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風よ吹け吹け 雷走れ

忍風戦隊ハリケンジャー』感想・第17-18話

◆巻之十七「暗闇と死闘の島」◆ (監督:諸田敏 脚本:宮下隼一)
 ムカデ様の策謀により、バトルファイト島に閉じ込められてしまったハリケンジャーとゴウライジャー。ここで決着を付けてやる、と殺る気満々の一鍬に対して何やら苦しげな表情を浮かべる一甲だが、弟に急かされると迅雷シノビチェンジ。
 対して鷹介たちも忍風シノビチェンジを行い、冒頭から互いにフル名乗りでいざ決戦、は盛り上がる流れ。
 「負けるわけにはいかないのはこっちさ。この星の為に、この空の為に!」
 「海の為に!」
 「大地の為に!」
 最強の忍者になれさえすれば他の全てを切り捨てて構わないとするゴウライジャーに対し、守るべきものの為に気合いで立ち上がるハリケンジャーだが、実力はやはり腕組みブラザーズの方が上。しかし、蒼が一方的にハリケンジャーを攻撃する姿をじっと見つめるだけで動かない紅の姿に、蒼の気が逸れた一瞬の隙を突くと猛反撃に転じてトリプルガジェットを叩き込むと、よーし試合終了! これで俺たちの勝ち! そういうルール! と喜びの声をあげる事で勝利を既成事実化しようとするのはどうにも納得が行かず。
 ……もう少し、ハリケンジャーの「ヒーローとしての信念」が勝利を呼び込む形でも良かったように思うのですが、「ゴウライジャーの迷い(しかもハリケンジャーの存在が関係しない)」に付け込んだ上で勝ち逃げ宣言するしかなかったのは、完全敗北から半クールの時間があっただけに、残念でした。
 勝利に浮かれるハリケンジャーだが、そこにやたら邪悪なデザインの貝忍者が姿を見せると前回登場したカタツムリ忍者の父親を名乗り、バトルファイト島はカタツムリが集めたエネルギーを用いた、父子連携忍術により作られた事を説明。
 「その闇よりいずる、マイナスエネルギーによって、儂がこの死闘の島を、作ったのだぁぁぁ!!」
 やたら高らかに吠える貝ですが、「バトルファイト島を作る」よりも明らかに、外の世界で起きている「地球氷河期忍法」の方が強力な為、どうにも間尺が合いません。ジャカンジャの目的はあくまで“アレ”であって地球征服ではないので、二段構えの作戦になる理屈はわかるのですが、それを盛り上げるには、劇中における“アレ”が、「ジャカンジャとゴウライジャーだけが熱心なもの」でしかないのも、ここに来て厳しくなってしまった部分。
 初期段階では、主人公サイドが敵の目的について把握していないのが一ひねりとして面白みになっていたのですが、このぐらい話が進んでくると、「物語の中での重要性」を示す為には「主人公サイドの熱量」も欲しくなってきます(後の『ゴーカイジャー』は、これを踏まえて逆の構造にしている、ともいえるでしょうか)。
 チューズー坊に、なすべき事をなせ、とけしかけられた紅は絶叫と共に蒼に襲いかかり、秘伝に示された「勇者」とは、「ハリケンジャーとゴウライジャー」の事ではなく「カブトライジャークワガライジャー」の事だったのだ! というのも、そもそも客観的説得力を持たない霞兄弟の一方的な思い込みだった為に、誤誘導に基づいた衝撃の展開として成立せず。
 バトルファイト島のあちこちから噴出するギリギリガスを浴びると理性を失い狂戦士と化してしまうのだ! も、後半まで見せない為に効果的にならず、仕込みと収穫がひたすら噛み合わない展開。
 巻き込まれ姉弟が戦いの場に顔を出し、それをかばうようにギリギリガスを浴びた赤は狂戦士化。
 「俺は……兄者とは戦えぬ……戦いたくない」
 蒼はされるがままに紅の攻撃を受け、ハリケンジャーは貝忍者に追い詰められ、このままジャカンジャのいいようにされてたまるか、はわかるのですが、貝忍者にかなりやられていたハリケンジャーが突然、貝を完全無視して兄弟喧嘩を止めに入るのは、あまりにもシーンの繋がりが雑で切迫感も台無しに。
 ハリケンジャーは蒼を連れて煙玉で逃走し、紅が落とした予言装置を確認した一鍬は、“アレ”を生み出す為に雌雄を決する「勇者と勇者」とは二人のゴウライジャーである事、全ては、予言成就の為に兄弟を駒として仕組まれた計画だった事を知る。
 ……何故なら、予言を語るホログラムの男の正体は、霞兄弟を鍛え上げた父親だったのだ!
 と、今度こそ衝撃の真実が明かされて、つづく(ちなみに私、ホログラムの男の正体は、迅雷流の始祖ぐらいのレベルの古代忍者だとばかり思っておりました)。

◆巻之十八「父と兄弟の絆」◆ (監督:諸田敏 脚本:宮下隼一)
 「親父が……最初から親父が俺たちを争わせようとしていたんだ! 息子の命より! “アレ”が欲しかったんだ! 兄者ぁぁぁぁぁ!!」
 命令違反に独断専行、任務中の無益な殺生もお手の物、闇に生きる迅雷流においても爪弾き者とされ、過酷な単独任務ばかりに送り込まれていた凄腕の忍者・霞一鬼――ゴウライジャーになれなかった男――は、エジプト(?)での任務中、宇宙からの啓示に打たれ、“アレ”について知るが、その情報は迅雷流のトップにより封印されてしまう。
 だが一鬼は忍者の最終奥義について諦める事が出来ず、独自に調査研究を進めると共に二人の息子、一甲・一鍬を、ゴウライジャーにふさわしいだけの忍者へと育て上げる……いずれ、その二人が殺し合う事になる宿命を練り上げながら。
 「憎め! 怒れ! その感情こそが力となるのだ」
 ここまで悪役ムーヴを繰り返し、一般市民に直接暴力を振るうなど完全に一線を越えた表現もあったゴウライジャーですが、本格的な腐れ外道に育てられていた事が明らかになるのは、巧いターニングポイント。
 「だからって……仲間はいらない。地球がどうなってもいいって事にはならない!」
 「そんなの、絶対間違ってる!」
 「真に受けたおまえらもどうかしてるぞ!」
 「貴様等になにがわかる! そんな親を持ち、そんな親を死に追いやった流派で生きるしか無かった、俺たちの何が!」
 兄弟を修羅へと育て上げた一鬼はしかし、“アレ”の誕生を目にする前に任務中に死亡。忍者として父の背中を追うと同時に、周囲全てを敵として見るしかない環境で育った霞兄弟の関係の強さと、迅雷流への愛着の無さも、納得のできる形に。
 非道極まりない父のコピーと化し、予言成就の為には実の弟を斬る事をいとわない兄に絶望した一鍬は、狂気に陥った兄を自らの手で斬る事を覚悟するが……一甲が一鍬を斬ろうと思えばもっと簡単に出来た筈であり、敢えてギリギリガスまで浴びたのは、一鍬を追い詰める事でその覚悟を持たせ、逆に自らが斬られるつもりだったのでは、と鷹介が指摘。
 「兄者ぁぁ!! どうして……」
 予言の真実を知った一甲が悩んでいたのは、一鍬を斬れるかどうかではなく、どうすれば一鍬を生き残らせる事ができるかどうかであった、のも兄キャラとして説得力が高く、前回が嘘のように、今回はグイグイと歯車が噛み合います。
 「……一鍬って、呼んでもいいか? 鷹介って、呼んでくれ」
 がっくりと膝をついた一鍬の無防備な背中に近付いた鷹介は、超忍法:《君の心にターゲットロック!》を使った!
 一鍬の心の隙間に忍び込んだ!
 「わたし七海! 芸名はナナちゃんだけど」
 「俺は吼太! 改めてよろしくな」
 「兄貴の方も、一甲って呼ばせてもらうぜ!」
 勢いに乗るハリケンジャーは、超忍法:《どさくさ紛れ》の術により、次々と一鍬の心の隙間に座布団を敷いて上がり込み、ちゃぶ台を設置。
 「…………おまえら」
 「一甲を助けるんだ、一鍬。おまえの手で」
 長らく敵対していた風と雷ですが、ハリケンジャーと手を組んででも兄者を助ける事がすなわち、父を、運命を越える事である、というのは好みのテーゼで、個人的には説得力のある動機付けでした。
 「ははははははは、貴様らの相手は儂がい」
 だが、一甲を探す4人の前に、妙に格好いい歩き方で、貝忍者が出現。
 「見えないのか?」
 「私たちは今4人よ」
 「さっきまでとは違うぞ!」
 「……なんだとぉ?」
 「忍風」 「迅雷」
 「「「「シノビチェンジ!」」」」
 はBGMもはまって格好良く決まり、ここで成る程、忍風は天を指し、迅雷は地を指す対照的な変身ポーズなのだと気付きました。忍風迅雷影の舞から、「成!」「敗!」「バイ!」「ファイヤー!」の新掛け声トリプルガジェットで大勝利。……もう少し「成敗バイ」使おうよ派が勢力を増してきた模様です!
 貝忍者の死亡により地球は太陽の光を取り戻し、外部との通信も回復。前回に比べると今回はかなり面白かったのですが、どう考えてもハリケンゴウライの決着より外の方が問題が大きい、のはやはり気になってしまったところで(目的が世界征服なら達成寸前レベル。少なくともジャカンジャは、行動不能中に旋風神と轟雷神を破壊しておく、という選択肢が確実にあった)、もう少し手加減した方がバランスが良かったかなと。
 「兄者! もうやめよう! 親父はもう居ないんだ!!」
 ガスまみれのカブトライジャークワガライジャーへと襲いかかり、ここ数話で一気に悪役としてのえぐみを増したチューズー坊に、救援を阻まれてしまうハリケンジャー。壮絶な兄弟対決はいずれかの死に終わるしかないかと思われたその時、例の姉弟がそれを止め…………うーん……ここまで割と面白かったのですが、〔フラフラ彷徨う → 丁度いいタイミングで戦場に出てくる〕を2話連続でやってしまったのは、極めて残念。
 そもそもこの姉弟「純粋に“正義の忍者”を慕う仲の良い子供達のシンボル」という、極めて概念的な扱いになっておりまして、これまで散々、悪役ムーヴを繰り返してきたゴウライジャーがハリケンジャーと手を組むにあたって、“劇中の子供にそれを肯定させる”必要性があったのはわからないでもないですが、3話に渡って出す存在では無かったよな、と。実質シノビゴッドと化しており、1話限りならまあともかく、3話も使うなら、もう少しパーソナルな人格をもってゴウライジャーと関わるキャラクターにして欲しかったです。
 「すまなかった一鍬……。……今わかった。親父は……強くもでかくもなかった。ああしか生きられない……本当は、哀れな男だったんだ……!」
 変身を解除し、正気を取り戻した一甲は一鍬を強く抱きしめ、ゴウライジャーの変心が、「今までの悪事を反省して改心」ではなく「父親の呪縛を断ち切り生き方を改める」事として描かれたのは、ここまでの言行にも筋が通り、個人的な好みもあって良かったのですが。
 怒りのムカデ様が傭兵契約の打ち切りを宣言するとチューズー坊が貝忍者を巨大化し、並び立つ旋風神と轟雷神。待ってましたの主題歌で……盗んだアスクを振り回すのは、どうなんですかゴウライジャー様。
 Wロボは連係攻撃で勝利を収めると姉弟を回収して崩壊する島を脱出し、チューズー坊はムカデ様のお仕置きビームを受けながらじっと耐える男を見せ、一方、繭にこもるマンマルバ……これは、まさか、八頭身マンマルバ(CV:島田敏誕生の予感?!
 次回――チューズー坊、最後の大勝負?! そして、なんか凄く殺意高いの出てきた。
 ゴウライジャーに関しては、それなりに納得の行く心変わりとなり一安心。特に、短気で粗暴な面が目立ち好感度の上がりにくいキャラ付けだった一鍬が悲痛に叫ぶ姿が真に迫って良い掘り下げとなり、“弱さ”を持った一鍬の側からハリケンジャーとの距離感を近付けた上で、全ての真実を知った時にその一鍬が、運命を変えようと立ち上がる事を選ぶ姿を描いたのは巧いアプローチになりました。
 今後はあまり突き詰めるとややこしくなるので、程々に贖罪意識を持ってくれればいいかな、ぐらいで。……とりあえず、父が本当に死んだのかどうかは、念入りに確認しておいてほしいですが。