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復讐のC

超獣戦隊ライブマン』感想・第5-6話

◆第5話「暴走エンジン怪獣」◆ (監督:山田稔 脚本:曽田博久)
 パトロール中、亡き卓二の弟・武志と出会った勇介たちは、卓二が遺した自動車の設計図を見せられる。
 「作ってほしいんだ、兄ちゃんの代わりに」
 少年の真っ直ぐな願いに乗り気になる勇介に気付くや、腕を引っ張って外に連れ出し、囁くめぐみ。
 「気持ちはわからないんでもないんだけど、あたし達そういう事している暇ないでしょ」
 親友たちの復讐が3人の強烈な動機付けになっている事を考えると、もう少し揺らいでも良さそうなところではありますが、強大なボルトを打ち砕いて復讐を果たす為には戦いに集中するべき、という考え方に筋は通りますし、「復讐」という“私”から「全ての命を守る」“公”へと第1話時点で接続済みなので、後者に相応のウェイトが置かれるのが劇中の正論として扱われ……後に『鳥人戦隊ジェットマン』が後者への偽装で“復讐の狂気”を覆い隠したのは、本当に邪悪な作劇。
 (……女の子の言う事は、いつも尤もなんだけど……)
 少々コミック的な手法というか、画面右下に四角で囲まれていそうな勇介のモノローグが挟み込まれ、この時の勇介の(でもなぁ……)といった具合の表情に独特の愛嬌があるのが、アイドル力を感じさせます。
 (友達が残した設計図を見たら、形にしてやりたいって思うのが男なんだよ。出来上がっていくにつれて、卓二が生き返ってくるような気がする)
 結局、勇介は武志と共に車作りに取りかかり、引くほど重かった立ち上がりに対して、前回-今回と山田監督がコミカルな味付けを大幅に加えているのですが、ゲスト少年をそこに関わらせる事によりコミカル描写の自然さが増した上で、私情に基づく行為が少年の心に寄り添う事でヒーロー性に繋がっていくのは、上手い構成。
 一方、ケンプはカオスファントムによりエンジンヅノーを製造。車のエンジンと一体化する能力を持った頭脳獣が、偶然にも完成間近の卓二の車に取り憑いてしまい、翌日――
 「全くもうひでぇよなぁ。俺たちにばっかしパトロールさせてさぁ」
 「今日という今日こそは、首に縄をつけてでも連れ戻しますからね」
 めぐみと丈は車作りにのめり込む勇介の元へと向かい、めぐみの自転車の後部に手を置いて、しゃがみながらスケボーに乗って引っ張って貰っている丈、が凄く面白い映像(笑)
 見た目そのものも面白いのですが、移動しながらの会話シーンを自然に成立させた上で、二人が無理なく一つの画面に収まっている、のも非常に面白い会心の構図……副作用として、やはり少々重いのかペダルを漕ぐめぐみが少し辛そうで、丈の人間としてのレベルが下がりました!
 OP映像では、勇介-オープンカー・丈-スケボー・めぐみ-スポーツサイクル、と紐付けられており、前回は予告で煽ったほど活躍しなかったスポーツサイクルが、第1話の「近すぎる爆発」に続いて、強烈なインパクトを刻む事に(笑)
 ところがその頃、エンジンヅノーの取り憑いた卓二の車が暴走を始め、勇介の元へ向かっていた丈とめぐみはあわや轢き殺されそうになるも、からくもこれを回避。
 「誰も俺を止められん。ふふふはははは」
 「貴様等ごときに運転できるものか」
 ……なんか、変な、頭脳獣、生まれた(笑)
 ケンプは薔薇の香りを嗅ぎながらその光景を見つめ……もしかして造花ではなく、毎朝新しいのを付け替えているのか。
 ヅノーベースでは、悪魔の車により車社会をずたずたに引き裂く作戦に皆でご満悦。
 「見事な作戦だ。……Dr.ケンプよ、大いにアクセルをふかしたまえ」
 一言だけながら、くるりと回って芝居がかったビアス様が超格好いいのですが、今回ところどころの台詞回しが洒落ていて秀逸。
 地上では、勢いあまってとんでもない殺人メカを造ってしまったのではないか、と勇介がめぐみに説教されていたが、武志少年が勇介をかばう。
 「勇介さんのせいじゃないよ! お兄ちゃんは勇介さんの事をドジな人だと言ってた」
 「うんうんうん」「うん」
 「でも、最後には頼りになる人だって……兄ちゃんが一番信じてる人だって」
 「卓二が俺の事を……ありがとう、武志くん」
 友の言葉に力を得た勇介はめぐみに言い返してここも少々コミカルな味付けがされ、第3話までで強烈に刻み込まれた因縁を前提としつつも、シリアス一辺倒ではない見せ方に。山田監督による意図的なバランス調整だったのか、パイロット版の出来上がりを見ていない関係だったのかはタイミング的にはなんともいえませんが、結果としては役者さんと物語の引き出しが広がって、良い判断だったと思います。特に役者さんは現状、前回-今回のようなタッチの方が、持ち味を出せている印象。
 またここで、友への想いや仇敵との因縁を軽く扱ってしまうと物語の根本が台無しになりかねないのですが、あくまでコメディの種にするのは勇介たち3人の関係性に絞った事で、コミカル要素が飲み込みやすい部分に収まったのも良かった点。
 「これで燃えなきゃ男じゃない……兄ちゃんの車、必ず取り戻すからな」
 暴走車を止めに向かったレッドファルコンは、エンジンの異常に気付くとボンネットを開き、中に直接ブラスターを打ち込む荒療治(笑) ……ま、まあ、自分で造った物なので、扱いもちょっと雑になろうというものです。
 たまらず飛び出すエンジンヅノーだが、ケンプによって回収されると他の車に乗り移って暴走エンジン大作戦を継続し、勇介はこれに対抗する為に改造を提案。
 「卓二の設計した車は、素晴らしいものだ。だから、これを原型にして、もっとパワーアップするんだ」
 兄ちゃんの車がぁぁぁぁぁ!!
 ……予告から想定できたパターンではありましたが、2作続けて、序盤で夢の車を切り刻んで兵器にする事に。
 そして卓二の車は、ライブマン印に改造され、ルーフの上になにやら物騒な火器までつけられてしまう事になり……ええとつまりこれはあれだ、そう! 卓二! おまえの魂と一緒に、ボルトに復讐してやるぞ!!
 『超新星フラッシュマン』のフラッシュタイタン、前作『マスクマン』のスピンクルーザー・ランドギャラクシー、に続く車輌メカ推しは当時の販売戦略なのかと思われ、特に今回はタイミング的にも『マスクマン』第4話「燃やせ! F1魂!」を彷彿とさせる構造になりましたが、〔物語の発端となった友人の存在を改めて取り上げる・少年との交流を重視しキャラクターの幅を広げる・卓二というキャラクターを物語の中に取り込み直す〕と、前作エピソードを雛形に置きつつ今作として抑えておきたいポイントがしっかり抑えられている上に、一見寄り道の行為がチームの強化に繋がっているのも好印象。
 また、“姿形は変わっても魂は受け継がれる”というのは東映ヒロイズムな面があり、改造手術を肯定的に受け止める説得力を強めているような、いないような……。
 時を超えた復讐車が我が身に迫っているとも知らず、作戦が順調に進行中のケンプは高いところから車の荷台に飛び降りる筋トレ系天才の姿を見せつけ、走行する車の荷台に得意満面で立っているだけで面白くてズルい……。
 ところが、洞穴の中を進んでいくと目の前に煌めくヘッドライト。
 「なんだあれは?」
 そして飛び出すライブマン
 「ライブマン! なんだ、その車は?!」
 「ライブクーガー!」
 「ライブクーガー?」
 「おまえに殺された矢野卓二の設計した車を元に、俺たちが改造、パワーアップした車だ!」
 殺る気満々だぜぇ!!
 「兄を慕う少年の想いと、友情が作り上げた車の、挑戦を受けてみろ!」
 搭載火力の差と待ち伏せ作戦により圧倒的な優位を取ったライブマンは反転する暴走車を後方から追いかけ、砲台代わりに変身した美獣ケンプの攻撃と群がるモヒカン兵を蹴散らすと、怨念の化身として生まれ変わったライブクーガーから2年前の復讐とばかりにクーバーバルカンを背後から叩き込み、消し飛ぶ車、吹き飛ぶケンプ。
 「エンジンヅノー、暴走の青春は終わったぜ」
 ケンプは撤収し、車を失い弱ったエンジンはさっくり始末され、ギガファントム。巨大戦はライブロボの二丁拳銃が披露され、弱った所にライオンビームから超獣剣でスーパーライブクラッシュ。
 そして魔改造された車は……弟に受け入れられて良かった(笑)
 ナレーション「ライブマンは、ライブクーガーと共に戦う事を誓って、少年に別れを告げた。そのエンジンは、兄弟の愛と、勇介たちとの友情を燃やして、唸るのだ。走れ、ライブクーガー!」
 クーガーだけに「唸る」のだ、と引っかけたのは格好良く、「兄弟の愛と、勇介たちとの友情」の象徴とする事で物語の中に綺麗に収める事にも成功。前作のスピンクルーザーはウィリーアクションこそ格好良かったものの存在を持て余して自然消滅してしまいましたが、今作では継続的に使われるのを期待したいです……というか綺麗に収めただけに逆に、忘れ去られた場合のダメージも大きくなってしまうので(ジープスタイルなので3人で乗れるのは使い勝手が良さそうであり)。

◆第6話「襲来!生きた恐竜」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 ナレーション「若き天才達は、頭脳核の開発に、全力をあげていた。より優れた頭脳獣を作り出し、地球を征服してみせることが、大教授ビアスに、おのが天才を証明する事になるのだ」
 一瞬、主人公サイドと勘違いしそうになる雰囲気で研究に励むケンプ達の姿が描かれるのが今作の特質を感じさせる導入で、悪魔に魂を売った3人の自尊心を、ビアスが巧妙にあおり立てる姿が印象的。
 時間と空間を操る頭脳獣タイムズノーを誕生させたオブラー@鎧着用は、タイムスリップ能力を持つ頭脳獣によって7000年前の世界から連れ帰った恐竜をアバレさせる恐竜復活大作戦を開始し、時間移動……タイムマシン……時村博士……東京オリンピック……うう……頭が……。
 それから数日後、三日月山に恐竜が出る、という噂を聞いて調査にやってきた勇介たちは、10日前に山で拾った恐竜の傷の手当てをした事から懐かれ、ゴンと名付けて一緒に暮らしている少年と祖父に接触。少年の両親は、恐竜生存説を支持する恐竜学者だったが調査中に遭難……それもあって少年は「生きていた恐竜」に強い親愛の情を示し、恐竜好きだった勇介もその浪漫に同意。
 なにぶん前作の主人公が「ゴッドハンドなんてありえない」の人だったので、見た目ツッパリだけど「恐竜いいよね」と子供に共感する主人公にホッとしました(笑)
 ところがそこにタイムヅノーとオブラーが現れて恐竜の所有権を主張し……こいつ、子供の恐竜を連れてくるので精一杯だったな。
 頭脳獣の時間操作能力に翻弄されるライブマンだが、ドルフィンアローで時計の針を縫い止める事で一時撤退に追い込み、勇介はタイムヅノーの能力を利用してゴンを生まれた時代に返す事を提案。
 「罪も無い恐竜の子供の命を弄ぶのは、絶対に許さない」
 何よりも恐竜の為に怒る姿で、生けとし生きるものを守る戦士であるライブマンの姿が描き出されたのは秀逸。
 だがゴンを「生きていた恐竜」と信じたい少年は提案を拒絶して走り去ったところをオブラーらに囲まれ、それを助けるライブマン。更にライブクーガーが乱入し、いきなりの自動操縦?! と思ったら、まさかのコロンちゃんが運転してオブラーらを次々と轢いていき……ええとつまりこれはあれだ、そう! 星博士の無念を思い知ったか!
 「何者だ?」
 「俺たちの仲間だ!」
 「私コロン、よろしくね」
 しっかり問い質してきっちり名乗るやり取りがおいしく、まさかのコロンちゃん前線投入からネットを被せてタイムヅノーを捕獲したファルコンは、そのまま走って地面を引きずり回す鬼畜プレイ。
 「止めてくれぇー、助けてくれぇーー」
 そして、銃を突きつけ、脅迫(笑)
 ゴンを過去に返す為なら拷問も辞さない勢いの赤に恐れをなして素直に言う事を聞いたのかと思いきや、コロンちゃん来襲の前まで都合よく時間を巻き戻されてしまうが、少年の命を救う為にゴンが突撃を仕掛け、車に轢かれるのに続き、恐竜に殴り飛ばされる、最高の頭脳と、最強の肉体を持つ生命体。
 ゴンはタイムヅノーの攻撃から少年をかばって倒れ、ライブマンは怒りの連続攻撃からバイモーションバスター。巨大戦では開幕から格好いいジャンプパンチを決めると、今回も胸からビーム、そして、背後に逆巻く波濤の映像が入る新演出で、スーパーライブロボクラッシュ。
 タイムヅノーをやむなく倒した事によりゴンが7000万年前に帰る手段は失われてしまい、ゴンを守ろうとする少年は、ゴンを連れて山奥へと姿を消してしまう……懸命に少年を探す勇介たち、そしてゴンを追うオブラーとガッシュ。てっきり少年をかばって討ち死にしたかと思われたゴンが生存していて問題の種が残り、予想外の前後編で、つづく。
 パイロット版の印象はいまひとつだった今作ですが、3-4-5-6と作品の特徴を活かしつつ勇介達の掛け合いによる軽妙さも良い具合に機能してきて、波に乗り始めた印象。特に、ライブマン内部のやり取りが面白くなってきたのは大きいですが、3人戦隊という事で距離感の近さを表現しやすいのに加え、“等身大の若者像”的な表現には、前作の経験が活かされているのを感じます。
 ところで、ビアス様が背中から左肩にかけて付けているパーツが巨大な手の意匠である事に今回ようやく気付いたのですが、何故、手……? ……もしかしてこの世には、光のビアス様(左手)と、闇のビアス様(右手)が居るのだろうか……。