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人が輝く時、そこに奇跡が生まれる――

『魔進戦隊キラメイジャー』感想・第1話

 (※劇場版エピソード0は未視聴)
◆エピソード1「魔進誕生!」◆ (監督:山口恭平 脚本:荒川稔久
 高層ビルを破壊しながら迫る巨大なタコ……よりも、高層ビルを圧してそびえ立つ巨大な椰子の木の方がインパクトがあった第1話。
 そこから、力強く地球防衛組織の存在が打ち出され、ルパンレンジャーの対比的存在という意味合いが大きかったパトレンジャー以前だと、『特命戦隊ゴーバスターズ』以来の公認組織所属戦隊となりますが、偉い人が敢えてスーツを否定するIT企業家みたいな雰囲気を醸し出しているので、“自称”地球防衛組織の可能性もまだ捨てきれません。
 ……まあ、過去にも、一応世界規模の公認組織めいているけど、一部篤志家の趣味で運営されているのでは……? みたいな戦隊(組織)は色々あったので、大丈夫。
 「地球は狙われています。闇を崇めるヨドン軍に」
 赤い魔石が反応を示した高校生、熱田充瑠(あつた・じゅうる)の元を宝石姫様が訪れ、しれっと「地球は狙われている」入れたのは《ウルトラ》に参加したい荒川さんの犯行ですか(笑)
 「繰り返したくないのです。ふるさとクリスタニアの悲劇を」
 ヨドン軍の暴虐を語るお姫様の視点と主張はともかく、回想シーンで、戦闘員に袋だたきにされて絶命(?)する宝石お父様の姿が、市民革命により玉座から引きずり下ろされた専制君主の図にしか見えないのですが、果たしてこれは、悪逆無道の闇の軍勢による理不尽な侵略行為だったのか、圧政に苦しむ市民達が困窮の末に起こした暴動の結果だったのか、この先の展開が待たれます。
 赤い魔石が充瑠を選んだ理由――それは、魅力や凄い才能の源になる輝く精神・キラメンタル。
 「つまり、キラキラ輝いている人を探してるってこと?」
 「はい!」
 ヒーローに選ばれる素養およびその力の源として設定されたキラメンタルですが、「凄い才能の源になる」という表現は、「才能のある/なし」による人の分別を無神経に描きかねない大きな地雷なので、慎重に扱ってほしい要素です。
 「じゃあ、ぜったい人違い!」
 「ええ?」
 「俺、そんなキラキラに見えます?」
 全力でそれを否定する充瑠だが、そこに割って入る赤い魔石。
 「人違いじゃねぇ! なんだかわかんねぇが、おまえは多分キラキラしてんだ! キラメイジャーになれるんだ!」
 校舎に横付けした巨大な魔石は、一方的な主張を展開すると、充瑠を問答無用で強引に拉致!
 「俺はおまえのキラメンタルを、戦う力に変えられる。手を貸してくれ、相棒!」
 姫様は姫様で、いきなり物騒な話を押しつけられて狼狽する充瑠の隙を突いて腕を取るや、力強く変身アイテムを叩きつけ、問答無用で強引に装着!
 …………市民革命コースが、だいぶ濃厚になって参りました(そして未だに自覚も反省もない)。
 充瑠はそのまま、先輩キラメイジャーが戦闘員を蹴散らす最前線に輸送され、まずは黄緑青桃のキラメイジャーの戦闘シーンの中で、それぞれ相棒の宝石との微妙に違う関係性を提示。自分はとてもキラキラした存在ではない、とキラメイジャーになる事は否定する充瑠は充瑠で、流れ弾をものともせずにキラメイジャーの戦闘をスケッチに収めようと至近距離にかぶりつき、なかなか素っ頓狂な面をアピール。
 戦いが終わり、変身解除したメンバー4人は皆ひとかどの有名人であり、食いつく充瑠に対し満更でも無い、というか、凄くファン慣れしています(笑)
 ひとりだけ充瑠に知られていなかった黄色が早くも残念クールの道を一直線に走り出し、腕のブレスに目を止められた充瑠は、レッドである事をまたも全力で否定。
 「凄いレッドが来ると思って、楽しみにしてたのにな」
 追い打ちでハードルを更に上げてくる緑の子ですが……凄いレッド……過去の凄いレッド……「バイラムと戦う為には、個人的な感情は捨てなければならないんだっ」「あちゃあ! ほあちゃあ! 超力ライザー!」「俺は既に命令した! このボウケン(びしっ)レッドが!」「よっしゃラッキー!」「国際警察の権限において、実力を行使する!」…………うん、人間、程々がいいのではないでしょうか。
 「ご迷惑をおかけしました! 頑張ってくださーい!」
 キラメイジャー4人は、巨大タコが変形した蛇口ロボの対処に向かい、それを見送る充瑠がエールを贈る、というのは今回の割と好きなポイント。
 主人公像として非常識を突き抜ける手法もありますが、だいぶ素っ頓狂な面はあるが、基本的に小市民的な良識の持ち主、というのは奇行を描いた直後だけに、充瑠への好感度が上がりました。
 巨大蛇口ロボに対しては、eスポーツチャンピオンである黄が即座に戦術指揮を執る判断力を見せ、年上の女性(桃)にはさん付けだったり、落とした直後においしいポイントを付けてバランスを取る見せ方が、さすが匠の技。
 高貴なる身勝手さを全力で振りまく姫様は、河川敷で体育座りをする充瑠に変身アイテムの返還を求めるが、充瑠愛用のスケッチブックを開き(自由……!)、その中の想像で描かれた絵に目を瞠る。
 「これも想像。ただ、こんなのが居て、あいつをやっつけてくれたらいいなって」
 「おおー! これだよ! おまえのキラメンタルは、これだ!」
 赤い魔石も大興奮し、扱いに危惧のあるキラメンタル、誰もがそれぞれの煌めきを持っている……といった方向に上手く行ってくれれば良いのですが。
 「クリスタリアでは、現実にない物を絵に出来るのは、私の父、オラディン王ただ一人でした」
 充瑠の“想像を表現する力”を褒め称えつつ母星における父王の特殊性を示す姫様ですが……えーと、それは……
 「絵画? 音楽? 貴様ら下賤の民草に、そのような娯楽など一切不要! 働けぃ! 働けぃ! 貴様らが生かされているのは、儂に美しい宝石を捧げる、ただそれだけの為だということを忘れるな!!」
 ……的なやつだったのでは。
 「おまえはまだ本気出せてないだけで、すげぇやつなんだよ! 自信持てーーー!」
 「こんな誉められたの初めて……俺の中に、キラキラ……?」
 “他者から認められる事”により、自分に自信を持ち始める充瑠だが、そこに4人が苦戦中との連絡が入り、ひらめキーング(流行るといいな……ぐらいの気持ち)。
 「それだ! 俺はおまえのイメージを形にできる!」
 赤い魔石は充瑠の描いたスポーツカーへと姿を変え、冒頭いきなり「おまえのキラメンタルを、戦う力に変えられる」と戦場に連れて行く気満々で話し始めた時は、異星関連は名称が北欧神話モチーフのようなので、つまりこの石は世界の終わりまで酒盛りを続ける勇士達の魂で構成された筋金入りのバーサカー脳なのどうしようこの石、と思いましたが、それを「イメージを形に」へと引っ張り、想像→絵→実体、という流れで互いの力を引き出し合う“相棒”を成立させたのは、お見事。
 充瑠は赤いスポーツカーに乗り込んで現場へと颯爽駆け付け、4人が手も足も出ない蛇口ロボに、ビルを利用して体当たり。同級生が高層ビルの屋上に取り残されている事に気付くと新たなイメージを描いて赤いマシンに消防車の姿を与え、ここに魔進ファイヤーが誕生する!
 「充瑠、今こそおまえも変われ! おまえの中のキラキラ、もう信じられるだろう!!」
 「変わる……変われる……変わりたい!!」
 そして充瑠は別の誰かとの関係性を通して新しい自分へと一歩踏み出し、好きなテーマ性というのもありますが、ヒーローとしての「変身」に、一人の少年の「変化」を上手く掛けて、劇的な新ヒーロー誕生となって良かったです。
 想像力を力に変える、というのは『トッキュウジャー』の「イマジネーション」を思い出すところですが、今作ではそれをより具体的にして子供が気軽に可能な「お絵描き」という手段に落とし込んでおり、作品の特性として上手く活きてほしいところ。
 充瑠はキラメイレッドへと変身するとファイヤーに乗り込んで同級生を救出し、4人の魔石も、ドクターヘリ(桃)、ジェット機(青)、スーパーカー(緑)、ショベルカー(黄)、へと姿を変える。
 「なに?! あいつら、なんなの?!」
 「魔進を……なぜ地球人にあれが生み出せる」
 ヨドン軍の三日月アーマーが思わせぶりに呟く中、キラメイジャーは恐らく戦隊史上最も眩しくて目に痛いコックピットに乗り込み、蛇口ロボを相手に、主題歌に乗せて各魔進がたっぷりとした見せ場アクション。
 ここでもネタ要員に使われる黄色ですが、頑張れ黄色。
 彩りの派手な制服のせいでどうしてもマジイエロー@残念クール界の先輩を思い出すけど、頑張れ黄色。
 五体の魔進は蛇口ロボの動きを封じて謎の魔法陣の完成を阻止すると、必殺煌めきダルマ落としでフィニッシュし、地球はひとまずヨドン軍の尖兵を退けるのであった。
 「五人揃いました、お父様。キラメイジャーを見守っていて下さい。この地球は、必ず守ります」
 予想外にアクティブだったお姫様の呟きからCM挟んでEDとなり、ついつい毎度探してしまう今回のダンス危なっかしい要員は……ピンクがちょっと、おぼつかない……? ソロパートの振り付けも一人だけ妙に難度が抑えられているようにみえなくもなく(笑)
 前半、忙しくて少々入りにくかったのですが、中盤から充瑠に焦点を合わせ、キラメンタル問題がいきなり火を噴く事もなく変身に繋がった流れで、ぐっと入っていく事が出来ました。
 前作の上堀内監督に続き、ライダー畑からの戦隊パイロット版抜擢となった山口監督の演出ラインもあってか、陽性というか所々ちょっとはっちゃけた感じがどう転がるかでも印象変わってきそうですが、とりあえず、妙に派手派手しいオフィスと、今回限りでは、割と姫様に横柄な感じだな……という印象のみの長官ポジションがどんな世界観を形成してくるか、気になるところです。
 敵も味方もキャラクターの色を出してくるのはこれからですが、とりあえず、中村悠一声の格好いい鎧キャラが居るので、私が大変得。あと、口元露出の悪役、というのは近年見ない気がするアプローチでヨドン軍の陣容も色々と楽しみです(口出しは、割と早めに退場しそうな雰囲気もありますが……)。
 次回――新人加入により人間関係がもつれそうな話の内容よりも、怪人が、黒十字軍のラグビー仮面!とか名乗りそうな(『ゴレンジャー』ぽい)見た目なのが凄く気になるのですが、そういう路線なのでしょうか……?
 過去3年が、『キュウレンジャー』(大人数)・『ルパパト』(年間VS構造)・『リュウソウジャー』(巨大戦中心の劇構造)、といずれも意識的な変化球を投げてきたのと比べると、比較的オーソドックスな作りに見えるスタートであると同時に、今回段階でもシリーズ過去作品である『トッキュウ』『ゴーオン』『マジ』を思い出す部分があったのですが(まあいずれも、6~15年前の作品ですが)、過去作要素を狙って取り込む為の荒川さんの起用だったりするのかどうか、シリーズとしてはやはり、50周年を見据えた諸々への意識、というのはあると思うのですが、どんな展開をしてくるのか楽しみです。

 ※感想タグを「ひらめキング」にするかどうかは、次回を見て決めたいと思います(笑) ……よく考えると、割と根性太い発言だな「ひらめキング」! 民衆とは、王に支配され、服従し、奉仕するものなり!! ふははははは、掘れ、もっと掘れ! この世の美しい宝石は全て我が玉座に捧げられるべきものなのだ!(脳内オラディン王は完全に暴君)