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愛は戦う勇気だね

光戦隊マスクマン』感想・第49-50話

◆第49話「よみがえったイアル姫」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 「冷たく長い眠りから、そなたを目覚めさせるのは、このキロス」
 キロスがイアル氷塊を溶かそうと目から怪光線を出したりしている頃、マスキードリルの助けを借りたレッドマスクは地底へと突入。
 「チューブは任せておけ!」
 「すまんブラックマスク! 美緒は必ず連れて戻ってくる!」
 愛に突っ走るタケルを周囲のメンバーが支える、という初期の構造に回帰し、風地獄へと転落したレッドマスクは、キロスとご対面。イアル氷塊を挟みながら、強風荒れ狂う風地獄での激突する戦いはなかなかそれらしい絵となり、もつれあう両者は風地獄の奥底にあるジゴクドグラーの巣に吸い込まれそうになる事に。
 キロスが勝ち誇っていた風地獄も、所詮はゼーバの支配領域に過ぎなかったというのは地帝王の強大さの表現とはなりましたが、とにかく今作は、巨大戦を担当するやられドグラーを毎回ひねり出さないといけないのが、随所で苦しそう。『チェンジマン』『フラッシュマン』ではあまり気にかかった記憶がないのですが、今作はどうも、その部分でのシナリオ上の無理が目立ちます。
 地獄ドグラーの攻撃を受けるレッド&キロス&氷塊は、乱戦の末に地表へと投げ出され……まあ、撮影が大変そうだったので。
 「まさか風地獄から抜け出そうとは」
 今回なにかと感情の振れ幅が大きいゼーバ様が目を瞠るのですが、1000%偶然だった気がします!
 ゼーバはイガムに、イアル氷塊ごと皆殺しにせよと命令し、フーミン、オヨブー、そして地獄ドグラーと合流したイガムは、氷塊を攻撃。キロスに負けじと氷塊に寄り添って愛をアピールしていたタケルはその前に立ちはだかるが、どさくさ紛れに氷塊を奪ったキロスが再び逃走し、一斉攻撃を受けたタケルは崖から転落。
 イガム一派は氷塊の行方を追って分散し、キロスは不意を打ってオヨブーを拘束すると、これまでかき集めた金銀財宝を溜め込んだアジト――黄金洞窟へと拉致。
 「だがこの黄金の輝きも、イアル姫の美しさにはかなわぬ」
 キロスは氷を溶かす為にオヨブーファイヤーを要求し、地底赤影、思わぬキーパーソンに(笑)
 「戦う為に命を燃やしているのだ。お前如きの色恋沙汰の為に燃やす炎ではない」
 「……黄金をやる! 黄金洞窟全てはおまえにやる!」
 「ふん!」
 ここで金銭の誘惑に負けたらどうしようかと思いましたが鼻を鳴らしてあざけり、前回から格好良すぎるぞオヨブー!
 「おのれぇ……貴様命が惜しくないのか!」
 「……そんなに見たくば見せてくれよう」
 とうとう鎌を突きつけてきたキロスを前にオヨブーはメディテーションすると、オヨブーファイヤーにより戒めを破壊してキロスを攻撃!
 「言った筈だぜ……これは命を削って燃やす、身を尽くしの炎! 戦士が、戦いの為に燃やす、炎! 貴様ごときの為に燃やすと思ったか!」
 「おのれぇ、たたっきってやる!」
 疲弊したオヨブーに剣を向けるキロスだが、洞窟を探り当てたイガム達が間に合い、一斉攻撃を受けてひっくり返った拍子に取り落とした剣が腹部に突き刺さり、タケルと戦わない内に瀕死に(笑)
 前回今回と、格好良すぎるオヨブーが周囲の幹部キャラの運命を狂わせていくのですが、それでいいのか。
 傷だらけのタケルはキロスの絶叫を耳にして洞窟を見つけるとオーラマスクするが、身を盾にしてイアル氷塊を守った事で変身解除。
 「なぜ……何故それほどまでに?!」
 「俺は……欲しい物は……必ず、手に、入れてきた……イアル姫は、俺のものだ……」
 どういうわけか、瀕死で氷に手を伸ばすキロスがその問いに答えたような形になってしまい、うちの妹のモテパワーがちょっと怖い……! とイガムは氷塊と男達をまとめて攻撃。だがその時、美緒を守ろうとしたタケルの死中に活ありメディテーションが愛の奇跡を起こし、湧き上がるオーラの奔流が氷塊を砕くと、遂に解放される美緒/イアル姫。
 タケルが美緒の名を呼び固く抱きしめる一方、砕け散った氷の破片により盗賊騎士キロスは致命傷を受ける。
 「俺にも……たった、一つだけ……手に、入らぬものが……あっ……た……」
 キロスは抱きしめ合うタケルとイアルを目にしながら絶命し、劇中で表現された以上の畜生働きを重ねていたと思われる悪党なのでしかるべき因果応報なのですが、タケルの恋のライバルとして登場したかと思いきや、恋愛テーマの掘り下げが進まずにチンピラバトルジャンキー扱いとなり、物語の中でいまひとつ存在感を持て余されたたまま最終盤に突入した末、状況を引っかき回そうとするもお呼びでない最期を遂げる、複数の意味で酷い死に様となりました。
 イアル姫に執着し続ける厄介な変態ポジションの確立が遅すぎたのが、惜しまれます。
 また結局、2年前の覗きの真相は謎のまま闇に葬られてしまったのですが(回想の主観人物からするとイガム想定だったと思われるのですが……)、個人的には、2年前の真実を知ったキロスがイガムの為に剣を振るう事を誓って「騎士」となり、イレギュラーな存在としてゼーバの秘密を探り出そうとする……なんて展開があればと妄想していたので、これといって焦点が当たらないままで終わって残念。
 「タケルの愛が、氷を溶かそうとは。なんとしてもイアル姫を抹殺せよ!」
 元を正せば自ら冷凍刑に処していたにも関わらず、急にイアル抹殺にこだわるゼーバ様の命を受け、崩壊した黄金洞窟から脱出したタケル&美緒に迫るイガム。
 「イガム!」
 「黙れ! イガム家復活の苦労も知らず、敵と恋に落ちるとは! 断じて許さぬ!」
 マスクマンが集合して戦闘となり、ゼーバ様が送り込んだエネルギーにより地獄火炎放射を放つ地獄ドグラーだが、ジェットカノンで轢き倒すと、クロスターゲットしてフィニッシュ。……迫り来るジェットカノンから、地獄ドグラーと一緒にオヨブーとフーミンも逃げ惑うので、危うくまとめて爆殺されるかと思ってドキドキしましたが、そんな事にならなくて良かったです(笑)
 久方ぶりにゼーバ様が気合いの入ったオケランパァァァを披露し、巨大化した地獄ドグラーは、ダブルバルカンで弱らせてから鉄拳オーラギャラクシー。
 そして、イアルさえイガムが女である事を知らなかった……と衝撃の事実が明かされ…………あ、あれ、ゼーバによる地底統一以前から、実の妹さえも兄と信じ込むほど徹底してイガムを王子として育てていた母、割と外道……?(元々は、王家のしきたりとか設定があったのかと想像されますが)
 ナレーション「だがゼーバは、生き返ったイアル姫に、異常なまでの危機感を抱いている」
 今回やけに情緒不安定だったゼーバ様はやはり「異常」で良かった、とナレーションで補強が入って、つづく。
 イガム家復活の為にはイアル氷塊にもダイレクトアタック、と一線を越えてしまった感があるイガムですが、イアルはイガムを助けたいと願いそうで、果たして、地底と地上の争乱の行方や如何に。次回――アナグマスが、割れた?!

◆第50話「ゼーバ!戦慄の正体」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
 遂に再会を果たしたタケルとイアル(こちらが本名という事でか、今回から呼称が統一)は、さっそく海岸でいちゃいちゃしていた。
 ケンタが闇のオーラパワーで暗黒騎士ケンタに覚醒しないかドキドキしますが、イアル姫の頭飾りが妙に骨っぽいデザイン(恐竜の頭蓋骨を被っているような見た目)なのもの気になります。
 一方、地底では帝王ゼーバが決戦の号令をかけていた。
 「遂に最終作戦を実行に移す時が来た!!」
 「ゼーバ様、最終作戦とは?!」
 「作戦開始!!」
 無視された(笑)
 改めて、最終作戦――それは、地底城を浮上させる事により、地底城に集めた暗黒粒子を全地上世界にばらまき、地上を冷たく暗い闇の世界へ変貌させる事……と、どこかで聞いた内容で、チューブも原点に立ち返る事に(第2話では、幻影地底城でしたが)。
 (イアル姫が生き返ってからのゼーバ様はおかしい……何故こんなにも急がねばならんのか)
 ……いや、最近ずっとおかしかったような(笑)
 地上が不吉な暗雲に覆われる中、イアルの持つペンダントの光に導かれたタケル達は、イガムと遭遇。
 「お姉様!」
 スパイ任務で地上に出て早々バイクで轢かれそうになったのをきっかけに地上人の恋人を作ったのに始まり、サーキットに飛び出して二人だけで逃避行しようとする、約1年間の凍結刑に耐えて正気を保つ、など色々ぶっ飛んだ感じのあったイアル姫ですが、20数年、兄だとばかり思い込んできた相手に対する切り替えの早さも凄まじく、基本的に大変、魂が強い。
 「黙れ。俺は地底王子イガム。イガム家復活の為に戦っておるというのに、貴様という奴は!」
 「ゼーバの元で、イガム家が復活する事に、意味があるのですか?!」
 「うるさい! イガム竜!」
 あ、生きてた。
 墜落炎上事故でリタイアが懸念されていたイガム竜が復活し、マスクマンに猛攻を仕掛ける、と思いきや、口から謎のボールを吐きだしてイアル姫にパスすると姿を消し、イガム竜さえイアル姫の魅力にメロメロだ!
 うちの妹のモテパワーが怖すぎる……! とイガムが改めて戦慄する一方、地底ではその球体を見て大変慌てるゼーバの姿が怪物へと変貌。
 「その姿は?! ゼーバ様が、まさか、そんな馬鹿な!」
 驚愕するアナグマはゼーバの命令で緊急出撃するが、巨大な地割れに巻き込まれたタケル達の前で、地底の泉に落ちたドラゴンボールから朗々と声が流れ出す……イガム竜がその体内に秘め隠していたのは、イガム家に伝わる水鏡の秘術により再生される記録媒体であり、そこに収められていたのは、数百年前、イガム家によるリサールドグラー封印の記録……そして、地底ピラミッドの封印を破るも瀕死のリサールドグラーが、最後の力を振り絞り魔の泉で子供を産んでいたという恐るべき真実であった。
 母リサールの血肉を食らう事で成長し、その怨念と力を受け継いだ、いわばリサールドグラー二代目こそが、地帝王ゼーバの正体だったのである!
 ここまで基本、ナレーションが煽るばかりで劇中人物達の関心が薄く(特にマスクマン側からは全く興味の範囲外)、サブタイトルにされるも特に期待はしていなかった「戦慄の正体」ですが、散りばめてきた要素を出来る範囲で繋げつつ、子に自らを食らわせる母リサールの姿が映像的に秀逸(グロテスクかつ苦痛が表現されているのが良い)で迫真さを増し、予想外に面白い正体でした。
 これがもう少し後年になると、「血の怨念」の要素がヒーローサイドにも跳ね返ってきてもう一跳ね生まれそうですがそれはなく、光戦隊サイドとの接続がこれといって生まれないのは、惜しい。
 (なんということだ……俺は地底獣に仕えていたとは)
 また、地底人と地底獣の格差意識は理解はできるものの、これまでも人語を解する知能の高い地底獣は登場していましたし、なにぶんチューブのナンバー2がアナグマなので、ゼーバ=地底獣から受けるショックの説得力が物語の大きな転機としては弱く、ピラミッド事件の際に取り沙汰されてはいましたが、あの段階での心境の掘り下げが足りていなかったのは残念。
 地底世界の統一も、地上への侵攻も、全ては最強最悪の地底獣リサールドグラーの怨念が引き起こした悲劇であり、その復讐の犠牲となって振り回されていた事を知るイガム。ビデオレターは続けて、イガム家に生まれる美しき双子の姉妹こそゼーバの野望を阻む運命の子であると告げるが、ゼーバ打倒の方法を語る前に、アナグマによって無惨にも破壊されてしまう。
 「もう少しでゼーバを倒す方法がわかったのに!」
 自らの立場に困惑するイガムをかき口説くイアルだが、再び地震が発生。暗黒粒子の満ちる中、ゼーバは本来の姿を垣間見せ、マスクマンはイガム竜の導きにより地底から脱出。敵の足止めに残ったタケルは、落盤の下敷きから立ち直ろうとしたアナグマ投石を繰り返す酷い嫌がらせを行い、さすがにそれはどうよ、とタケルに切りかかろうとするイガムだが、再びの地震。そしてタケルは、負傷したイガムを連れて地上へと脱出する。
 「イアル姫と同じ目、同じ唇、同じ顔の君を、そんな美しい姉妹を泣かせたくはない」
 穏便に翻訳すると「愛する人の大事な身内を傷付けたくない」なのですが、字面だけ見ると「君の顔が好きだ」であり、相変わらずタケルは、ちょっと洒落た事を言おうとすると凄くダメな感じになるな……!
 地上へ脱出したイガムはイアルの手を取る事を拒否すると、大変格好は付かないが、フーミン達と再合流。
 「お節介はやめてもらおう!」
 「お姉様……!」
 「信じよう……俺達はいつでもどんな時でも信じてきたじゃないか」
 「信じるべき事はただ一つ。もうすぐこの世は、暗黒粒子に覆われる事だ!」
 タケルの台詞からアナグマの返しへの繋ぎは大変格好良く決まり、オーラマスクするマスクマンだが、本気を見せるアナグマの猛攻に大ピンチ。だが、アナグマ渾身の殺人サーブをレーザーアローで跳ね返し(マスキーブレードで打ち返すのかと思ってドキドキしていたら、飛び道具で大変残念)、マスキークラッシュで真っ向両断。弱ったところにジェットカノンを叩き込み、幹部クラスの意地を見せて踏みとどまろうとするも、派手な5段階爆発で、アナグマ大爆死。
 「オケランパ!」
 あ、するんだ(笑)
 地底の人と獣の差とは……? という問題が再浮上していたところで、直属の上司を一瞬の躊躇もなく巨大化してしまい、知性を失い巨獣と化したアナグマスがマスクマンに迫る姿には、色々と考えさせられます。
 巨大アナグマの必殺サーブに苦戦するGロボだったが、取っ組み合いから投げ飛ばし、飛び道具で弱らせたところに鉄拳オーラギャラクシーで合掌。ここに、中盤、意外な実力者として目立ちかけるも特にそれ以上の掘り下げはないまま元のポジションに戻ってしまったアナグマスが退場。最終盤らしく、バラバ-キロス-アナグマ、と3話連続で幹部クラスが退場となったのですが、今作における悪玉サイドの「出だしは悪くなかったのに揃って中途半端な扱い」により、どのキャラもいまひとつ劇的さには欠ける事に。
 アナグマスこそ巨大化しましたが、人型幹部を撃破→それはそれとしてドグラーと巨大戦、の分断構造になってしまったのも、盛り上がりを少し難しくしてしまいました。
 「フハハハハハ! 地底城発進の時が来た!」
 地底ではゼーバ様が大ハッスルし、いよいよ始まるチューブの最終作戦。
 今回の内容を見るに、イガムが男として育てられていたのは「双子の姉妹」である事を隠蔽する為であり、ゼーバが慌てだしたのは「イガム=女と判明したから」かと思われますが、後者に関しては、イアル姫の抹殺を焦るより身内のイガムを処断してしまった方が早いので、この辺りはどうも巧くまとまりきらなかった感。
 次回――ここまで生き残った忍者二人が雑に処理されないかどうかが大変気になる最終回!