東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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一筆奏上天使の使命

天使vs侍

◆『天装戦隊ゴセイジャーvsシンケンジャー エピックON銀幕』◆ (監督:竹本昇 脚本:下山健人)
 殿が、殿が、微笑んで名乗ってアラタを受け入れて握手したーーーーーー!
 一年前は、事あるごとにバン! バン! うるさい生き物を「……一緒に戦うつもりはない」と一刀の元に切り捨てていた殿は、アラタにより天知家に招かれると、上座を設置しようとしていた黒子をたしなめてソファに座るなど、順調に人格改造が進んでいます。
 「彼らは天装戦隊ゴセイジャー。地球を守る護星天使だ」
 突如復活した外道衆、買い出し途中にこれと戦っていたゴセイレッド・アラタを助けたシンケンレッド・志葉丈瑠は、此の世を、そしてこの星を護る為、互いに協力を約束し、殿が真顔で「天使」と口にするだけでちょっと面白くてズルい(笑)
 丈瑠は血祭ドウコクとの因縁の決着後、それぞれの道を歩んでいる家臣達を再び招集し、ハイテンションで真っ先に駆け付けた流ノ介は「天使はないでしょ天使は」と居候の五人組に絡んで一悶着を起こし、相変わらず便利。
 ゴセイジャーは天装術を倍返しする能力を持ったタコアヤカシに苦しめられ、モヂカラも無効に違いないと攻めあぐねる侍赤と青だが、そこに侍緑が参戦。
 「だったらよぉ……俺達得意の、力尽くでいきゃいいじゃねぇか!」
 かたや天使! かたや侍! の異文化衝突に続き、侍戦隊=ヒャッハー武闘派軍団である事を自ら宣言し、全体的に、物語の方からどんどんツッコんでくるスタイル。
 タコアヤカシを物理で袋だたきにしようとするシンケンジャーだが、三途の川で甦ったチュパカブラ改め血祭のブレドランが登場し、中身ブレドランでシルエットがドウコク、というデザインは割と格好いいのですが、なにぶん中身ブレドランで前身はチュパカブラな上、ゴセイジャー側のリアクションも“顔見知りの嫌な奴”程度なので色々とインパクト不足で反応に困ります。ゴセイジャー側からもう少し、悪としての存在感を煽ってくれても良かったかな、とは。
 だが、スーパー化した侍赤はその罠にはまって虫にたかられさらわれてしまい、秘めたヒロイン力を要らぬところで発揮する殿、殿ーーー!
 丈瑠という支柱を失った流ノ介と千明はゴセイジャーと決裂し、殿不在による動揺を理由の補強にはしているのですが、流ノ介も千明もそこまで頭が固かったか? という点は強引になってしまった感。
 シンケンジャーの持つ、殿-家臣の強固な絆を描こうとする余り、“外”へ向けて強く排斥的になってしまったのは、らしからぬ姿になってしまいました(コラボ劇場版の事情で仕方ない面はありますが、本編はむしろ、そういったクローズドな価値観からの脱皮をこそ志向していたわけですし)。
 シンケンジャーとの共同戦線を望むアラタは、茉子とことはに接触して強引にシンケンジャーゴセイジャーを集めるが、そこに姿を見せたのは、いつもより3倍ほど目の死んだ丈瑠。
 まんまと敵の術中に落ちた丈瑠は黒地に金の縁取りの羽織をまとった外道シンケンレッドに変身するとゴセイジャー、ついでシンケンジャーに襲いかかり、シンケンジャー全滅寸前、身を挺して4人をかばうアラタ。更にゴセイナイトとシンケンゴールドが駆け付けて一同は撤収に成功し、相変わらず、ゴセイナイトは格好良くて最高です!
 アラタの「諦めない限り、必ず何とかなる」が口だけでない事を身を以て知った侍達は、丈瑠を取り戻すべく天使達との共闘を決め、天使と侍の食い合わせの悪さを敢えて積極的に取り込んだところから、「天装術」と「モヂカラ」に共通点を見出すのは、vs物として上手い流れ。
 操られたシンケンレッドを敵に回す事で字義通りのvs要素も確保しており、対立の成り行きには不満があったものの、各種要素の取り込み方、という点では悪くない出来で、アラタに力を貸すべく姫が登場したのも嬉しかったです。
 ゴセイレッドは、姫のモヂカラを込めて生み出した火炎トルネードカードの一撃により、立ちはだかる外道レッドを洗脳から解放。満を持しての12人揃い踏みとなり、W戦隊は、護星界に三途の川をぶちこんで壊滅させようとする血祭ブレドランに決戦を挑む!
 「ここからは、私たちのターンだ」
 横槍を入れようとした骨のシタリは、先行登場のゴーカイジャーに蹴散らされ、現行戦隊の強敵が踏み台にされがちな先行登場の問題点を、前作の生き残り幹部に当てた事で解消したのも、上手い形になりました。……その代償として、シタリは外伝的作品で消し飛ぶ事になりましたが(笑)
 なおゴーカイジャーはEDダンスにも侵食し、企画としての力の入り方が垣間見えるところです。
 この後の戦いは正直割とどうでもいいというか、今作最大の短所は仇役がブレドランという事で、リアルタイムで見ていたらまた違う印象になったかもしれませんが、とにかく最初から最後までブレドランをどんな顔で見ればいいのかわからず、「あー、はいはい」という感情を覆す事ができませんでした……。
 巨大ブレドランに対して新たな地球パワーをDLしたゴセイジャーは、ミラクルコンバイン。グランドハイパーもとい生首一杯ゴセイグレートが誕生し、さすがのブレドランも
 「なんだ?! あの、化け物は?!」
 と、おののくグロテスク。ゴセイジャーの強化の流れをすっかり忘れていたので自分の感想を読み返したところ、本編第12話でハイパーゴセイグレート初登場時に敵のカマキリが「なんだこの化け物はぁ?!」と反応しており、そのセルフパロディかと思われますが、今見ても、どうしてこのアイデアに着地してしまったのか……。
 グランドハイパーゴセイグレートにはライオンヘッダー経由でシンケンジャーも乗り込み、総勢12人がモヂカラビクトリーチャージ。
 「「「「「星を傷付け、汚す魂に!」」」」」
 「護星の使命が――」
 「「「「「天罰を下す!」」」」」
 「「「「「「モヂカラ!」」」」」」
 「「「「「ヘッダー!」」」」」
 「「ストライク!!」」
 「成敗!」「はっ!」
 融合エネルギーを叩き込まれブレドランは怨嗟の声を残して消し飛び、勝利の一本締めで一件落着。
 「侍とは違うけど、天使の絆もなかなかいいもんでしょ?」
 「のようだ」
 最初は水と油(まあ対立していたのは流ノ介&千明だけですが)だった侍と天使は互いの関係を認め合い、再びそれぞれの道を歩み出すのであった……でEDに入り、色々と条件の厳しいコラボ映画としては、双方のギミックをほとんど使い切って、程々まとまっていたかなと。
 難点としては上述したブレドラン、それと、戦隊の枠を越えたキャラクター同士の繋がりがこれといって面白くならなかった事。術属性の都合もありますが、同色の組み合わせにこだわりすぎたのではという気がします。
 個人的に、茉子とエリはそれほど相性が良いとは思いませんし、流ノ介を絡めるべきはハイドではなかったのではないか……など、シンケンサイドも生身キャストの出番がかなりあったにも関わらず、組み合わせの面白さ、みたいなものがこれといって出てこなかったのは、残念。
 ただ、そういったハードルを上げなければ、両作のエッセンスが上手く組み合わされてはおり、シンケン勢の掘り下げの甘さは不参加作品なのでやむをえないとすれば、下山脚本の良い面の出た一作ではあったかな、と。
 個人的には、ゴセイナイト成分がかなり満たされて良かったです(笑)