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ノンちゃんはLV80

ウルトラマン80』感想・第8話

◆第8話「よみがえった伝説」◆ (監督:深沢清澄 脚本:平野靖司)
 「そういえばノンちゃんが作ってくれたケーキは美味かったよなぁ」
 当時は気にするほどの部分でも無かったのかもですが、レギュラー陣の好感度付けが順調に進まない今作の中で、第1話から一貫して、生徒に親身で誰にでも柔らかい対応で好感度を稼ぎ続ける、謎の存在ノンちゃん。
 その好感度を、矢的先生と京子先生とUGM隊員に分けてあげてほしい。
 校外学習として石倉山の鍾乳洞見学に向かう生徒達&引率の矢的と京子先生の一行だが、落語(お調子者ポジション)がファッション(アイドル?ポジション)の作ってきたクッキーの失敗を執拗にあげつらった事からトラブルに発展。突き飛ばされた落語が流血沙汰?! のアクシデントかと思いきや、ケチャップを使った悪戯だったものの矢的先生は激怒。
 「いいかみんな、たとえ冗談にしろ、人の気持ちを弄ぶやつは先生大っ嫌いだ!」
 今、あなたの真後ろに、弄ぶ常習犯っぽい人が立ってますね……。
 これまでもう一つ上手くいっていなかった“クラスの雰囲気と生徒達の個性”をバス移動中のやり取りで出せた事そのものは良かったのですが、落語の
 「まともに女らしいこと出来ないくせに、大きな口たたくな!」
 があまりにも酷すぎて、布石を兼ねた愉快な一幕になってくれないのが『80』仕様。
 40年前といえば40年前でありますが、それほど量は見ていないとはいえ、70年代特撮の諸作でそこまで気になった事が無い部分が、『80』では配置がやけに引っかかります。
 中学生らしい浅はかさというのもあるかもしれませんが、言い回しからすると、落語の父親が家で言っているのだろうな……と想像できてしまうのも辛いところ。
 落語を叱り飛ばした後、矢的がファッションをたしなめる「おまえ女の子なんだからもっとおしとやかになれよ」は、あわや大事故であった事を考えると許容範囲ではありますが、続けて周囲の男子が「なれますかね~」「もう無理でしょうね~」と混ぜっ返すのも余計だったと思いますし、我ながら少し引っかかりすぎな自覚はあるのですが、『80』は妙に、時代の倫理観の嫌な部分の見え方が気になってしまう作品です。
 ……シリーズの持つ風刺性の部分を、無意識に前提に置いている、というのがあるかもしれませんが。
 そんなトラブルがありつつ石倉山に辿り着く一向だが、鍾乳洞の前では中年の男とUGMが揉めていた。
 「儂は一月も前から君たちに連絡しておったのに……今まで君たちはいったい何をしとったんだ!」
 クレーム電話の対応です!
 ハイカー二人の行方不明を告げる男の剣幕に対応し、現場まで出動したにも拘わらず「しかしですね……」と煮え切らない態度のUGMの隊員二人、完全に対応が厄介さんへのそれですが……毎日毎日、「隣の家で不審な物音がする。宇宙人なのでは」「朝焼けの空を横切る虹色の発光体を見た。UFOだ!」「怪獣は人類への救済なのです。穢れきった人類は滅びを素直に受け入れるべき」などなどの電波もとい電話を受け続けていたら、それは奔放にギターをかき鳴らす中学生たちを勢い余って爆殺したくなっても仕方がありません(駄目絶対)。
 「この山の中に、怪獣タブラが居るんだ」
 生徒達の手前、UGMの関係者である事は伏せつつ矢的の素性が紹介されると、考古学者であった男は「学校の先生ならイケる口でしょ」と、3000年前、光の巨人が怪獣タブラを倒して山に封じた伝説をにこやかに語り出す。
 ……私がUGMの隊員だったら、封印された山=石倉山、である論拠が伝説の刻まれた石と山の形が一緒だからの時点で帰りますが、UGMコンビは重い腰を上げて鍾乳洞の調査に取りかかり、たぶん、画面に映っていないところで京子先生が「一生懸命お仕事されるUGMの隊員って素敵ね」とか呟いた。
 鍾乳洞の内部に入り込んだUGM&考古学者は巨大生物の反応をキャッチするが、覚醒した怪獣の引き起こした地割れに京子先生と落語が落下してしまう。怪獣の舌に捕まった落語を助ける為に矢的とUGMは亀裂へと飛び込み、冒頭から特徴的に描いてきた人間捕食用の舌を格闘戦の相手にしたのは上手いアイデア
 怪獣の舌は逃れるも、洞穴に閉じ込められた落語たちを外部の生徒達が協力して助け出す一幕の後、再びの落盤により独り洞穴に取り残された矢的は迫り来る怪獣から助けを求める生徒達の声に目を覚ますと80に変身し、手を振り回すスペースがあって本当に良かった……。
 ……こいつなんか3000年前に見たような? と本気出したタブラの光線技で苦境に陥った80は、起死回生のウルトラ背面蹴りにより逆襲に転じ、打点の高いキック二連発に続けて至近距離からの必殺光線でフィニッシュ。
 市井の怪しい独自研究家扱いしてごめんなさい、というキャップの謝罪を鷹揚に受け入れた考古学者は、ところで、光の巨人は普段は現地人のフリをしているらしいだが……と矢的に視線を向けるが、生徒たちが一様にそんなわけないよと笑い飛ばすお約束も決まり、矢的先生の「明日は臨時の、テストだ!」でオチ。
 ここまで、生徒たちの等身大の問題と個別に向き合っていく展開が怪獣物と噛み合わない上に早々にワンパターンに陥っていましたが、こうなったらみんなまとめて巻き込んでしまえ、と学園パートと怪獣パートを現場でドッキング。バスでの出来事が必要以上に感じ悪い上に、「狼少年は良くない」と怒られる落語がなんの伏線としても機能しないのは残念でしたが、今作ここまででは一番面白かったです。
 脚本の名前に、おや……? と調べたら、円谷では後に『電光超人グリッドマン』でメインライターを務める平野靖士さんの別名義で、もともと円谷プロダクションの文芸部出身との事ですが、この後の活躍に納得の一編。