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日本全国 SHOW TIME

『ペルソナ5S』感想

 『ペルソナ5』(以下:原典)の物語から半年後――再び集った“心の怪盗団”の戦いを描くアクションRPG。
 注目は、凄くいい事を言っているけど頭にはサングラス乗せているアン殿。
 しばらく前にクリアしていたのですが、発売から2ヶ月ほど経過したので、そろそろ感想をひとまとめ。以下、ストーリーの具体的な内容には触れませんが、ゲームの構造については触れるので、ご留意下さい。
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 原典のクリアを前提とした完全にファン向けといえる内容で、謳い文句通りの完全続編がアクションRPGで良かったのか、という疑問はまずないでもないのですが、リズムアクションや格ゲーよりはユーザー層が被っていただろうか、とは思うところ。
 プレイ時間は約70時間ほど。ジャンル横断ゲームとしては程よくまとまっており十分に楽しめましたが、なんというか、RPGとして75点、アクションゲームとして75点、キャラゲーとして75点……まとまりは良いが全てにおいて奥行きが足りない、というのが正直な総評。
 ストーリーそのものは良かったですし、削る要素と足す要素を計算して全体の構造はよくまとめてきているのですが、RPGとして見てもアクションゲームとして見てもキャラゲーとして見ても、ちょっとずつ物足りなくて、高級素材の味は損ねなかったが、もう一押し欲しかった、という気分が出てしまうそんな一作でした。
 勿論、完成品がバランスの良い落としどころであって、どこか一つでもそれを崩すと途端に駄作になっていた可能性もありますが、オール90点を期待していたら、オール75点が出てきた、というシリーズへの事前のハードル設定もあり。
 なおキャラゲーとしては、なにはなくとも、ラヴェンツァファン向け、だと思います(笑)
 原典におけるコープにあたる要素をオミットしたのは英断だったと思っていますが、怪盗団以外のキャラが本命のユーザーへの配慮としては圧倒的に正しい一方で、その配慮がシナリオやシステムにおける奥行きの不足感になってしまった面はあり、そういった部分で、ここでまとめると75点なのはわかっているが、その壁を乗り越えていくだけのエネルギーを様々な事由で絞り出せなかった、そんな印象。
 ごく一部を除き、コープキャラの名前も意識的に出さなかったと思われる作りなのですが、再始動にあたって怪盗団の誰一人として、三島の名前をちらりとも思い出さないのは、さすがに可哀想だと思いました(笑)
 ……うちのジョーカーは、確かに、なるべく三島と関わらないようにしていましたけど!(でも原典ラストバトルイベントの三島の勇姿は会心のはまり方だったとは思います)。
 システム面では、原典が「如何にSPを管理して短い日数でダンジョンをクリアし、残り期日を育成要素に回すか」という構造だったのに対して、ダンジョンの出入りに関するデメリットを廃し「今あるリソースを最大限活用して如何にチェックポイントまで辿り着くか」としたのは、ジャンルに合わせたゲーム性の変化として面白いアイデアだったと思います。
 また、アクションゲームとしてのスキルに自信が無いプレイヤーは、出入りと戦闘を繰り返す事で、レベル上げと一緒に回復アイテムを繰り返し購入可能となり、プレイヤーのスキルに合わせた進行が自然と可能になるのも、良い救済策。
 残念だったのは、「異世界と現実世界を頻繁に行き来する」構造にも拘わらず、ローディング時間が長めな事と、ダンジョンを脱出するとアジトの外(街マップ上)に出てくる事。
 現実世界に戻った時点でHP/SPは完全回復しますし、基本的な買い物はアジトで可能なので、ダンジョンから出る度に街マップから再びアジトに入る一手間をかけさせられる仕様、が割と意味不明で、凄く無駄なストレスだったのは残念。
 アクションは割と手応えがあり、私程度の腕だとだいぶ苦戦したのですが、ゲームバランスはRPG的に作られているので、パーティの出来る事が増え、スキルが強化され、ペルソナの選択肢が増えて、アイテムのリソースにも余裕が出てくる後半ほど、楽になる作り。
 最終的に、ゲーム通して一番、これは駄目かもしれない……と思ったのは、最初のゲートキーパーでした(笑)
 基本のパーティ構成は、ジョーカー・クイーン・ノワール・ソフィー、たまにフォックス。RPGは固定メンバーでやる性格なので、原典の時は使っていたモナを、折角なので新キャラのソフィーと入れ替えた形。
 ゲームを遊び尽くすには、メンバーを入れ替えながらプレイした方が良かったのでしょうが。
 ウルフの方は、加入が遅かったというのもありますが、果たして子持ちのおっさんペルソナ使いというキャラは、このゲーム(世界観)に必要だったのだろうか、というのを延々と考えさせられるキャラでした。
 あと、三木眞一郎自体は嫌いではないのですが、あまりにも三木眞一郎すぎて、最初から最後まで、善吉というか三木眞一郎で、キャラクターとして巧く捉え損ねた感はあり(OP時点で実質バラしている割には、中で引っ張りすぎたかなとも)。
 ストーリーは意識的に原典と重ねる部分を用意しつつ、原典では広げなかった要素を取り上げるなどしており、「社会悪と戦うピカレスクヒーロー」である、事にこだわった内容と、それ故の最後の仕掛けは、かなり好き。
 若干、怪盗団メンバーへのスポットに差が出たのは気になりましたが、得をしたのはフォックス、割を食ったのはモナとナビ、といった感じでしょうか。
 原典、というかシリーズとして、人間の悪意や歪みをえぐり出す作風は健在で、特に今作は事件の背景と向き合う部分が重いのですが、ゲームシステム上、RPG的な自由行動でプレイヤーが適度に気持ちをクリアにする時間を取る場所がないので、きつい戦い→きつい戦い→きついイベント、の連続になりがちなのは、噛み合わせの難しさを感じた部分。
 プレイスタイルにもよりますが、原典における、シャドウ撃破~謝罪会見イベント、の間に“ゲーム的な間”が入るのは、思ったよりも必要な事だったのだな、と気付かされました。
 同じストーリー上の緩急でも、「幕間のイベントを見て楽しむ」のと「自分で次に何をするか考えて自由行動をする」のとでは全くゲーム的な意味が違うので、原典はその辺り、RPGとしてやはり良く出来ていたな、と改めて。
 そういう点では今作は、ジャンルを変えたが為に、シナリオの構造において生真面目に原典を踏まえすぎた、という面はあるかもしれません。ただそれが『P5』らしさ、といえばいえるので、シリーズとしての一体感を出す効果は発揮していたのだろうなと。
 らしさ、といえば、日常シーンなどのBGMは基本原典と同じなのが非常に“らしさ”を出しており、音楽の力の強さも改めて感じる作品でした。特に、原典は長丁場のゲームなので、音楽が体に染み込んでいる、というのもあり(笑) 個人的には、原典シドー戦の曲の使いどころがお気に入り。
 というわけで、原典のキャラの魅力は活かされ、ストーリーの着地点にも不満はなく、ゲームデザインも小綺麗にまとまってはいるしそこが恐らく目指したところかとは思うのですが、小綺麗にまとまっているが故の飛距離の不足に、もうちょっと飛距離を出せたのではないか……と思ってしまう、そんな一本でした。
 基本的に、要求が贅沢な自覚はあります(笑)