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BUNBUN! BANBAN! 海賊BANG!

海賊戦隊ゴーカイジャー』感想・第35-36話

◆第35話「次元ノムコウ」◆ (監督:加藤弘之 脚本:香村純子)

 ――「ねえ、みんな、正義の味方になってほしいんだけど」

 注目は、鎧のピンクのチーターみたいなシャツ&マベの派手な迷彩柄ズボン。
 画面に入るとそれしか目に入らなくなるのですが、海賊戦隊の衣装班は、ちょっと攻めすぎなのでは(笑)
 そんな海賊たちが秋の味覚を堪能中のガレオンに、空から降ってくる悪魔の使い、もとい、ボンパーさん。
 「ここはどこ? 君たちは誰?」
 「おまえが、誰だ」
 一歩間違えると、食事の邪魔をした奴は許さねぇ、とライジングインパクトされてしまうところでしたが、そこは交渉力に定評のあるボンパーさん、海賊たちに頼んでサーキットに連れていってもらい、レーサーとして活動しているゴーオンレッド・江角走輔と再会。
 初対面から生身で名乗り出す走輔に、大興奮の鎧が生身の名乗りを返し、走輔が「変なの来たーーー」と呟いていますが、凄く波長の近い2人と、凄く距離のある5人(笑)
 熱烈な握手をかわす走輔&鎧を、アイムを除いて客席にどかっと腰掛けた4人が冷めきった眼差しで見つめており、ここの距離感がある意味で今回の一番面白いシーン。
 比較的距離の近いアイム(それでもだいぶ間がある)が、ゴーオンイエローから“大いなる力”を受け取った件に関して礼を述べて劇場版のイベントにフォローを入れ、ボンパーさんは、ガンマンワールドにガイアークの生き残りが現れ、立ち向かった炎神たちが敗北した事から助けを求めてヒューマンワールドへやってきた事情を走輔に説明。
 走「よーしわかった。野郎共! マッハで駆け付けて、俺たちでガンマンワールドを助けるぞ!」
 銀「ハイ!」
 黄「……なんで?」
 走(銀?)「はい?!」
 青「どうして俺たちが行かなきゃならない」
 走「どうしてって、おまえら、正義の味方だろ?」
 緑「いや、僕たち、海賊なんですけど」
 赤「なんでそんなよくわからん世界に行かなきゃなんねぇんだよ」
 行動原理が根っから正義ノミカタの走輔(ゴーオンジャー)と、アウトローを標榜する海賊たちとでは反りが合うわけがなく、特に足を組んで物凄く態度の悪いマーベラスにカチンと来た走輔は、海賊たちの手など借りないと宣言。
 「あの方……レンジャーキーを返せとは、おっしゃいませんでしたね」
 一貫して、“理由”が無いと動かない――“理由”があれば貸し借りの関係にならない――海賊たちですが、アイムの一言から走輔の行動に多少の興味を惹かれ……まあ走輔の場合、完全に忘れていた、という可能性も高そうなんですが(笑)
 独力で次元の亀裂に飛び込もうとする走輔は、
 1:トランポリン作戦
 2:棒高跳び作戦
 でフライハイしようとするも届くわけがなく、しかし、くじけもせず、見知らぬ世界の為に何故そんな必死になれるのかを問うマーベラス
 「世界が違うからなんだってんだ。助け合ったり、友達になったり、誰かを思う気持ちに、生まれ育った世界が違うとか、そんなこと関係ねぇだろ!」
 「……なるほど。気が変わった。連れてってやるよ。ガンマンワールドに」
 「へ?」
 一方的にそれが当然と巻き込まれそうになると反発するが、その心意気を面白いと感じれば手を伸ばすマベ……これは少し拡大解釈になりますが、もし、スーパー戦隊のような考え方の連中が宇宙のあちこちにいたら、ザンギャックの勢力はここまで大きくならなかったかもしれない……そんな夢を見たのかな、とも思えます。
 これは今作のスケール感から生じる、地球にはスーパー戦隊が居て一度はザンギャック艦隊を退けた、そして今はゴーカイジャーが居て結果として地球を守っている……だが、地球だけが守られていればそれでいいのだろうか、という課題に対して解答の輪郭が朧気ながら形を取り始めたのかな、と。
 そして鎧インパクト後のマーベラス達にとって、いつの間にか慣れてしまっていた“ザンギャックの支配する世界”において、自分たちが「海賊」の名にふさわしい行動をしているのかどうか、はより考えなければいけない問題になっているようも思われます(そんな海賊たちを、タクシー代わりに使ったボンパーさんの交渉術、恐るべし……)。
 また今回、要所の台詞や啖呵がアイムに割り当てられているのですが、“ガイアークに支配されたガンマンワールド”と“ザンギャックの侵攻を受けた世界”とを重ねる言葉もあり、今回のエピソードと物語全体の背景を“亡国のプリンセス”の視点から照応させる事で、海賊たちの現在地を確認しつつ、今後の布石にしているように見えるところ(アイムの過去話も想定されているでしょうし)。
 かくして走輔とボンパーを乗せてガレオンでガンマンワールドへ辿り着いたゴーカイジャーは、ひとまずウガッツ部隊と戦闘になり、バトルフィーバー!(初?)から、チェンジマン
 配色の関係で、アイドル枠のチェンジマーメイド(白)がルカ、武闘派枠のチェンジフェニックス(桃)がアイムとなり、構えや仕草が原典と真逆になっているのがちょっと面白く、如何にポーズや動き方で印象が変わるのか、スーツアクターさんの芝居に改めて唸らされます。
 ウガッツ部隊を蹴散らした一同は、力を失いミニカー状の炎神キャスト姿になってしまったスピードル・ベアールV・バスオンを発見。助けた酒場のマスターから食事をご馳走になりながら話を聞き……
 スピードルとベアールV、結婚していた
 子供が出来ていた
 グレていた
 「なんでグレてんだよ?!」
 の衝撃三連発(笑)
 そこへガンマンワールドの支配を目論むガイアークの保蛮官・チラカシズキーが姿を見せ、ミルクの恨みから決闘を受けて立つマーベラス
 「……おまえら馬鹿だな。よその世界の為に、そんな必死に」
 「おまえもな。結局みんなのこと助けてんじゃねぇか」
 「……じゃ、俺たちも馬鹿だろ」
 満足げに呟く表情と言い回しが凄く良くて、キャプテン・マーベラスがいよいよ完成してきた、という感じ。
 走輔の立ち合いの元、マーベラスと散らかし好きは古式ゆかしい早撃ち対決を行い、弾丸を弾丸で撃ち落とす神業を披露するマベの、ズボンの柄が気になって仕方ありません!
 決闘に敗れ、伏兵も排除された散らかし好きがバズーカを持ち出したところで一同ゴーカイチェンジし、フルオープンミサイルに対して、トリガーハッピーなら負けないぞ、とエマージェンシー・デカレンジャー
 警棒メインのアクションから、レジェンドリーム&ガレオンバスターでトドメを刺し、商業的にシルバーはシルバーで売る事情があったのでしょうが、バズーカにシルバーが参加していない(武器は提供したのに……)事で、毎度シルバー露払い→ガレオンバスター、の二段構えになるのは、ややテンポの悪い部分。
 懐かしの「産業革命!」で巨大化した散らかし好きに対し、ゴーオンジャーの“大いなる力”を使ってみる海賊戦隊だが……不発。
 仕方がないので改めて風雷丸を召喚し、凄くさらっと、次元の壁を越えていますが、恐るべし超忍法。そしてドリルドリームから千本ノックで成敗バイ。
 「俺は……ガイアークという名前が大好きです!」
 散らかし好きはガイアークらしい断末魔で倒れ……意味が分からなかったのですが、何か時事ネタでしょうか。
 かくしてガンマンワールドを解放する海賊達だが、ヒューマンワールドと繋がっていた次元の亀裂が、ガイアーク二代目害統領ババッチードの鎖国バリアによって封鎖されてしまう。全ては、ゴーカイジャーをヒューマンワールドから追い出す為の囮作戦だったのでアール、でつづく。
 次回――なにやらとても、得体の知れない姿に……。

◆第36話「相棒カイゾク」◆ (監督:加藤弘之 脚本:香村純子)

 ――生まれた世界は違っても 見た目や言葉が違っても 願いは繋ぎ合える

 ガイアーク二代目害統領ババッチードの策謀によりヒューマンワールドへ戻れなくなってしまったゴーカイジャーは、炎神の力を借りて一度マシンワールドへと向かい、スピードルとベアールVの不良息子である炎神マッハルコンの説得を試みる事に。
 「それじゃ、お父さんお母さん、よろしくお願いします」
 ガレオンの見張り台からご両親が拡声器で呼びかけ……考えてみると、「サイヤ人を増やすためにブルマとベジータをくっつける(ほど唐突ではないですが……)」みたいな事をやっており(例えが古いですが、後にも先にもこれ以上にインパクトのあった例が思い浮かばず)、結構な思い切り。
 「おまえは、正義の味方の両親から生まれた、正義の味方だろう!」
 「うるせぇー! どいつもこいつも、正義の味方、正義の味方って、知ったことか!」
 途中で興奮してメガホンを取り上げた走輔に《説得》スキルなどあろう筈もなく、エンジンにガソリンを注ぐ形で交渉は決裂。
 「俺様を止められるもんなら止めてみやがれ! バーリバリー!」
 「海賊に喧嘩売ってただで済むと思うなよ」
 暴走マッハルコンを追うガレオンからゴーカイビークルが出撃し、大変貴重な海賊マシンの単体活動による追走劇が始まって、ガレオン、撃った。
 一方ヒューマンワールドでは、ばばっちいの活動開始にザンギャックが慌て、海賊が邪魔に出てこない事が不条理だと八つ当たりする殿下に呆れかえるダマラスとインサーン。殿下はバリゾーグとインサーンを連れて地球へと降り立ち、殿下史上最高に格好良く、悪逆非道の侵略者の前に立ちはだかる!(あれ?)
 「聞いて驚けひざまずけ! この俺が、宇宙帝国ザンギャックの総司令官、ワルズ・ギル様だ」
 かくして侵略者同士の武力衝突が発生し、
 「侵略は強い方の勝ちだー!」
 けだし明言。
 マシンワールドでは砲弾をともなう大捕物が続いており、歴代でも屈指の、“なんだかよくわからない合体パーツ”だった各ゴーカイビークルに個別のアクションがあったのは、遅まきながら良かったです。
 桃機と黄機をリタイアさせたマッハルコンは、父親には出来なかった、飛行――! ……………………ええと、ベアールVとジェットラスの間の子供じゃ……ないですよね?
 「やるじゃねぇか。だが俺たちからは逃げられねぇよ」
 「てめぇ、なにを根拠に!」
 「俺たち海賊は欲しいもんは必ず獲りにいく。本気でな。でもおまえの走りは本気じゃねぇ! ただ逃げてるだけだ」
 砲弾で殴るばかりではないマーベラスの言葉に海賊達の流儀を重ねると共に、ここでマーベラスかつてのアカレッドの立場になっているのは、成る程という話運び。
 完全に、(元)ヤンキー魂が通じ合っています。
 「なんだとぉ?!」
 「そうやって滅茶苦茶な走りをして、親父たちからも逃げ回ってんだろ」
 「うるせぇー!」
 空飛ぶファルコンを体当たりで撃墜したガレオンに青機と緑機が合体してゴーカイ上半身となると、そのまま、強制接続(笑)
 既に下半身ライオンの例はありますが、ほどほど厚みもあり、比較的諸作で馴染みのあるケンタウロス体型と違って、上半身が人型で、下半身が平べったい車だと、禁忌の生命体感が強い、得体の知れないフォルムに。
 「逃げてるだけのヤツには負けねぇよ」
 強制接続からのアンカーにより、ゴーカイジャーは無軌道な暴走を食い止める事に成功し、ヤンキー魂の通じ合ったマッハルコンは、マーベラスにその心情を吐露。
 「……親父たちが、羨ましかったのかもしれねぇ。自分の信じたもんのために、真っ直ぐ、走り続ける、親父たちが。俺様には、なんにもねぇからな……」
 ……敵が。
 「欲しけりゃ探せよ。おまえが本気になれるものを。世界は広いぜ。……どうする? 決めるのはおまえだ」
 ……敵を?
 「……マーベラス、俺様を、海賊にしてくれねぇか!? あんたについていきゃ、俺にも、なにか、見つけられるような、気がする」
 「いいぜ。おまえらの言う、相棒ってやつか」
 標的を見失った不穏な正義の行き先はともかく(真面目な話としては、海賊戦隊が「“正義の味方”ではない」からこそ、違う価値観との出会いがマッハルコンに救いをもたらした、といえるでしょうか)、暴走族から海賊見習いへとクラスチェンジしたマッハルコンは鎖国バリアを打ち砕き、海賊戦隊はヒューマンワールドへと帰還。
 「全員まとめて、相手してやろうじゃねぇか!」
 ザンギャックとガイアークの小競り合いに乱入し、ジョーとバリゾーグの対峙が強調されたのは、嬉しいワンカット。殿下らは早々に撤収し、ゴーカイジャーはレッツゴーオンメットオン。……二つのメットを頭上で融合装着する金銀のメットオンが凄い(笑)
 「ズバリ派手に行かせてもらう!」
 珍しくジョーが小ネタを入れ、個人武器の連続必殺攻撃により、ばばっちいを撃破。
 「まだだ。石にかじりついてでも、余は任期を全うするのでアール。産業革命!」
 「誰もおまえなんか支持しねぇよ」
 前回今回と、ガイアーク芸を各所に散りばめながらの巨大化で、ゴーカイジャーは今度こそゴーオンジャーの“大いなる力”を発動して、マッハルコンを召喚。キャストとソウルに分離したマッハルコンにソウルをセットするとバリバリ大暴れし、そして合体。
 「海賊の心と炎神の心が一つになる時、轟音とともに豪快な王が誕生するぜ!」
 下半身車で二刀流を振り回すゴーオンゴーカイオーが誕生し……どうもこのフォルムが私の中の禁忌の生命体センサーに抵触してしまうようで、落ち着いて見る事が出来ません(笑)
 「まだ望まれている内に退場するのが一番でアール。じにーん!」
 ダイビング切り下ろしを受けたばばっちいは、ガイアークの芸風を貫いて、チェッカーフラッグ。
 こうしてゴーカイジャーは、種族も世界も越えた新たな仲間を加え、自分たちの旅は、元々そういうものだった事を、それぞれが改めて確認するのであった。
 『ゴーカイ』から過去10年圏内(01年以降)の作品では、満を持しての大トリとなった『ゴーオン』編、レジェンドたっぷり登場、新たなる炎神、そして新合体、と盛り沢山の前後編(香村さんにとっては、戦隊デビュー作であり)でしたが、その中で、30数話の歩みを経たキャプテン・マーベラスの現在地が描き出されたのが、印象的でした。
 相対するレジェンドが、“似た者同士”ではなく、“真逆のようでどこか近い”走輔だったのも、反発と共鳴を効果的に見せる事に。
 ちょっと気になったのは、全体通して走輔の演技がやや過剰で浮き気味に見えた点ですが(作風や演出ラインの違いもあるので、原典を見直すとこんな感じだったかもしれませんが)、3年程度のインターバルがあった上で、キャラは“ほぼそのまま”というのが、演じる側にとってもチューニングの難しい部分はあったのかな、とは思うところ。
 次回――殿下、超本気?!