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「知っているか!」を知っているか?!

『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第15話

◆エピソード15「きけ、宝路の声」◆ (監督:竹本昇 脚本:金子香緒里)
 「今のはおまえの仕業か! ダルマさんが転んだ邪面!」
 「ふふ、そのとーり。……て、誰が邪面師だーーー!!」
 まさか、敵幹部との初顔合わせが、ダルマさんが転んだの真っ最中になるとは。
 しゃいにーん、しゃいにーん、騒がしいのも居るし、これはまさか、東映内部に根強く存在するという(根拠の無い推測です)『超光戦士シャンゼリオン』派の策謀なのか……(1996年に、悪のライバルキャラとの明確な初対決回のサブタイトルが「ダルマさん転んだ」という、変な特撮ヒーロー番組がありまして……大好きな作品なんですが(笑))。
 エピソードは劇中劇で始まり、割と素っ頓狂なお仕事もしている、人気イケメンアクション俳優……だった気がする押切時雨さん24歳。
 「この役、女性に配慮できないところは時雨くんに合ってる」
 「失敬な。俺はけっこう気がつく男だぞ」
 ……まあ、キラメイ男性陣は外面はともかく、身内へのデリカシーは低めですよね……。個人的には、時雨は百人一首邪面を前にかるたクイーンの前に立った(直後にクイーンのヒーロー度が高すぎて無効化された)シーンが印象的なので、ト音記号のおじさん回のようなやらかしもするが目配りそのものはある認識ですが、小夜的には、不用意に人のプライバシーに触れようとする子は、次にやったら磔獄門よ、といった感じではありましょうか。
 一緒に時雨主演のドラマを見るなど、キラメイメンバーとはだいぶ打ち解けた様子の宝路だが、マブシーナとは引き続き冷戦状態。会話を試みるもすげなく拒絶された宝路は、心での念話を試みてみる事に。
 「石たちが、キラメンタルを察知できるように、マブシーナと俺も、昔はテレパシーでやり取りが出来たんだ。俺の体の中には、キラメイストーンが入ってるからな」
 うーん……なんか、充瑠の中にキラメイストーン(的な何か)入っているの、ほぼ確定っぽい……?
 「口では言えない事も、心でなら言えるんじゃないかな」
 日曜朝のお茶の間にはお届けしにくい罵声とかですかね……。
 なんだか根本的なところで、可憐で愛らしい小さなマブシーナ幻想を抱きっぱなしの感がある宝路お兄さんですが、とりあえず、地球人換算でも思春期は迎えているであろう妹と心と心で会話をしようとする発想の時点で、戦隊ダメンズの系譜への、確かな連なりを感じます。
 地球の法が許しても、キラメイジャーの女帝が許さないぞ!
 どう見ても宝路の呼びかけが鬱陶しかったのか、外に出たマブシーナ(もはやすっかり普通に外出していますが、それでいいのでしょうか)だが、何故か道ばたに転がっていたダルマを拾ったところ、なんとクランチュラと遭遇。
 「丁度いい。私と一緒に遊ぼうか?」
 時々、忘れそうになりますが、クランチュラさんがちゃんと悪そうだ(笑)
 そんな事態になっているとは露知らず、撮影(劇中劇である事を明確にする為か奇矯なやり取りが続くのですが、何か元ネタがあったのでしょうか……?)に向かう時雨だが、お宝を探す宝路が現場に現れて一騒動。一方、ヨドン反応を探す充瑠たちは立ち尽くすマブシーナを見つけて駆け寄った事で、クランチュラの作り出していた結界の中に閉じ込められてしまう。
 「私は、ヨドンヘイムの大幹部。邪面使いの、クランチュラ様だ」
 15話にして初の直接の顔合わせとなり、マントを翻し、それっぽいポーズを取るクランチュラは、変身しようとしたキラメイジャーにストップ。
 「待てぃ! 戦うならゲームで勝負だ。私のモットーは、地球文明によって地球を侵略する、だからな」
 「ゲームって……今の、ダルマさんが転んだ、の事?」
 「おお、知っているか!」
 かくしてキラメイジャーは、やたら嬉しそうなクランチュラの作り出した脱出不能のゲーム空間で、敗者や逃亡者はダルマに変えられてしまう闇のゲーム、地獄ダルマさんが転んだに強制参加させられる羽目に。
 はじめのい~っぽ直後にクラウチングスタートから瀬奈がダッシュ→変身して加速、で一撃で勝負を決めに行くキラメイジャーだが、あまりの早さにブレーキが利かず、緑色、アウト。
 ……凄いぞ! 瞬殺したぞ!!(笑)
 「怯むな、第二作戦に移るぞ」
 為朝がすかさずメンバーを引き締め、地獄ラグビーや地獄百人一首に連なる一見ふざけているようで本人たちは極めて真面目な侵略スタイル・“走る”アクション・しっかり作戦を立てる為朝、と、どこまででが脚本ベースかはわかりませんが、初登板となった金子さんが、ここまでの『キラメイジャー』をしっかり研究しているのが見えるシナリオ。
 「飛び道具禁止のルールは無かったよな!」
 クランチュラがルールに則り後ろを向いた隙に、今度は一斉変身をするや否や背後から銃殺を図るキラメイジャーだが、クランチュラは迫り来るキラメイバレットを振り向きもしないままあっさりと杖ではじき返し、それをよけた際に体勢を崩した桃色がアウトとなって、凄い! 凄いよ大幹部!!(予想を超える大活躍ぶりに、ちょっとテンションがおかしくなっております(笑))
 奇襲作戦が連続で不発に終わり、地味に距離を詰めていった赤黄も戦闘員のせこい横槍に引っかかってアウトとなった頃、青銀は宝路が掘り出してしまったモンストーンをなんとか撃破し、宝路は撃破後に残された小さな結晶を回収。
 「……そんな顔するな。責められるのはマブシーナからだけで十分だ」
 まだなんか隠し事しているな……? という視線に気が咎めた様子の宝路に対し、役作りの為に、と称してマブシーナとの関係について問う時雨。
 「違いなんて関係ない。マブシーナとは、自然と仲良くなってたよ。幼い頃は、俺を見るなりすっ飛んできたもんだ」
 回想に入った宝路は、毎朝マブシーナの髪を結うのが日課だったと語り、厳密な年齢差とクリスタリア感覚はわかりませんが、年の離れた妹というより、実質娘で、やはり宝路のマブシーナ観はこの時期のイメージで止まっているのでは(笑)
 「だが、あの時からすっかり嫌われてしまった……」
 愚痴が完全に、娘との距離感を見失った父親です。
 そんな宝路に“気がつく男”として助言しようとする時雨だが、共演者の唇の荒れをチェックしているような軟弱男のアドバイスはいらん、とばっさり拒否され、時雨の顔がまた面白くなったところで入る博多南からの緊急通信。
 今回かなり満足いく出来だったのですが、ダルマさんが転んだ組がマブシーナ一人になるまで博多南が青銀に救援を求めないのは、話の都合が出過ぎてしまった感。それぞれの煌めきを大切にするキラメイジャーのスタイルが悪い方向に出てしまったとはいえますが、少し悠長に構えすぎたな、と。
 救援要請→モンストーンと戦闘中→撃破後に急ぐが残りはマブシーナだけに、なら自然でしたが、兄妹の回想シーンの入れどころが難しかったでしょうか。
 現場へ駆け付けた時雨と宝路は闇のゲームに挑むマブシーナの姿を目にするが、直後、闖入者を嫌がったクランチュラがバリアを強化した事により、漆黒の壁に阻まれて内部の様子が一切わからなくなってしまう。
 「さあ姫、おまえと私の、根比べだ。ひっひっひっひっひ」
 シャイニングビームでも打ち破れないバリアだが、地下20mまでしか伸びていない事がわかり、ドリジャンで掘り進んで不意打ち作戦が提案されるが、それではクランチュラともども姫様も巻き込んでしまう……と、前回今回のシルバーの範囲攻撃癖が、映像によるわかりやすい伏線として機能。
 「マブシーナに作戦を伝える手段があれば……」
 「テレパシーさえ通じればな!」
 「…………そういえばあの時、なんて送ったんだ?」
 時雨の問いにより、宝路はお兄様が慕われていた頃の美しい思い出を一方的に送信していた事が発覚し……もう完全に、娘が幼稚園児だった頃の写真をずっと定期入れに挟んでいるお父さん状態ですが、姫様は後で、トップロープからのエルボードロップぐらいまでは決めても良いのではないでしょうか。
 「……いつものお願い……そのテレパシー、通じてたぞ!」
 返信が無かった事に気落ちしていた宝路だが、何かに気付いた時雨はテレパシーが通じていたと請け負い、シルバーはテレパシーで作戦を説明し続けながら、地面を掘り進んでドリジャンで突撃を敢行。
 一方、結界内部ではひたすら正攻法でマブシーナがダルマさんが転んだを続けており、今回の戦闘員は紳士なので、赤黄はともかく、姫様の脇腹をくすぐったりはしませんでした!
 (マブシーナ! そこから離れろ!)
 シルバー必死の叫びにも返答せず、一歩一歩、クランチュラに距離を詰めていくマブシーナ。
 「おい時雨!」
 「信じろ!!」
 (マブシーナーー!!)
 足下には巨大ドリルが迫る中、いよいよタッチ目前まで近付いたマブシーナが手を伸ばしたのは、クランチュラの背中……ではなく、ダルマの詰まったバケツ。マブシーナはバケツを抱えると一目散にその場を離れ、アウトを宣言しようとした直後、ドリルの直撃を受けるクランチュラ。
 テレパシーは通じているのか? 通じていないのか? については判りやすいミスディレクションの上で、では何故マブシーナがダルマさんが転んだを続けていたのかというと、それは宝路たちが気付いていないダルマ回収の為であり、その成功により、かつてヨドンヘイムの侵攻に対して何も出来ないまま祖国を失ったマブシーナが、クランチュラから地球の人々を救ってみせる、この接続は実にお見事。
 そして、戦隊メンバーによる未曾有の大虐殺の危機も、寸前で回避されました!
 ドリルが直撃したクランチュラは結界の天井にぶつかり(これにより結界が崩壊)、跳ね返って地面に転がった所に姫様がタッチする事でダルマとなった人々も解放され、宝路が時雨とマブシーナを信じ、マブシーナが宝路を信じたからこその逆転劇で、姫様・大金星。
 宝路と時雨も合流し、マブシーナが髪を三つ編みにしていた事から、宝路のテレパシーにより昔が懐かしくなったのでは……と時雨が推測の根拠を明かし、まあ、姫様も大概、ブラコンですよね……。
 「さすが、けっこう気がつく男」
 「だろ!」
 時雨は胸を張り、前回の今回で、「なんでも一人で出来ると思っていた」宝路が、軟弱男と罵った「時雨の観察力」に救われる、のも巧くまとまりました。ストイックすぎてたまに奇人に見える事があるものの、役者としての貪欲さゆえに対人観察を欠かさない時雨ならでは、というのも納得。
 クランチュラはしっかり溜まっていた闇エナジーで輪投げ怪獣を呼び出すと、ひょこっと撤収(なんで、敵幹部の瞬間退場のSEが可愛いんですかね……)。挿入歌に乗せてキラメイジンが登場し、ダストン吸引からダイナミックでワンダービクトリー。
 「自ら出向いて見てきた地球はどうだった?」
 「ふふふ、面白いものが沢山あったぞ。ひひ、地球を苦しめる、沢山のアイデアが浮かんだぞー」
 クランチュラは地球のお土産を詰め込んだ頭陀袋からマシュマロを取り出すと頬張り、どうしてわざわざクランチュラが出馬したのかについても、説得力のある形で着地しました。
 ……それにしてもクランチュラ、シャイニングビームでも砕けないバリアを張る・キラメイバレットによる不意打ちを完全防御・足下からドリジャンの突撃を受けてもさしたるダメージ無し、と地味に滅茶苦茶強いのですが、このクランチュラを追い詰めていたオラディン、何者。
 後ちょっと気になるところでは、クリスタリア侵攻に関してはモットーにこだわっている様子が無かった事ですが、描かれていないところでクリスタリア怪獣が暴れていたのか、それとも内通者(=クリスタリア文明そのもの)が居るからOKの扱いだったのか、或いは……クリスタリアには、クランチュラがモチーフにしたいような文化的要素が存在しなかったのか。
 恐らく、掘り下げにはいかない部分かとは思うのですが、想像を形にしてアウトプットする事が可能なのがオラディン(&ガルザ)しか居なかったクリスタリア、王族以外がどんな生命形態だったのか気になるところですが、現在の私脳内だと、国民はヤドカリに似た鉱石生物のイメージ(ガス状生命体とかでもいいですけど)。
 ココナツタワーでは。地獄ダルマさんが転んだを攻略した兄妹が仲直り……と思いきや、憤懣やるかたない調子で姿を見せたマブシーナが、宝路を一喝。
 「お兄様! よくよく考えたら、あの頃は可愛かった、なんてとっても、失礼です!!」
 慌てて弁解する宝路に背を向けるマブシーナだが、微かな鈴の音のような笑い声がサロンには響き、怒ってはみせたがそれも含めてどうやら軟化傾向。
 「二人の間には、深い結びつきがある事を、お互い再確認できた。今はそれだけでも良しとしよう」
 あ、アニキが、初めて格好良く締めた?! で、つづく。
 あまりギスギスした雰囲気を続けたくなかったのか、宝路とマブシーナの関係は、結局のところ互いに大好き兄妹として早めに落ち着かせてきましたが、年の離れた仲良し兄妹の交友とすれ違いを、“年頃の娘との接し方に悩める宝路お父さん(と受け止める事も可能な形)”に落とし込んだのは、宝路実年齢問題の消化として鮮やかなアイデアでした。
 金子さんは戦隊初参加となった『ルパパト』において、大筋の繋ぎ回や総集編をこなした後、第36話「爆弾を撃て」で90点の答案を出してきたのは伊達ではなく、よく見えているな、という印象。
 一方、「お宝求めて遊び歩いている内に国が滅びた(と思われている)」問題は横たわっており、この根本的な解決を見ない内にあまり和まれると亡国クリスタリアへの想いが軽くなってしまうので、注意すべき地雷を一つ設置する事にはなりましたが、宝路が自身の目的を明らかにするまで解決しそうにないので、裏を返すと、最低でも次?の一山までは引っ張られそうな雰囲気でしょうか。
 次回――さっそく活用されるマシュマロ! から昭和の男の過去に迫ってくれるようで、宝路の、地球人としては時代から切り離されてしまった部分にスポットを当ててくれるなら、現在の人格が咀嚼しやすくなりそうな点を含めて、期待したいところです。