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甘くて苦いマシュマロな日々

『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第16話

◆エピソード16「マシュマロワイアル」◆ (監督:竹本昇 脚本:井上テテ)
 ビーム一閃で人間をマシュマロに変えてしまう、割と凶悪な邪面師が出現。
 「さあマダムたち。美しくおなりなさーい!」
 被り物+全身タイツ&マント、という基本設計を実に縦横無尽に駆使している今作の怪人デザインですが、マシュマロヘッド+中年太り体型という強烈な飛び道具が放たれ、こんな、見せ方があったとは……!
 見る側の既成概念を破壊して面白さへ変えてくる、素晴らしいアイデアでした(笑)
 「そー! ナイスツッコミ~!」
 軽快にぷにぷにとステップを踏むマシュマロ邪面の目的は、中高年のマダムたちをマシュマロに変え、地球遊山でマシュマロを大変気に入ったクランチュラに捧げる事。
 「地球でかっぱらってきたこのマシュマロとかいうもの、マジうまーい」
 強盗行為の発覚したクランチュラ(普通に、現地通貨で購入してきたつもりになっていましたが、それはそうですね……)、邪面師が集めている人間マシュマロも楽しみにしており、ともすると忘れそうになる悪としての酷薄さや残忍さを今回は強調。
 そこに飛んでくる宝路だが、巨大マシュマロを見るや、口と目を大きく開いて硬直。6人揃ったところで変身してフル名乗りを決めるキラメイジャーだが、宝路はチェンジもせずに足下を見つめて引き続き硬直。
 「おい! どうした貫きシャイニーング?!」
 「とりあえず!」
 割とマイペースなレッドが揃い踏みは最後までやりきり、キラメキポーズを決める5人の中に、虚ろな表情で何かをぼそぼそと呟きながら立ち尽くす宝路が混ざったいわくいいがたい絵面となり、色々とやってきます(笑)
 ……なお、クリスタリア宝路さんにとっては、本邦2回目の揃い踏みだった模様。
 「かかってきなさーい」
 余裕を見せるマシュマロ邪面は、バレットもソードも跳ね返す、弾力系。
 「言うこと聞かない、マシュマロボディーーーーー!」
 定番の打撃無効体質ですが、バスターさえ弾き返してキラメイジャーを大爆発に飲み込み……こいつ、普通に強いぞ(笑)
 完敗を喫したキラメイジャーはマシュマロの逃走を許し、戦闘そっちのけで未だ硬直したままの宝路に近付く瀬奈。
 「マシュマロは……俺の、心の傷なんだ……」
 「はぁ?」
 中学生みたいな事を言い出す宝路は、30数年前(やはりなんか微妙に濁す)、高校生の時にワンダー両思いだった女子・池松秋保からバレンタインチョコを貰うが、同級生にからかわれて照れ隠しに「俺が優しくしてやったから勘違い」「こんなチョコいらない」と口走ってしまったところを秋保に聞かれて深く傷付けてしまい、それを若者たちの間で全部バラす弟、だいぶ酷い。
 「うっわーーー、最っ低」
 女帝の言葉に、力強く頷く姫様(笑)
 ホワイトデーにマシュマロを渡して謝ろうとしていた宝路だが、その前日にモンストーン事件が起きて地球から連れ去られる事となり、秋保に謝る事さえ出来ずに時は流れ……想像以上に辛い過去でした。
 「それから30年経っちゃったーと」
 「30年……二人を距てた過ちの溝かー」
 もろもろ不明瞭に濁している要素が多いので大雑把な推測ですが、宝路がこれだけ心にかかる事があったにも拘わらずクリスタリアに残ったのは、もしかして、モンストーン融合→緊急手術から、覚醒までの間に10~20年ぐらい経過している?
 モンストーン制御の為に体内に組み込んだキラメイストーンが肉体と馴染むまで、一種のコールドスリープ状態にあったと考えると、
 ●目覚めた時点で地球時間が経過しすぎて帰還を諦めた
 ●責任を感じたオラディンが養子の立場を与えた
 ●老化が遅いのは確かだが、30数年まるまる肉体時間が経過していたわけでもない
 ●例えば15年後に目覚めた時にマブシーナ5歳ぐらいと出会ったとすれば、姫様の年齢は地球換算でも20前後
 ●年の離れた義兄と自然と仲良くなっていく流れが想定しやすい年齢と関係性
 ●異文明暮らしに加えて実働時間が十数年ならば、精神年齢も30程度
 と、幾つかの問題がそこそこ納得できるところに収まりそうな。
 「んー、ロマンチック」
 「そうですか?!」
 姫様@少女マンガソムリエは、大変ご不満です。
 秋保は今はヴァイオリニストとして活躍しており、動揺を隠せない宝路に「今からでもマシュマロ持って謝りにいきなよ」と勧める瀬奈がマシュマロを作ろうと言い出すと、打倒マシュマロ邪面の攻略法が見つかるかも、と乗っかる為朝。
 お宝探しに行く事を主張する宝路だが、瀬奈が強引に宝路のチェンジャーを外すと小夜にパスし、桃と青が宝探し要員となって、シャイニーブレイカー!
 大事な手帳と装備一式(変身もできない……)を預けてしまうのは宝路の宝探しへの執着を薄めてしまって強引になりすぎましたが、お風呂回辺りからなんとなく、「なるべくキャラクターを一箇所に集めすぎない」事を意識している節が伺え、新型コロナ下の対応策の一環として、致し方ない部分でありましょうか。
 「まずは一回作ってみて、攻略法を検証しよう」
 ココナツベースでは赤黄緑姫がマシュマロ作りを始め、瀬奈はかたくなに輪に加わろうとしない宝路を引きずり込もうとし、30年物の心のしこりに我が物顔でズカズカ踏み込んで荒らし回る瀬奈がけっこう酷いのですが、若き宝路の過ちが言い訳の余地なく「最っ低」な上に一人では全く解決できそうにないので、「誰かが引きずってでも謝らせる」のが、例えその結果が横っ面に往復ビンタだったとしても(宝路というよりもゲストにとって)プラスに見えるのは、悪くない組み立て。
 また、これが見た目にも年月を重ねたリアル中年男性(例えば博多南さん)だったら、どうしても感じの悪さが強くなったと思うのですが、良くも悪くも宝路の外見に年月の積み重ねが見えない事で印象が緩和されるのも、巧い方向に転がりました。
 「この質感をどう攻略するかだなぁ」
 そしてひたすら真剣に、マシュマロ作りながら邪面師への対抗策を検討する男・為朝。
 なにはともあれマシュマロは完成し、嫌がる宝路にラッピングしたマシュマロを持たせる瀬奈だが、よりによって秋保がコンサート中のホール付近にマシュマロ邪面が出現。間違って冷凍庫に入れたマシュマロの素を見て何かを閃いた為朝を残して赤緑銀はホールへと向かい、新たなキラメイストーンを掘り出した青桃と合流。
 「マシュマロにおなりなさーい! 不安定な世の中、安定しているのはマダムの体重だけ」
 必要以上に世間を敵に回すマシュマロ邪面から市民を逃すキラメイジャーは、ホールから脱出する秋保の姿を目撃し、宝路を強引に引きずっていく瀬奈。残り3人はマシュマロ拳法に苦戦するが、対抗策を手にした黄が駆け付け、マシュマロボディを凍らせる凍結弾を放ってチェックメイト
 ところが闇エナジーの蓄積により強化ミサイル怪獣が出現してミサイルを撒き散らし、攻撃を受けた赤黄青桃は変身解除。瀬奈と宝路にも危機が迫るが、充瑠がひらめキーングして掘り立てほやほやのキラメイストーンが魔進マゼラン(ミキサー車)へと姿を変え、コンクリートを放出してミサイルの発射を妨害するボウケンスピリッツ。
 これで5体目のヤングキラメイストーンが魔進化し、重機トリオ発掘の際に「若く不安定なのでまだ魔進にしちゃ駄目」と言及されただけに、(緊急事態だったとはいえ)続けての増産にしっぺ返しが来ないか気になるところですが、いずれ「おまえ達、ヨドンヘイムはいいぞ。ヨドン軍に来れば、おまえ達に、毎週の出番を与えてやろう!」「ガルザ様、最高です!」と、謀反とか起きないか心配です(笑)
 充瑠たちは再びチェンジし、あくまでマシュマロにこだわる瀬奈。
 「あのね、やり残した事をやり切らなきゃ、あんたの心はいつまでも先に進めないでしょ。そんなブレーキかけてたら、全速力なんて出せないじゃん」
 「おまえ……そこまで俺の事を思って……」
 「思ってないよ」
 「えぇ?!」
 「宝路さん、あたし達と一緒に戦うって決めたんでしょ? だったら、あんたが全力を出せないのは、キラメイジャーの問題って事なの。……だから、結局はあたしの問題なの」
 第2話における、それぞれがキラキラする為に仲間が居るのがキラメイジャー、というキラメイジャーの在り方を踏まえて瀬奈が宝路にトスを送る形にまとめつつ、意訳するとつまり、「心の傷とか言いながらうじうじしている奴がメンバーに居るとイライラする」突撃ライトニングぶりは、瀬奈らしくて納得(笑)
 「……そういう事か。おまえ、気に入ったぜ」
 それを、あんたの為にやってるわけじゃないから恩に着る必要はナッシング、という事にしてくれているみたいに多分なんかいい感じに解釈した宝路はようやく前向きになり、赤黄青桃を苦しめるマシュマロ邪面との戦いを請け負うと、キラメイチェンジ。残り5人はキラメイジンで邪面獣を担当する同時進行の変則バトルとなり、宝路の変身時に背後で瀬奈も同時変身するのが、心の繋がりを映像で見せる格好いい演出で、こういった奥行きの使い方はなんとなく竹本監督の好みを感じます。
 ミサイル攻撃に苦戦するキラメイジンは再びひらめキングでマゼランを銃にして飛び道具で対抗し、“既に充瑠の中に何かが入っている”という仮説を前提にすると、ひらめキングの度に白い石の煌めきのようなカットが入るのが大変不穏。
 全ての魔進のデザインは外部から予定通りに与えられたインスピレーションであって充瑠個人は何者でもなく、それが発覚して抜け殻と化した充瑠が教室の片隅でスケッチブックに向かい虚ろな瞳で「大きな光が、飛んだり跳ねたりしている……あはは……大きい! マシュマロかな? いや違う、違うな。マシュマロはもっと、ばぁーって動くもんな!」と呟きながらペンを動かしているようだけどその手には木の枝しか握られていない……みたいなシーンが今後あるのかもしれないと思うと、大変ドキドキしますね!!
 キラメイジンは横走りでの連射からフルブラストを炸裂させ、マシュマロ邪面には突き刺さるシャイニングビーム。
 「ぎやぁぁぁ! ひとこと多かったことを、心からお詫び申し上げましゅーーー!!」
 ちゃんと、謝った(笑)
 マシュマロにされた人々は元に戻り、宝路は無事に秋保にマシュマロを渡して謝罪。その光景を微笑ましく見つめる瀬奈について、結局、一周回って自分がスッキリしたかっただけ? と仲間達は顔を寄せ合い、あの笑顔はそれだけでない筈、と口にする充瑠がいつも以上にやたらと舌足らずなのは、部分的アフレコ導入説を裏付けるような(笑)
 宝路の見た目の若さに関しては強引に誤魔化し、昭和の男の過去を紐解く事でジェネレーションギャップを掘り下げるのかと思ったら全くそんな事が無かったのは肩すかしでしたが、下手につつくと色々と厄介なので、基本的には触れない方向性で行くのでしょうか。
 リセットボタン回に続いて2回目の登板となった井上さん、抜けて面白かったわけではないですが、基本的に今作、邪面師が面白ければなんとかなるという作品のスタイルが確立しつつあるのは強い。
 次回――だいぶ引っ張っる形になったドリルロボ、いよいよ登場。宝路初登場回から数えて、小夜-充瑠-時雨-瀬奈-為朝、と順々に絡めて宝路が「一人では解決できない問題」を解決に導いた末に、満を持しての新ロボ登場、と考えると、割とオーソドックスな構成ではありましょうか。とすると、その後に(本来は夏休み前に片付ける筈だった)一山が来そうですが、そろそろ充瑠とファイヤーに焦点を合わせてほしいところですが、さて。