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地底の勇者に仁義はいらない

光戦隊マスクマン』感想・第30話

◆第30話「ママ!! バラバの絶叫!」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 グレートファイブを強奪して地上征服大チャンス! と祝賀パーティの予約でホテルを抑えていたらギャラクシーロボが登場し、ショットボンバーが破壊されて今度こそ地上征服大チャンス! と徹夜でくす玉を作っている間にジェットカノンが誕生してしまい、大変お怒りのゼーバ様は、勢いでバラバに死刑を宣告。
 「もはやこれしかないのだ。今の俺がチューブで生きていくためには、 腹踊りを極めるしか 大地帝剣を手に入れるしか、ないのだ」
 忠臣オヨブーの制止を振り切ったバラバは、地底一の勇者の証となる大地帝剣を手にいれるべく、デビルドグラーの閉じ込められた地底牢を解放。不気味な一つ目の地底獣に挑むも、いきなり全身に矢を受けて重傷を負うと、そこに駆け付けた母ララバ(演:曽我町子)と共に地上へと吹き飛ばされ、その反応の調査に向かったマスクマンは、バラバと地底獣の死闘を目撃して困惑。
 「いったいどうなってんだ?!」
 光戦隊もチューブも、効率的な能力強化の手段が、身内による殺意のぶつけ合いという点が共通しているのですが、やはり、地上人と地底人は古代から混血を繰り返しているのではないでしょうか。
 流れ弾で吹き飛ばされたタケル達は、足を負傷したララバと出会い、女手一つで育て上げてきた一人息子バラバに戦いをやめさせ、田舎でひっそり暮らしたい、と切々と訴えるララバの言葉に、母親を重ねるアキラ。
 「アキラ……優しさもわかるが、戦いの場においては、情けを捨てる事も必要だ」
 (長官……でも、でも、俺には出来ません)
 先行するタケル達4人に対し、ララバを見捨てる事の出来なかったアキラは、ララバを背負ってバラバの元へと向かう。
 「バラバの心を入れ替えてくれ。そうすれば、地底獣も人間も、きっと仲良くできるんだ」
 闇の深い光戦隊の中では、若さゆえの甘さと表裏一体の“優しさ”を体現する位置づけが確立してきたアキラですが、美緒=地底人イアル姫、という情報が共有されているとすれば(今のところまだハッキリしないのですが)、仲間への思いやりから、未来への希望を具体化しよう、というのは大変いい奴。
 ……まあ、そう考えると、タケルの対応が大変冷たくなってしまうのですが、自分と美緒の関係を、地上と地底の関係、とまで広げて捉える事の出来ていないタケルの視野が、今後どうなっていくのかは、気になるポイント。
 先行したタケル達がチューブ戦闘機部隊の攻撃を受けて吹き飛ばされている間もデビルドグラーとバラバの死闘は続き、アキラとララバは、地面に倒れ伏すバラバの姿を発見。バラバさえ助け起こすアキラだが、バラバを説得して田舎へ帰る、と約束していたララバはやにわにまなじりを吊り上げると、折れた剣を手に取り倒れたバラバに戦いの続行を促し、目を見開いた曽我町子さんの芝居が急加速(笑)
 「おまえは、バルーガ族一の戦士。母の誇り。今度は地底一の勇者になるのじゃ」
 こちらの方が実に“らしい”のですが、姿長官が否定派だったり、美緒とタケルの問題もあったりで、「敵」と「味方」という集団の関係性を乗り越えた融和の可能性を見出す展開は十分にありそう……な流れからだったのでインパクト大。
 「バルーガ族は地底一勇敢な戦闘部族。その勇敢な戦士を育てた、バルーガ族の母が、どんなものか……見せてやる。よく見るがよい。母の姿を」
 そして立ち上がれぬままのバラバに声をかける間、話が違うと食ってかかるアキラを徹底して“見ていない”のが、実に見事な狂気の表現。
 短刀を引き抜いたララバはデビルに向けて突っ込んでいき、全身に矢を浴びながらも土手っ腹にドスの一撃を叩き込むと、反撃の光線を受けて大・爆・死(笑)
 泣き落としからの豹変、相貌に狂気を乗せての玉砕、と相容れぬバルーガ族の価値観を大上段から叩きつけ、押し寄せる濁流が堤防を決壊させるかのように、物語の流れを大きく動かして納得させてしまう、強烈な勢いでありました。
 「ママーーーーー!!」
 絶叫したバラバは、母の形見となった髪飾りを取り上げると、右手に折れた剣、左手に髪飾りを手にしてデビルへ復讐の突撃。迫り来る光線をものともせず、往生せいやぁ、と腹部に剣を突き立てると、デビルドグラーに封じられていた力がバラバに流れ込み、折れた剣が大地帝剣へと変貌、バラバは地底一の勇者の力を得てしまう!
 地底勇者のマジックアイテムを手に入れたバラバの凄まじいパワーに手も足も出ないマスクマンは、ジェットカノンを召喚。剣を振り回して突撃してくるバラバが「クロスターゲット!」されてしまい、あ、これ、意外とざっくりやられるパターン……? とドキドキしたのですが、激しいオーラパワーと勇者パワーがぶつかりあった末に、両者は相殺。
 一気のバラバ退場とはならずホッとしましたが(なんだかんだ、こういうポジションのキャラが、生き延びて“化ける”のに期待したい性分)、登場二回目で敵幹部の強化の踏み台になってしまったジェットカノンはそれでいいのか?!
 バラバの変なポーズで呼び出されたオケラにより巨大化したデビルは、ジャイロカッターを空中でキャッチして逆に使う、という実力派地底獣の意地を見せるが、光電子ライザーでファイナルオーラバースト。
 「俺のせいでバラバは大地帝剣を手に入れてしまった……」
 ララバにかけた情けが仇となり、バラバが勇者の力を得てしまった事を悔やみ、修練に根を詰めるアキラを励ますタケル達。
 「アキラ。そんなに自分を責めるなよ」
 「……でも、大地帝剣はとてつもなく恐ろしい剣」
 「その大地底剣を破るのは……アキラ、おまえの剣だ」
 アキラの握る剣にタケルが手を添え、主題歌アレンジをBGMに、空に向け、真っ直ぐに伸びる刀身と傍らの大樹を同じ画面に収めたカットが、若いアキラの象徴としても機能して、非常に良い絵。
 前半のふわふわした流れが、ララバの狂気が表面に噴出したところでスイッチが入って濁流に変わり、そのまま出し惜しみなくララバを退場させる! というのも効いて、ゲストの存在感を上手く活用したエピソードになりました。
 どこまで拾われるかはわかりませんが、余り加減だったバラバを、アキラと因縁づけてくれたのも良し。
 バラバの強化に続き、次回はイガム強化?! という展開は、2号ロボ登場~ジェットカノン誕生、という一連のマスクマン強化展開よりも盛り上がり、やはり悪役の魅力は大事だな、と改めて(個人的な趣味嗜好はありますが)。その点では、今のところ、ショットボンバーを破壊しに来た人、というだけになってしまっている盗賊騎士キロスに、改めて奮起を期待したいところです。
 一応、美緒=イアル、という極めて重要な情報をもたらしてはいるのですが、それがどこまで共有されているのか(少なくとも前回は、戦闘中に思い切り叫んでいましたが)、その事が光戦隊にどんな影響をもたらしているのか、というのが描かれていない為に劇的な効果が弱く、例えば情報共有の度合い次第では今回のアキラの行動の意味も少し変わってくるわけで、そこが繋がる事でもう一つ跳ねる事が出来なかったのが、惜しまれます。