東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

「悪いのはボルトの心だ!」

超獣戦隊ライブマン』感想・第11-12話

◆第11話「頭脳獣を噛んだ男」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 少々ガラの悪いディスコクラブのTVから突如ヒヒヅノーが実体化し、凄くナチュラルに、地下駐車場の壁に隠し扉が!(笑)
 ヒヒヅノーに噛みつかれた人間はゴリラの被り物をした獣人へと変貌してしまい、街には次々とゴリラ人間が増殖。
 「生命改造に関する君の能力は、悔しいが、認めざるを得ないな」
 オブラーに称賛を送るケンプとマゼンダですが……あ、あの、ブラウン管からの実体化は、ボルトでは余技扱いなのでしょうか……?(笑) ま、まあ、既に電送ヅノーで実証済みの技術扱いなのかもですが、凄いぞ武装頭脳軍ボルト。
 ライブマンがゴリラ軍団に立ち向かっていると、隠し部屋で葉巻をくゆらせ綺麗所を侍らせて椅子にふんぞり返っていた無頼漢、タイムヅノー実験の副作用により、全面核戦争後の未来から現在に来てしまった疑惑のあるディスコのボスがバイクで乱入。ドルフィンアローさえ弾き返すヒヒヅノーに飛び蹴りから始まる怒濤の連続攻撃で有効打を与え、ブーバ、ボー・ガルダン、オヨブー、と悪役として強い存在感を放ってきた岡本美登さんが大暴れ。
 眼前で展開する突然の世紀末救世主伝説ライブマンが呆然と見つめる中、ディスコボスはヒヒヅノーに鎖をかけるとバイクでアジトまで引きずっていき、弱ったヒヒヅノーに猛然とストンピングの嵐からサブタイトル通りの噛みつきを加え……市井の超人が純粋なる暴力で怪人を上回る、ライブマンならずとも目が点になる展開(笑)
 「おまえらがこの俺に忠告するのか? ボルトだかナットだか知らねぇが……子分を、コケにされたからにはこの毒島嵐、落とし前をつけなきゃ男が立たえねぇのさ」
 ボルトの脅威を説き、頭脳獣の引き渡しを要求する勇介だったが、毒島嵐はそれを拒否。更に、勇介の身につけていた科学アカデミアの徽章に勉学へのコンプレックスを刺激されると、勇介を殴り飛ばし、ヒヒヅノーとゴリラ軍団を従えて組織化(笑)
 「そんな馬鹿な?! ヒヒヅノーを操る人間が居るなんて」
 狼狽したオブラーはヅノーベースを飛び出し、もともと裏社会で勢力を拡大していたギャングのボスだった嵐は、子飼いの獣人軍団を手に入れた事により銀行強盗を繰り返し、その暴挙を止めようとする勇介。
 「てめぇ……科学アカデミアのお利口さんにしちゃなかなかやるじゃねぇか」
 物事の基本は、体力……!
 頭脳獣を利用して暗黒街の帝王にのしあがろうとする嵐と、それを止めようとする勇介は生身バトルに突入するが、そこへ斧を手にしたオブラーが介入するとヒヒヅノー以下の獣人部隊を再び支配下に置き、怒りに任せて特攻を仕掛ける嵐。
 哀れ待ち受けるモヒカン兵士の銃撃で蜂の巣に(既に銀行強盗を繰り返してるので、勇介との間に友情が生まれて一件落着というわけにもいきませんし)……かと思われたその時、ビアス様自らの指示で地上に赴いたガッシュが嵐を抹殺?!
 青と黄が駆け付けて3人揃ったライブマンは、残る頭脳獣&ゴリラ軍団&モヒカン兵と戦闘になり、嵐の戦いぶりを思い出した赤は、敢えて剣を置いて素手で頭脳獣に挑むと、死中に活ありゴッドハンド!
 ディスコで踊り狂う愚連隊・生身格闘の押し出し・暗黒街の帝王、と前作『マスクマン』の残り香をそこはかとなく漂わせるエピソードでしたが、レッドマスクがヒヒヅノーに正拳突きを叩き込むシーンは、エフェクトの派手さもあって格好良かったです。
 再び剣を手にして追撃のレッドブレイクから、トドメのバイモーションバスターが放たれ、バスター炸裂後に、3人の決めポーズが追加されて、ヒヒヅノーは大爆死。挿入歌初使用でマシンバッファローが出撃して合体ライブディメンションから、パンチ→二丁拳銃→ライブクラッシュ。
 すっかり巨大戦の見せ場となった超獣剣召喚ですが、これが格好いいだけに、いつもライブクラッシュ後に気がつくと左手に盾を構えているのが、凄く謎(笑) 形状からすると、玩具ではこの盾の中に剣が収まる仕様なのか……? と思われますが。
 「天才がなんだ……どいつも、こいつも、俺を打ちのめそうとしても、そうはいかんぞぉ……っ! 俺は、誰にも負けねぇ!!」
 生きていた嵐は倒木を担いで大暴れするが、それをガッシュが回収。ビアスガッシュを送り込んだのは嵐を殺さないようにする為であり、果たして、大教授ビアスの企みとは?! で、つづく。
 てっきり1話限りのゲストキャラかと思いきや、恐竜回に続いて予想外の前後編。そして、3人ローテで割と順調に回っていた今作に、早くも悪の幹部テコ入れ?! やはり、ボルトのスカウト基準には、ファッションセスの合致があるのですかビアス様?!

◆第12話「超天才アシュラ!」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 ナレーション「毒島嵐は、ガッシュに、連れ去られた。そして大教授ビアス直々の教えを受ける事になった」
 「2+3は?」
 艶のある声と視線で、大真面目に一桁の足し算を教えてくれるボスキャラは、戦隊シリーズ史上でも多分ビアス様だけ! という衝撃のシーンでスタート。
 てっきり、脳細胞活性装置でも使ってトンデモ科学で毒島嵐を覚醒させるのかと思いきや、小学生レベルの計算から地道に始めるビアス様は、反抗する嵐を恐怖によって従えさせると、大教授レッスンを開始する……それからしばらく後、世界的な学者を次々と誘拐したボルトの目的は、大教授ビアス様主催・地獄の早押しテスト!
 そして、世界的な学者たちと様々なジャンルで早押し対決に挑むのは、すっかり見違えた毒島嵐。
 ビアス直々の教えにより眠っていた頭脳を覚醒させた嵐の天才ぶりを示す手段が早押しクイズ対決というのが実に戦隊シリーズらしいですが、そんな事で世界的な学者達を消費していく“天才の無駄遣い”ぶりは実にボルトらしいスタイル(笑)
 闇のゲームに敗北した学者の無惨な死に様が明確に描かれ、一足遅れで会場に乗り込み学者達を救出した勇介たちは、真っ赤な鎧に身を包んだ毒島嵐の姿を目にする。
 「諸君、久しぶりだな」
 「毒島嵐?! それはいったいなんの真似だ?!」
 「俺は毒島嵐ではない。武装頭脳軍ボルトの、Dr.アシュラだ」
 大教授ビアスの導きにより眠っていた才能を目覚めさせた毒島が、自らを生体改造する事によるドクターアシュラへの変貌が回想で描かれ、“生体改造によって人間を捨てる”事が、ボルトにとってのイニシエーションである模様。
 「大教授ビアス! あなた様の偉大なる力のお陰で、今まさに私は生まれ変わりました」
 ケンプ達を越える天才を自称するアシュラは、目から怪光線を放つと、ドルフィンアローを軽々と受け止め、ライオンパンチも撃墜。ファルコンソードも一蹴すると、天高く舞い上がって放つ必殺リバースキックにより赤を地中に埋めるド派手なデビュー戦を飾り、やはり、筋肉こそが真理、頭脳とはパワー。
 「ドクターアシュラはおまえ達以上の天才にして、おまえ達以上に強くなった。そして、誰よりも凶悪。まさに、私の求めていた凶悪かつ無敵の天才となった」
 ビアス様はアシュラを激賞し、凄い頭脳 → 凄い生体改造 → 凄く強い、というボルトの価値観が見て取れます。
 「我が行く手に敵なし。我が才能に及ぶ者なし。ははははははは!」
 アシュラサンダーブーメランでライブマンを吹き飛ばしたアシュラは、顔の前にすーっと指を横切らせる、全国の岡本美登ファン大歓喜の格好いい仕草でキめるが……その後に始める事がテストヅノーの透視能力を用いた金庫破りなので、本質は一緒……?(笑)
 「ビアス様! ドクターアシュラは勝手に銀行強盗を始めました!」
 「なに?!」
 驚いた(笑)
 「あいつには……まだ毒島嵐が生きている」
 ビアス様が初めて目を点にしている頃、アシュラの蛮行を知った勇介は、ボルトの手で天才と化した今もなお、アシュラの中には暗黒街の帝王を目指すかつての執着が残っている事に気付く。たぐいまれなる頭脳と鍛え上げた筋肉を兼ね備えたドクターアシュラを相手に勝機を見出した勇介は、科学アカデミア時代の礼服に身を包み、アシュラを挑発。
 「貴様は、科学アカデミア!」
 「科学アカデミアの青春はな、おまえら悪魔の科学には決して負けん!」
 頭脳獣を暴力で従える荒くれ者があら不思議、大教授ビアスのマンツーマンレッスンを受けてこんな僕でもマサチューセッツ工科大学に受かりました! から悪の幹部の増強はかなりの急展開でしたが、ここでアシュラへ向けての挑発がそのまま、ライブマン全体のテーゼになっていて、大変格好いい啖呵。
 勇介とアシュラはそのまま激しい肉弾戦に突入し、ボルトのドクターとして人間を捨てた今もなお、アシュラの中に息づく憎しみとコンプレックスを確信した勇介は、まさかの制服パスでアカデミア変わり身の術を展開(笑)
 丈、続いてめぐみが制服を受け取ると次々とアシュラに標的とされ、マタドールよろしく翻した制服に向けて我を忘れて突撃してくるアシュラ、ここまで来ると、科学アカデミアに何をされたのか不安になってきますが……頭脳獣さえ上回る戦闘力の一方、覚醒前は小学生レベルの足し算にさえ難儀する不自然に押し込められたような知性…………そう、ここまで来ればもう皆さんおわかりですね?
 毒島嵐は、失敗に終わり計画そのものが闇に葬られた、科学アカデミアによる宇宙開発用改造人間計画実験体の生き残りだったのです!
 毒島嵐は本来、勇介やケンプ達の数代先輩にあたる人物であり、在学中に不自然な失踪を遂げて除籍処分とされ、大教授ビアスはその事を知っていたのだ!!
 ……真相はさておき、正義の味方が思い出の制服を小道具に使い、悪役のコンプレックスを執拗に突いて逆上させる、取りようによっては物凄く外道な作戦の末、勇介はアシュラの必殺リバースアタックを誤爆させる事に成功し、思い出の制服はモヒカン兵&アシュラと共に大爆散。
 ……色々酷かったですが、海軍の軍服めいた制服を第1話以来で勇介たちが身に纏う、コスプレ要素は満足度高め。
 地面に大穴を空けたアシュラの死体を確認しようとする勇介たちに「まだ俺のテストが終わっていないぜ」とテストヅノーがモヒカン兵を引き連れて襲いかかり、ライブマン
 分析能力に優れたテストヅノーに苦戦するが、ジェットスケボーを用いた変則高速攻撃でパターン認識を打ち破り、嬉しい再使用。巨大戦では透視能力を用いてライブロボの弱点を突いてくるテストヅノーだが、特に戦闘のメリハリにはならないままジャイアントスイングから超獣剣で、スーパーライブクラッシュの錆となるのであった。
 ドクターアシュラはさすがに生きており、メラメラと対抗心を燃え上がらせる3天才。それこそがビアス様の真の目論みだったのだ、とナレーションさんから「なに?!」へのフォローが入って、まだまだ底知れないぞビアス様、でつづく。
 パイロット版こそやや詰め込みすぎのきらいがあったものの、3-4話を経て安定軌道に入っていただけに、ここで新幹部投入は驚きましたが、毒島嵐→ドクターアシュラの変貌を新たに描く事で、武装頭脳軍ボルトにとっての「人間をやめる」事、ケンプ達3天才が選んだ道を改めてビジュアルで印象付け、そこから勇介の「科学アカデミアの青春はな、おまえら悪魔の科学には決して負けん!」と、ヒーローの拠って立つ背景に繋げる事により、ライブマンというヒーローを支える「私」の部分が復讐以外で浮かび上がったのは、鮮やかでした。