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一か八か忍びの疾風 君を導く

海賊戦隊ゴーカイジャー』感想・第26話

◆第26話「シュシュッと THE SPECIAL」◆ (監督:加藤弘之 脚本:荒川稔久

 ――「風吹き荒れて嵐呼ぶ、雲引き裂いていかづち迅る。疾風(かぜ)と迅雷(いかずち)ひとつになりて、天下御免の三日月頭、轟雷旋風神、推参!」

 「もういいよ、ありがとう」
 「今は、わたくし達が対立している時ではありません」
 ハカセとアイムはハリケンジャーにキーを預ける事を選択し、ここでハカセが、大好きなスーパー戦隊のヒーロー達に異議を唱えてでも、鎧が海賊たちの“これまで”を認めてくれた事に対して感謝を述べるのは、凄く良かったです(同時にドンさんの、鎧への気遣いも見て取れる)。
 「ビックリにされた方々と一緒に、マーベラスさん達も助けて下さい。お願いします」
 「ついでに、マーベラス達のことをちゃんと見て、どんな奴らか、確かめてきてください」
 「いいのか? 逆に返す気がなくなるかもしれないぞ」
 「心配要りません。その時は――力尽くで取り戻します」
 アイムの強く真っ直ぐな眼差しに、歴戦のニンジャたちが一瞬息を呑むのが、大変いいリアクション。
 緊急事態とはいえ海賊が過去ヒーローにキーを返却する掟破りの展開となりましたが、ちゃんと見て貰えればわかるというマーベラスたちへの信頼感のみならず、それが不条理だと感じればその時は力尽くでも取り戻してみせる海賊の流儀を告げた上で、ここまでの様々な出会い――話し合いならぬ果たし合いとか、交渉という名の脅迫とか、罪悪感皆無の不法侵入とかありましたが――を経て、そうそう無碍なことをする人達ではない、と“海賊からスーパー戦隊への信用”が織り込まれているのが、鮮やか。
 特に、いくらハカセとアイム(交渉の余地有り&自分の力にそこまでの自信がない)でも、最後の一点が無ければここまで思い切った事はしなかったと思われるので、そこに、海賊達と地球の半年分の積み重ねが反映されているのは、折り返し地点の一山としてお見事でした。
 一方、ボキ空間に囚われたマベルカジョーは、『象印クイズ ヒントでピント』ならぬ、『ボキ印クイズ ヒントでピピッと!!』の会場で強制着座。
 「だーっはっはっはははは! ようこそぉ! 僕の愉快なクイズ空間へ。これから出すクイズに正解すれば、なーんとなんと、もれなく、この異空間から脱出のチャーンス!」
 「ふっ、やってやろうじゃねえか」
 本日も無駄に自信たっぷりなマベちゃん、君が、一番、駄目そうなんだけどな!!(まあインチキクイズだろうとはいえ)
 「じゃあ、確かめさせてもらうよ」
 鷹介たちはキーを手にしてハリケンジャーの力を取り戻すと超忍法開け胡麻で異空間への扉を開き、凄いぞ忍法!
 「……大丈夫、ですよね」
 「決まってるじゃん。安心して待ってればいいんだよ」
 ハカセはいい笑顔を浮かべ、マーベラスらに強い信頼を抱くハカセと、海賊とスーパー戦隊の間で揺れ動く鎧の心情も織り込まれるが、そこへ殿下命令で残りメンバーをいたぶる為に、バリゾーグとインサーン率いるザンギャック部隊が登場し、残りメンバーも交戦を余儀なくされる事に。
 その頃、クイズ空間に入り込んだハリケンジャーが見たのは、クイズに一切答えようとせず、黙々と罰ゲームを受け続ける海賊達。
 「あいつら、あんな簡単なクイズもわかんねぇのかよ」
 「確かに。せめて答える努力はしなきゃ駄目よね!」
 「確かめるまでもなかったかな……」
 海賊達の投げやりぶりに落胆し、もういい物理で解決だ! と乗り込むハリケン3人だが、実はサタラクラは大量のビックリを人質に取っており、それに動揺した隙を突かれて海賊たち同様に囚われの身になってしまう事に。
 「正解したらあのくす玉が、ビックリもろとも爆発する仕掛けだったなんて」
 「……じゃあ、あなたたちが答えなかったのは、万が一にも、ビックリにされた人達に、被害が及ばないように?」
 「……関係ない。どうせなんと答えたって、奴は正解にはしねぇよ」
 意地悪クイズの類はしつこくやってもあまり面白くならないので、早々に海賊たちが“答えず耐える姿を見せる”シーンに切り替えたのは正解だったと思いますが、雑なようで頭の回るところも見せ、先輩たちは約10年前の事を思い出しているのかいないのか(笑)
 「そんなクイズ、考えるのも面倒だしな」
 「そうそう」
 「……ははっ、はははっ」
 海賊たちの真意を知った鷹介は、マベに近寄ると、頭突きを一発。
 「やるじゃねぇかおまえ。口が悪いわ生意気だわ、気に入らねぇとこばっかだけど。よし、俺たちが助けてやる」
 ハリケン3人組は機転を効かせるとサタラクラに逆にクイズを出し、連続正解で調子に乗ったサタラクラに「ピンポーン」と言わせる事でクイズ忍法を打ち破ると、ビックリを回収して異空間からの脱出にも成功。
 逆境の克服を過去ヒーローが行ってしまう、今作が慎重に扱ってきたバランスからするとかなり掟破りの展開で、マベ達が感嘆するばかりになってしまったのは不満があり、せめて、耐えていたマベ達が逆転の機会を窺っていた要素は描いて欲しかった部分。
 総体としては、マベ達は外に残した仲間達を信じて耐えており、外のメンバーはマベ達を信じるからこそハリケンジャーにキーを渡して送り込んだ、という構図ではあるのですが、ハリケンジャーをフィーチャーするあまり、海賊戦隊の信頼関係が言わずともわかる部分として省略しすぎたかなと。
 マーベラスたちが“何故、罰ゲームに耐えていられるのか?”を明示した方が「やるじゃねぇかおまえ」への接続も説得力を増したように思え、銃身を短く詰めすぎて飛距離が出なかった印象。
 「いかがでしたか? マーベラスさん達は」
 「……むかつく奴らだった」
 「え?」
 「けど、悪くないと思った」
 直接、海賊たちと向き合ったニンジャたちはゴーカイジャーを認め、バリゾーグ・インサーン・サタラクラ・戦闘員……ズラリと揃ったザンギャックと対峙する二組のヒーロー。
 「今度は9人でやらねぇか?」
 「いいぜ! ニンジャと海賊の豪快コラボだ!」
 ゴーカイチェンジに続き、忍風シノビチェンジからハリケンジャーフル名乗りver.2011の大サービスで……先輩、名乗り、長いぜ。
 「今日は特別だからな」
 「ああ。いつもより」
 「「シュシュッと行くぜ!!」」
 W赤が声を揃え、サブタイトルに「THE SPECIAL」と銘打たれているように、今回はゴーカイの一編という以上に、W戦隊コラボスペシャルな構造である事が明確にされ、「劇場版仕様だったゴセイジャー編を、今一度ハリケンジャー編としてTVサイズに落とし込んだ(事でレンジャーキーと過去ヒーローの関係を本編に取り込み直した)」とも、いえましょうか。
 「覚悟、覚悟、覚悟しろ!」
 W赤・青緑銀獅子・黄桃海豚、に分かれて多彩なコラボバトルが展開し、改めて今作、「バトル」を主題に置いているのが、特殊な構造。
 勿論、シリーズいずれの戦隊も戦闘シーンに様々な工夫を凝らしていますし、前回-今回は特に、レジェンド回&武装強化回でそれ強調されているのはありますが、今作の場合、見せ場としての戦闘シーン以上に、戦隊シリーズにおける魅力の一つとしてのバトル」を、どう描き、どう見せるのか、が作品における重要なテーマになっている気がします。
 ちょうど今、「バトル」と「ドラマ」のバランスを模索し、「毎回の主題歌バトル」から、如何にしてバトル以外の部分でも面白さを見せ、その上で劇的にバトルと繋げるのか、を色々な形で試している80年代中盤~後半の戦隊を見てきているのもありますが、その成果を成果とした上で、「毎回の主題歌バトル」の部分をより洗練して、作品のコアとして位置づけたのが今作であり、実はそこが今作の、様々な過去作品と絡めつつも、比較的すっきりと消化しやすい理由なのかもしれません。
 若干、身も蓋もない話になりますが、根源的な快楽はどこにあるのか? を追求した面が今作にはあって、その一つの答としての「バトル」の快感、を軸にしている事を見失っていないからこそ、様々な過去作品の足跡を辿りながらも、『ゴーカイジャー』としての進む道が揺らがないのかな、と(勿論、海賊たちのキャラの魅力もあれば、過去ヒーローや過去作品のテーゼを取り込む事で物語に厚みを持たせるなど、様々な技法を巧妙に凝らしているからこそでありますが)……まだちょっと、言語化しきれていない部分なのですが、メモも兼ねて。
 懐かしの超忍法が画面狭しと炸裂し、獅子を混ぜた武器交換の結果、装備が足りなくなった緑は木の枝を振り回し、ノってきたW赤は肩車ハリケーン
 「やるじゃねぇか!」
 「あんたもな!」
 だが戦闘員を蹴散らしたW赤にはサタラクラ、残る男衆にはバリゾーグ、女性トリオにはインサーンがそれぞれ襲いかかり、インサーンがビーム鞭を操って初の直接戦闘を披露。
 女性敵幹部には定番といえる鞭系の武器ですが、ほとんどその場を動かずに、柔軟かつ素早い動きで周囲の敵を薙ぎ払うインサーンのバトルスタイルが、滅茶苦茶格好いい。
 基本は技術者、という事でか女性トリオのコンビネーション攻撃を受けたインサーンは怯んでさがるも、バリゾーグは男4人の猛攻も凌ぎきってみせ、後はサタラクラ任せと撤収。
 ここでハリケンの主題歌インストが終了し、残るサタラクラには、ゴーカイ主題歌に合わせて鷹の空駆け連続斬りと赤の疾走連続斬りが大迫力で炸裂し、最後は9人一斉攻撃で成敗バイ。ビックリは無事に人間の姿に戻り、サタラクラは殿下が巨大化。「後は俺たちに任せろ」と巨大ロボを召喚しようとしたゴーカイジャーを止めたハリケンジャーは、「忘れもんだ」とレンジャーキーを返却する。
 「頼んだぜ、伝説の後継者」
 「ああ」
 ……あ、戦闘中のテンションのまま「伝説」って言葉に反応して、なんか反射で頷いたぞ(笑)
 かくして、この星を護るために受け継がれてきた秘密の力を改めて預かった海賊たちはハリケンジャーの“大いなる力”を発動し、呼ばれて飛び出てやってきた風雷丸と合体。
 「海賊とニンジャ一つとなりて、天下御免の手裏剣装備――」
 全身のびっくり箱から手裏剣が飛び出し、ヘッドパーツもチェンジしたハリケンゴーカイオーが推参すると、手にした手裏剣でサタラクラを殴り飛ばし、最後は合体を解除した風雷丸が怒濤の分身千本ノックを浴びせてトドメを刺し、強い、強すぎるぞ、風雷丸……!(笑)
 (ゴーカイ版はモデルチェンジしているとの事で、実質的に歴代戦隊の“大いなる野球の力”が継承された天空風雷丸だと思っておけばよいのでしょうか)
 「いい汗かいたでござる」
 一仕事を片付けた風雷丸は爽やかに飛び去っていき、宇宙忍者狩りは、地球ではポピュラーなスポーツです!
 今作ここまでのセオリーを幾つか破ってきた今回ですが、ラストは過去ヒーローをガレオンへと招いての大団円シーンとなり、これも『199ヒーロー大決戦』を意識的に取り込んだ部分でしょうか。
 「いい船だな……この船でずっと宇宙を旅してきたのか」
 「……ああ」
 「この星はどうだ?」
 「気に入った。宇宙最大のお宝が……この星にあって良かったと思ってる」
 「……そうか」
 鷹介はマーベラスたちがここに至った冒険を肯定し、それに応える形でマーベラスがこの星への率直な本音を口にするのが、半年間の到達点として、大変沁みるやり取りで、一同揃って記念撮影で、つづく。
 ……ところでマベちゃん、基本が、地元に閉塞感を覚えてここじゃないどこかにでっかい夢を見ていたタイプなので、自信たっぷりに兄貴風を吹かす人に、弱い気が(笑)
 そういう点で、アカレッドのみならず、(本人は絶対認めないでしょうが)実はバスコにも割と懐いていたのでは? と妄想しているのですが、果たして二人の因縁の、ぶつかり合う先は何処か。
 次回――男前ハカセ、参上。