東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

素材の味、80の味

ウルトラマン80』感想・第12話

◆第12話「美しい転校生」◆ (監督:深沢清澄 脚本:広瀬襄)
 学校・復活!
 下駄箱にラブレターを発見した博士(セミレギュラーの眼鏡キャラ)は年頃の男子らしく胸をときめかせるがそれはクラスの女子4人による悪戯で……君ら、最低だな!
 緊張の面持ちで待ち合わせの場所に向かった博士を笑い物にしてやろうと待ち受ける最低な女子たちだったが、その寸前、見知らぬ少女・ミリィに声をかけられた博士は、ラブレターの頭文字を勘違いして、ミリィに街を案内する事に。
 悪戯が空振りに終わった女子カルテットは自分たちの遊びを邪魔されたと逆恨みの炎を燃やし……君ら、アルマより最低だな!(作品としては、色々と帳尻があっている気がするのが何とも言いがたいですが)
 転校生だったミリィに早速因縁をつける女子カルテットだが、それを見かけて割って入り、男を上げる博士。
 「メダカは何を着たってメダカさ! 金魚にはなれやしない!」
 ……若干、罵倒が行き過ぎな気はしますが、そもそも女子たちの仕掛けていた悪戯がトラウマ級ではあり、しかしここで、事情を知らないまま報復を遂げ結果的に一皮剥ける博士はまだともかく、誰に諭されるまでもなく打ち捨てられる女子たちの悪意だけが宙ぶらりんに取り残されるのが、今作の大変困ったところ。
 中学生の他愛の無い悪戯(とは思えませんが)と捉えるにしても、虚構性の高い物語の中に「悪意」を持ち込んだならば相応の責任を取る(決着を付ける)べきではと思いますし、特に今作、既に焦点が外れかけているにしても、怪獣の発生原因を「悪意」と置いたにも拘わらず、あまりにもその扱いが無頓着。
 また、今回限りのキャラはともかく、セミレギュラーといえるファッションを女子カルテットに加えて好感度を一緒に下げる必要性がどこにあったのか、ひたすら困惑が募ります。
 クラスで深刻ないじめに繋がりかねない問題が浮上していた頃、のんきに自転車のタイヤに空気を入れていた矢的は、自転車に仕掛けられていた爆弾で二階まで吹き飛ばされるが、ノンちゃんから体を張ったギャグ扱いを受けていた。
 塾をさぼった博士がミリィと遊びに出かけた事で教育ママの博士母が学校に乗り込んでくるが、矢的は博士とミリィを擁護する論陣を張り……ヒーローフィクションとしては、そこをこそ怪獣エンタメと融合する事で巧く寓話に仕立て上げてほしいわけなのですが、いざ教育や家庭の問題になると、ほぼ火を通さずに突っ込んでくるのが、今作の本当に困ったところ。
 時代の要請や、シリーズとしての新機軸など、当時なりの事情もあったのでしょうが、今見るとどうしても、別に《ウルトラ》タイトルでそれを見たいわけではないのでもう少し加工を……と思ってしまいます。
 結局ミリィは侵略宇宙人で、博士を休日デートに誘い出したのはUGMの観測装置を誤魔化す仕掛けを施す為であり、それに気付いた怒りの矢的は宇宙人の秘密基地へと乗り込んでいく……チェックのワイシャツ姿で。
 今まで見た、怒れるヒーローが敵の基地に正面から突入していくシーンの衣装、としては一番とんちきかもしれません(大切な生徒を弄ばれた教師としての怒りも示して敢えて、かとは思うのですが)。
 博士を愛しているのは真実だと弁解するミリィだが、侵略活動を止める事はかなわず、密かに火口で育てられていた怪獣が孵化。全宇宙支配の足がかりとして地球を前線基地にする為に邪魔な80を抹殺する、極めて壮大な計画の第一歩として誕生した怪獣ゴラは80と互角の光線技を打ち合うが、最後はあっさりと連続光線に倒れ、沈黙。
 ミリィは矢的に博士への別れのメッセージを託して姿を消し、ミリィとの思い出を胸に博士は前を向くのであった……。
 正体を隠した侵略者・星を越えた悲恋アイデアを、学園物として、転校生・淡い(初)恋にコンバートした上で教育論を振り掛けたのですが、どれ一つとしてアイデア同士を噛み合わせる為のひねりが無いので個々の要素が綺麗に混じり合わず、これといって葛藤も変化も描かれていないが約束事として博士を愛してしまったミリィが侵略やめようと言い出すも上官(?)に怒られると結局は怪獣を80にけしかけ、怪獣そのものは明らかにただの侵略兵器なのに、これは悲劇的な戦いであると主張したかったのか妙に悲痛な叫びで倒れ、ミリィに関しては結末を語られない(恐らく、光の国の裁判所送りか)のですが、そもそも母星の目的は全宇宙の支配とか言っており、とってつけたような恋愛・とってつけたような悲劇性・とってつけたような情状酌量が剥き身のままで机の上に置かれ、いやそこから調理の手を加えてほしいのですが……と、『80』の悪いところが全部出た、みたいなエピソードでした。
 1クール分のじわじわした積み重ねもあって、博士に寄り添い、さすがにあまり余計な事は言わない矢的先生の姿などはそんなに悪くなかったのですが、もっとこう、調理を。