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気のせいかな カルビのぬくもりを感じるのは

海賊戦隊ゴーカイジャー』感想・第39-40話

◆第39話「どうして?俺たち高校生」◆ (監督:竹本昇 脚本:香村純子)

 ――「ああ、今はあれでいい、あれでいいんだ」

 殿下戦死の報がスペース新聞を大きく飾り、写真がなんか格好いい(笑)
 これによりマーベラスの賞金額が天井知らずとなり……
 「幾らでも払うから、首を獲ってこいという意味です」
 首をひねる鎧への翻訳が物騒ですね姫。
 「……好きなだけ貰えるのか」
 マーベラスを見下ろしたルカがぼそっと呟くのに合わせ、軽快な音楽が停止して皆がぎょっとする(除く筋トレ中のジョー)のが秀逸。
 「いやぁね、冗談よ」
 そんな一同は鳥占いで諸星学園高校に向かう事になり、不審者まっしぐら。生徒達から「宇宙海賊……?」の声があがるのがこの世界らしいところですが、このままでは宇宙警察に通報されて百鬼夜行をぶったぎられてしまうその寸前、母校で教師となっていたメガレンジャーのメガレッド・伊達健太と出会い、デジタル研究会(原典でメガレンジャーのメンバーが所属)に招かれる事に。
 原典を偏愛する身としては、メガレンジャー』から誰か出すなら久保田博士!! と無茶を承知で思っていたのですが、かつての悪ガキが教師になっているという王道も、これはこれで、納得ではありましょうか(ちなみに原典の健太は、格ゲーとロボット操縦の達人だが、IT関係は素人同然)。
 学校と聞いて以来、妙にテンションの高いアイムが学生達の姿に興味津々なのをジョーが気に掛けるのがおいしく、家庭教師がついていた事で未経験だった学校に憧れがあるアイムと、それぞれの事情を抱える海賊達。
 「憧れるようなところか?」
 「俺も学校なんか行ったことはねぇが……憧れた事はねぇな」
 「あたしも。勉強って苦手だし」
 それを耳にした健太は何やら思いつき……
 「メガレンジャーの“大いなる力”を手に入れるには、一つ、条件がある」
 「条件?」
 「そう。この学校の、生徒になってもらいます」
 かくして学生服に身を包む海賊達……これはまた、“大いなる力”詐欺なのでは(笑)
 とはいえ、基本ヤンキー気質のメンバーはそれぞれ好き勝手に動き回りだし、マベ・鎧はバスケット部の練習に飛び入り参加、ルカ・ハカセはデジ研の生徒に出会ってハカセが眼鏡キャラとして覚醒し、ジョーとアイムは、荒川ワールドもといラブコメの現場を目撃していた。
 「素敵ですね。なんか青春って感じで」
 大きな山を一つ越え、海賊×学生のミスマッチなコスプレ要素で楽しくほのぼのさせる谷間のエピソードではありますが、「学園」「青春」という『メガレン』の要素を、「(一定の)安定した/平和な、世界の象徴」としてモチーフ化する事により、ザンギャックの支配する宇宙においては、恐らくかつての彼らが求め方さえ知らなかったものに触れさせながら、「夢」という今作トータルなキーワードに繋げてきたのは、綺麗な流れ。
 そして“学べる”というのは“選べる”という事であり、現実にもフィードバック可能な要素を交えつつ、将来の目標を考えた時に、特にルカにとっては大きな体験だったのではないかな、と。
 「あいつらにも、ちょっとは伝わったかな……」
 そんな場に彼らを導く事で、教師になったヒーローが戦士以外の形で先達としての在り方を示すのも鮮やかで、「地球の一般市民との関わり」「戦士とは別の戦い方」と、今作におけるパズルのピースを的確に埋めて、序盤から発揮されていた香村さんの見通しの良さが改めて光ります。
 「やっほー。元メガレッドの、せーんせ」
 ところが健太は、廊下で不審者ならぬ不審猿を目撃。挑発に乗って外へ飛び出した所で、“大いなる力”を狙うバスコと出くわしてしまう。学園全体を人質に力の引き渡しを要求するバスコだが(あくまで搦め手にこだわるのが、バスコのいやらしさであり付け目でもあり)、鎧から連絡を受けた海賊たちが、学校を守ると宣言。
 デジ研の生徒たちがアイネットメガレンジャーの所属組織)のサテライトサーチシステムを利用して校舎各所に仕掛けられた時限爆弾の位置を特定し、健太のアクセス権限どれだけ上位なんだ、と原典における長官ポジションにしてメガレンジャーにとっての疑似父だった久保田博士の親バカぶりが窺えますが、もう実質、久保田博士が登場した扱いにしていいですね!
 「おまえたち、なにもんだ?」
 「諸星学園高校デジタル研究会」
 「「健太先生の後輩です」」
 一方、猿顔を守って猿と戦う猿顔、もといゴーカイシルバーだが、ひらりひらりと攻撃をかわされ、相変わらず強いぞ猿。
 「意外と粘るじゃん。でも、そろそろ飽きちゃった」
 真の姿を見せたバスコは、シルバーを一蹴。ラッパを吹いてメガレンジャーの“大いなる力”をもぎ取ろうとするが、生徒たちの協力もあって全ての爆弾を外し、タイムレンジャーになって圧縮冷凍する事で爆破を阻止したゴーカイジャーが到着。
 「スーパー戦隊の力、なめんな」
 の言い回しが、今までに比べて、“スーパー戦隊”を肯定するニュアンスが増している事が、約40話の積み重ねを感じさせます。
 「バスコ! 後はてめぇを倒すだけだ!」
 「倒すだけ? でっきるかなぁ?」
 本日も全力でいやらしーーーバスコに対し、ゴーカイジャーはインストール・メガレンジャー。6人揃ってバスコ&サリーにサーフィン攻撃を仕掛け、青緑(近接)×黄桃(射撃)の連係攻撃を受けながら、全ての銃撃を弾いてみせるサリー、ホント強い。
 完全バスコには赤銀が怒濤の連続攻撃を浴びせるがほぼ通用しない中、青緑黄桃はメガレンジャーの特殊能力を駆使してサリーを包囲し、なんだか、猿いじめみたいな光景に。
 ……だってもう、明らかにサリー、可愛いですからね、サリー。
 リアルなニホンザルって、どちらかというと敵対的な生物だと思うのですが(※個人の感想です)、うまいこと毒気を抜いて可愛げを与えている、デザインと演技の妙に唸らされます。
 合体メガライフルを受けたサリーが吹き飛び、完全バスコが動揺を見せた隙に赤と銀は必殺攻撃を撃ち込み、卑劣、卑劣なり海賊戦隊……!
 サリーのダメージを気にしたバスコは、モリリンとドロリンを召還して撤収し、巨大戦に突入。拘束攻撃でピンチに陥ったゴーカイジャーは“大いなる力”を発動し、宙明節の挿入歌に乗せて敢然ゴーカイオーから、ど派手にロケットパンチで、ゴーカイジャー、WIN!
 「おまえらの卒業証書代わりだ」
 6人は健太先生からメガレンジャーの“大いなる力”を受け取り、海賊たちは諸星学園を後にするのであった、でつづく。
 ……なお健太先生的には、「先生! 俺たちはずっと、先生の生徒です!」みたいなのをやって欲しかったのか、あっさり帰っていく海賊たちに大変名残惜しそうで、握手を求めてきた鎧を焼き肉屋に引きずっていこうとするのですが、今作これまでのパターンからすると、ラストシーンはまた役者さんにお任せだったりしたのでしょうか(笑)
 焼き肉は、絆への、特急券

◆第40話「未来は過去に」◆ (監督:竹本昇 脚本:香村純子)

 ――「……けど未来は変えられなくたって、自分たちの明日ぐらい変えようぜ」

 突如としてガレオンに横付けする豪獣ドリル。恐る恐る確認に向かった鎧が操縦席で発見したのは、なんと未来からのメッセージ。
 「やあやあゴーカイジャー諸君、俺はタイムレンジャーのタイムイエロー、ドモンだ」
 これまで大変謎だった、浅見グループの“大いなる力”もとい豪獣ドリルは未来からタイムレンジャーが送り込んできたらしき事が明らかになり、過去に戻ってある神社を守ってほしいと依頼されるゴーカイジャー
 交換条件として「34の“大いなる力”を揃える為のチャンスをやろう」と持ちかけられた海賊たちは、ドリルに乗っておおよそ1年前へと飛び、問題の神社でナナシに襲われていた少年を救出。赤青黄緑桃が逃げたナナシを仕留めようと追いかけ、少年を逃がそうとする鎧だが、少年は何故かその場を動きたがらない。
 「……もしかして、家出?」
 「家出じゃない。自立だ」
 「……自立?」
 一方、ナナシ軍団を追った5人は、大爆発を背に並ぶシンケンジャーゴセイジャーの姿を目にし、「通りすがりに目撃した戦隊の揃い踏みシーン」が割と新鮮なカットなのですが、なんとビックリ、劇場版『天装戦隊ゴセイジャーvsシンケンジャー エピックON銀幕』(監督:竹本昇 脚本:下山健人)と接続。
 「……あ、飛びました」
 両戦隊を狙うシタリ&ナナシ軍団に気付いた海賊戦隊は、過去に干渉しないようにと注意された気がするけど、神社を守るついでにこっそり倒すならOKでは? と崖の上から襲いかかり、劇場版お約束の先行登場を本編に組み込んで消化する離れ業(笑)
 ここから先のバトルが、劇場版の流用なのか新たに撮影したのかはわかりませんが、適度に劇場版の戦闘シーンを挟みつつ、変身前のメンバーが神社とガレオン内部のみの登場だったり、ある程度、撮影の省エネを意識したような作り。
 本編で生き残った後に劇場版で始末されたのが割と可哀想だったシタリは海賊版でも念入りに抹殺され、神社の鎧は、フリーライターである母親が、新しい仕事の度に引っ越しを繰り返すのが辛い少年の事情を聞き、同じく引っ越しを繰り返していた自らの少年時代に触れる。
 「たくさん引っ越ししたから、たっくさん友達が出来たんだ。いろんな街に」
 転校が多すぎて友達が出来ない事を嘆く少年に、なんとかなるなる、と体験談を語る鎧ですが、なにぶん鎧が鎧なので、相手からも「友達」と思われているのかちょっぴり不安。
 「……新しい街に行く度に、頑張って、話しかけるんだ。うざいとか、しつこい、とか言われたって、いろんな子に、いっっぱい」
 そして今明かされる、鎧の人格形成秘話。
 納得度は凄く高いのですが、メンタルが折れない心の色すぎる……。
 「確かに、自分じゃ、どうしようも出来ない事もある。それでも、自分に出来る事を探して、やってみれば……自分の明日ぐらい変えられる。俺は、そう思ってるけどねー」
 原典の大きな推進力となったエピソード(第2話)から竜也の台詞を拾い、この台詞が1にして10まで『タイムレンジャー』のテーマになっている小林靖子の構成力と、それをピンポイントで掴み取って『タイムレンジャー』のテーマを『ゴーカイジャー』の一編に接続してくる香村純子の技量が鮮やかに交差して、過去と未来をまたぐ脚本家共演の趣き。
 少年と打ち解ける鎧だったが、神社内部に何かのエネルギーを感知してやってきたメタルアリス女史が、どこかのブレドランで見たような怪人を放ち(確認したら、帝国時代のブレドランはアンモナイトモチーフで、今回の怪人は『ゴセイ』本編にも登場したホタテロボのバージョン違いでした)、神社を強襲。
 ゴーカイシルバーは神社を守る為にホタテロボと戦う事になり、ここで流れ始める挿入歌がはまって非常に格好良かったです。


いつも憧れてすごした スーパー戦隊の伝説
本気なら夢は適うことを 大声で叫びたい気分さ

 ……しかしこの挿入歌(「鋼の心 ゴーカイシルバー」)、かなり一節一節の長い歌詞に力尽くで曲をあてているのですが、本編のキャラ付けには毛ほども採用されていない「アイアム」などの英語要素が組み込まれていて、シルバーの初期案にはもしかして、シュリケンジャー要素があったのでしょうか(笑)
 必殺の槍を弾かれたシルバーは連続ゴーカイチェンジで奮戦し、そこにシタリ一味を始末した本隊が合流。
 「あいつが、寝隠神社を破壊した犯人だったんです!」
 「では、先程のイカさんと、雑魚さん達は?」
 「あ、そうだ……」
 「……まあいい」
 「俺たちは真犯人を倒すまでだ」
 卑劣、卑劣なり海賊戦隊……!
 やりたい事をやるだけだ、と真犯人の口封じを図る海賊戦隊はタイムレンジャーとなって、懐かしのマトリックス回避。当時も大きいと思いましたが、改めて巨大な個人バズーカからベクターエンドし、巨大戦ではドリルが大暴れ。黒騎士キーで“大いなる力”を発動し、柳生豪獣ハリケーンからドリルドリームで、タイムアップ。
 神社を守り抜いた6人は、少年を探しに来た母親とも出会い、神社を守った証拠写真を皆で撮影し、未来からのミッションを達成。
 そして現在――神社の無事を確認したゴーカイジャーだが……
 「で、新しい“大いなる力”は、何戦隊のだったの?」
 「あ」「は?!」「は……!」「……あ」「はっ?!」「あ?!」
 今度こそ、詐欺だった。
 ……「カーレン」編の頃から、“大いなる力”詐欺について警鐘を鳴らしてきましたが、まさか本当に劇中で“大いなる力”詐欺が働かれるとは夢にも思いませんでした(笑)
 珍しくジョーまでショックに崩れ、愕然とする海賊戦隊の一方、31世紀――帰還したドリルのコックピットで、鎧からの手紙を見つけるドモンは、写真に写った少年の母親が、かつて恋仲だったホナミである事に気付き……
 「……なんだよ、俺に似てハンサムじゃねぇか」
 思わぬ形で息子と出会い、男泣きにくれるドモンの姿で、つづく。
 前回今回と、殿下戦死により体制に激震の走るザンギャック侵略艦隊から敢えて完全にカメラを外した上で、実質的に新規の怪人を投入せずにレジェンド回を成立させてみせた香村さんの技量が光る2本でした。
 前回が「学園」要素を普遍的なテーマ性に繋げて過去作からの独立性を生み出したのに対し、今回は大幅に『タイム』前提かつ前年の劇場版とも接続するアクロバットな作りで、2本の構造が似ないようにしながら、どちらも『ゴーカイジャー』らしいエピソードになっているのも、お見事。
 『タイム』は設定上、触りにくい作品であったと思うのですが、〔30世紀ドモン(未来)-鎧(現在)・20世紀ドモン(過去)-少年の鎧(過去)〕という構造で、中心に置いた「鎧と少年の交流エピソード」の前後に時空間の拡がりを作り出した上で、「自分の明日ぐらい変えられる」事を信じられるようになった少年の意志が“未来”を作っていく事になる……のは、実に『タイムレンジャー』。
 ドモンの本来の目的だったらしい、神社にかくされたツボ? についてはよくわかりませんでしたが、これも何かのネタでありましょうか。
 次回――皇帝、現る?!