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命あるところ自由の雄叫びあり!

海賊戦隊ゴーカイジャー』感想・第9話

◆第9話「獅子、走(かけ)る」◆ (監督:加藤弘之 脚本:香村純子)

 ――「俺は獣医だ! 救いを求める命を、黙って見ているわけにはいかない!」

 地球を周回して空飛ぶ島を捜索中のゴーカイジャーは、4周目にして、不自然な雲の塊を発見。キャプテンの雑な運転で近付いていくと、その内部に隠されていたのは、亀の形をした島!
 と、海賊テーマにあやかって、これまで以上に秘宝冒険物の雰囲気を強く押し出した導入。
 だがほぼ同時にザンギャックもこの島を発見しており、ダマラスの号令一下、ピンクの毛×蜘蛛×犬の顔、と要素の多い行動隊長が兵団を率いて出撃し、空飛ぶ島の上でゴーカイジャーと激突する事に。
 戦闘員とのコンビネーションで緑がさらっと凄いアクションを見せ、意外や高速機動系だった蜘蛛隊長に対し、ゴーカイジャーは高速戦隊にゴーカイチェンジ。コンビネーション攻撃を仕掛ける際に組み体操の下になった黒(ハカセ)がぷるぷる足を震わせる掟破りの細かい芝居が入り、序盤の一当たりの印象を緑が持っていきまくります(笑)
 蜘蛛隊長のスピードを上回るゴーカイジャーだが、その時、島に獣の声が響き渡り、振り返ると、巨大なライオンが。
 「マジかよ……」
 魔法使いとか宇宙一格好いい犬とかアンブレイカブル・ボディ(会っていないけど)とはまた在り方の違う、神霊に近い高次存在との接触への驚愕が出ていて、ここのマベのトーンが凄く秀逸。
 この点、高次存在とアクセスしうる魔法使いを最初に出したのは、その後のコンタクト相手への順応性を高めるという意味で、良いチョイスだったのだなと改めて。
 そしてシチュエーションと流れ的には、端っこに某不滅の牙@テンションMAXを立たせておきたくなります(笑)
 とりあえず襲いかかってみたザンギャック兵団が爪の一振りで軽々と薙ぎ払われるのはガオライオンの規格外の存在感が伝わってくる大迫力。そしてゴーカイジャーご一行様もザンギャックともどもまとめて島から叩き落とされる事になり、海賊戦隊の面目躍如(笑)
 墜落死を免れる為にジェットマンになるゴーカイジャーだが、蜘蛛隊長はなんとスゴーミンファイターにまたがって空中戦を挑んでくる切り替えの早さを見せ、矢継ぎ早のアクションの流れが格好いいのみならず、行動隊長の優秀さにより選抜したダマラスの株も上がるのが、実に鮮やか。
 なんとか蜘蛛隊長を迎撃し、地上に降り立った海賊達(と不滅の牙)はライオンを捕まえようと盛り上がるが、そこに現れる白衣の男。
 「待てよ。力欲しさに、また天空島を荒らすのか?」
 「俺たちは危険なプレシャスを保護するだけだ。持ち主が安全に保管できるなら、 それでもいい」
 「だったらどうした?」
 「手に入れられないよ、君たちには」
 「フン。おまえ……何者だ」
 「――俺は獣医だ」
 「……フン、悪いな。俺たちは海賊だ」
 マーベラスと白衣の男は至近距離で睨み合い、過去ヒーローが登場しての緊張感のある対峙なのですが、目元のアップ切り抜きの対比を始め、少々カットを割りすぎた印象。もう少し役者さんの芝居だけで画面を持たせても良かったかなと思うのですが、それをやると金子さんが場を食いかねない、というのはあったのか……?
 「あんたがどう思おうと、関係ない」
 「あたし達はあたし達のやりたい事をやる。それだけ」
 「俺は冒険が好きなんだ」
 海賊達(と不滅の牙)はその場を立ち去ろうとするが、空中で蜘蛛隊長から攻撃を受けたアイムが足を負傷しており、赤青黄と緑桃は別行動を取る事に。ザンギャックの横槍により行動を急ぐ必要でパーティ分割をスムーズに理由付けし、アイムは、かつて「救いを求める命を、黙って見ているわけにはいかない!」と高らかに吠えた過去を持つ獣医により傷の手当てを受ける事に。
 「ただの獣医さんじゃないんだよね? さっき……色々知ってるみたいだったから」
 一応、多分、チームの頭脳派ポジションのハカセだいぶこの星の文脈に慣れてくる(笑) ……考えてみると、実はここまで全てのレジェンドに対面しているのはハカセだけ、という奇妙な偶然はあったり。
 「俺は、ガオライオンに選ばれた戦士、――ガオレンジャーのガオレッドだった」
 どういうわけか、本名を名乗らないのですが、「戦士になるつもりなら、今までの名前を捨てろ。俺はガオイエロー、おまえはガオレッド」が染みついてしまっているのか(笑)
 「お願い! あれ……僕たちに頂戴!」
 そしてこの星の文脈には慣れてきたハカセだが、流儀はやはり海賊?だった。
 「……俺にはできない。ガオレンジャーの力はガオライオンのものなんだ。それに、お宝しか目に入らない海賊に、ガオライオンは応えてくれない」
 「そんな~」
 「それは違います」
 犬を抱えたアイムが立ち上がり、怪我した犬がアイムに懐いている様子を見る事で獣医のアイム(&ハカセ)への対応が柔らかくなる、ひいてはアイム達が信じるマーベラス達の事を考え直す一因になっている、というのは多少あざといながら効果的な小技。
 一方、ザンギャック旗艦ではダマラスから海賊たちの目的について聞き出したぼんくら殿下が高笑い。
 「小さい! 小さいぞダマラス! 我々は間もなく、全宇宙を征服する! そうなれば宇宙にある全てのものが、ザンギャックのものなんだぞ? 今探す必要がどこにある?」
 指先をひらひらさせる細かい芝居が面白い殿下ですが、この時、殿下がブリッジに乗り込んでくるやそそくさとダマラスから離れ、私はこの悪巧みに関与してませーんのポーズを取るインサーン(能力は有用と見てかダマラスも敢えて巻き込まない)の描写は今回の地味に好きなシーンで、ザンギャックサイドもしっかり奥行きをつけてきます。
 「ぬ……しかし、殿下……」
 ダマラスに大きな顔をさせたくないという意識も働いてか、強権を発動した殿下が作戦変更を指示し、蜘蛛隊長率いる兵団が一般市民に牙を剥く姿を目にするマーベラス達……。
 「マーベラスさん達が宝物しか見ていないなんて事はありません。だって、わたくしを見捨てませんでしたもの。わたくし……ザンギャックに滅ぼされた星の、王女だったんです。何も知らない、何も出来ない、お尋ね者の元王女なんて、宝探しの足手まといにしかならないでしょ? それでも、マーベラスさん達はわたくしを受け入れて下さいました」
 前回明かされたアイムの過去が拾われて、“海賊達の流儀”に改めてフィーチャー。今回、『ガオ』本編との接続度はそこまで深くなく、物語のギミックの要件を満たしつつ海賊戦隊とは何かを丁寧に組み立てていく作業の一環になっているのですが、それを見守り認めるのが、00年代戦隊の基本スタイルを構築した『ガオレンジャー』のガオレッド・獅子走である事に、一つの意味があると捉えていいのかもしれません。
 「うん……ホント、みんなすぐ関係ない事に首突っ込んじゃうんだよね。気になる事があると、お宝後回しでそっち行っちゃうから、もう、ついてくのが大変。でも……だからいいんだ」
 「マーベラスさん達が本当に宝物しか見えていない海賊なら、わたくし達、海賊にはなっていなかったと思います」
 第2話から繰り返し示されてきた、少々毛色の違うハカセとアイム、というピースも綺麗に収まり、海賊たちの核にある“何か”――それが、自分たちの事しか考えず他者から虐げ奪う欲望とは違うものである事が示されるのですが、明確に言葉にはされない“それ”がなんなのか、海賊と帝国は何が違うのか? というのは、今作の作り手が物語の中で常に海賊達に(を通して)問いかけ続けている事なのかもとも思えます。
 「……しょーがないなぁ」
 「さっきの借りを返さないとな」
 「……おいお宝、ちょっとそこで待ってろ!」
 (みんな悪いな。だがここは俺一人で行くしかなかったんだ)
 マーベラス達はニヤリと笑うと市民狩りを始めた蜘蛛隊長らに襲いかかり、いちいち理由を付けるのは良くも悪くも『ゴーカイジャー』の面倒なところですが、いちいち理由を付ける事の大切さと向かい合うのがまた『ゴーカイジャー』なのかな、と。
 《スーパー戦隊》という本邦でも希有なシリーズを土台と素材にしたヒーロー賛歌であると同時に、その中で「ヒーローとは何か?」を突き詰め問い直しているのは、今作がツボに突き刺さってくるところ。
 そういう面では、割とややこしい戦隊だとは思うのですが、そんな時こそ“キャラクターの魅力”が大いなる武器になるわけで、過去ヒーロー含めて、メインの荒川さん、そしてここまでサブで2本入った香村さんの筆致が実に効いており(「レジェンド回」である事につい目がいきますが、海賊たちの自然さも素晴らしい)、設計的には例えるなら『クウガ』と『ディケイド』を一緒にやろうとしている部分があるようにも思えます。
 「あんた達、お宝探しはどうしたの?」
 「うるさい! 任務が変更になったんだ!」
 「ふっ……軍人は大変だな」
 長らく、額の辺りに指を当てるジョー(青)の気取ったポーズの由来が気になっていたのですが、弾け気味の回想シーンを見るに、もしかして軍人時代に命令で身につけたのでしょうか!
 「勝ち誇る時は額に手を当てて鼻で笑え! サー・イエス・サー!」
 悲しみに濡れるジョーの過去はともかく、ナビィから連絡を受けたハカセとアイムも現場に急ぎ、「何も知らない、何も出来ない、お尋ね者の元王女」を受け入れたマーベラス達、華麗な上段回し蹴りを決める元王女の秘めた殺意を的確に見抜いた疑惑も。
 二人の後を追いかけた獣医は、逃げ惑う人々を殺陣に組み込む一風変わった戦闘で、ザンギャックを蹴散らすと同時にそれとなく力なき市民達を助ける海賊達の戦いを目にする。
 「フッ、なに、ついでだ」
 「おっとこまえさーん! 借りるよ!」
 青は助けた女性達に囲まれてきゃーきゃー言われ(高度にスーパー戦隊慣れした地球人は、素顔を見ずとも色と仕草で、誰が二枚目ポジションか判断できるのだ!)、黄はその青から剣を借りてワイヤー剣で家族連れを救出。
 「あいつら……」
 ――「あんたがどう思おうと、関係ない」
 ――「あたし達はあたし達のやりたい事をやる。それだけ」
 「あいつら……口がわりぃんだよ」
 自分たちの事しか考えていないのではなく、他人の視線や評価と関係なく、どんなに強大な壁が立ちはだかろうと信じた道を突き進む……海賊とそしられる事もあり、誰彼構わず無条件に助けるわけでもなく、正義の味方ではないかもしれず、だが、誇りを胸に抱いたとんでもない奴らは、勇気の旗を掲げ自由の拳突き上げて星無き夜にも七つの海を駆け抜ける――


やりたい事をやってやれ
命がけだぜ 欲しけりゃこの手で掴め

 獣医は海賊たちの魂の在り方を知り、蜘蛛隊長&スゴーミン部隊が並んで砲撃してきたところに緑と桃が合流して5人で反撃、もぴしっと決まり居並ぶゴーカイジャー
 「アイム……傷はいいのか?」
 「はい。ご心配おかけしました」
 個人の主義や信念を尊重して適切な距離を保ちながらも、仲間に対する気遣いと目配りはそれぞれが持ち合わせた“大人の戦隊”としてのゴーカイジャー像もだいぶ出来上がり、5人はガオレンジャーにゴーカイチェンジして、殺る気満々だぜぇ!
 アップになったマスクの交換から『ガオ』OPイントロが入るのはやはり素直に熱く、らしい格闘戦を展開して白黒コンビアタックも炸裂。合体武器が超巨大剣、という破邪百獣剣はストレートな格好良さで好きだったので、赤がいつもの雑な感じで右手を上げると召喚されてからのスゴーミン撫で切り、は満足でした。
 「見てるんだろ、ガオライオン? おまえはどうする?」
 果たして海賊たちの魂は、地球の守護獣パワーアニマルの心に伝わったのか? 残った蜘蛛怪人はゴーカイブラストで吹っ飛ばし、過去ヒーローの技を持ち込んだ上で現役ヒーローの武装にもしっかり役割を造り、それが自然な流れに収まっているのも、今作の優れたところ。
 基本的に今作、セールスポイントであるゴーカイチェンジ(コレクションアイテムもである)をキーとしてアクション主体の作風なのですが、敵を物量で攻めてくる超巨大帝国ザンギャックとした事により、過去スーパー戦隊+自前必殺技、によるダブルフィニッシュを行っても、〔ゴーカイジャーが弱いor過去ヒーローの力を用いたオーバーキル〕という印象にならないのが、非常に上手い設計。
 これにより、戦闘の緊張感と爽快感が保たれ、勝利そのものも劇的となり、今作の構造を支える大きなポイントとなっています。
 巨大化した蜘蛛隊長とスゴーミン相手にゴーカイ砲撃しようとするゴーカイオーだが、蜘蛛隊長の隠し技・蜘蛛クローにより操舵輪の動きを封じられてキーを使えない非常事態(以前も背中を狙われていた記憶があり、わかりやすい弱点なのか)。
 だがその時、「持ち主を選んでるつもりか。ふざけるな! いいか? 俺が選んだんだおまえを!!」と強引にライオンを、じゃなかった、ゴーカイジャーを地球の命を守る戦士と認めたガオライオンが天空島から降り立つとガオレンジャーの“大いなる力”をゴーカイジャーに託し、ネバギバだぁ!!
 ネバギバ魂を注入されたゴーカイオーは蜘蛛クローを力尽くで解除すると、両足をパージして下半身をライオンと合体させたキメライジャーもといガオゴーカイオーへとフォームチェンジ。
 これに対し、下半身をバイクに変形させたスゴーミンバイク部隊が迎え撃ち、スゴーミン凄い。
 これも敵としてのザンギャックの脅威を示すギミックといえますが、高速のチェイス戦(前半の戦闘が布石として機能し、全体の統一感をもたらす事に)の末にバイク部隊を蹴散らしたガオゴーカイは、ゴーカイアニマルハートにより、蜘蛛隊長を撃破。
 それを見届けた獣医――獅子走は、海賊たちの胸の羅針盤を感じ取って病院に戻っていき、特にこの当時だと、00年代特A級レジェンド、という位置づけだったのでしょうが、全国大会を制覇した代にレギュラーだった部活OBの大先輩、みたいな扱い(笑)
 「これでようやく4つめの大いなる力ゲットか」
 「残り30個。まだまだ先は長いなぁ」
 ガオライオンに見送られてゴーカイガレオンは天空島を離れ、海賊達の冒険の航海はつづく!
 デカレン回での明確な敵対もありましたが、改めて、一般市民(公権力関係者以外)目線から「そうは言ってもおまえら海賊だろ?」と示された疑問に対して、ここまでの蓄積をまとめる形で“海賊戦隊とは何か”を改めて描き、それを大先輩と地球の守護星獣という高次存在に認めさせる事により、初期状態から完成度高めのチームだったゴーカイジャーを、その内的な変化を含めて外部目線から肯定する、ちょっと変則的なチームアップ回。
 トリッキーな技術を求められる前回を荒川さんが引き受け、2回連続でレジェンド回を任された香村さんですが、チームの内部ではなく外側から見た問題について大先輩に納得させる、という内容をいやらしさを感じさせずにスムーズに描いたのはお見事で、『シンケンジャー』中盤からローテ入りし、前作『ゴセイジャー』では最多演出だった加藤監督も、流れを崩さずに重要回をまとめてくれました。
 ゲキレン回&今回でハカセとアイムにスポットが続いた所で、次回、ジョー×ルカ。