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人と人形の間

仮面ライダーゼロワン』感想・第42話

◆第42話「ソコに悪意がある限り」◆ (監督:田崎竜太 脚本:高橋悠也
 「さあ始めよう。人類滅亡の聖戦を」
 滅が人類に対して34話ぶり3回目の宣戦布告を行い、ゼアのシミュレーションにより目にした「滅アークがアルトを殺す未来」を回避するべく、単身で滅を止めようとするイズ。
 大々的な宣言の割に全く戦力が集まっていない事に、滅の虚しさを見るか、番組の都合を見るか難しいところなのですが、なによりも前回の今回で、「ごく普通に清掃員ヒューマギアが活動している」世界観描写の雑さに腰が砕けます(前回→今回の間に、数ヶ月経っている設定なのかもですが……)。
 「おまえは人類の恐ろしさを理解していない」
 「あなたこそ、人類の素晴らしさを理解していない。人類が居たから、私たちが生まれた。そして生きる事の意味を、夢を、心を教えてくれた」
 ここに来て、よーーーーーーやく、「人類は滅亡すべき」に対して「人類は滅亡すべきでない」という主張が登場人物の口から出てくるのですが、これをイズに言わせると「造物主への信仰」になってしまうので、やはりアルトに言わせないといけなかったのでは。
 イズがそこに「辿り着いた」と見せたかったのはわかるのですが、ここまで劇中で描かれてきたのは、「生きる事の意味」=「設計コンセプト」、「夢」=「プログラムの延長線上(しか認められない)」、心=「???」であり、その他諸々も含めて、縦糸も横糸も穴だらけすぎて、タペストリーが絵の形を成していません。
 で、発言者がイズにしろアルトにしろ、そこに説得力を与えるには「人とヒューマギアが手を取り合う事で生まれる素晴らしいもの」を積極的に描いてくる事が必要だったと思うのですが、その成果物の印象が弱い事で、「共存による明るい未来」が劇中人物と共有しにくいのが、何度か触れましたが、今作の大きな難点。
 「何よりも、悪意をな」
 一方の滅は滅で、特に悪意体験を受けたわけではない(アークの受け売りでしかない)事が判明しているので、せっかくテーゼとテーゼをぶつけているのに、お互いの主張の中身が空っぽという、痛々しい地獄絵図。
 「本当に恐れるべき事は、偏ったデータをラーニングしてしまう事なのかもしれません」
 アルト社長をラーニングすれば考えが変わる筈、と滅の説得を試みるイズの言葉は、メタな風刺としては面白くはあるのですが、お薦めするアルトが人類屈指で偏ったデータなので、もはや自爆ギャグ。
 駆け付けた不破と唯阿は空気を読まずに銃を抜く暴れん坊扱いを受け、迅の前にはアズが姿を見せ、これまで散々目を逸らしてきた普遍的な「悪意」の存在――ヒューマギアが人の心の鏡なのだとしたら、人類から悪意を根絶できない限り、ヒューマギアは必ず人類に牙を剥く潜在的な致命的欠陥を抱えている――について、「アークの復活」にスライドしながらの急な大合唱に、凄く困惑。
 「アークは消えた! もう俺たちが争う理由は無い!」
 ……主人公は相変わらずですが。
 アルトにしろイズにしろ、事ここに至っても滅を「信じている」根拠がさっぱり不明なのも困るのですが、敢えて言えば「ヒューマギアの無原罪性」を信じており、片方で「夢」だの「心」だの自由な精神の有り様を讃えているようでいながら、片方では「ヒューマギアの本質は純粋善」だから「そこに生じる心も善である」と決めつけている倒錯が、どうしても飲み込みにくい点(イズはまだともかく、結局、アルトが一番「心」を自分に都合良く捉えている)。
 そして、「ヒューマギアの本質が純粋善」であり(そもそもロボットなので、善も悪も無い、というならわかるのですが)、「悪意は外部からラーニングされたものでしかない」と信じるならば、もう何度も触れていますが、アルトが「向き合い」「戦う」べきものは、もうずっと前から「人間の悪意」であり、そこで「人類滅亡」以外の答を出そうともがくのが、主人公の役割だったのではないかと、思うわけなのであります。
 その問題に向き合った上でフィクションにおける「象徴」としてアークを倒すならば物語も成立したと思うのですが、向き合わずに天津-アークに全てを押しつけようとしたのが、とことん主人公と物語を歪めてしまったなと。
 で、そうやって目を逸らし続けてきたものが“自分の中”にも存在している事に気付いた時、それに飲み込まれるのは因果と言えば因果ですが、今回限りではそれが滅に向ける憎悪にしかなっていないのでインパクト頼りの印象はぬぐえず、次回、「憎しみのままの暴走状態」以上の意味を、物語としてしっかり作ってほしいところです。
 ……ちょっと面白いのは、イズが「神への信奉」を口にするのに対して、滅が目指すのが「神殺し」なので滅の方がヒロイックに見えてしまう構図から、主人公が二重の意味で滅が殺すべき「神様(の器)」になった事ですが、滅は滅で神殺しの達成の後に残された「ヒューマギアだけの世界」のどん詰まりには気付いていなさそうであり(まあ、滅の目指す世界が「永遠の停滞」なら人間は要らないのですが)……そこを殴ってくれるキャラが居るとしたら迅なのですが、そういった争点を作って物語を通して研磨していこうと思えば色々と要素はあったのに、出来なかったのがとにかく残念。
 ここまで来て、イズの素体表現をした事は、思い切ったと思います。