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リセットボタンが倒せない

『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第11話

◆エピソード11「時がクルリと」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:井上テテ)
 (教えてほしい。……険しい運命の道を何度も通らなければならない時、人はどうすればいいのだろうか)
 格闘ゲームで華麗な勝利を収めた為朝は、対戦相手に前髪をむしられて「呪ってやる」宣言を受け、ココナツベースに顔を出すと、魔進たちがキラメイクイズを開始。その日はヘリコの誕生日――石に意志が宿った日――であり、博多南がケーキを持ってやってくるがタイミング悪く街にクネクネとした動きのちょっと気持ち悪い邪面師(メビウスの輪の意匠が秀逸)が出現。
 「速攻で行くぞ。誕生会の続きやるんだろ!」
 赤の名乗りを止めて先制攻撃を仕掛ける黄、君は本当にいい奴だな……。
 ところが、転んだ邪面師の頭突きを食らったその瞬間、為朝は「前髪をむしり取られた時間」に戻り、そのまま同じ一日を繰り返す事に……クネクネした邪面師の正体は、リセットボタン邪面。
 自らボタンを押す、或いはボタンが破壊される事により、経験や記憶を保持したまま時間を巻き戻す事で、何度でもキラメイジャーとの戦いを繰り返して少しずつ強くなっていく、恐るべき邪面師だったのだ!
 「「リセットするたびに」」
 「俺は!」「あいつは……」
 「「強くなる!」」
 特殊能力のトンデモぶりもさる事ながら、普通に強くなっていて学習能力が凄い(笑)
 戦闘中の不慮の接触によりこのリセットループに巻き込まれた為朝は、ただ一人記憶を保持したまま、何度も何度も何度も何度も前髪をむしり取られ、キラメイクイズを聞かされ、抱きようのない危機感と無縁な仲間達の姿に苛立ちを募らせ、ついつい声を荒げてココナツ基地を出て行ってしまう。
 何故かその背中にひらめキーングした充瑠は、為朝の後を追いかけると「本気のタメくん」のイラストを見せ、「嘘だ! 本気でやったって言えるの?!」と為朝を叱責。対戦相手の言葉を思い出した為朝は、知らず知らずの内に自分は全力で何かにぶつかる事を忘れていたのかもしれないと思い至り、気取り屋の面がある為朝がはまっていた無意識の陥穽を、直感的に見抜いた充瑠の指摘によって“気付き”を得る……という構造なのですが、充瑠が指摘に至る布石がほぼ皆無なので、「嘘だ! 本気でやったって言えるの?!」があまりにも唐突。
 為朝が本気になればどんな問題でも解決して仲間に苛立ちなんて見せない筈、という充瑠と為朝の間に積み重ねられた信頼関係(ナチュラルに重くて、充瑠、恐ろしい子)を元に、充瑠の「本質を見抜く目」が発揮されたという意図ではあったのでしょうが、その飛躍に主人公力以外の理由が不足しており、今回のエピソードの転換点だけに、もう少し丁寧に助走を描いてほしかった部分です。
 ……もしかすると、為朝が「ループしてた」と言ったら充瑠が頭から「そうなんだ」と受け止めるシーンが、全幅の信頼感を示す布石だったのかもですが、突飛×突飛で、ちょっと無理があった感。
 お陰でどちらかというと、ひらめキング直前の描写(こめかみの辺りがひくつき白い輝きをワンカット挟む)もあって、白い魔石からの精神干渉にしか見えませんでした。
 ……おのれ暴君オラディン! いたいけな地球の少年の心を弄ぶとは!!
 eスポーツ会場に戻った為朝は、引退試合だった対戦相手を本気の再戦で完膚なきまでに叩きのめし、お互いに気持ち良く決着を付けると、成長を続けるリセットボタン邪面に苦戦する4人の元に駆け付ける。
 「リセットの同志よ~。諦めたと思ったが?」
 「ゲームスタートだ!」
 敢えて今度もリセットボタンを破壊したイエローは、再びリセットされた世界でショベローに乗って怪人の出現地点に先回りすると速攻でリセットボタンを破壊!
 再びリセットされた世界でショベローに乗って怪人の出現地点に先回りするとリセットボタンをシュシュッと破壊!
 再びリセットされた世界でショベローに乗ってリセットボタンをアッパレと破壊!
 再びリセットされた世界でリセットボタンをケッポーンと破壊!
 再びリセットされた世界で……を繰り返し、様々な手段でリセットボタンをガードしようとする邪面師と、それを多彩な射撃で上回る黄をハイテンポで次々と見せていくのは繰り返しがだらけずに良かったです。
 「きーーーー! いつまでやる気だ~~」
 「瞬殺されている限り、おまえは負け試合から何も学ぶことはできない!」
 本気の為朝が辿り着いた作戦、それは、何度リセットを繰り返されようと、リセットボタンを破壊し続ける事! ……なお、eスポーツの対戦相手との決着も当然蔑ろにしないと思われるので、前髪回避→『鉄拳』再戦→SupercoolにPerfect→ショベロー召喚して急いで現場へ、をルーチンで繰り返していると推測され(それ故のショベローか)、君は本当に真面目でいい奴だな……。
 そして、よくわからんけど為朝が言うなら間違いあるまい、と出撃する爺、本当にいいコンビ。
 「わかった! 一回話そう! 待ってくれ!」
 「俺は……俺の本気を辞めない!」
 「それいけ為朝!」
 イエローは大開脚ショットを繰り出し、リセット→瞬殺を繰り返されたリセットボタン邪面は、死と再生の無間地獄に耐えかね、ついに精神が崩壊。
 「もうやめる……もう、侵略は諦めた……帰る」
 勝利への意志をくじかれた邪面師は、自らリセットボタンを外すとイエローに渡し、根負けした怪人が作戦と自身のアイデンティティを放棄する、衝撃の展開(笑)
 「絶対に勝てない……絶対に勝てない……」
 背を向けた途端に背後から撃ち殺したらどうしようかと思いましたが(それはそれで面白かったですが……)、イエローはとぼとぼと歩み去る邪面師を見送り、精根尽き果て虚ろな笑いを響かせるリセットボタン邪面は、こんな時に便利なガルザが始末。
 「ガルザひどっ! ……まあ、いつもだけど。ひっどーい!」
 それはそれとして闇の保険適用で発射ボタン邪面獣が出現すると、揃ったキラメイジャーはキラメイジンを召喚し、合体中に、「ヘリコ、Happy Birthday」と声をかけるのが、無茶苦茶格好いいな為朝!
 「はわわ、なんでしってるの?」
 「ヘリコに恋して、調べ上げたのでは?」
 そしてマッハは、発想が変態寄りだな!
 「ええっ、マジで?!」
 「んなわけねぇだろ!」
 何かヤバいミサイル搭載により「一瞬で勝負を決める」触れ込みの発射ボタン怪獣だったが、エクスプレスにライディングキラメイジンで、ボタンを押す前にダイナミックで瞬殺。
 かくしてループ騒動は(為朝個人の中で)片付き、充瑠に礼を言う為朝。ところがキラメイクイズが始まり……リセット終わってない!? と思ったら、ヘリコと一日違いでマッハも誕生日でした、の空騒ぎから、マブシーナ姫様が「あの人」の予感に震え……次回、ワンダーな男がやってくる!?
 オーソドックスなループ物で始まり、後半の解決方法は面白かっただけに(意識していたかは別に某映画を思い出しましたが、アイデアのみならず映像で面白く見せてくれたのが秀逸で、今作における邪面師の面白さが光りました)、その転換点となる充瑠と為朝のやり取りが強引だったのが、勿体なかったエピソード。
 荒川脚本以外で為朝メインになった時に、必要以上に茶化す系の方向に行かないかの不安があったのですが、為朝は真面目でいい奴、な事がしっかり描写されていたのは大変良かったです。むしろそちら主体の勢いでビックリ(笑)
 中断期間中にハードルを上げまくった追加戦士は、予告によると女帝に粉をかけてくれそうなのが、どう転がるのか楽しみな要素(笑) 『キョウリュウジャー』のような例外はありますが、通例として、17話前後が追加戦士の頃合いである事を考えると、構成としては間5話が吹っ飛ばされた、と考えれば良さそうな感じでしょうか。
 ……きっとその間に、時雨と話しているところをクラスメイトに目撃された充瑠が学校でジェラシーファイヤーを浴びたり、マブシーナ姫が憧れの漫画家の職場を訪問したり、博多南が命がけで昼食のローストチキンを守ったり、色々とあったに違いありません。

 ※追記:考えてみると為朝、「引退試合をパンダで戦ってしまった」件を知った以上は延々と気に病みそう(その時の表情よ)なので、結果的にはリセットと充瑠にかなり救われており、そして、「引退試合を全力で戦う」事はやり直せたけど、「爺ちゃんとの喧嘩」は取り戻せないわけで、それを原動力に無限瞬殺(何度でもPerfectに倒す!)していたのかと思うと、凄く重い話だった気がしてきました。