『光戦隊マスクマン』感想・第44話
◆第44話「変身!地底剣士アキラ」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
光を失い、聴覚のみで光戦隊名物・磁武羅流汰流砲に挑むアキラは再び謎の呪文に苛まれるが、それは、チューブの支配から逃れて隠れ住む地底の逃亡者達が、地底剣士ウナスに救いを求める祈りの声であった。……似顔絵とか燃やしていましたが、この後の成り行きを見るに呪殺の類ではなく、ウナスの似姿?を火にくべる事で何らかの儀式的効果が期待されていた模様。
「愚か者めが、ウナスが助けてくれるなどとは、ただの伝説にすぎぬ!」
だが、覆面集団が祈りを捧げる竜の彫像から誕生したのは地底獣ヨロイドグラー。そこに乗り込んできたイガムは、ウナスとはイガム家に仕える剣士であり地底人をあまねく救うような存在ではない、と逃亡者達の希望を一刀の元に断ち切る。
イガムより今生のウナス探索を命じられた鎧ドグラーは地上へ向かうと、スポーツ選手などに次々と鎧部分を貼り付けては適合者を探してまわり、数打ちゃ当たるでした。
ドグラーの大雑把すぎるウナスセンサーはともかく、今作怪人の初期コンセプトである寄生獣システムを活用して、装甲部分が外れ鎧として犠牲者に装着される映像そのものは面白い。
この被害をオーラカメラで知った光戦隊は、本部にアキラを残して鎧ドグラーに立ち向かうが、その装甲はレーザーマグナムさえ跳ね返す。
「この鎧を身につけた者が、イガム家に仕える剣士、地底剣士ウナスとなるのだ!」
5人揃わないマスクマンは今回も大苦戦を強いられ、フレンド召喚イガム竜に追い詰められるが、4人にトドメを刺そうと迫る鎧ドグラーの鎧が突如として剥がれ、それはなんと必死に仲間の元へ向かおうとするアキラの元へ!
そしてアキラは、白装束に漆黒の鎧を身に纏い、目の周りを悪の記号として黒く塗った姿へと変貌。ウナスアーマーの装着のみならず、目隠しとしていたハチマキがはらりと外れると形相が変わっている、というのが効果的。
「地底剣士――ウナス!」
鎧を身に纏ったアキラは今生の地底剣士と化し、一世を風靡した(と記憶している、が見た事は無い)『鎧伝サムライトルーパー』はいつ頃だっけ……と思ったら翌1988年の放映でしたが、その流行の発火点といえる『聖闘士星矢』のアニメは1986年からスタートしており、そういった文脈の影響があったのかもしれない展開。
「……という事はアキラは地底人」
「なんだと?」
……にしても、アキラの父親関係はちょっと怪しげ、忍者は多分地上人と地底人の混血種族、といった与太は飛ばしてきましたが、まさか、「アキラは地底人?!」と結合するとは夢にも思わず(笑)
人相の悪くなったアキラは二刀流を手にイガムの手駒としてタケル達に躍りかかり、日頃からかわれがちな恨みを込めてハルカさんに顔面パンチ!(鬼だ)
モモコを投げ飛ばし、ケンタとタケルには真剣で切りつけ、流血描写も入って大変凶悪に、ダークサイドに堕ちたメンバーの一変を強調してきます。
アキラ相手では手出しできない4人は次々と容赦のない攻撃を受け、遂に口から光線を出すアキラ……うん、これはもう、地底人だ。
「私が選んだ戦士が地底人だと…………信じない。私は絶対に信じない」
だが、戦いを見つめる長官は、「地底人でもアキラを信じる」のではなく「私が選んだアキラが地底人のわけがない」と、駄目な方向に現実逃避していた。
先日の眉回でダンディパワーを使い果たしてしまったのか、前回-今回と姿長官が大変役立たずで困ります(そもそも、タケル達にアキラを頼まれた筈なんですが長官)。
シーンチェンジ逃亡も許されず追い詰められるタケル達だが、絶体絶命のその時、地下の儀式に参加していた少女がアキラに走り寄り、その行動を止めようとする。しかしアキラは少女にさえ無感情に剣を向け、一瞬の隙を突いたハルカさんが割と派手な威力の煙玉を投げつける事で、4人は少女を助けて逃走。
「ウナス……私たちを救ってくれると思っていたのに」
ひとまず山小屋に身を隠したタケル達は、少女からウナスについて聞き出すが、イガムに発見されまたも危機に陥る。
「ゼーバ様に逆らった者に明日はない!」
「黙れ! この子には指一本触れさせん!」
「地底にも平和を願う人達が居る! その願いを踏みにじらせはしないぞ!」
「ほざくな! 4人で何ができる」
ばっさり返され、え、どうしよう、と仲間を見るケンタ、正直(笑)
タケル達は襲い来るアングラ兵を蹴散らそうとするが前後を囲まれオーラマスク。少女を逃がすも戦況は圧倒的不利が続き、いよいよアキラへの殺意が湧いてくる4人に対し、「今度は君たちが助ける番だ」と長官が言葉をかけるのは、前回と上手く接続。長官の株価も回復してホッとしました(笑)
いくら代替え可能とはいえ、ここまで共に戦った仲間を見捨てはしない、と決意を固めた4人はアドリブで変則コンビネーションアタック――前回の使用時も思いましたが、レッドよりも負担の大きいポジションを任されるイエローのスペックへの信頼感……と思ったら、レッドはジェットカノンにまたがって登場、というのは鮮やかな接続。
コンビネーションアタックに続いてジェットカノン体当たり、そしてジェットマスキーブレードクロス(乗ったまますれ違いざまの斬撃+高度と加速を乗せた飛び降りての振り下ろし攻撃)が炸裂して地底獣を撃破し、ここまでのアクションの積み重ねを生かした切り札として納得のできる格好良さなのですが、果たして、ここでただの地底獣を相手に使ってしまって良かったのか(笑)
巨大化した鎧ドグラーに対し、ブルーマスクを欠きながらもランドギャラクシーが発進し、格納状態のコックピットで4人が拳を固めるシーンが挟まるのが、薄暗い映像で苦境を暗示しつつも諦めないヒーローの姿が強調されて格好いい(少し前まで、そろそろ殴り返そうか、と考えていた事には目をつぶる方向で)。
フルパワーを発揮できないGロボは、ダッシュパンチを放つも跳ね返され、放電ネット攻撃を受けてピンチに陥るが、ドロップキックを受け止めてフルスイングで投げ飛ばすと、なんとかオーラロードスパートに持ち込み、鉄拳オーラギャラクシーで合掌。
だがアキラはイガムと共に姿を消してしまい……
「マスクマンが、4人になってしまうなんて……」
「信じないぞ、アキラが地底人だなんて……信じないぞ」
地底抜け忍、(美緒=イアル)、キロスに恋する地底人少女……などの出会いを経て、今回遂に「地底にも平和を願う人達が居る!」という言語化に到達したにも拘わらず、最後でまたも「地底人は殲滅すべき劣等種族」のような否定的言動に戻ってしまい、マスクマンの地底人観が行きつ戻りつして安定しないのは、残念なところ(テーマ的には『チェンジマン』で徹底してやったので……という影響はあるかもですが)。
「アキラ、必ず助けてやる」
圧倒的優位に立ったイガムは高らかに笑い、どうするどうなるマスクマン?! で、つづく。
いよいよ終章に突入し、戦隊メンバーの一人が一時的なコントロールどころでない状態で敵に回る、という衝撃の展開なのですが、タケルと美緒ではなく別のところで盛り上がっていいのだろうかという疑問は少々(笑)
事あるごとにいちゃいちゃ回想をしたり、毎度チューブでイアル氷を出すわけにもいかないにせよ、少々放置の気配が漂う美緒/イアルなのですが、物語の縦軸としての存在感を取り戻してくれる事を願いたいです……て、次回――サブタイトルーーーーーー?!
……という事は、アレがアレな可能性が改めて高まり、盗賊騎士キロスが面白くなってくれる事に期待。