『光戦隊マスクマン』感想・第25話
◆第25話「アキラの恋人?!」◆ (監督:東條昭平 脚本:曽田博久)
「さすがアキラ、よく切り抜けた!」
自分の格と立場を守る為、時にはおしげなく敵を讃えるのも、悪の幹部の大事な処世術。
鍛錬を終えたアキラが手紙を読んでいるところに迫るハルカとモモコが、アキラに恋人が出来たのでは?! と妄想を膨らませ、逃げたアキラは「東洋武術世界一決定戦」の垂れ幕に目を止めると、参加を決意。だがその大会は、アキラを消耗させようとするチューブの作戦であり、物陰でヘンゲドグラーが息を潜める中、開幕する風雲!チューブ城。
サブタイトルに関しては、OPのキャストクレジット(「アキラの母親」)時点で謎が全て解けているので、アキラとJACの面々が様々な武器を用いて激闘を繰り広げる夏休み生身アクション祭と、主に女性メンバーの空回りをお楽しみ下さい、というさっぱりした作り。
「ガールフレンドとペアで、世界一周旅行行く気らしいのよ!」
「まさかぁ」
「だから心配して、追いかけてきたんじゃない」
アキラがタケルのように、ガールフレンドにうつつを抜かして敵前逃亡を繰り返すようになってはならない! とお姉さんぶる女子二人に引きずられ大会の会場を訪れたマスクマン一行は、作戦遂行の障害を排除しようとするチューブの奇襲攻撃を受けてオーラマスク。
久々に活躍するオヨブーだが、イエローのマスキーローター煙幕により4人はその場を切り抜け、物凄くナチュラルに、ハルカが地上忍法・砂抜けの術(範囲逃走)を使っています(笑)
砂丘に顔を出した4人はアキラが落とした手紙を拾い、ごく自然に中身を確認。友好度も親密度も高い光戦隊ですが、年少者のヒエラルキーの低さだけは如何ともしがたい!
ワクワクしながらアキラ宛ての手紙を読み進めるハルカだが、「神経痛」の一文から、恋人ではなく母親からの手紙と納得しつつ、そのまま平然と読み進め、年少者のヒエラルキーの低さだけは如何ともしがたい!
母親の手紙には一人旅立ったアキラを心配する思いが綴られており、旅立ちを駅で見送るシーンも挟み込まれて、天涯孤独の山暮らしではなかった!
ただ、
〔山ごもり → スカウト → 旅立ちと別れ → 東京の光戦隊へ!〕
だと、先日の記憶喪失回の際に友達の事ばかり気にしていたのが不自然になってしまうので、
〔中学卒業 → 武者修行の旅に出る! → 旅立ちと別れ → 山野を放浪(子供達と親しくなる) → スカウト → 黙って姿を消す → 東京の光戦隊へ!〕
といった感じの流れでしょうか。
父親の影が不在・母の強い武術へのこだわり、などから、アキラは付近の山賊ないし怪異を退治した放浪の武芸者との間に生まれた子供なのでは、という気がしますが……ええと、あれ、もしかして、姿長官?(疑いの眼差し)
「ただ、おまえが東京で、いったい何をしているのか、よくわからないのが心配です」
……姿長官んんんんん?!(人の皮を被った悪魔を見る眼差し)
母の手紙モノローグとしんみりした曲調のBGMに重ねてアキラは激闘を続け、地下にドルゲの前線基地があるのでもお馴染み伊豆シャボテン公園の高原竜ヒドラですが、像の上で戦っている、というのは初めて見たかも(笑)
アキラは母親に世界一周旅行をプレゼントしたかったに違いない、と盗み読みした手紙に親子の愛情を感じてタケル達がしんみりしている頃、当のアキラは手にした槍で対戦相手の股間を連続で打撃し、悶絶する相手選手に空中からの一閃をお見舞いし、コミカルな演出で誤魔化されていますが、一般市民との流血沙汰に及ぶ光戦隊の闇は深い。
アキラの戦いを暖かく見守ろうとするタケル達だが、大会そのものが怪しいと長官から連絡が入り、アキラの親孝行したい一心を踏みにじるとはチューブ絶対許さねぇと立ち上がる。つい先程まで、好奇心本意で私信の開封とかしていたのですが、基本的に横の繋がりが強いチームなので、アキラの名を口々に叫びながら砂丘をダッシュする4人の姿が素直に受け止めやすく、コミカル寄り→シリアスへ、空気の切り替えがスムーズに決まったのは今作の積み重ねのなせる業。
ナレーション「だが、その時アキラは、罠とも知らず激戦を勝ち抜き、傷つき、ボロボロの体で決勝戦に臨んでいたのである」
青竜刀で戦うアキラを助けるべくタケル達4人は水着に着替えて海へと飛び込み、アキラのアクション祭の流れで、体を張って遠泳する事に。
追い詰められたアキラは母との別れを思い返し、僅かの差で勝利を掴む……が、駆け付けた4人から口々に大会の真実を告げられ、え、4人とも、手紙勝手に読んだの? はまあともかく、足早に島を脱出しようとした所に、バラバ達が立ちはだかる。
「バラバ! そして、みんなも聞いてくれ。俺は商品が目的じゃなかったんだ! 母さんが俺が東京で何をしているか、とても心配していた。だから俺は東京でも武術を忘れていない事を母さんに伝えたかったんだ。俺にとっての武術は体を鍛え、心を磨くこと!」
アキラの真の望みは大会優勝者としてその名を母に伝える事にあり、アキラの純粋な優しさを示すと共に、高め合う仲間であるがどうしても年下として扱われるアキラが、金品に目がくらんだわけではなかった事で年長組との関係性を一つひっくり返し、更に、作品としての共通ギミックではなく、アキラ個人にとっての「武術」の意味を語ると、「私」の部分へのスポットの当て方が鮮やか。
アキラ母子の心の繋がりに、親子仲には大変問題を抱えていそうなハルカさん、思わず感涙。
「よくも、よくも虚仮にしれくてたな!」
「ふざけるな! 返り討ちだ!」
変化ドグラーは、大会の随所に描かれていた特殊な武器を戦闘員に配り、武術アングラ兵vsマスクマン、というのはアクセントとして面白い趣向。アキラは敢えて変身せずにアングラ兵に立ち向かい、袖口からナチュラルに暗器を取り出すアキラにとっての武術、とは。
チューブの作戦方針や生身にこだわってのバトルががモモコの骨妃回と被っている意識はあったのか、ドグラー相手にはあっさり変身したアキラはトンファーの一撃から回転蹴りを打ち込み、トドメはショットボンバー。巨大戦はGロボが担当し、変化ドグラーの取り出した杖を奪い取っての軽い立ち回りの後、ダブルバルカンで弱らせてから鉄拳で合掌。
年少のアキラに対する心配、というか、ちょっと考え方が軽いのではないか、という年長女性陣の一方的な視線をクライマックスでひっくり返し、アキラの生アクションを軸にしつつも、要所でハルカ(&モモコ)にスポットを当てる形になっていた人間関係への目配りがよく、なかなか面白いエピソードでした。
次回――120%藤井先生の予感。