」を詰め込ませるのがあまりに無茶すぎましたが、今回は互いに経験値を得た上で、第1話は「初めての変身」に絞ったのは、良かったと思います。
 気になる点としては、上述してきた、部分部分の唐突な飛躍と、主人公が設定や状況の説明を全て台詞にしてしまう喋りすぎの部分。あと、編集者の顔芸路線が、愛嬌になるか面倒くさくなるかは、近作の方向性的には少し心配でありますが、巧いこと『W』の所長みたいなポジションに収まってくれるのを期待したいです。
 読書趣味の人間としては、第2話以降も「読書の楽しさ」「想像(創造)する事の面白さ」を大切に扱ってくれると嬉しいし、そうしてくれると好感度高め設定で見られるかな、と。
 初回はOP無しで主題歌はエンディングパートの後ろで流れ、それとは別に今作ではEDテーマが採用されて、主役・編集者・青い人が、ダンスを披露。
 …………このダンスに、小夜さんを放り込みたい。