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凄いワンダーな男

『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第12話

◆エピソード12「ワンダードリルの快男児」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:荒川稔久
 荒川稔久、自分で自分にガソリンを投入。
 キラメイチャンジャーのメンテナンス中、山岳救助隊からの応援要請を受けた小夜は医者としての仕事に向かうが、「細脚乙女の山怒らせ」というクリスタリアのことわざを思い出してマブシーナは気が気でない。「ここは地球だよ」と取りなす充瑠だが……当の小夜は、見事に遭難していた。
 チャンジャーをしていない事を忘れてヘリコを呼べず、単独で下山しようとするも滑落して脚を捻挫し、迂闊オブ迂闊の小夜……このままでは、
 「美人すぎるドクター、無謀すぎる二次遭難!」「「私はドクターヘリが呼べるので」スーパードクターの奇行の数々?!」「俳優・押切時雨と密会のウワサ?!」「取材班は見た。職場のストレスを高校生への暴力行為で解消!」「関係者F氏独占激白「あいつ、すぐ投げ飛ばすだろ」」
 とか、あることないこと週刊誌とワイドショーのネタにされて社会的立場が危うい!
 と思ったその時、その場を通りすがるギンギラギンの山男。
 「俺は宝路(たかみち)、君は?」
 「……大治小夜」
 「小夜ちゃんか。今度街で会ったら、ワンダーデートしようぜ。じゃあな」
 「え?」
 そのまま平然と立ち去ろうとした男に、思わず愕然とする女帝。なんとか謎の薬で応急処置は施してもらうが、男はまたも山中に小夜を放置していこうとし、冒頭に書き文字でやたら強調されたクリスタリアのことわざは何かと思ったら、ここで宝路が口にする事で、クリスタリアに絡んだ人物である事を示唆。
 小夜は、何やら急いでいるらしい宝路に助けを求めるあまりに「なんでも言うこと聞くから」(危ない)と口を滑らせてしまい、現金にも急に前のめりになった宝路の背負子に乗って移動する事となり……背中にメンバーを背負った新キャラとと、新キャラに背負われたままのメンバー、という凄い絵面で前半が展開。
 一方、自らの闇をかき消しかねない何者かの接近に胸騒ぎを感じるガルザ、に朗らかに語りかけてくるタランチュラ。
 「ガルザ、ガルザ! 面白い作戦を思いついてしまったぞ!」
 「寄るな。興味ない」
 ある意味、今回の一番面白いシーンでした!(笑)
 ガルザに邪険にされ、ぷんすかクランチュラさんは隕石邪面をカラット印の宇宙観測所へと送り込み、その防衛に出撃するキラメイジャー。小夜を欠く4人は「ベントラー! ベントラー! ベントラー!」の掛け声と共に宇宙から降り注ぐ隕石による攻撃を受け、UFOを呼ぶ際の合言葉? だとかなんとだか。
 邪面師の目的は巨大隕石を召喚して地球にぶつける事であり、その為に邪魔な宇宙観測所を破壊しようとしていたのだ……とこの辺り、キラメイジャーと隕石邪面のやり取りが、やけに説明過多だったり遠回りだったりで妙にテンポが悪いのですが(隕石攻撃を何者かの狙撃と捉えるのはだいぶ苦しい)、新型コロナ前後の影響があったりしたのかどうなのか(山岳のシーンは3月頃に撮られていて、本部でのシーンは急遽脚本を変更して少人数で撮影。戦闘シーンを利用して尺や情報を調整した、と思うとなんとなく頷けるのですが……)。
 何故か小夜のキラメンタルが検知不能になった事から、チャンジャーを手にした姫様が飛行魔進と共に小夜の捜索に向かうが、そんな状況も知らず、小夜は引き続き宝路に背負われていた。
 「お宝を求めて、冒険中なんだ」
 スーパー戦隊の傾向と対策的に、ボクは身勝手でダメな大人ですと宣言したに等しい宝路は、お宝のヒントだという手帳を手に山中を探し回り、背中の小夜が文字通りのお荷物のままではなく、知性の煌めきを見せてお宝探しに貢献したのは、良かったところ。
 小夜のアドバイスもあって目的の場所に辿り着いた宝路は、空飛ぶドリル・シャイニーブレイカーを召喚し、リュックは、小夜さんの代わりに尊い犠牲になりました。
 前が見えるのか不安になるゴーグルをかけて、岩盤を掘り始めた宝路は遂にお宝を発見。それはなんと、キラメイストーン?! と思いきや、歩く鉱石生物として動き出したのは、怪物化した石、モンストーン。本能の赴くままに動き、人間の体の中に入り込もうとする習性を持つモンストーンだが、急に反転してどこかへ走り去ってしまい、それを追う宝路、ドリルを手に、飛ぶ。
 魔法の箒、ならぬ、魔法のドリルで空を飛ぶ、のは、キャラとしても装備としても良いインパクトになり、好きな方向性。アクションシーンでも、呼ぶとマスターの元に飛んでくる武装の描写は、魔剣感があって男の子心をくすぐられます。
 一方、宇宙観測所ではキラメイジャーが隕石邪面を追い詰めていたが、そこに鉱石怪物が現れると、なんと隕石邪面と融合。それにより何故か隕石邪面が強化されると身に纏う高熱でキラメイバレットすら溶かしてしまい、4人を溶岩パワーで吹き飛ばす驚異の戦闘力を発揮。
 地獄ラグビーとか地獄万力とか地獄ジョイスティックとか地獄デジカメとか地獄百人一首とか、どちらかというと搦め手で攻めてくる対戦相手が多く、正面からの力勝負には経験不足の見られるキラメイジャー(思えばフリーザーやオーブンには苦戦気味でしたし)は、人数も少なく絶体絶命の危機に陥るが、その時、空からドリルが!
 「ワンダーアライバル!」
 なんでも、ワンダー付ければいいと思ってるな?!
 「うわぁっ、この方は!?」
 「マジか……」
 モニターに映った宝路の顔を見て、本部のファイヤと博多南が驚愕の声をあげ、この時点でなんとなくオチは見えてきましたが……
 「どいてろ。後輩諸君」
 颯爽と降り立った宝路は、キラメイジャーを、「後輩」と呼称。
 「地球の平和の為に、ワンダー極まりない力と技を、見せつける男。その名も――クリスタリア宝路」
 謎が謎呼ぶフルネームが明かされ、球体型のキラメイチェンジャー(お宝サーチャーでもあり)を起動した宝路は、角とゴーグルが特徴的な、銀色の戦士――「貫きシャイニング・キラメイシルバー!」にキラメイチェンジ。
 隕石邪面が呼んだ戦闘員が運転するダンプカーに押し潰されそうになるもワンダー大開脚でそれを受け止める煌めきを見せ、あれは……俺の……決めポーズの筈……! とギリギリとジェラシーファイヤーを燃やす黄。そしてそこに、モンストーンが離れた事でキラメンタルが検知され、マブシーナ組に回収された小夜が到着。
 「あれさっきの彼?! エモい……かも」
 「ふっ……ワンダーサンキュー」
 女帝からときめきの眼差しを向けられた銀は気取った仕草で感謝を告げると隕石邪面との一騎打ちに臨み、ひたすら、シャイ! シャイ! シャイニーング! うるさいのですが、武器の音声が「ヘイお待ち!」とか「一丁上がり!」なのは、「ヘイらっしゃい!」から来てるの……?! す、寿司屋なの……?!
 なまじ聞こえてくる音声がオラディンそっくりな為に、「博多南、君がこの前連れていってくれた、寿司屋というのは最高だな!」とノリノリでひらめキングして音声吹き込んだ王様の映像が脳裏にまざまざと再生されてしまい、そこで立ち尽くす姫様が苛立ちのあまり邪メンタルに覚醒しそうで心配です。
 ガルザさんだったらもう、邪面師を3回ぐらい斬殺している。
 ヴァン! ヴァン! ヴァンダミング! の連続攻撃からドリルで掴んで放り投げ、最後はレーザービームで隕石邪面を消し飛ばした新たなるドリルの使者にキラメイジャーはやんやの喝采を送るが、本部の博多南はいつになく険しい表情となり、部屋を立ち去る博多南の背中とディスプレイに映ったシルバーの正面が対比されるのが、スローモーションも使って印象的な演出。
 変身解除した宝路は、「なんでも言うこと聞くから」の約束として頬にキスを要求し、「……ま……しょうがないか」と約束を果たす小夜。時雨カードが生け贄にされるなど酷いギャグにならずに下心ミッションが完遂される、というのは珍しい気がしますが、これまで、年上の女帝ポジションとしてキラメイジャーに君臨してきた小夜のペースを狂わせる存在が登場し、魔進戦隊内部のヒエラルキーに変動が起こりそうなのは面白い要素……今後どこまで踏み込まれるかはわかりませんが、小夜がやや控え目なポジションだったのは、ラブコメ発動のこの時の為に、荒川さんがじっとタメにタメていたのでしょーか(笑)
 外野が絶叫を上げる中、小夜へサムズアップを向ける宝路だが、そこに駆け寄ったのはマブシーナ。
 「お兄様!」
 「おお、妹よ! ひさしぶ」
 両手を広げる宝路に、すかさず炸裂する鮮烈な平手打ち。
 「今まで、どこで何をしていたのですか」
 ファイヤの「この方」発言の時点で、放蕩王子の帰還、「お兄様!」(平手打ち)は予想された為にインパクトがやや弱く、ここは姫様には、「お兄様!」(ヘッドバットを決めていただきたかったところです。
 「何もかも、お兄様のせいです!」
 オラディンの死、クリスタリア陥落、それは国を空けてフラフラしていた兄の責任、と姫様は宝路をなじり、思いがけない兄妹の再会から深刻なその亀裂に、一同が言葉を失う重苦しい雰囲気で、つづく。
 見た目まるっきり地球人ながら文化風俗はクリスタリア準拠の宝路、正体不明のワンダー冒険者の謎は次回に持ち越しとなりましたが、外見からするとマブシーナとは義理の兄妹でクリスタリア育ちの地球人、などの可能性もありそうでしょうか。
 ストーン探しに際して時間を気にしていたので、キラメイストーンのモンストーン化を防ぐ為にやむを得ずクリスタリアを離れていたとか事情は想像されますが、宝探しのヒントとされる手帳が如何にも、カットシーンの「予言」と関わりそうな雰囲気もあり、これまで謎だったオラディンと博多南の関係を結ぶキーパーソンになるのやもしれず、次回、どこまでオープンにしてくれるか楽しみ。
 ……それにしても、「モンストーンの出現」や「クリスタリアのことわざの発現」……やはり、白いキラメイストーンが地殻に与えた影響により、地球のクリスタリア化が着々と進行しているのでは……。
 「宝路ぃ……やはり裏切り者は貴様だったのか!」
 「そうさ父上。地球の平和の為に、ワンダー極まりない予言を阻止する男。その名も――クリスタリア宝路。まさかずっと叔父上の背中に貼り付いて操っていたとは、さすがの俺もワンダーサプライズ。だが、父上と博多南の地球ブルーダイヤ化計画は、この俺が止めてみせる!」
 「ふん、育ててやった恩を忘れて、うつけ者めが。ならば貴様は、我がヒラメンタルで葬り去ってやろう!」
 ……与太はさておき、今、あまり気付かなくて良さそうな事に気付いてしまったのですが、モンストーンは人間の体内に入り込む→入り込んだ対象を強化する?→充瑠の頭痛(疲弊)と白い煌めきからのひらめキング&時空を超えた交信…………充瑠の中に、既に何か入ってる?
 物語のミステリー要素と、敵味方の強化要素が接続されそうなのは素直に面白く、ここからの転がし方にますます期待です。