東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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飛んでくるくる回し蹴り

海賊戦隊ゴーカイジャー』感想・第33-34話

◆第33話「ヒーローだァァッ!!」◆ (監督:坂本太郎 脚本:石橋大助)

 ――「ばーか、餃子の方が100倍可愛いさ」

 バスコに負わされた鎧の負傷が回復する一方、ザンギャックからは無限胃袋隊長が送り込まれて発動する地球餓死作戦! ゴーカイジャーはまたも食べ物の恨みでザンギャックと戦端を開く事になり、セルフパロディでニヤリとさせるのも含めて、便利な導入です(笑)
 「復活した俺の姿! 見てて下さーい!」
 ところが、調子に乗っていた銀は無防備な背中に攻撃を受け、セルラーを吸い込まれてしまう大失態。
 「待って! 返して! 俺のゴーカイセルラーーー!!」
 鎧の叫びも虚しく、セルラーを飲み込んだまま(気付いていない)胃袋隊長は一時撤収し、気をつけよう 悪い大人と ギャグ怪人。
 変身不能にがっくり落ち込み、一時下船した鎧は道で自転車と衝突し、顔を上げるとそこに居たのは、五星戦隊ダイレンジャーリュウレンジャー、天火星・亮!
 ぶつかった相手に気付くや、絶叫し、ポーズを取り、熱烈な握手から顔を近付け、伊狩鎧、2020年に見ると、凄くソーシャルディスタンスの気になる男(笑)
 「……今は、その、変身できないんですけど……」
 テンションの乱高下する鎧は、節電営業中(これもまた当時の世相であり)の赤龍軒で、置かれた現状を説明。
 「俺、小さい頃から、亮さん達、スーパー戦隊の皆さんに憧れてて……だからゴーカイセルラーを貰った時は、凄い嬉しかったんです。これで、俺もスーパー戦隊の一員に、ヒーローになれるって……だけど」
 「……だけど?」
 「ゴーカイシルバーに変身できなかったら、もう、ヒーローでもなんでもないじゃないですか。それが悲しくって……」
 「それは……ちょっと違うんじゃないかなぁ?」
 鎧の言葉に疑問を投げかけようとする亮だが、タイミング悪く商店街のメンバーが店を訪れ、餃子に箸も付けないまま、鎧は退店。
 ワープ能力を駆使し、各地で食べ物を荒らしくていく胃袋隊長を追う海賊戦隊だが逃亡を繰り返され、(今の俺には、何もできない)と黄昏れていた鎧は、商店街のバザーに参加する亮と再会すると、黙々と餃子を作り続ける姿に苛立ちをぶつけてしまう。
 「また餃子って……これが亮さんの今できる精一杯の事なんですか?!」
 「何をイライラしてる? 変身できないのがそんなに辛いのか?」
 「ええ、辛いですよ。死ぬほど。呑気に餃子なんか作っている、あなたと違って!」
 かつてヒュウガに向けて「俺がやりたいんです」と宣言して一歩前に進んだ鎧ですが、根本的な部分で「貰った力」という意識が強いが故に、それが失われた時に自分がヒーローだというアイデンティティを見失った結果、失った力を取り戻したいともがく事=ヒーローである、と正当性を見出して他者を非難する事に。
 だが既に自分に出来る事を見出している先達は、泰然自若とそれを受け止め……まあ、現役当時だったら、「気合だァァッ!!」といきなり顔面パンチ不可避だったので、ゴーマとの戦いから約20年、亮も随分と大人になりました(笑)
 「言ったろ? 俺は腕を磨いてこの餃子を世界一の餃子にしたいんだ。世界一の餃子なら、食べた人はみんな美味しいって笑顔になる。世界一の餃子は、世界一多くの笑顔を作れるって思うからね」
 「なにが言いたいんです?」
 「――忘れてるんじゃないのか? 一番大切なこと」
 そこに胃袋隊長が出現して屋台の食べ物を吸い込んでしまった上に、ゴーミン部隊をけしかけてバザーを攻撃。しばし逡巡していた鎧だが、人々を守るためにまなじりを決して生身で立ち向かっていき、その姿に笑顔を浮かべた亮が鎧を援護してゴーミンにハイキックから回し蹴りを叩き込み、立ちすくんでいたのではなく、鎧が自ら動くのを待ち望んでいたのが格好いい。
 「亮さん……」
 「それからもう一つ。転身できなくなった俺は、世界を救うことはできないかもしれない。――だが、目の前の敵を見逃すほど、俺は歳は取っちゃいないぜ」
 たとえ大きな力は失っても、それを支えてきた意志までがくじかれたわけではない――法被と上着を放り投げ、今再び披露される、餃子職人のビューティマッスル! (※残念ながら上半身半裸はならず)
 「リュウレンジャー! 天火星・亮! 天に輝く、五つ星! 五星戦隊・ダイレンジャー!!」
 現役時代の生身名乗りがそのまま、力は失っても確かにそこにある“魂”の象徴になり、今作当初からの課題であり「シンケン」編で一つの解を示した「変身能力を失った過去ヒーロー達は、ザンギャックの侵攻を前に何をしているのか?」のより具体的な事例を、迷える鎧の前で見せつけるのが、文句なしの格好良さ。


 「力や技だけが、戦士の条件じゃないよ」
 「なんで? 戦士にはそれが一番大事でしょ?」
 「うーん……ただ暴れるだけならな。けど、戦士に必要な、強さや勇気は、そこからは生まれない」
(『星獣戦隊ギンガマン』第十七章「本当の勇気」(監督:長石多可男 脚本:小林靖子))
 ――忘れてるんじゃないのか? 一番大切なこと。
 「俺がヒーローになりたかったのは、変身できるから?」
 切れ味鋭いアクションでゴーミンに立ち向かっていく亮の姿に、見失っていたものを取り戻す鎧。
 「思い出しました。一番大切なこと。俺がヒーローになりたかったのは、みんなを守りたかったからです! 変身できるとかできないとか、そんなの関係ない!」
 ヒーローの証明は、変身できるかどうかではない。悪を目の前にした時、みんなを笑顔にする為に、みんな守る為に、大切なことの為に今の自分に何が出来るのか……それを貫く魂があるならばその時、人は誰でも、ヒーローへの一歩を踏み出せる。
 「ザンギャック! 俺が海賊戦隊6人目の男、伊狩鎧! またの名を、ゴーーーーカイシルバー!」
 ポーズを決めた鎧は亮と並んでゴーミン部隊に躍りかかり、動けるキャスト共演の生身アクション祭で、ゴーミンを蹴散らす亮の姿にシシレンジャー(緑)、テンマレンジャー(青)、そしてリュウレンジャー(赤)の姿が重なる演出が格好いいのですが、キリン(黄)とホウオウ(桃)がキャンセルされたのは、何故。
 飛び回し蹴りの出来る二人はゴーミン部隊を瞬く間に蹴散らすも、さすがにスゴーミン相手にはダブル飛び蹴りも通用せず、絶体絶命のその時、本日もバカスカ撃ちながら海賊戦隊が登場。
 「まったく地球人って奴は、どいつもこいつも無茶苦茶な奴だな」
 この辺りまで来ると、マーベラスにとって地球人は大概、面白い奴になっている感(笑)
 「うちの見習いが世話になったな」
 鎧と亮の前に立ったマーベラスは背中越しに亮に話しかけ、いつか言ってみたかった台詞です!
 「気にすんな。これも先輩の努めってやつさ」
 亮の返事に満足げに微笑み、亮が一発でマベちゃんの心の隙間に開店しているのですが、マーベラスが地球を気に入った理由の半分ぐらいは、いい感じに兄貴風を吹かす先輩が選り取り見取りな事だと思います(笑)
 5人はゴーカイチェンジすると拳法戦隊繋がりかビーストオンで胃袋隊長の腹部に集中攻撃を叩き込み、最後はゲキ注入により飲み込んだ物を吐き出させ、鎧、セルラーを無事に回収。
 「守るんだろみんなを。ゴーカイシルバーとして! ヒーローとして!」
 BGMの盛り上がりもびしっとはまり、力と魂の繋がった鎧は、改めてゴーカイチェンジ。
 「皆さん、ありがとうございます! 改めましてぇ! ゴーーーカイシルバー!」
 「海賊戦隊!」
 「「「「「「ゴーカイジャー!!」」」」」」
 6人並んで気力転身し、天に輝く五つ星。スゴーミン部隊は銀が掃除し、胃袋隊長は、ゴーカイガレオンバスターによりライジングストライク。巨大戦では胃袋隊長とスゴーミンの連携攻撃に苦しむ二大ロボだったが、ダイレンジャーの“大いなる力”を発動し、豪快豪獣気力ボンバーでスゴーミン部隊を消し飛ばし、手裏剣千本ノックを飲み込んだ胃袋隊長は、内部から破裂する惨い最期を遂げる。
 バザーは無事に再開し、亮の振る舞う餃子を絶賛する海賊戦隊。
 「そりゃあ、うちの餃子は――」
 「世界一! ですよね?」
 最後にもう一度、一番大切な事を忘れるな、と先輩からアドバイスされた鎧が重々しく頷き、つづく。
 『シンケン』『ゴセイ』に参加していた石橋大助が、初登板。『シンケンジャー』第30話の「無」としか言いようがないエピソードの印象が強すぎて不安先行だったのですが、「ヒーローとは何か?」をストレートに掘り下げた場所が好みで、今回はかなり面白かったです。
 “変身できなくなったヒーローの今できる戦い”というテーゼは、「ゴーゴーファイブ」編や「ライブマン」編でも補われていますが、今回はバトル面を中心にして映像的な説得力を引き上げる為に、劇場版に続く出演となった和田さんという「動けるレジェンドの立ち回り」を前提とした構成になっており、いくらストレスが溜まっているにしても鎧の亮への言動がやや攻撃的すぎる部分は多少気になりましたが、その澱みを吹き飛ばしてみせる亮は文句なしの格好良さ。  
 ストーリー面では色々と難のある原典から「餃子」と「アクション」を抽出したのは目の付け所が良く、巧いレジェンドの使い方でした(ここまでこの路線で来た事で、前半以上に広がりのある使い方が出来るようになっている面があるのでしょうが)。
 ……ところで、「ハリケン」前後編の後、香村-井上-荒川-香村-下山-下山-石橋、とサブライター率が上がっているのは、荒川さんが冬映画の脚本に苦戦していたりとかあったのでしょうか? その中で荒川さんが担当したのが、80年代戦隊テーゼ回でも新装備登場回でもシルバー原点回帰回でもなく、コスプレ大アバレ回なのが、凄く、らしいというかなんというか(笑)
 この当時の宇都宮Pの気持ちが、ちょっと知りたいです!
 次回――予告の関さんのナレーションが急に甘ったるい声になってきもちわ、げふんげふん、雰囲気を出して、ルカの過去から姿を見せる昔の男?!

◆第34話「夢を叶えて」◆ (監督:坂本太郎 脚本:荒川稔久

 ――「どっちか選ばなきゃならねぇとしたら、昔なじみより金と欲で繋がった仲間だ。そっちの絆の方がつええからなぁ」

 スゴーミンを買収する通りすがりの宇宙実業家。その正体は、ルカと旧知の男――カイン(演:霧彦さんこと君沢ユウキ)。
 ……はい、荒川さんが帰ってきました!(笑)
 のですが、率直にいまいちの出来で、酷い、というほどではないものの、アベレージの高い今作においては、ここまでワーストクラスと言わざるをえない内容。
 まず、特殊能力でルカの姿をコピーしたコウモリ隊長が、ステルス性能が長所のガレオンにさらっと辿り着くのが雑。ルカの記憶までコピーしているのかと思いきやそんな事もなく、潜入工作を目論んでいる癖にリサーチ不足からあっという間に不審を抱かれるのも雑。そして、風雷丸の超忍法による偽装工作が、雑。
 最後の一つはレジェンド的特殊能力で目を瞑るにしても、とにかくコウモリ隊長の行動が雑すぎて、昔なじみの姿に油断したとはいえ、そんなコウモリ隊長にあっさり捕まってしまうルカの株も必要以上に落ちる事に。
 そして、折角の二枚目ゲストが、登場シーンの半分以上、甘いマスクの下は体育座りで鎖に拘束されているのがなんともいえない脱力感で、この星は、霧彦さん(違う)に厳しい。
 「ザンギャックに親を奪われた子供達が、みんなで幸せに暮らせるような世界を作る」「星をまるごと買い取って、そこを笑顔で一杯にする」というルカの夢の為に8000億ザギンを貯めたカインだが、現在のルカの夢が“宇宙最大のお宝”を手に入れて宇宙の全てを買い取ってやる事(鎧インパクト後の意識変化が加わった上での、ルカの現在地におけるヒーロー宣言だと思われます)だと知ると、身を引く事を決意。
 「会った時から言いたかった事、言っていい?」
 「なに?」
 「…………ルカ、綺麗になった」
 「……昔と違って、毎日お風呂に入ってるから」
 「違うって。いい仲間との出会いが、今の君の笑顔を生んだんだなぁって。……悔しいけど、今の笑顔は買えないね。どれだけお金があっても」
 どんな濃いめの変態かと身構えていたら、普通に凄くいい人だ……。
 ルカの幼なじみ登場にハカセがジェラシーファイヤーを燃やしてニヤニヤさせるのですが、ハカセが鎧と二人で宇宙の荒波へ向けて旅立つ日は近そうです。
 時期的に劇場版に絡むスケジュールの問題でも発生していたのか、通してシーン数をなるべく少なくしよう、キャストの出番を圧縮しよう、みたいな意識も窺えて、それ故にスキルのある荒川さんがまとめた感じもありますが、物足りない出来の一本でした。
 次回――僕と契約して、正義の味方になってよボンボン!