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一つのゴミを拾うのは 無限の未来を救う事

海賊戦隊ゴーカイジャー』感想・第23-24話

◆第23話「人の命は地球の未来」◆ (監督:坂本太郎 脚本:香村純子)

 ――待ってろよ 生きてろよ 絶対そこに辿り着く

 「人助けが出会いを導くゾヨ」との鳥占いに従い、3組に分かれて街へ繰り出すゴーカイジャー。マベ&鎧組はひたすら老人が階段を登るのを手伝い、ジョー&ハカセ組は落としたイヤリングを親切に拾ったお礼にお姉様に迫られ、ルカ&アイム組は臨月の妊婦とその娘に出会う事に。
 陣痛を起こした妊婦を助けて出会った通りすがりの女性が、救急救命士にしてゴーゴーファイブのゴーピンク・巽マツリと母娘から伝えられ、戦隊ヒーローの存在が当たり前の世界に、見ているこちらも段々と慣れて参りました(笑)
 マツリの元に向かうルカ&アイムだが、急患の少年を運ぶためにマツリが乗り込もうとした救急車がゴーミンの襲撃を受け、一体全体ザンギャックはどんな作戦を……と思いきや、全ては“大いなる力”を狙うバスコの差し金。
 「あーあ、ザンギャックのふりしてこっそりやろうと思ってたのに、結局こうなっちゃうんだもんな~」
 少年を救いたければ“大いなる力”を渡せ、といやらしい取引を持ちかけるバスコに対し、少年の命には代えられない、と力を渡そうとするマツリだが、ルカが強引にそれを止め、救急車の中でしばらく話し合い。
 「人の命は、地球の未来。この子の命を救う為なら、“大いなる力”なんて!」
 「そうじゃない!」
 ルカはかつて病気の妹を失った過去を語り、マツリは急患と共に病院へ行くべきだと主張。その為には「無茶でもなんでもあたしがやるしかないの!」とバスコを足止めする為に無理をしようとするルカに対してアイムが声を張り上げ、独り相撲になっていたルカを止める。
 「もっと頼って下さい。もっと信じてほしいです。わたくしは、いつまでも守っていただくばかりの、妹分で居たくありません!」
 「アイム……」
 「……ったく、いつまで待たせるかなぁ」
 そして外では、割と律儀にバスコが待っていた。
 「そうだね……そうだよね……。あんたは……あの子とは違うんだもんね。……どうしようアイム、どうしたらいい?」
 ルカがなにかとアイムに甘い(構う)のは、死んだ妹の姿を無意識に重ねていたからと明らかになり、貧民街的な生まれが仄めかされていたルカの過去を掘り下げると共に、何もできないお姫様である事を良しとしないアイムの“変わろうとする”強い意志を示し、セオリーに則りつつ、ここまでの積み重ねと両者の関係性の変質を、巧く接続。
 しびれを切らして実力行使に出ようとしたバスコをマジピンクの変身能力で一杯食わせた黄桃が、バスコの繰り出すリン夫婦&ズバーンキーのトリオ攻撃に吹き飛ばされたところで、ようやくかけつけた男衆が、二人をキャッチ。
 「よお、待たせたな」
 「待ったわよ!」
 マベがルカを、ジョーがアイムを拾い、役者本人によるお姫様抱っこというのは、なかなか珍しいような。……ここまでの距離感の描き方としては逆の方が盛り上がるもとい頷けるのですが、何者かの組織的抵抗を感じます……じゃなかった、主がルカ寄り&マベちゃんの方が筋力があったのでしょうか(実際、ジョーは割とすぐアイムを下ろしている)。
 「やっほーマベちゃん。また俺に会いにきたの?」
 「……マーベラス
 「わかってる。今日は人助けしねぇとな!」
 鎧の参入後にはだいぶ変化が目に見える形になりつつも、理由付けを忘れない、らしい台詞から、海賊戦隊はゴーカイチェンジ。
 「ゴーミンちゃん」
 いやらしい台詞回しでバスコもこれに応え、海賊戦隊は更にゴーゴーファイブへとゴーカイチェンジ。炎を突き抜ける演出から連続攻撃でリン夫婦&ズバーンキーを倒すが、今回も回収&巨大ロボ召喚で、便利だサリー。
 火曜日担当メランちゃんにマジファイヤーを吸収されてパワーアップを許すゴーカイオーだったが、マツリに託されたゴーゴーファイブの“大いなる力”を発動すると、飛び出す消防ホース(笑) 迸る高圧水流でメランちゃんの炎をかき消すが、トドメはプロミネンスだ!
 「あー、良かった。赤ちゃんは生まれたし、この子も元気になったし、アイムは一人前の海賊に一歩近付いたし?」
 万事めでたしめでたしで、なんだか今回は割と酷い目に遭っていた気がする男衆は、いつも以上に仲睦まじく寄り添うルカとアイム(何者かの組織的陰謀を感じます)の姿を微笑ましく見つめて、つづく。
 「ギンガ」「ボウケン」と濃いめ(原典要素多め)のレジェンド回が続きましたが、今回は比較的初期寄りのバランスで、原典から「命を救う」事をテーマにしつつ、あまりレジェンドの押し出しは強くない構造(出番自体は最初から最後まで満遍なくありましたが)。
 原典の視聴を途中リタイアしているというのもありますが、どちかといえばマツリよりも、立ちはだかるゴーミンの群れに突っ込んでいくタクシー運転手や、ヤバそうな連中に囲まれながらも少年の救命活動に尽くす救急隊員たちという、地球人の“慣れ”の方が印象に残ったり(笑)
 過去を振り切れずにいたルカと、前進を続けるアイムを巧く絡めて両者の関係性を掘り下げつつ、シリーズ的に女性メンバー二人体制の場合「姉的/妹的」なキャラ付けと対比をするパターンが多い事を踏まえた「スーパー戦隊史を包括した女性コンビ回」ともいえるのは、戦隊マニアだという香村さんらしい視点であったでしょうか。
 次回――好き勝手やりやがって!

◆第24話「愚かな地球人」◆ (監督:坂本太郎 脚本:浦沢義雄

 ――「俺の怖い顔を見て悲鳴をあげ逃げるとは、常識のあるおばさんだ。根性をたたき直して、非常識にしてやるぜ」

 「宇宙人をタコ焼き屋の弟子にしようなんて、あたしが許しても、保健所が許可しない」
 浦沢義雄×坂本太郎のコンビ再び! そして、ジェラシット再登場(笑)
 「どうしたの?」
 「ザンギャックに、粗大ゴミとして、捨てられました」
 「困ったねぇ……えー……粗大ゴミは、電話して、指定された粗大ゴミ用のシールを貼って、捨てないと」
 そっちか! と念入りな注意書きの読み上げが、冒頭から大変、浦沢脚本です。
 「あんた、生きてんだからさ、生ゴミとしてなら回収してくれんじゃないの?」
 ……てこれ、落ちぶれた悪役がゴミ捨て場に転がってるネタだ!
 第14話においてゴーカイサムライ斬りを浴びながら生き延びるもインサーンに見限られてザンギャックを追放されたらしきジェラシットは、タコ焼きの匂いにつられて屋台に近付き……タコ焼きを餌に、人語を解する人間大の宇宙人に対して「ペットにならないか」と持ちかける店主がだいぶ怖いのですが、ゴミ捨て場に転がる生物に対して「生ゴミで回収してくれるかも」と言ってのけるおばさんに続き、一般市民の倫理観の壊れ方が見る側の正気を激しく揺さぶってきます。
 ちなみに、『激走戦隊カーレンジャー』第12-13話では、激走斬り(巨大ロボの必殺剣)を根性で生き延びた怪人が2話連続で登場するのですが、このネタは頭にあったのかなかったのか(笑)
 たまの外食に繰り出した海賊たちは鎧のお薦めのタコ焼き屋に向かうが、そこで芸を仕込まれているジェラシットを目撃して悪夢のカーレン回を思い出し、回れ右。
 「相変わらず……意味がわかりませんね」
 「帰るか」
 だがそこに、ザンギャックの宇宙最強ぶりを宣伝する事で地球人を精神的に屈服させようとする宣伝行動隊長が通りすがり、(元)ザンギャックが地球人のペットとなっている光景を許すわけにはいかないと、ジェラシット(&タコ焼き屋)を攻撃。海賊戦隊はタコ焼きの為に大変やる気なくゴーカイチェンジし、不利となった宣伝隊長は一時撤収。
 「あいつもそういうタイプか」
 世の中は、逃げるヒーローと、逃げる怪人のどちらかで構成されています。
 ザンギャック旗艦では、戦闘カメラに映ったジェラシットの姿に殿下とインサーンが揃って職場を放棄してダマラスに作戦が丸投げされ……なんだか最近、ザンギャックがほぼコミカルなシーンでしか出てきていないような。
 ペットの件はさすがに問題視されて店主はジェラシットに謝罪し、代わりにタコ焼き屋に弟子入りしてはどうかと進めるゴーカイジャー。色々な境界線が軽々と飛び越えられていきますが、海賊戦隊も広く宇宙人であり、今回登場する地球人の対応がザンギャックばりに酷いので、宇宙人同志の妙な連帯感にいきおい変な説得力が生まれていない事もない気がしてくるのが、実に浦沢マジック。
 ところが弟子入りの件は店主母(冒頭に登場したゴミ捨ておばさん)の強硬な反対に遭い、その物言いに段々引っ込みがつかなくなってくる海賊達。そこに雪辱を期して乗り込んできた宣伝隊長がザンギャックに対する「生ゴミ」発言に対して怒り狂って成り行きで戦闘に雪崩れ込み、順調に酷い感じに(笑)
 「ったく、好き勝手やりやがって」
 いったいどこの誰に向けた台詞なのか、混戦の中で宣伝隊長のザンギャックバズーカが放たれるが、その砲撃から身を挺して店主母をかばうジェラシット(笑)
 「こんな素晴らしい宇宙人が居たなんて……私は、なんと愚かな地球人」
 ――この時、店主母の心の何かが変わり、大の字になって地面に倒れたジェラシットを囲んでよくわからない空気になるが、普通に起き上がるジェラシット。
 「ここで死ねれば、ドラマチックだったんですけど」
 「おまえ……本当は凄く強いだろ」
 ゴーカイサムライ斬りを生き延びましたからね……。
 ゴーカイジャータイムレンジャーとなり、その背後で、凄く普通に親子をカバーリングしてるジェラシットが格好良く見えてきて困ります(笑)
 ベクターエンド影の舞からファイナルウェーブが放たれ、コメディ系の演出の印象が強い坂本太郎監督ですが、前半戦では殺陣の中での個別名乗り、ここではファイナルウェーブの描写にきっちりと尺を採り、割とフル名乗りやバンク必殺技など、“戦隊の基本”を大事に取り込んでくれる印象あり。
 溜息をついたダマラスが初めての巨大化光線を放ち、巨大戦では追加モーションから先制のスターバースト。拡声器攻撃で反撃を受けるも、ときめき変形・ライオン召喚・サムライ斬り・ドリルドリームの二大ロボ連続攻撃で、成敗バイ。
 戦い終わってしばらく後、ジェラシットのタコ焼き屋を、開店祝いの花輪スタンドを抱えて訪れる海賊たち。
 「もしかするとタコ焼きって、宇宙でも流行るかもな?」
 「宇宙にはタコが居ないぞ」
 「火星人がタコみたいって聞いたけど」
 「それじゃ火星人焼きです。流行りません」
 ところが屋台にジェラシットの姿はなく……
 「ジェラシットは、俺のおふくろと駆け落ちしてしまった」
 待ち受ける大どんでん返しに、なにがなんでも普通に“いい話”にする気は無い、という浦沢先生の高い志を感じます(笑)
 「風の噂では今ごろ、どこかの田舎の温泉で、楽しくやってるらしい……」
 温泉旅館に就職したらしき二人の姿と思わせぶりなやり取りが描かれ、
 「あいらぶゆーーー!!」
 拾われた(笑)
 店主は黙々とタコ焼きを作り続け、海賊達は粗大ゴミと化した花輪スタンドを抱えたまま無言で去って行き……全編、エリック・サティの「ジムノペディ」で彩られているのですが、ピアノの響きが独特の余韻を残して、幕。
 予想外の再登板となった浦沢先生、「カーレン」回は岸さんと坂本監督の激走もあったのでしょうが、なんだかんだと『カーレン』的なるものを再演するという縛りがあったのに対して(こちらも“レジェンド回”として見てしまうところもあり)、「カーレン」回を踏まえつつも自由度が上がった事で浦沢脚本らしさが良い方向に転がり、浦沢ワールド的にはむしろ、今回の方が面白かったです。