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熱い心を強い意志で包んだ星人たち

ウルトラマン80』感想・第21話

◆第21話「永遠に輝け!!宇宙Gメン85」◆ (監督:湯浅憲明 脚本:山浦弘靖
 注目は、
 「この星人は、友好的で平和を愛する高等生物です。無益な破壊や殺戮をする筈がありませんよ」
 からの、
 「貴様あの怪獣の仲間だな!」
 ……それはまあ、怪我の手当をした異星人が怪獣との戦闘中にテレパシーによる攪乱で死ぬような目に遭わせてきた上に、様子を見に行ったら悠長に川で喉を潤そうとしていたら、戦闘民族ウルトラ人としては飛び蹴りから木の棒による撲殺も図りたくなります。
 世界各地で街や村が消滅しては住人が大量虐殺される事件が続発し、その犯人探しに躍起になるUGM。現場で目撃されたシーズー犬似の宇宙人が嫌疑をかけられるが、その正体は凶悪な宇宙怪獣ガモスを復讐の為に追ってきた、怪獣専門捜査官・宇宙Gメンの一因なのであった。
 家族をガモスに殺されて20年、Gメンとしての任期切れを2日後に控えるシーズー星人が自らガモスを倒したい執念ゆえに80の邪魔をしたと理由付けがされるのですが、星から星へ飛び回る宇宙Gメンなのに「現地人への変身能力を持たない」(為にUGMに疑われる)のが不自然極まりなく、物語としても別にGメン要素が活かされるわけではないので(せいぜい矢的=80と知っている事ぐらいですが、この辺り、基本的に適当ですし……)これといってGメンである意味が感じられず、当時放映中だった『Gメン’75』に乗っかってみただけなのやらなんなのやら。
 また、物語冒頭では大々的な破壊規模の割に原因不明が強調される(為にシーズー星人が疑われる事になった)のですが、事件の真犯人・怪獣ガモスが、物凄く堂々と大暴れするので、どうして原因不明だったのかが、意味不明。
 全てが「地球人から誤解を受けた悲しき復讐宇宙人の真実」を組み立てる為に強引に設計されており、これなら「特殊な立場も有為な能力も無いが、執念でガモスを追い続けてきた宇宙人(が怪獣を操っていると誤解される)」で良かったと思うのですが、Gメン要素を接続して色々とおかしくなったのでは感が漂います。
 シーズー星人の目出し(人間の目の利用)も、個人的には異星人感が薄れてしまって、逆効果。
 事情を聞いた矢的がシーズー星人の負傷を気遣って仇討ち代行を買って出るのですが、誤解された原因は当人にあったと描かれているとはいえ、その傷を負わせたのは同僚なので、怪我を強調される度に複雑な気分にもなります。
 矢的を気絶させて巨大化したシーズー星人が、自分が知る怪獣の弱点を使わないまま瀕死となり、助けに入った80が危機に陥ったところでテレパシーで弱点を伝えて80が逆転勝利を収めるのも支離滅裂な成り行きで、「やりたい事」はハッキリしている一方で、それを成立させる為の骨組みがスカスカ、という残念なエピソードでした。
 今回もナレーションと映像で人的被害が強調されるのですが、冒頭の惨劇において焼け野原で手を繋いで泣きじゃくる子供2人の映像などはだいぶん露骨で(そしてそれが、その後の物語と繋がっていくわけでもなく)、戦後35年、時代の要請やスタッフの意識があったのかもしれず、当時と今ではまた受け止め方の変わるところかもしれませんが……怪獣バトルエンタメとしては寓意が枠を飛び出して、どうもやり過ぎになっている印象。
 なお、学園においてノンちゃん役だった白坂紀子さんが、「気象班のユリ子」として再登場し、瓜二つの姿に矢的が「ノンちゃん!」と思わず呼びかけるシーンがあって、教師時代の記憶が消滅しているわけではない模様。