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ザンギャックなんか怖くない

海賊戦隊ゴーカイジャー』感想・第31話

◆第31話「衝撃!! 秘密作戦」◆ (監督:竹本昇 脚本:下山健人)

 ――「超力戦隊・オーレンジャー所属、隊長、オーレッド!」

 予告:普段、過去ヒーロー登場物に懐疑的というか、諸手を挙げて賛成というわけではないスタンスでありますが、今回に関しましては、ファン丸出しの内容になります(笑)
 リアルタイム当時、未だにシリーズで一番好きなレッド、星野吾郎(宍戸勝)隊長、本人出演! の情報を小耳に挟み、それはもう、話がわからなくても見なくては! と初めて見た『ゴーカイジャー』がこのエピソードで思い出深いのですが、今見ると、個人的には相性の良くない下山脚本だった事にちょっと驚き。
 なお、この先はリアルタイムで見ているといっても約10年前で内容はうろ覚えなので、今後の感想も、引き続き初見気分で書いていきたいと思います(よって、感想中で先の内容に触れる事はありません)。
 「“大いなる力”、いっただきにあがりましたーっ」
 地球守備隊本部がバスコの襲撃を受けて“大いなる力”を奪われ、その連絡を受けて部下に「作戦の決行」を指示する軍服の男――その背負ったプレートに刻まれた文字は、U.A.O.H。
 『オーレン』の頃だと竹本監督は助監督に入っていたかと思われますが、隊長がサングラスで登場するのは、原典第1話のオマージュでありましょうか。
 一方、ゴーカイガレオンでは鳥がいきなり奇声をあげて騒ぎだし、今回の占いナビは、「叫び声」?
 物は試しと、絶叫マシンのありそうな遊園地に向かった海賊一行はそこで、「大いなる力あります」と大書されたピンクの看板を掲げた女性を見つけ……これはまた、“大いなる力”詐欺なのでは。
 便利な伊狩解説により、女の正体は元オーピンクの丸尾桃と判明し、鳥のナビゲートは正確には「うあおう」……すなわち、U.A.O.H――国際空軍超力戦隊。
 意味不明かと思われていた占いナビが割と直球だった、というこの小ネタは結構好き(笑)
 「私たち、オーレンジャーの“大いなる力”を、あなたたちに託します」
 ところが同じ頃、超力戦隊の隊長はオーレンジャーの“大いなる力”と、ザンギャック艦隊旗艦ギガントホースの正確な位置座標の交換をバスコに持ちかけており……海賊達の身辺に忍び寄る、悪質な詐欺の気配。
 「で、“大いなる力”は? 早くしろ」
 「もう、せっかちだなぁ。確かにあげるとは言ったけど、ただで、ていうのも話がうますぎるでしょ?」
 「どういう事だ」
 「すこーし、お姉さんに付き合って!」
 ……やはり、“大いなる力”詐欺では。
 暗に接待を要求した丸尾隊員(「桃」は表記被りが出るため以下「丸尾」で)は、マベとジョーに買い物の荷物持ちをさせ、ルカとアイムにマッサージをさせ、ハカセと鎧には豪華ランチを提供させ、この辺りは下山さんが師匠の「カーレン」回を意識したりあったのでしょうか?(笑)
 好き放題に振り回してくれた末に、デザートにみたらし団子を要求する丸尾の我が儘ぶりに堪忍袋の緒が切れて詰め寄るルカやマベだが、ジョーがそれを制止すると全員で買い出しに行くとブリッジを後にし……しきりに時間を気にする丸尾の不意を突いて詰問するジョー。
 「そんなに時間が気になるのか?」
 「……べ、別にそんな事ないわよ」
 「軍人が時間を気にする理由は一つだけ。スケジュール通りに作戦が進んでいるか否か」
 元軍属設定が活かされてスムーズに繋がり、しらを切るのを諦めた丸尾は、海賊の足止めが自分の任務であったと告白。その間に隊長はバスコとの取引現場に向かっており、車から降りると現役時代の隊服、というのが劇的。
 「さあ、取引を始めようか」
 超力戦隊がゴーカイジャーを騙してバスコと取引をもくろんでいた事に一番ショックを受けたのは、もちろん伊狩鎧。
 「オーレッド、星野吾郎隊長といえば、たった1人でバラノイアに立ち向かったほどの勇者だった筈」
 比喩的な表現でもなんでもなく、誇張ゼロ(笑)
 そして、隊長は隊長なので隊長であり、わざわざフルネームのあとに「隊長」とつけた鎧には、基礎好感度5点を、永久不滅ポイントにしたいと思います!
 「そんな方が、バスコと取引だなんて! ……見損ないましたよ」
 「そうじゃない! 違うの!」
 丸尾は鎧の落胆を否定し、取引現場では、バスコが手にしたデータ機器を破壊。
 「悪いね。元オーレッドのおにーさん。こっちは最初から取引する気は、ないんだよね~」
 「奇遇だな。実はこっちも」
 いきなり爆破(笑)
 問答無用の奇襲攻撃により、バスコとサリーは足下で弾けた派手な爆炎に飲み込まれ、その炎を表情一つ変えずに見つめるのが、歴戦の職業軍人ジャスティス。気持ちで勝てるなら、スペシャルポリスなんていらないですよね!
 隊長の真の狙いが、自らの“大いなる力”を餌にしてのバスコとの直接対決にあったのは隊長ファンとして大満足で、作戦の失敗に備えて丸尾桃経由でゴーカイジャーに“大いなる力”を託せる保険を打っておくのも納得度が高く、冒頭で地球守備隊(電撃戦隊)が敗北していましたが、シリーズにおける「軍人戦隊」の要素を「作戦」という形で抽出したのは、良いアイデア
 「どうしてそこまでするんだ……俺たちは海賊だぞ!」
 「そう名乗ってるだけなんでしょ?! だから隊長は、あなた達を信じ、危険な作戦を立てた。でも、でもあたしは……」
 丸尾桃についても一世を風靡したさとう珠緒らしさを押し出した賑やかしに終わらせずに、隊長に対する信頼と不安の入り交じった感情を引き出し、原典後半でなんとなく絡みが増えていた覚えがあって、ちょっとニヤニヤ。
 「残念でしたー。“大いなる力”を餌に、俺を誘い出して倒そうなんて。……なかなかやるじゃない」
 バスコ爆殺に失敗した隊長はサリーの攻撃を受け、作戦のタイムリミットが過ぎた事から、保険の発動を実行しようとする丸尾。
 「あなた達に、“大いなる力”を、託します」
 それに対し、無言で進み出たマベが、力を宿した丸尾の手を、ぺしっと横にはたくのが、格好いい。
 「わりぃが、あんたから貰う気はしねぇ。俺たちは海賊だ。欲しいもんはこの手で、掴み取る!」
 その頃、隊長は思いきり、猿のシンバルで顔をはたかれていた。
 「変身できないあんたが、かなうわけないっしょ」
 「わかっているさ」
 猿にぐりぐりと踏みつけられる隊長だが、第二のトラップを起動して鋼鉄の鎖がバスコとサリーを拘束し、敵を侮らない二重三重の仕込みが格好いい……!
 「かなわなければ、この建物ごと破壊すればいい」
 昭和の男らしく(オーレンジャー自体は昭和戦隊ではありませんが、隊長は昭和万能超人系リーダーの継承者なので(笑))、もろともに自爆を図る隊長だが、仕掛けていた筈の爆弾は不発。
 「……なんてね」
 バスコの焦った表情はいやらしい演技で、既に解除済みだった爆弾を手にキー番外戦士が続々と姿を見せ、絶望感を駆り立てます。
 隊長の作戦!→それを上回るバスコ!→隊長の奥の手!→更にそれを上回るバスコ! と、基本的に今回、「レジェンドを悪役の引き立て役にする」思い切った構成なのですが、変身能力がなくても果敢に立ち向かう隊長の姿には紛う事なきヒーローの魂があって決して貶められていないですし(海賊の本拠に乗り込んで一芝居打つ丸尾も同様)、宿敵バスコの脅威度を引き上げる背の高い踏み台の説得力として、存在感のある描写をされているのはファン的に嬉しい。
 「それじゃあ“大いなる力”、いただきまーす!」
 ラッパが吹き鳴らされると隊長の体を黄金のオーラが包み、“保険”が発動していない事に隊長が困惑したその時、一発の銃弾がラッパを弾き飛ばす。
 「ゴーカイジャー、なぜ来た?!」
 「決まってんだろ。オーレンジャーの“大いなる力”を受け取りに来た!」
 「桃が君たちの元へ行っただろ! どうしてわざわざここへ」
 「俺たちは海賊だ。あんたの思い通りに動くと思うなよ。好きにやらせてもらう!」
 そして海賊たちも隊長の思惑を乗り越え、用意されたレールに乗って与えられるのではなく、流儀に則り欲しいものは自ら掴み取ろうとする――そこで戦うものの心意気に魂を同調させるのが、バスコとの対比の形でびしっと炸裂。
 「後は彼らの、思うとおりに」
 「……ああ。やはり食えない奴らだ。ゴーカイジャー……後は任せたぞ」
 ここでは今作これまでと比べて「現場で無茶した先輩が、後進の成長を感じ取って道を譲る」ニュアンスが強調されており、下山脚本という観点で今見ると、後の『手裏剣戦隊ニンニンジャー』における『世界忍者戦ジライヤ』コラボ回への繋がりを感じるところで、もしかしすると下山さんにとって先輩-後輩ヒーローの関係性として、一番しっくり来る形だったのかもしれません。
 「マベちゃんさ~、もうちょっと空気読んでよー」
 「知るか! ケリつけてやるぜ!」
 「「「「「「ゴーカイチェンジ!!」」」」」」
 前回がドラマ重視でしんみりとした内容だった事があったのか、今回はここからBパートほぼ丸々、大人数でのど派手なバトルに突入し、デカ夫婦・マジ夫婦・リン夫婦・姫レッド・単身赴任・ズバーン、一挙投入の大盤振る舞い。銀が倒したかと思ったウルザード炎とズバーンがいきなり巨大化し、銀はドリル召喚して単独巨大戦を担当。残った5人がオーレンジャーのキーを取り出すと“大いなる力”の輝きがそこに宿り、隊長と丸尾の見守る中、流れ始める名挿入歌「虹色クリスタルスカイ」インストが、『オーレン』好きとしては痺れます。
 「「「「「超力戦隊・オーレンジャー!!」」」」」
 隊長と丸尾の見守る中、超力変身したゴーカイジャーは個人武器を振るい、イエローがヌンチャクで姫レッドの大剣をはたき落としてから、ヌンチャクを投げ捨てて高速スプラッシュイリュージョン(連続蹴り)を顔面に叩き込むのが格好いい、そして酷い。
 BGMそのまま豪獣神は巨大戦に勝利し、大爆発に背中を向けるカットに飛翔した海賊オーレンジャーの姿が重なり、巨大戦の勝利から合体攻撃――超力ダイナマイトアタックにそのまま繋ぐ、格好いい演出。
 番外キー軍団に大ダメージを与えたゴーカイジャーは、着地からオーレバズーカを発動し、どうやらこれが“大いなる力”扱いのようですが、動揺するレベルのアクション面の優遇から、オーレ!
 ここまで約3分、「虹色クリスタルスカイ」を使い切り、今回『オーレン』好きとして何がツボに入ったかといえば、『オーレン』なら主題歌よりむしろ「虹色クリスタルスカイ」! という選曲(OPが嫌いなわけではないのですが、「虹色クリスタルスカイ」は第1話のオーレッドによる戦闘員100人組み手の時点より用いられている、一番盛り上がる歌/曲なのです)。
 残った敵は、ファイナルウェーブで一掃し、今回もサリーが回収しようとした番外レンジャーキーは、この作品の猿枠は俺でしょぉぉぉぉ!! と三つ巴の戦いを一歩抜け出そうとするシルバーが、背後から不意打ちして強奪(凄く卑劣な行動に見えるのは何故だろう……)。
 「後はあいつだ!」
 鉄柱にもたれかかり、事ここに至っても余裕の表情で戦いを傍観していたバスコに視線を向けるゴーカイジャー
 「もうおまえを守るレンジャーキーはないぞ!」
 「今度こそ終わりだ、バスコ!」
 一切の躊躇無く、生身のバスコに真っ正面から唐竹割りを叩き込もうとする赤だが、ガードに入ろうとしたサリーを敢えて下がらせたバスコは、腕組みを崩さぬままに体内から噴出する真紅のオーラだけで、その斬撃を軽々と受け止める。
 「終わり? 笑わせないでよ! マベちゃん程度が、俺をなんとかできると思ってるの?」
 そのままマーベラスを吹き飛ばしたバスコの姿は、瞬く間に鬼面の怪人へと変貌。
 「マベちゃんには見せたことなかったっけねぇ……これが、アカレッドも恐れた、俺の真の姿さぁ。まさか、ガレオンでめし作ってるだけで、俺の首に300万ザギンの賞金がかけられるわけないっしょ。さーてマベちゃん、どうする?」
 番外戦士キーを手足として使っていたバスコが秘めた実力を解放し、背後ではサリーもビックリ。隊長との攻防戦でバスコの株価を上げつつ、レンジャーキーを確保したゴーカイジャーの戦力を増強して後はオーレ祭でレジェンド回らしく丸く収まるのかと思いきや、盤面をもう一度バスコがひっくり返してきたのはその姿も含めて強烈なインパクト。
 真っ先に突撃する銀だが、渾身の一突きは指二本で受け止められ、逆に腕をねじりあげられる。
 「前も思ったけど……うるさいなぁ、君は」
 『ギンガマン』編の初顔合わせの時、如何にも相性の悪そうなバスコが、鎧に関して完全ノーコメントだったのが物足りなく感じていたのですが、やはり嫌いだった事が補強されて、良い目配りでした(笑)
 真紅のオーラを流し込まれたシルバーは一瞬で戦闘不能となり、5人の放ったファイナルウェーブを片手で弾き返したバスコが疾風のごとく走り抜けると――
 「バスコ、てめぇ……!」
 「もう終わってるけど」
 「なに?」
 目に留める事もかなわぬ攻撃を受けたゴーカイジャーは、執念で意識を保ったマーベラスを残し、全員が気絶の完敗を喫する。
 「ま、今日はもう、取るものも無くなったし、続きは今度にしよっか」
 「……それは」
 「俺が奪った、チェンジマン、マスクマン、フラッシュマンの“大いなる力”だよ」
 「なに?」
 「次に会う時は、もうちょっと増えてるかもねぇ。ま、マベちゃんも頑張って集めといてよ。俺の為にね」
 サリーを連れてバスコは悠然と海賊戦隊を見逃し、マーベラスの絶叫が響き渡って、つづく。
 残り話数と登場予定レジェンドの数が詰まってきたのか、実質バスコ回をレジェンド回でやる、というかなりの離れ業でしたが、上述したように、マーベラスの宿敵であるバスコを脅威として引き立てる為に、それにふさわしい壁として攻防戦を繰り広げた事でヒーローの矜持を見せつけてくれて、隊長ファンとしては満足度の高い一編でした。
 香村脚本以外では初登場となったバスコですが、限られた出番ながら役者さんとキャラのシンクロ度が高く、下山さんもしっかりキャラを掴んでくれていたようで、大変いやらしい台詞と表情の数々で、実に素晴らしいバスコぶり。
 軍人の戦いを貫く隊長と丸尾、命がけの作戦を凌駕するバスコ、自らの流儀で道を切り拓いてく海賊たち、それぞれのバランスに、豪華ダブルキャストの役割分担も巧くはまり、下山さんが大変いい仕事。隊長補正がだいぶ働いているので、冷静に評価できている気は我ながらしませんが、これまで見た下山脚本回の中では、トップクラスの評価。
 難を言えば、追加戦士にあたるキングレンジャーがまるっきり無視された事ですが、キングレンジャーを出すと“大いなる力”がキングピラミッダー召喚とかになりかねないので、スルーして良かったかな、と(笑)
 ……放映当時は、今回の視聴をきっかけに、ここまで真剣に過去ヒーローを尊重してくれていたのか! と食わず嫌いから視線を一変させて『ゴーカイジャー』を見始める事になるのですが、10年越しに改めてここに辿り着いてみると、レジェンドへのスポット、アクション面の充実、そして私好みの悪役活躍回、とかなり絶妙のタイミングだったのかもしれません。
 そして結果的には、00年代戦隊や『ライブマン』を履修した上で、最初から視聴できて良かったと思うところです。
 ところで、前回が80年代曽田戦隊テーゼにフォーカスした『ライブマン』回で、今回が、鈴木武幸・上原正三・曽田博久・井上敏樹杉村升・東條昭平・長石多可男が一堂に会し、80年代戦隊的なるものに一つの区切りを付けシリーズの一つの節目と言える『オーレン』回だったのは、意識があったのか、はたまた偶然の産物だったのか、ちょっと気になるところです。
 怒濤のレジェンド回ラッシュは衝撃の敗北で一段落し、次回――ドンさんの博士スキルが遂に火を噴く?!