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地底ドールの秘密

光戦隊マスクマン』感想・第35話

◆第35話「ゼーバの謎!禁断の墓」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 「キロス、いい天気だな!」
 なにやら観測中のキロスが自身を呼びかける声に振り向くと、そこに居たのはアキラ。
 「いい天気だけど、地上には血の雨が降るかもな」
 アキラは物凄くいい笑顔でキロスに告げ、光戦隊の闇は深い。
 「一度おまえと勝負してみたかったんだ!」
 表情を引き締めたアキラはキロスに躍りかかり、相手は極悪非道の盗賊騎士ではあるのですが、生身で段平振り回すアキラの人狩り度合いが高すぎて、光戦隊の闇はこの上なく深い(笑)
 両者は互いの得物を打ち合わせて激しくぶつかり合い、2年の間、Wi-FiどころかISDNも通っていない地底の風地獄で娯楽に飢え、執念で編み出した必殺技への執着はわからないでもないですが、すっかり大技頼りになってしまったキロスは、クレセントスクリューを回避されると身軽に飛び回るアキラの連続攻撃を受けて足を滑らせて崖から無様に転落しキロスーーーーー!
 「やった……勝ったぞ! キロスに勝ったぞ!」
 小躍りして光戦隊本部に戻ったアキラは武勇伝を仲間達に語るが、話を聞いていた姿長官にたしなめられる。
 「アキラ、君は浮かれすぎて、戦士として大切な事を忘れてしまったようだな」
 「え?」
 「死体の確認とトドメだ」
 ……じゃなかった
 「キロスは何をしようとしていたのか。どうして調べてこなかった」
 姿長官は時々、凄く真っ当な事を言うので評価に困ります(笑)
 「気になる……キロスはいったい何をしようとしていたのか」
 冒頭に置いたキロスの観測作業が似合わない感じなのを含めて印象的だった事で、見ているこちらの疑問と姿長官の疑問が綺麗に重なるスムーズな流れで、出動する光戦隊。
 一方、あいつアキラにやられて必死に崖登ってるぜププ、とキロスの醜態を実況生中継するチューブでは、アナグマスが地底ピラミッドの存在に思い至る。
 ……わかりやすいといえばこの上なくわかりやすいですし、どちらかといえば好きなノリですが、数年後の曽田脚本における「スペース標準語!・スペース通信波!・スペース通信機!」の事例を思い出すスタイル(笑)
 地底ピラミッド――そこには、あまりにも凶暴凶悪な為に厄災として封じられた最強にして最悪の地底獣リサールドグラーが眠っていたが、300年に一度、地底ピラミッドに太陽の光が当たる日にリサールドグラーは甦る、と伝説に語り伝えられていた……。
 「リサールドグラーを復活させてはならん!」
 キロスの狙いに気付いたゼーバ様はいつになく慌てて阻止を命令し、その様子に違和感を抱くアナグマ
 (おかしい……あのゼーバ様の反応は異常だ。一体どうしたことなのであろうか)
 腹心アナグマさえ知らないゼーバの焦りの正体は何か……観測を続けるキロスの元にタケル達とチューブの軍勢が集うが、一足遅く伝説の時に至り、キロスの仕掛けていた爆弾によって崖崩れが起きると、地底ピラミッドに射し込む太陽の光。何故か、それに呼応するかのように地底城内部にも眩い光が輝き、突如として苦悶しながら浮上したゼーバは、謎の粘液にまみれて玉座でプルプル。
 その様子をいぶかしんだアナグマは、秘密の地底図書館でリサールドグラーの記録について調べようとするが、肝心のページが破り取られており、その姿をオヨブーが怪しく見つめる中、地上ではキロスの目論み通りにリサールドグラーが復活。
 キロスは勇躍、俺が最強である事を証明してやる! とリサールドグラーに襲いかかる、ような事はなくリサールドグラーをマスクマンへとけしかけ、直前の掘り下げ回で描かれた、最強にこだわるバトルジャンキー・キロス像は、早くも整合性を欠いてしまう事に。今回の、手段を選ばずイアル姫を獲得しようとするキロスの方が“らしい”のですが、重要なライバルキャラ(と思われる)だけに、脚本家の間で行動原理の統一が図れなかったのは、残念なところです。
 「万物は滅びて土に還る……まさに究極の地底獣、リサールドグラーらしい技だ。マスクマンも土にしてしまえ!」
 リサールドグラーの吹き出すガスはアングラ兵を一瞬で砂に変え、オーラマスクした5人を襲う埴輪結界攻撃。おいしくトドメをいただこうとするキロスのクレセントスクリューにより5人は激しく川落ちし、なんとか岸まで這い上がるも、アキラ(回避力高)以外の4人はダメージで気を失ってしまう。
 「ごめん……俺が浅はかだった。あんなに浮かれてなければ、キロスの企みを防ぐ事が出来たかもしれないのに」
 唯一意識のあったアキラは自分の軽挙を反省。一流の戦士として死体の確認と念入りなトドメの為に崖を下りてきたキロスの姿を認めると、派手な身振りでキロスの注意を引きつけて仲間達から引き離し、自らの失策を反省して仲間の為に命がけの行動を取るに至る姿が、アキラの子供っぽいキャラクター性を土台にして面白い流れに。
 本部からの通信によりタケル達が目を覚ましてアキラを追いかける一方、地底勇者と忍者は禁断の地である地底ピラミッドの残骸を調査。地上では、キロスとリサールドグラーを同時に相手取っていたブルーマスクが、キロスのクレセントスクリューを参考に編み出したトンファースクリューでリサールガスを跳ね返す戦闘の天才ぶりを見せつけて割と一人で困難を乗り越えてしまい、5人揃ったマスクマンはコンビネーション攻撃でリサール追い詰める。
 バラバとオヨブーは巨大な棺桶を発見するが、何故かそれには外側から鎖がかけられており、中から見つかったのは呪いのメッセージカード。呪いの埴輪ビームを受けた勇者と忍者は、カードの文面から、そもそもリサールドグラーは封印されていなかったという隠された真実を知る!
 「あいつはリサールドグラーではない! 墓守地底獣、ハニワドグラーだったのだ!」
 てっきり、美術班の勢いかと思われた埴輪攻撃は伏線だったのだ!
 「こんな筈ではない……奴はリサールドグラーではない!」
 キロスもマスクマンにこてんぱんにされるドグラーの姿から真相に思い至り……今回面白かったのですが、〔せせこましく測量 → アキラに顔面を連続ではたかれ滑落 → 打倒マスクマンに助っ人頼り → 「まさに究極の地底獣」と大絶賛 → おいしいところだけいただこうとする → アキラに必殺技を応用される → 「こんな筈ではない」と手の平返し〕するキロスの株価は手の打ちようのないレベルまで下落して、盗賊騎士は色々なものの犠牲になりました。
 まあ、小悪党ムーヴは小悪党ムーヴで極めると面白くなるので、もはやキロスにはそちらの道で期待したい。
 リサール改め埴輪ドグラーはジェットカノンで木っ葉微塵となり、オケランパ。3話連続の出撃となったGロボは、開幕のダッシュパンチをかわされて埴輪トライアングルに囲まれるも、慌てず騒がず飛び道具で埴輪を破壊し、包囲を破るとスパートから鉄拳で合掌。……マスクマンは最近すっかり巨大戦に慣れてきて、敵への対応が冷静すぎます(笑)
 タケル達はアキラの奮闘をたたえると共に、あまり調子に乗らせないようにしないとな、とにこやかに帰路に就くが、埴輪ドグラーの手応えから、伝説の地底獣では無かったに違いない、とあたりをつける。
 「しかし……本当にリサールドグラーは居るんだろうか」
 ……前々回が顕著でしたが、タケルは考えながらゆっくり喋ると、「誰か口説いている」みたいな口調と声音になって、とても危険(笑)
 「もしそいつが居たとなると、本当に恐ろしい敵だろうね」
 そしてチューブでは……リサールドグラーはどこに消えたのか? ゼーバは何を慌てていたのか? 消された史料には何が書かれていたのか? 地底ピラミッドの伝説を巡り「一つの疑惑」が生じたまま、平静を取り戻したゼーバ様の瞳のアップで、つづく。
 前回-前々回は、大きな物語の軸となる「タケルと美緒」に非常に接近した要素を盛り込みながら、表層をなぞっただけで終わってしまう物足りない内容で落胆したものの、ゼーバ様に焦点を合わせた今回は、地底王の謎を軸にチューブ陣営の様々な思惑も織り交ぜながら、アキラの成長譚としても綺麗に着地。地底ピラミッドから出土した埴輪に隠された古代地底人のメッセージがゼーバの秘密を語ろうとするも中途半端なところで埴輪が爆破される! みたいなエピソードではなくてホッとしました(笑)
 アキラ、そしてマスクマンというチームを描く回としてもしっかりした出来で面白く、噛み合った時の曽田×長石は、情報の盛り込みとそれをテンポ良く見せていく手際がさすがの一言。
 一方、面白くないわけではないが、もう一つ盛り上がらない状況が続くまま、気がつけば物語は残すところ約1クール強。
 今作を覆う停滞感の大きな要因は、キロスによる美緒の正体判明も全体に波及せずスプリングボードになりえないなど、本来なら物語をぐいぐい引っ張っていってほしいタケルが「現状維持で保留」状態が続いている点にありますが、次回、「双子の姉妹」という要素が起爆剤になってくれる事を、ちょっぴり期待したい。