東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

突然ですが en film 感想

久方ぶりのタイトル長い

 しかし戦隊劇場版のタイトルは大抵長いので、むしろ短い……?!
◆『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー en film』◆ (監督:杉原輝昭 脚本:香村純子)
 ギャングラー犯罪の解明とルパンレンジャーの正体を暴くために来日した世界的な名探偵エルロック……だがその正体は、パトレンジャーとルパンレンジャーを諸共に抹殺しようと謀略をめぐらすギャングラー!
 怪盗、警察、そして探偵、と映画のゲストが発表された時点で実質的に正体がバレていたエルロックですが、その初手からの茶番感を含めて、シャーロック・ホームズのパロディキャラにピタリとはまった風貌の田中直樹さんがなかなかの好キャスティング。
 「……しゃーない。ねえお巡りさん、一旦手を結ぶってどう?」
 「何を?! 国際警察が、怪盗なんぞと組むわけにはいかん!」
 「真面目ぶってる場合かよ!! ここで死んだら、あんたが守りたいもん、守れなくなんだぞ!」
 エルロックとウィルソン、二体のギャングラーの罠にはまったW赤はギャングラーの世界へと連れ込まれてデストラ&ゴーシュを加えた豪華な敵の攻撃を受け、30分尺の戦隊映画らしく、アクションに次ぐアクションでスピーディに展開しつつ、合間合間にしっかりと「魁利と圭一郎」を物語の軸にして二人の関係性を描いていくのが、期待に応えてくれる内容。
 劇場版のサービス要素も含め、まさに“今作で見せてほしいもの”を酌み取って具現化したような一作でした。
 なおノエル(お約束の先行登場?)は、W赤がさらわれた後に独自にエルロックギャングラーに勝負を挑み、パトレンX・ルパンX双方のフォームで実力を見せつけた上(これが初見だと、とんでもなく意味不明の存在ですが(笑))、茶番劇の謎解きまでしてしまいかけるもルパンコレクションによる反撃を受け派手に吹き飛んで退場、と……なんか、凄くノエルぽい(笑)
 「……おまえにもやり遂げたい事があるのか。…………それは怪盗になってまでかなえたい願いなのか?」
 「…………今の俺の全部だよ」
 魁利の中の強い信念を感じ取った圭一郎は、異世界から脱出までの一時休戦を受け入れ、そこに現れるグッドストライカーによく似た、ジャックポットストライカー。ドグラニオの屋敷から逃げ出してきたというジャックの話を聞いた二人は、元の世界に戻るべくドグラニオの屋敷へと潜入し、敷地を囲む高い壁を、飛んで越えるジャック、ワイヤーを伸ばす魁利、何事もないように筋力で登攀する圭一郎。
 ……おかしい、改めてこの人ちょっとおかしい!
 魁利も魁利で、あのお巡りさんならなんとかするでしょ、といった態度でさらっと先行しているのですが、休戦中ではあるが積極的に手を貸すわけでもなく互いの能力を評価した上で圭一郎はトンデモ、という実に『ルパパト』らしさが溢れていて好きなシーン。
 一行は、若干セキュリティに不安の湧くドグラニオ邸へと首尾良く乗り込むが、ギャングのアジトに潜入したら銃撃戦とカバーアクションだよね! と、ゴーシュとドグラニオの集中砲火を浴びる事に。負傷した怪盗の様子に、異世界に入った直後の戦闘で助けられた借りを返すと圭一郎が突撃して囮を務め、OPバトルで非常に格好良かった「銃撃をかわしながらコンテナの内部を駆け抜けるルパンレッド」と対比する形で圭一郎が弾雨の中を駆け抜け、アクション的な互いの見せ場と貸し借りの帳尻が合うのが今作らしいバランスで秀逸。
 魁利の不意打ちにより、ゴーシュを利用して空間を移動する扉を開かせる事に成功した二人は、異世界を脱出。正体を現したエルロックの罠にはまり危機に陥っていた仲間達の元へと駆け付ける!
 「ただでさえ厄介な怪盗と」
 「この面倒くさいお巡りさん達」
 「まとめて倒そうと欲張ったのが失敗だったな!」
 勢いで一時休戦続行のW戦隊が揃い踏み、劇場版スペシャルのルパン融号も登場してのフィニッシュ。巨大戦では、グッドストライカーをコアとしたパトカイザーと、ジャックポットストライカーをコアとした真紅のルパンカイザーが同時に登場し、ラストはクロス攻撃で永遠にアデュー。
 ……改めて、グッドストライカーは面倒なアイテムだったというか、ジャックの存在は唐突に唐突で強引な劇場版スペシャルロボではあるのですが、作品的にはそれぞれがロボット出せれば色々と面倒が減ったのにな、とはつくづく思います(笑)
 「この次は逃がさんぞ……怪盗」
 「まったく……真面目なお巡りさんだ」
 再び顔を出したノエルが、僕は全部わかっていたもんねアピールをする一幕を挟んで、警察と怪盗は、再びそれぞれの道を歩むのであった……でエンド。
 矢継ぎ早のアクションを中心にしつつ、合間合間にしっかりと人間と人間のぶつかり合いを描き、限られた尺の中にぎゅっと『ルパパト』の魅力の詰め込まれた、満足のいく劇場版でした。
 TV本編における意欲的なアクション撮影が印象深い作品ですが、この劇場版でも、スクリーンを意識したと思われる画角を広く取った戦闘シーンの数々は印象的で、劇場で映える作品であったろうな、と今更ながら。
 劇場版としての要求をそれなりに無理なく落とし込みつつ、とにかくアクション、そして「魁利と圭一郎」という描く軸をぶらさず、まとまりのよい一作で面白かったです。