東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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愛の戦士マスクマン

光戦隊マスクマン』感想・第47-48話

◆第47話「出撃前夜!死の踊り!」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「我がチューブは、いよいよ地底ダンスの儀式を執り行う時が来た!」
 いよいよ戦争の継続が難しくなってきたのか、戦いの神に踊りを捧げる事で地上に未曾有の災いを起こし、その混乱の隙を突いて総攻撃を仕掛けるのだ、と神頼みを宣言するゼーバ様。
 総攻撃の指揮権を巡ってダンス対決が始まり、バラバと部下達のダンスを見て、「バラバラだ……」と首を左右に振るオヨブー、相変わらずおいしい。
 一方、キロスは地上でダンス教室の踊り子達を洗脳し、黒いサングラスをかけて窓から覗き込む姿が、なにやら常習犯(笑)
 「命の限り踊るのだ! 踊りながら燃え尽きる命こそ、戦いの神は喜ぶのだ! はははははは!」
 戦いの神から失格の判定を下され、キロスを真似て地上で優秀な踊り手を探すバラバが目を付けたのは、ハルカが超スパルタ指導する少女。
 「これは誰もが乗り越えなければならない試練なのよ。この試練を乗り越えてこそ、本物になれるのよ」
 「私、もう駄目です! 自信がありません!」
 なにぶん、忍道とオーラロードで育てられたハルカさんの、指導者としてはちょっと駄目そうな感じがリアル。
 逃げ出した少女はバラバ達にさらわれてしまい、ハルカは少女との出会い、ダンスを教える事になった経緯を皆に説明。
 「私も、子供の時からダンスが大好きだったの……でも、忍者の修行に打ち込む為に、ダンスを辞めてしまったの」
 相変わらず、さらっと重すぎるハルカの過去ですが、いつしかハルカは、少女に過去の自分を重ねてしまっていたのだった……。
 「果たせなかった私の夢を託すあまり、私は熱を入れすぎたのかもしれない。ダンスは、本来楽しいものなのに……あの子に苦しみだけを与えてしまった」
 この最終盤に突然のダンス対決で困惑していたのですが、これまで基本的に“アスリートの立場”であったマスクマンが、部分的に“トレーナーの立場”として描かれる事になるのは、未来への視線も含め、1年間の物語を通した立場の変化の描き方として良かったです。
 また、自分が指導される側であった時の気持ちや体験を、そのまま指導する側に押しつけてはいけない、といういうのも良い反省。
 「そんな事はないよ。楽してたら何も身につかない。君たちのトレーニングでも、ダンスの稽古でも同じだ。君のやってきた事は、決して間違ってはいないんだよ」
 ……直後に、昭和スポ根長官に上書きされてしまいますが(笑)
 地底では、キロスの連れてきたダンサー達が疲労から限界に達していたが、バラバが連れてきた少女の踊りに、戦いの神は大喜び。雷鳴が轟き、動物たちがざわめき、遂には吹雪が荒れ狂う異常気象に、長官は総攻撃の予兆を感じ取る。
 更なる生け贄を求めるオヨブーは地上から新たなダンサーを拉致してくるが、華麗なタップダンスを披露する踊り手の正体はハルカの変装で、忍法シルクハット爆弾により祭壇を破壊。
 「バラバ! チューブは戦いの神に見放されたわ! お前達に、勝利は来ないわ!」
 格好良く啖呵を切ったハルカの位置情報からマスキードリルが地底に突撃し、今作で個別でメカが役立つのは、かなり珍しい印象。
 戦いは地上へと移り、スピンドグラーの回転攻撃に危機に陥るイエローだがオーラ駒で反撃すると、5人揃ってジェットカノン。巨大戦は、ダブルバルカンからさくっと鉄拳オーラーギャラクシーで合掌。
 少女は、命の瀬戸際を乗り越えられたのは厳しいレッスンのお陰、と死中に活ありメディテーションの思想に目覚め、5+1が挿入歌に合わせてダンス。ここに尺を使うのが良くも悪くも『マスクマン』らしい演出ですが、途中から過去の戦闘シーンなどを挟んでマスクマンの歩んできた道のりを示し、決戦への気運を高めながら、つづく。
 ……ところで、その、夏の浜辺で皆がケンタを追いかけて走っているシーンは、爽やかな青春の1ページとかではなかったような…………。

◆第48話「バラバ!裏切りに死す」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 18話ぶり2度目の死刑宣告を受けたバラバ、ゼーバのお仕置きビームにより床に鎖で磔にされた上、巨大な石筍に腹を突き刺される衝撃映像でスタート。
 最後のチャンスを嘆願して文字通り命がけの出撃を許されたバラバにキロスが近付き、「俺の言う通りにやれば、必ず勝てる」と囁くと、追い詰められたバラバは「副業で月収100万円!」ばりの口車に乗ってしまい、腹心オヨブーの制止を振り払って勇者の剣によってイアル氷柱を洞穴の外に持ち出し、洞穴のトラップ効果によりオヨブーが代わりに氷漬けになってしまう事に。
 バラバはイアル氷柱を光戦隊に見せつけ、久々に始まるいちゃいちゃ回想……が徹底的に海のイメージなのは、今作のあちこちで顔を出す、長石監督の好みが出ていると思われる部分。
 バラバの一騎打ちの申し出に飛び出すタケルだが、そこに待ち受けていたのは勿論、卑劣な罠。
 「青いなタケル、女一人の為に、命を捨てにくるとはな」
 タケルの背後から地底獣バルガドグラーが出現するとイアル氷塊に爆弾を取り付け、タケルに変身ブレスを外させたバラバは、それを破壊。待機していたケンタ達は美緒の救出を図るが、その前にはキロスが立ちはだかり、分断されたマスクマンは絶体絶命の危機に陥る。
 「このままでは、タケルも負けてしまいます!」
 「愛の力は偉大なんだ」
 突然、宇宙からの電波を受信した伊○長官のような事を言い出す姿長官。
 「アズマくん、君も人を愛した事はあるだろう。愛が若者を勇気づけ、愛する人の為ならば、人知を越えた力を発揮する。(※独自の研究です)それは丁度、オーラパワーに似た力といっていい。(※諸説あります)信じよう、タケルの愛の深さを(※個人の感想です)」
 つまり要約すると「オーラパワーを信じるんだ!」なのですが、物語を動かす軸であった(筈の)「愛」と、戦隊の超パワーであり作品の主要ギミックである「オーラパワー」の統合を姿長官の言葉で図ったものの、姿長官に脈絡がなさ過ぎて、マジックワードで強引にまとめようとしてコースを飛び出す大事故に。
 OPやEDの歌詞に入っているなど、「愛」を重要なテーゼとして扱いたかったのは確実でしょうが、それを強調する肝心のタケル×美緒の物語が中盤かなり扱いが小さくなってしまっていた為(どうしてもパターンが広げにくくて扱いづらかったのでしょうが)、劇中で示された「愛のパワー」と「オーラパワー」のバランスが大変悪く、釣り合いが取れずじまい。
 (今こそ助けてみせる。この俺の手で!!)
 立ち上がったタケルがバラバに向けて拳を突き出す姿は格好良く、遂に美緒を目の当たりにして闘志を燃やすタケルは、全編通していい表情を見せるのですが。
 精神を集中したタケルは、襲い来るバラバに向けて、死中に愛ありゴッドハンド! だがそのカウンターが炸裂したところで、漁夫の利を狙っていたキロスがタケルに襲いかかり、苦しむバラバ(やたら大ダメージが入っているのは、ゼーバ様のタケノコダメージの傷に重なったという事でしょうか)を嘲笑う。
 「愛する女を手に入れる為には、手段を選ばないのだ。わかるまいな、恋の一つもしたことのない、おまえには」
 姿長官のまとめ自体は強引でしたが、それを裏返す形でキロスが、一方的な愛の名の下に卑劣を勝ち誇る外道として、ネガマスクマン(タケル)の座を確立するのは面白かったです。
 今回ようやく、キロスがトリックスターとして機能するのですが、元よりチューブ側の行動隊長要員の多かった今作(そこを上司-部下の2セットにまとめたのは巧かったのですが)、キロスの登場後にパワーアップ騒動こそあったものの、指揮系統そのものは継続された結果として、敵幹部の存在感が皆揃って薄まってしまったのは、残念な失策になってしまいました。
 中盤に波乱を起こしかけたアナグマも存在自体がフェードアウト気味になっていますし、キロスとバラバを入れ替えるぐらいの思い切りがないままズルズルと最終盤に至ってしまい、遅すぎる「裏切りに死す」になった印象。
 「目障りだ。消えてもらうぜ」
 先にバラバを仕留めようとするキロスだが、地底忍法オヨブーファイヤーを発動したオヨブーが内部から氷塊を溶かす事で脱出に成功すると、バラバの元へと駆け付ける。
 「バラバ様! うるさい奴とお思いでしょうが、お助けに参りました」
 キロスを蹴散らしたオヨブーはバラバの前に膝を付き、格好良すぎるぞオヨブー!!
 「おのれぇ……渡さぬ! イアル姫は渡さぬぞ!」
 主従コンビとタケルに挟まれて逆にピンチに陥ったキロスは、洞穴に逃げ込むと氷柱から爆弾を取り外し、イアル氷柱を風地獄へと落とすと、自らもそこにダイブ。
 洞穴の出入り口はタケルの目の前で塞がれてしまい、残されたバラバはタケルにオヨブーをけしかけようとするが……首を振ったオヨブーは、それを毅然と拒否。
 「俺はキロスの口車などに乗るなと忠告した筈だ。これはあなたの戦い」
 「貴様ぁ! 俺を助けに来たのではないのか?!」
 「バルーガ族の勇者、地底司令バラバといわれた男に、最後の戦いの場を与えてあげたかったのだ。――せめてもの、武人の情け」
 格好良すぎるぞ、オヨブー!!!
 ここのところ特に目立つ場面の無かったオヨブー、氷漬けになったまま雑にリタイアしてしまうのかとドキドキしていたら全く予想外の形で存在感を発揮し、曽田先生と長石監督は、岡本美登さんが好きすぎるのでは(笑)
 「…………おのれぇぇぇ!!」
 腹心の意志の固さを感じ取ったバラバが、最後の誇りを賭けてタケルへと躍りかかり、ケンタ達と合流したタケルは替えのブレスを受け取ってオーラマスク。
 揃い踏みから主題歌バトルに突入し、タケルとバラバの因縁はこれといってないのですが、ススキ野原で一騎打ちの黄金パターンは、それなりの盛り上がり。地底名物口から怪光線を受ける赤だったが、カウンターの一撃を入れると、真っ向唐竹割りで勇者の剣を両断。
 「……馬鹿だな……俺は……」
 土壇場で忠臣(まあ、その忠臣の失策により前回のダンス作戦に失敗し、処刑宣告の一因になっているのですが……)の言葉をはね除け、甘い言葉にそそのかされた己の愚かさを呪いながら、地底司令バラバはトドメのマスキークラッシュを受け、大爆死。
 バラバ、如何にもなパワー系単細胞キャラとしては嫌いではなかったのですが、主人公タケルの強固な因縁の相手には最初からイガムが確定しており、当時の戦隊の尺と作劇では他のキャラとライバル関係にするほどの余裕もなく、どうしても隙間の扱いになってしまったのは惜しまれます。今回、「青いなタケル」のところで尻を叩いてみせたのが、この局面で地味に面白かったのですが、作風としてコミカルな要素も押し出しにくかったでしょうか。
 地底勇者の最期を見届けたオヨブーは、何故かススキ野原に悲しげに立ち尽くし、歩み去るイガムを目撃。
 余ったバルガドグラーは雑に始末されてオヨブーによりオケランパされるが、グレートファイブがざくっと両断し、打倒マスクマンこそ果たせなかったものの、まんまとイアル氷柱を手に入れたキロスは、風地獄に歓喜の嗤いを響かせるのであった。
 「ははははは! はははははっ! イアル姫はもう誰にも渡さん。イアル姫は俺のものだ! 来れるものならここまで来てみろ! 風地獄に耐えられるのは、俺だけ! ゼーバもここまでは来れん! ……イアル姫、イアル姫よ……! もう手放しはしないぞ!」
 尻尾を巻いて逃げ出した事実は忘れ、情けない理由で虚空に向けて勝ち誇りつつ、キロスは愉悦の表情でイアル姫入りの氷を撫ですさり……うん、だいぶ遅くなりましたが、この路線は、凄くいいな……(笑)
 そしてこうなると、キロスが覗いて一目惚れしたのは実はイガムでした、のダメージが深く大きくなる――エゴイスティックな愛の対象さえ、節穴の瞳の生んだ偽物だった――事が予想され、そこを知らないままでいる事に、納得(まあまだ未確定なのですが、回想の主観を考えると、覗きを受けたのはイガムだった筈)。
 急展開の連続でまとめに入る中、愛とオーラパワーの強引な接続は残念でしたが、ここに来て独自の道を走り出すオヨブー、ようやく今作における“悪のライバル”の位置づけが確立するキロス、この両者が躍動するBパートは思わぬ面白さでした。