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この星を護る力

海賊戦隊ゴーカイジャー』感想・第25話

◆第25話「海賊とニンジャ」◆ (監督:加藤弘之 脚本:荒川稔久

 ――「人も知らず」「世も知らず」「影となりて悪を討つ」

 伊狩鎧先生のスーパー戦隊お勉強タイムにより、これまで手に入れた“大いなる力”を振り返り、各ギミックの映像を挟みつつ、いちいちポーズを決める鎧の動きがリズミカルで、物語の折り返し地点での整理として丁度良かったなと。
 劇場版も振り返って改めて「ゴセイジャーと一緒に戦っていたら認めてもらえました!」と補強して一気に11戦隊に○を付けていき……地味に外れているな、バトルフィーバー隊。あと、ボウケンジャーのように後からフォローが入るかもしれませんが、どさくさ紛れにイエローが託してしまったゴーオンジャー、直近00年代戦隊なのに現時点での扱いが悪いのは何故(笑)
 「あの時わたくしは感じました。この星はなんと多くの勇者達に愛されている星なのだろうと」
 「くぁ~~~、俺もその場所に居たかったです~」
 アカレンジャーとビッグワンの写真を舐めんばかりの鎧が身もだえしている間に、こっそり抜け出すマベルカジョー。
 それに気付かぬまま鎧の講義は続き、残る“大いなる力”は12……バスコも居ますし、そんな構成になるとは思えないものの、気がつくと残り2話に一つのペースで集まる事になっていて、ここに来て存在感を激しく増す、黒十字王(笑)
 一方、ザンギャックには新たな行動隊長として宇宙忍者jr.コンビが赴任し、先代が暗黒七本槍の七本目らしきサメ忍者はクワトロ(CV:池田秀一)なの?! という未来を垣間見つつ、「jr.」の名に、「火忍・チャンカンフーの息子」とか「獣忍・マクンバの兄」とか、世界忍者の文脈を見るのでありました。
 そして、サタラクラjr.にお姫様抱っこからのセクハラを受けるも、手の中を抜け出すと後ろ髪をがしっと掴むインサーン、ドS。
 ラジオから「忍び恋」が流れる中、地球へ降り立ったサタラクラjr.(以下、面倒くさいのでサタラクラ)は、宇宙忍法によりビックリさせた人間をビッグなクリに変えては集め…………あ、あの……………サタラクラが……完全に本編と同じノリなんですが……(笑)
 この辺りやはり、原典配合バランスの変化が見えるところですが、「ギンガ」編(脚本:香村純子)・「ボウケン」編(脚本:下山健人)に続いて、いよいよメインライターも一つ大きく、舵を切った感。
 ある意味では、作品そのものに鎧の「皆さんに、もっともっとスーパー戦隊の事を知ってほしいんです!!」という魂が注入されたというか。
 IFにしかなりませんが、立ち上がりからこのバランスとノリだったらここまで楽しめたかというと、個人的な好みからは引っかかってしまった可能性も推測され、生まれる前で知る由もない児童層や過去戦隊に詳しくない人を振り落とさない配慮も含めて、手数をかけて段階を踏んでからバランスをシフトした、のは今作の巧い所だな、と。
 馬鹿笑いを響かせながら神出鬼没のサタラクラは人々を次々とビックリに変えていき、その気配を感じ取る――女優業にも進出したらしい七海、髪がさっぱりとした吼太、逆にパーマとなった鷹介――三つの影。
 「鎧って悪い奴じゃないけど、あの無駄に熱いのは参るのよね~」
 「まったくだ」
 視聴者の気持ちを代弁しつつ、ガレオンを抜け出してアイスを食べていたマベルカジョーは、人類クリ化計画を目撃し、アイスの恨みでゴーカイチェンジ。
 「賞金首の海賊とはその程度か」
 「意外に大したことないんじゃなーい」
 変幻自在のサタラクラと3倍速いサメ忍者に苦戦する3人は、ライブマンで攻勢も束の間、宇宙忍法に翻弄される事となり、サメの人はなんか普通に格好いい。
 赤青黄は続いてアバレンジャーとなってハリケン合わせか初期3人戦隊へのチェンジが披露され、鎧の授業を真面目に聞くハカセとアイム、途中で抜け出すマベルカジョー、という状況設定は、この前振りとして実にスムーズ。
 ダイノガッツ砲を放つもジュニアニンジャ砲に押し負けたところで緑桃銀が駆け付けるが、ビックリミサイルを造るために宇宙忍者ジュニアーズは撤収し、3人とはいえ久々の完敗を喫したゴーカイジャーの姿を見つめる3つの影。
 「あの海賊達が勝てると思うか?」
 「駄目かもね……私たちハリケンジャーの、“大いなる力”を渡さないと」
 「……じゃあ、渡す?」
 「もう少し様子を見よう」
 鷹介が割と渋めの二枚目になっていて、中身も成長しているのだろうか……? と大変気になります(笑)
 ガレオンに戻った海賊達はミサイルの製造工場を突き止めようと頭を捻り、鎧がひらめキーング!
 「そうか! ボウケンシルバー!」
 鎧がゴーカイチェンジすると即座にハカセが納得し、ハカセ、大百科ちゃんと読んでるんだな、ハカセ……(涙)
 ボウケンシルバーがまさかのサガスナイパー探すモードを発動し、相変わらずどう足掻いても格好良く撮れないのはさておき、ルカが一つ確保していたビックリの成分をサーチ&トレースする事により、発見したミサイル製造工場へとゴーカイジャーは突撃。
 上空から強襲を仕掛けて不意を打ったゴーカイジャーは、宇宙忍者ジュニアーズを追い詰めたかに見えたがまたも宇宙忍法で逆転されてしまい、赤青黄はサタラクラの作り出した空間に飲み込まれ、残ったサメ忍者は巨大化、とたたみかける展開。
 ここまで圧倒的な力を見せてきた、“大いなる力”3つ乗せのドリル神もサメ忍者に苦戦するが、そこに突然の巨大手裏剣が突き刺さり、カラクリ武者・風雷丸、見参!
 風雷丸は、ヒーロー登場からヒーローキックを決め、なんかやたら格好いいのですが、並行して公式配信で見ている『ハリケンジャー』が、今シュリケンジャーキャンペーン中で半ば忘れられた存在になっている為、この扱いの大きさに困惑します(笑)
 「今じゃ、とどめを」
 「かたたじけない!」
 風雷手裏剣でビルに磔にされたサメ忍者はドリルドリームの直撃を受け……あ、あれ? あっさり大爆死?! 純然たる実力者として描かれていただけに巨大戦の都合でばっさり片付けられてしまったのは残念でしたが、元のキャラがよくわからない内に退場になったのは、今後の『ハリケン』視聴にとっては良かったとは言え、若干の複雑な気持ち(笑)
 「さらばじゃ」
 宇宙忍者を狩った風雷丸が満足して飛び去っていく一方、地上ではサタラクラが置いていった下忍軍団の物量に緑桃が苦戦していたが、そこに乱入してきた3人のニンジャが生身で下忍軍団を成敗バイし、これがサムライと並ぶ地球のクリーチャー種族・ニンジャの力だ!
 3人のニンジャはそれぞれ名乗り、マベルカジョーがサタラクラの宇宙忍法に囚われた事を確認。
 「まずいな……最悪の事態だ。ボキ空間には恐ろしい罠が待っている」
 ……ナゾナゾ?
 そのボキ空間では囚われの3名が目を覚まし…………あ、駄目だ、ナゾナゾに対応できそうなのがルカしか居ない。
 ボキ空間を打ち破るにはハリケンジャーのレンジャーキーを使いこなす必要があるが、海賊が信用できない疾風流のニンジャ3人は、“大いなる力”は渡せない、と告げる。
 「だからレンジャーキーを渡せ」
 「……ちょっと待って下さい。なんか変ですそんなの!」
 ビックリにされた人々とマーベラス達を救うには、自分たちがハリケンジャーに戻るのが一番だ、と提案する3人に対して抗議の声をあげたのは、スーパー戦隊大好き男、伊狩鎧。
 「鎧……」
 「鎧さん」
 「どうして? 地球人のあなたが、一番わかってくれると思ったのに」
 「確かに、元々は皆さんのものです。でも、宇宙に散らばったレンジャーキーを、命がけで探し集めたのは誰ですか?! マーベラスさんがいなければ、レンジャーキーは今ここになかったんですよ?! なのに、そんなの絶対変です!」
 これまでも幾度か、レンジャーキー(に宿った力)の返還を求める過去ヒーローに対して、マーベラスが「これは俺たちのもんだ」と拒絶を示してきましたが、ここで鎧が「元々の所有者とはいえ、地球に居たら取り戻せなかったものを、それを手に入れた連中がたまたま地球に来たから、都合が良いので返せというのは筋が悪い!」と言葉を加えて反論し、直前にもダッシュで駆け寄って大騒ぎをしていた憧れの人達を相手に、臆せず対峙。
 ヒュウガとの出会いを経て「ただのファン」を卒業した鎧が、マーベラスの理屈に言葉を加えて噛み砕きつつ、海賊とスーパー戦隊の間で正しい筋を通そうとする姿によって、どんなに熱烈にスーパー戦隊を尊敬していても、その言葉を何でも受け入れる「信者」ではない事が明確に描かれ、18-19-20話でホップ・ステップ・ジャンプを決めた鎧をそこに留めず、更に次のステップへと踏み出させたのは、鮮やか。
 またそこで、本人たちの口からではなく、その点では部外者といえる鎧が「マーベラスたちの冒険」を重んじる事により、本編開始前の出来事であるマーベラスたちの冒険の意味と価値が引き上げられ物語に取り込まれたのも、お見事でした。
 睨み合いの続く、海賊とニンジャ。果たしてその出す答は……でつづく。