東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

深淵よりきたるもの

仮面ライダーゼロワン』感想・第22-23話

◆第22話「ソレでもカレはやってない」◆ (監督:杉原輝昭 脚本:高橋悠也
 「二度とヒューマギアに、手を出すなーーーっ!!」
 荒ぶるゼロワンは始めてサウザーに有効打を与えるも、シャイニングアサルトの力もジャックされてしまい、ファンネル攻撃の打ち合いの末に時間切れ引き分け。
 新たに決定的な証拠を出せぬまま裁判は被告人不利に進み、冒頭これまでにない怒りを見せていたアルトが、バックアップから復帰したビンゴとごく自然に接しているのが、どうにもこうにもドラマ性を削いでしまい、第2部の大変困ったところ(どうして、自分たちで作ったドラマ性の核をポイ捨てするのか……)。
 唯阿は天津の命令により、アークを利用してゼロワンを封じる為のプログライズキーを作成し、すっかり違法行為に慣れてきていて、今なら逮捕されても文句はいえない!
 唯阿の真意はまだ掴めない部分が多いのですが、以前から「飛電を陥れる」事にこだわっているのを考えると、「ヒューマギア開発の功績を飛電に奪われた技術者の娘」で飛電に個人的怨恨がある、とかいった可能性もありそうでしょうか(そのぐらい考えないと、ここまで犯罪一直線なのが理解しづらいというか)。
 一方、天津が絶滅ドライバーを手にしていた事から滅を問い質したアルトは、ゼアからも情報を得てアークのラーニングに天津が関与している事を知り、不破とコンビを組んだビンゴは、事件の真犯人を遂に炙り出す。
 ……前回も思ったのですが、裁判編の何が怖いって、サイバー犯罪でも天津の狂気でも人間の悪意でもなくて、弁護士ビンゴの嘘発見機能。被告人どころか、ある意味、顔に出さないプロである相手方の検事の言動まで相当の自信と精度を持って真実性を担保し、挙げ句の果てにスマホ的なものの画面越しに(相当に画質は上がっているのでしょうが、それでもだいぶ悪条件の筈)本職警察官の嘘を確証を持って見抜くとか、飛電はこのテクノロジーを他の何かに使った方が絶対にいい。
 真面目な話としては、前後編の話を転がす為だけのガジェットとしては「実質精度100%の嘘発見器」は魔法の力が強すぎて、被告人を信じる理由も、検事が犯人でない理由も、真犯人を見抜く手段も、全てビンゴの嘘発見機能を根拠にしてしまったのは、雑になったと思います。ここまでやると、「ヒューマギアが優秀」ともまた違う話になってしまうわけで。
 例えば、ZAIAスペックにも嘘発見機能が付いていて、被告人の発言を嘘と判定していた、とか比較要素があればまた意味が変わったのですが(視聴者にはわかる社長の大嘘を見抜けない、とか入ると一粒で二度おいしい)、ZAIAスペックに対する雑な扱いが、こういうところでも響いている印象。
 真犯人は検挙率を上げる事を目的に犯罪をでっちあげた刑事であり、それを知った検事は「冤罪を生んでしまうところだった」と謝罪するとヒューマギアの優秀さを褒め称え…………んー……食わせ物めいた描写をされていた検事さん、てっきり、警察内部の不審な動きに目を付けていたとかそういう事かと思ったのですが、精査もせずに弁護側の証拠を全面的に認めるとわざとらしくヒューマギアを誉めるだけで出番終わってしまい、裏の事情説明部分のカットなどされたのかもしれませんが、奥行きのない扱いになって残念。
 ……後、そこの不破さん、捜査の可視化どころか明らかに尋問を拷問に変えて自白を引き出しているのですが、A.I.M.S.の敵に人権は無い!!
 活躍も束の間、法廷に乗り込んで気持ち良く衆目を集めている内にキーを奪われる、という大失態を犯す不破だが、その後の変身は格好良く、バルカンは毒々ライオンと激突。そこへやってきてとりあえずライオンを殴ろうとする天津@1000%喧嘩好きだが、その背に向けて怒声を浴びせるアルト。
 「人間の悪意を、衛星アークにラーニングさせたのはあんただろう!!」
 「……だったら? 私はただ事実を学ばせたに過ぎない」
 「そのせいで、滅亡迅雷ネットが生まれた……」
 「人類滅亡の結論を下したのは、アーク自身です」
 「そのせいで! 多くの人が犠牲になった!」
 ……ここで、「多くのヒューマギア」と言ったら、視聴打ち切りしかねないところだったので、本気でホッとしました。
 「つまり、人間の自業自得ということです」
 「ふざけんなぁ!!」
 壮大なマッチポンプについて全く悪びれない天津に対し怒りに任せて殴りかかるゼロワンだが、余裕綽々のサウザーは悦びをもってその反応を受け止める。
 「その怒り……でもそれでいい」
 「なんだとぉ?!」
 「この私を憎み、滅ぼそうとする。――今あなたの心を支配するものこそ、紛れもない、人間の悪意だ」
 見下ろすサウザーに対し、必死に立ち上がろうとするゼロワンの胸部と瞳が紅く輝いた時――それに反応を示すアーク。
 サウザーは動揺するゼロワンを切り払って変身解除に追い込むと、新作キーをゼロワンドライバーに強制的に読み込ませ、その発動によりサウザーさえ退かせる赤と黒のオーラが放たれると共に、銀色のイナゴの群れが飛び回るのは格好いい映像。
 絶叫するアルトはアークと強制的に接続され、深く暗い闇の中に澱む怨念に侵食されると、画面を覆い尽くすような虫の大群がアルトの体を飲み込むようにして外装を構築していき――その姿は、白銀のゼロワンへと変貌する。


 第五の御使が、ラッパを吹き鳴らした。するとわたしは、一つの星が天から地に落ちて来るのを見た。この星に、底知れぬ所の穴を開くかぎが与えられた。
 そして、この底知れぬ所の穴が開かれた。すると、その穴から煙が大きな炉の煙のように立ちのぼり、その穴の煙で、太陽も空も暗くなった。
 その煙の中から、いなごが地上に出てきたが、地のさそりが持っているような力が、彼らに与えられた。
(『口語 新約聖書』/日本聖書協会
 サウザーによって強制的に誕生した新たなゼロワンは、その描写から奈落の主にしてイナゴの王たる天使アバドンを想起させ、シリーズ過去作繋がりとしては『ファイズ』のアークオルフェノクも思い出します。
 コアとなったアルトが制御できないまま、白銀のアークゼロワンから放たれたイナゴの群れはライオンレイダーの全身とバルカンの両腕の装甲を瞬く間に食らい尽くし、微動だにしないままサウザーの攻撃も完全防御。形状変化と超硬化を繰り返す流体金属らしきイナゴの群れは、そのままサウザーを圧倒すると変身の解けた生身の天津さえ貫きそうになるが、横から飛び込んだバルカンがヒーローの腰にしがみつく渾身のヒロインムーヴと思わせてからの究極のゴリラムーヴを発動し、不破諌、遂に、筋肉の力で変身中のライダーからベルトを引きはがす離れ業を達成。
 そして、一連の光景を全て、物陰から唯阿さんが撮影していた(最近の立場……)。
 「ゼロワンが進化した……」
 「ゼロワンじゃない。あれは、別のなにかだ……」
 「はははははは、アークは最高の芸術作品だ。これで我がZAIAのシナリオも、クライマックスを迎える」
 傷だらけの天津社長は唯一人、熱に浮かされたような瞳で勝ち誇って早くもクライマックスを宣言し、謎と混迷が深まる中、お仕事対決は無罪を勝ち取ったビンゴの勝利となるのであった。
 滅が情報源として全開の蛇口すぎたり、手持ちのカードを考えると2周遅れぐらいなものの、アルトがようやく自主的に動いて情報を繋ぎ合わせてくれた上、アークゼロワンのイメージの見せ方が大変格好良く、久々に興奮する展開でした。

◆第23話「キミの知能に恋してる!」◆ (監督:諸田敏 脚本:高野水登
 アークゼロワンの発現以来、ゼロワンドライバーが通常のキーを読み込まずに困り果てたアルトの元に駆け込んできたのは、前回の裁判で知り合いになった(?)、海老井千春。
 結局、元被告人とは婚約を解消した千春(まあ、あれだけ言っていれば自然ではあり)は、弁護士ギア・ビンゴの活躍に感銘を受け、結婚相談ヒューマギアを紹介してほしい、とアルトに持ちかけてくる。
 悲劇の被害者から一転、結婚相手を求めて社長室に突入してくるかなりネジの緩んだ感じのキャラと化した千春ですが、アルトに好意的に接してくれる人間のゲスト、ってもしかして史上初なのでは。
 東映ヒーロー作品的には過去作レギュラー(イエローバスター)であり、現在は声優としても活躍中の小宮有紗を読んだ割には出番少なかったな、と思ったら本番は今回からだったようですが、加えて結婚相談ヒューマギア・縁結びマッチ役には元ブルーバスターの馬場良馬が出演し、突然の『ゴーバス』祭。
 「結婚詐欺に遭って以来、人間不信になってしまって」
 「だから騙されたのではないでしょうか」
 ……えっと、あの、前回、無罪でしたよね……?
 マッチが千春にマッチングしたのはなんと天津社長で、メインライター一休みで初参戦の脚本家×諸田監督でしばらくギャグに振り切れた展開が続き、どういうわけかお見合いに乱入してきたイワトビペンギン的なレイダーとバルキリーが交戦。変身を躊躇うアルトだが、積極的に攻撃してくるわけでもないペンギン相手に苦戦する、すっかり役立たずのバルキリーの危機を見かねてというのは納得できる理由で、イナゴの群れが巨大なバッタを形成し、それがアルト自身を食らい尽くすかのようにしてアーマーを形成するアークゼロワンの変身シーンは今回も非常に格好いい。
 発現したアークゼロワンは前回に続いて無差別イナゴアタックし、ホーネットミサイルも食い尽くすとバルキリーに襲いかかるが、割って入ったアサルトバルカンが斧を振り回すアークゼロワンに今回こそヒロインムーヴならぬ怒りのドロップキック! 続けてゴリラロケットパンチ×2を叩き込み、そのガード硬直中にホーネットが空中ダッシュで懐に飛び込んでキーだけ抜き取り、2話連続のゴリラムーヴが発動しなくてホッとしました(笑)
 「てめぇ、敵と味方の区別もつかねぇのか!」
 つかつかと歩み寄った不破さんはアルトの首根っこ掴んで引きずり倒し、こういう事言ってくれる人は、やっぱり大事。
 「ごめん……やっぱり駄目だ」
 ペンギンレイダーの攻撃で損傷したマッチは魔法のプリンターで修復されると、お客様相談室もとい社長室に怒鳴り込んできた千春の幼なじみ(ペンキ屋)がペンギンレイダーの正体ではないかと行動データから推測し…………ネットワークを通じて情報が共有されていてもおかしくはないのですが、「レイダーの中身は人間」という情報のセキュリティレベルはそれでいいのか。
 こういった部分の雑さがドンドン物語世界の穴を目立つところで広げてしまっているのが、ここしばらくの今作の厳しいところ。
 ペンギンレイダーの正体を炙り出すべく、シミュレーションと称してマッチと千明は結婚式を挙行するが、憤激のあまり途中で退席するペンキ屋を誰も追いかけないので、目が白黒。
 ここ数話の通常営業でアルトが何もかも見失っているのですが、横に立つイズも一緒に奈落の底に引きずり込まれているのが、実に辛い。立ち上がりは期待の高まる良いポジションのキャラだったのですが……。
 式場では、婚活よりもマッチに夢中になってしまった千明に対し、マッチがイズ直伝の「人間が心の底から不快になるような最低の言葉」を言い放ち、それにピーーー音は被せるのは度を超えていて、単純に不快な演出でした。
 「いくら何でも酷すぎるよ! マッチの馬鹿!」
 激怒した千明の平手打ちがマッチに炸裂し、赤く反応するヘッドギア。
 え。
 ……いや、……え?
 あーあーあーあーあー…………いや、あの、ここまで、箸休めのギャグ回と割り切れば(流れが流れだけに素直に楽しみきれない部分はあったものの)、同じ穴でも真剣にストーリー進行しているつもりで真っ正面から落とし穴にはまっているよりはマシなところはあったのですが、相手に嫌われる為に故意に罵声を浴びせる → あまりにも酷すぎて引っぱたかれる → 悪意として受け取る、って支離滅裂すぎて、ヒューマギアはもう、真剣に滅ぼした方がいいのでは……。
 アークの意志のまま、人類絶対許さなーいモードに突入したマッチはカエルマギアへと変貌し(これも『ゴーバス』ネタといえばネタか)、そこに正体は案の定ペンキ屋だったペンギンレイダーまで乱入してきた事でアルトはやむなく変身。
 両者を蹴散らすアークゼロワンには1000%喧嘩好きでお馴染みサウザーが襲いかかるが、アーマーを解除し、剥き出しの素体となったゼロワンから放たれる分身キック・メタルライジングインパクトにより三者まとめて吹き飛ばされ、素体の上に貼り付いたイナゴの群れがアーマーと武装を兼用しているアークゼロワンの戦闘法はかなり好み。
 変身解除したペンキ屋は、結果的に暴走カエルから千明を守った形となって熱烈なハグを受け、それを見届けたカエルマギアは「ベストマッチ」の言葉を残して爆死。……よくよく確認すると、ダブル分身キックの直撃からペンギンレイダーをかばうように動いているようにも見えるのですが、うーん……マッチの一連の行動に次回なにがしかの説明が入る可能性はありますが、仮にマッチに幾ばくかの正気が残っていたりするとそれはそれでアークの格が落ちてしまうので、どちらに転んでも問題が発生するわけですが。
 ……まあマッチ、顧客に平気で失礼な事を言って煽る・明らかに無理のあるマッチング(天津社長)を設定する・レイダーの正体を暴くために罠を仕掛ける・人格攻撃といえる罵声を浴びせる・全てベストマッチの計算通り……? と、目的の為には手段を選ばぬ婚活マシーンと化しており、見方によっては既に暴走していたので、アークのプログラムに対して耐性が出来ていたのかもしれませんが。
 最近また隊長と代表取締役の癒着が激しいのですが、A.I.M.S.は改めて、徹底的に飛電インテリジェンスを洗った方がいいのでは……。
 これ以上、私をギャグの世界に巻き込むな、と戦闘続行するサウザーだが、前後左右からの連続攻撃でもイナゴの王には一太刀も触れる事ができず……果たして、アルトはこのまま悪意の濁流に飲み込まれてしまうのか?! でつづく