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羽ばたけぬネクサス

ウルトラマンネクサス』感想・第31話

◆Episode31「鳥-バード-」◆ (監督:八木毅 脚本:太田愛 特技監督八木毅
 見所は、結果的にネクサスを支援攻撃した副隊長に、ニコニコとお礼を述べて神経逆撫でする孤門くん。
 「……どうしてあなたが礼を言うの」
 「え?」
 孤門君はやはり、善良というかちょっとした狂気の領域で、そういう意味ではTLT向けの人材なのかもしれません。
 憐は「ラファエル」について固く口を噤み、憐の為に何が出来るかを悩む孤門と瑞生だが、その背後では今を必死に生きる若者達を歯牙にもかけない様々な思惑が蠢いていた――。
 「瑞生はお役にたっていますか?」
 「……若い人達は恐ろしいですね。彼らは、気持ちのままに行動しますから」
 「それを利用しているのが管理官、貴方じゃないんですか」
 うーん……
 「君は……ティルトに居るには優しすぎる」
 「え?」
 「その事で、いつか君は命を落とすかもしれない」
 うーん……
 「本当に大丈夫なのかね。あの若者達を放っておいて」
 「ご心配なく。大丈夫です。――彼らの日常は、戦いの中にあります。彼らが何を思い、何に迷っても、ビーストは現れる。彼らは、戦わねばなりません。一つの巨大な敵を前に、退く場所もなく、失敗も許されず。ですから、それぞれが例えどんな秘密をかかえていたとしても、決してお互いを、裏切る事はありません。それが結果的に、最もコントロールしやすいのです」
 ううーん…………何かと雑なティルトにわだかまる暗い影の部分が急ピッチで押し出されるのですが、今作名物・後出しフォローにどうしても見えてしまう(これまでの積み重ねが悪い形ので傾斜になっている)上、特にこれまで重視された記憶のない「若さ」という要素がいきなり強調されるのは、当惑します。
 元より、誘拐まがいの行為や情報工作なんのその、組織の意義と目的の為には表の法をねじ曲げる事に躊躇がないティルト、怪獣退治の秘密組織を「正義」の名の下に類型化せず、内部で蠢く多数の思惑や腐敗が当然あるものとして描くのは今作の志向するリアリティにして、「ウルトラマン」を再構築する作業の一環なのでしょうが、ではそれが面白いのか? というと、個人的にはどうもノれず。
 これが、“面白い怪獣バトル”と並行して陰謀劇が展開するのならば楽しめたのかもしれませんが、“面白い怪獣バトル”を構築できていない今作において、いみじくも管理官が語るようにビーストとの戦いが物語のツマ扱いを受けてしまい、“面白い怪獣バトル”以上に陰謀劇にウェイトを置かれてしまうのは、布石としても楽しめないエピソードでした。
 「あいつ……外面あんなだけど、いろんなもの見えちまうから、いろんなこと、考えちゃうんだ」
 孤門と憐、憐と瑞生、憐と優(イラストレーター)……愛嬌と謎をしっかり与えた主観人物・憐を軸にした人間関係の描き方は悪くなく、物語全体の雰囲気と太田脚本の繊細な語り口も噛み合っているのですが、それがエピソード単位でバトルと劇的に繋がらないので、特撮ヒーロー作品として見たいものとのズレは、縮まらず。
 「……君と僕は、海までは辿り着けない。僕たちは見つかる」
 「それって、幾つもある未来の一つなんだろ?」
 かつて、優の見た可能性未来を越え、海まで飛んだ憐は、静かに呟く。
 (ラファエル……ここに居ると、忘れていられるような気がしていた。優……俺にはもう、幾つもの未来はない。俺にあるのは、変わりようのない一つの未来だ。それでも、俺はその時が来るまで戦える)
 副隊長が気にする、青いネクサス――憐の捨て身の戦法の背後には何があるのか? 次回――見えざる闇の手が、遂にその姿を現す……?