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緑色の憂鬱

海賊戦隊ゴーカイジャー』感想・第19話

◆第19話「15戦士の鎧」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:荒川稔久

 ――「すまん! 俺が、俺がトマトをおいしく料理できていれば、こんな事ならなかったのに……!」

 OPに鎧/シルバーとドリル神が追加され、ゴーカイ宝箱に認証されたシルバーは、いつでも任意のレンジャーキーを手元に呼び出せるように。と、これまで割と謎だったバックルの中からレンジャーキーが飛び出してくる機能に理由付けが施され、どうやらゴーカイガレオンと同様のびっくりどっきり次元転送システムらしく、宝箱もアカレッドの用意したプレシャスだったのか……!
 「今日の食事、俺が作ります」
 「え?」
 いっけん三下属性で経験の浅い地球人のようで、腕も立って度胸もある鎧に、自分の立場が脅かされるのではないかと気が気でないハカセは嫉妬の炎をメラメラ燃やすが、得意分野の料理まで、鎧のスキルを見せつけられて大ショック。
 「なかなかの腕だな。……気に入った」
 武器を取っても鋭い動きを見せる鎧はジョーにも期待の新人として受け入れられ、万年2割5分のハカセは、二軍落ちの大ピンチ。鳥……僕より下のポジションは、鳥だけなの……?! というか、この戦隊のどちらかといえば猿顔ポジションは僕でしょぉぉぉ?! と体育座りしながらサリーとメル友になる方法を考え始めるハカセ、模擬戦で鎧がピンチになるとガッツポーズしており、小さい、人としての器が小さい……。
 海賊戦隊に、当人以外の誰も気にしていない大問題が発生している頃、殿下肝煎りの骨魚隊長が地球に出現。その能力は、人間の骨を抜いて骨抜きにする=やる気を失わせる事で、ザンギャックにしては搦め手寄りの行動隊長。
 買い出し中にこれと行き合ったハカセと鎧が先行してぶつかるが、銀に対抗心剥き出しの緑はいつものペースを失ってゴーミンにまで苦戦してしまい、手すりにしがみつきながら回避とキックと右往左往そして落下、と吊りを交えつつ、さらっとまた凄い動きを。
 ちなみに鎧の演者さんは、買い出しに出たハカセを追いかけるシーンで、ジャンプ→自転車進入防止柵的なのを空中でキック→着地、をさらっと決めており、成る程これは運動神経が良さそうです。
 全員合流してゴーオンジャーになり、果たしてここは、金になるべきか銀になるべきか、戦隊ファンゆえに悩むシルバーは、気がつくとなにやら真っ白な空間に……て、ここ、妄想フレンズが住んでいる世界では。
 「いっその事、おふたり同時に変身できれば、悩まずにすむんですけど~」
 そこに立っていたゴーオン金銀に相談するシルバー、気がつくと手元のキーが本当に一体化しており……なんだか明らかに、みこ様とパスが繋がっていて、向こう側と交信できる体質になっているのですが。
 もしかしなくてもこれは、鎧の五感からの情報が高次空間に筒抜けになっていて、大神龍とかガオゴッドとかマスターヘッドとか暇を持て余した面々の酒の肴にされているやつでは!
 とにかくにもゴーオン金銀キーをセットしたシルバーは、体の左右で色が分かれた一人ゴーオンウイングスへとゴーカイチェンジし、
 「「さあ、おまえの罪を数えろ」」
 ……じゃなかった、ロケットダガー二刀流でテイクオフ大暴れ。
 その無茶苦茶ぶりに、もともと戦力としての自分に自信がない緑はますます落ち込むが、戦いから意識が逸れたところに不意打ちを受け、それをかばった桃(黒)が負傷。チームに走った一瞬の動揺の隙を突かれて、赤青黄桃がまとめて骨抜きにされてしまい、これが、ギャグ怪人の恐ろしさ……!
 「ふにゃ~」
 マタタビに酔った猫のようになって地面に転がる4人は完全に戦意を喪失し、それを何とかガレオンまで運び込むハカセと鎧。
 「腕立てする時間だけど……ま、いいや」
 「ああ……いいって~、そんなの~」
 凄く強いぞう、バスコに続く、海賊戦隊三度目の壊滅危機が、まさかこんな形で訪れようとは(笑)
 「やりましょう二人で! 俺たち二人なら、絶対なんとかなります!」
 「……おまえ一人で行けよ。僕が居たって、足引っ張るだけだよ。さっきみたいに」
 スーパー戦隊の歴史的に、怪人を倒せばなんとかなる筈、と前を向く鎧だが、事態の責任を感じるハカセは、いよいよコンプレックスを剥き出しにして鎧へとぶつけてしまう。
 「そんな事ないですよ。ドンさんだって!」
 「やめてくれよ! おまえと居ると、自分が情けなくなるんだよ」
 「…………俺……悲しいです」
 まだ知り合って間もないので、ハカセとの人となりもこれまでの歩みも詳しく知らず、何か特別な言葉をかけようのない鎧が絞り出したのが「悲しい」なのは、鎧がハカセを「ヒーローだと信じている」のが滲み出ているようで、好きな台詞。
 ……まあ、「期待に応える」というのは苦しい事でもあるわけですが、そういう点で今作は、「誰かの期待なんて知ったこっちゃねぇ」海賊たちが、(色々な理由を付けながら)「たまには期待に応えるのも悪かねぇ」事を見つけていく物語でもあるのかな、と。
 今作の築いてきた世界観を破壊しかねない劇薬として登場後、ウルトラCで海賊との関係性を劇的に転換した鎧/シルバーですが、そのまま馴染ませるとインパクトはあっても人間関係が味気なくなるという判断もあったのか、ハカセの抱える劣等感を刺激する事で軋轢が生まれる、のはチーム入りの過程として良いスパイスになりました。
 基本的に自己肯定力が低く、鎧の凄いドット模様のシャツに圧倒され卑屈になっていたハカセだが、密かに作っていたレシピ帳を目にした鎧が凄い凄いと誉めていた事を鳥に聞かされ、互いが互いを評価している事を教えられる。
 「あいつが……そんな事を……」
 ただ料理を作るだけではなく、それぞれの体調その他に配慮して栄養管理していた事が明らかになったハカセには、地球から、水の戦士の称号を贈りたいと思います!
 一方的に、かなわない奴、と思い込んでいた鎧からの絶賛に前向きになったハカセは、シルバーが果たした金銀変身から何かを閃くと、ザンギャック反応に出撃。ひとり骨魚隊長と戦っていたシルバーの元へ駆け付けるとゴーカイチェンジし、ダッシュしながらの変身が、ハカセの前進を示しているのが格好いい。
 怪人に食らい付いた緑は足止めを買って出ると、15の鍵を一つにするようにとシルバーへアドバイスを送り、それにチャレンジしたシルバーは、再びもやもや空間へ……。
 「皆さんの力を……力を貸して下さい!」
 そこには15の戦士がバラバラの方向を向いて立っており、ゴーカイシルバー(セルラー)用の特殊なキー、という玩具の事情ありきと思われる割とぶっ飛んだ展開ですが、魂を持たない表面的な力だけとはいえ、バスコ編で悪役サイドの傀儡としてゴーカイジャーと戦う事になっていたので、ここで一同が鎧の方を振り向くことにより、伊狩鎧というフィルターを通す事で一度リセット(浄化)して力の意味付けをコンバートする――そこにヒーローの魂を込め直す――といったニュアンスもありそうでしょうか(鎧が視聴者の代弁者であるなら尚更、そこに込められるのは、視聴者からの祈りともいえましょう)。
 また、『199ヒーロー大決戦』において、ゴセイジャーと一緒にゴーカイジャーも謎空間に入り込んでいたので、この地球では、スーパー戦隊と同調率の高いものは、レンジャーキーなりを通してスーパー戦隊フィールドにアクセスできるのかもしれず、もしゴーカイジャーがもっとスーパー戦隊と親和性が高かったら、第1話時点でもやもや空間に入り込んでいたのかもしれません(笑)
 緑が、グリーンツーとグリーンフラッシュで骨魚と競り合う間に、鎧の願いを聞き届けた15戦士の力が一つの豪華なキーへと姿を変え……成る程、「伊狩」は「錨」に通じると。
 通常空間に戻ったシルバーが、イマジネーションにより新たに生み出されたアンカー型のキーをセルラーに接続すると、15戦士フェイスの貼り付いた黄金の鎧が降臨し…………あの……私、こういうの、某《メタルヒーロー》作品のボスキャラで見た記憶が。
 若干、闇の力も感じる黄金の鎧をシルバーが装着すると、ヘッドのバンダナ部分が下に降りてゴーグル代わりとなって顔がシックな黒+銀の配色となり、ボディと両足には派手な黄金の鎧を身につけた、
 「ゴーカイシルバー――ゴールドモード!」
 が誕生。
 「シルバー?! ゴールド?! 金か銀かどっちだい?!」
 15戦士フェイスの威圧感が凄い(ある意味、殿下と同じファッションセンス)ゴールドモード、ショルダーアーマーが貼り出しているのと両足に装甲が付いた事により、シルエットはヒトデもとい星を思わせる事から、勢い余って超力戦隊の“大いなる力”も宿っているのではないかという、あちゃあ! ほあちゃあ! 超力スピアー! でぐるんぐるんと槍を振り回して骨魚隊長を圧倒し、見た目は珍妙ですが、動くと格好いいタイプ(格好良く動かしている、というべきでしょうが)。
 最後は15戦士エネルギーを連続で打ち込むゴーカイレジェンドリームで大勝利を収め、鎧が外れると疲労表現の入った銀は、緑とグータッチ。
 ガレオンで「ふにゃ~」していた4人にも骨が戻り、ジェラシットに続いて、ツボにはまった時のギャグ怪人の恐ろしさを思い知らされる海賊戦隊であった!
 巨大戦は、さくっとドリルで片付きました。
 こうしてドンさんと鎧の間のわだかまりは解消し、楽しく食卓を囲んでいたところ、割とまめなザンギャックが、鎧にも賞金をかけた事が宇宙ニュースに。
 「遂におまえも賞金首か。で、賞金はいくらだ?」
 その賞金額…………ハカセの20倍!
 「なんで僕より鎧の方が高いの?!」
 どたばた騒ぎが巻き起こり、ハカセと鎧のプレートから好きな物だけを食べようとするマベ、栄養管理の甲斐がない子……で、つづく。
 新戦士登場! → 仲間入り! → 強化! と怒濤の展開になりましたが、次回――辞職?!
 なにもかもがマッハで進行していく中、大変やばそうなメンバーが登場。そして、おお、そこを拾うのか、と期待の高まる予告。