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欠乏するネクサス

ウルトラマンネクサス』感想・第23話

◆Episode23「宿命-サティスファクション-」◆ (監督:北浦嗣巳 脚本:長谷川圭一 特技監督:北浦嗣巳)
 亜空間からの触手に引きずられた工事現場の作業員が触手を切り裂く光線によって助けられ、四つん這いの姿勢のまま困惑していると、背後に出現する巨大な足。
 「きょ、巨人……」
 と視点に合わせてネクサス登場が描かれるのは格好良く、盛り上げるBGMに合わせて次々と触手を切り裂くネクサスも大変ヒロイックなのですが、結局、従来的なヒーロー(ウルトラマン)の見せ方をしている時が(経験の蓄積もあって)一番演出のノリも良く、『ネクサス』としての格好良さや面白さはここでいいのか、という点ではもどかしい思いが募ります。
 そして今作の抱え続ける大きな問題点は、その“ウルトラマンの見せ場”以外のシーンをどう面白く見せていくかに関する工夫が大きく不足しており、また、連続ドラマ構造を言い訳にしながら、そのドラマ構造を支え補っていく要素も見当たらない事。
 その双方に共通する要素が、「サスペンス(或いはミステリー)」と「キャラクター」なのですが、ざっくり言うと今作、「見ていて興味を引かれる謎とそれにまつわる情報の適切な提示」がされていないので「今回はあまり面白くなかったけどあの秘密は気になるなぁ……」という状況があまり発生せず、孤門の主体性や目的意識が明瞭ではないので物語の進行方向さえここ数話は不明瞭であり、総じて“引き”の要素が致命的に不足しています。
 それに輪を掛けるのは、“引き”の要素の発生源となりうる筈の、キャラクターの魅力の欠落。
 今作が『仮面ライダークウガ』の影響下にあるだろう事はほぼ確実なので引き合いに出しますと、『クウガ』が優れていた点の一つは、「新たな切り口で志の高い重厚なドラマ」(的なもの)をやろうとするに際して、「キャラクターの魅力」の重要性を大事に図面を引いた事であり、極端に言えば、キャラが魅力的ならそこにドラマが自然と生じるのですが(例えば「孤門くんが無事かドキドキする」だけで、サスペンスが発生するわけで)、今作(これはまた、連綿と積み重ねられてきた東映と円谷の作風の違いも影響はありそうですが)はそこで「ドラマ」と「キャラ」の比重を設計段階で間違えてしまったように思えます。
 勿論、「ドラマ」と「キャラ」(本来なら厳密な定義付けの上で進めるべき話なのですが、曖昧な横文字で進めるのをご容赦下さい)は密接に関係し合う要素なのでどっちがどっち、というわけではないのですが、例えば2クール目において姫矢がらみのドラマがそれなりに見られるのは、現在の『ネクサス』において、姫矢が最も「ドラマティック」なキャラクターだからであり、一方で、「キャラクターの魅力とそれに付随するドラマ性」に著しく欠けているのが、TLT側、といえます。
 ただここ数話、姫矢の持つドラマ性というのが明確に、“不治の病”のドラマ性になってきている為、姫矢そのものは嫌いではないのですが、そのドラマ性であまり盛り上がりたくないなぁという感情とのせめぎ合いが発生しており、『ネクサス』に対する温度の低下はそこからも発生しているというのが正直。
 なお、“不治の病”のドラマ性は『クウガ』にも取り込まれているのですが、それをミクロ(五代雄介と戦闘生物化)とマクロ(人間社会とコミュニケーション断絶の拡大)で重ね合わせ、「不治の病とみんなで殴り合う物語」にしたのが『クウガ』の妙味であり、『ネクサス』にもなにか、成る程そう来るか、というものがあればいいのですが……。
 「僕は忠告した筈だよ。今度変身すれば、死ぬかもしれないって」
 作業員を助けるも次々と伸びる触手に動きを封じられるネクサスだが、そこにチェスターが飛来。
 「各機攻撃開始。ウルトラマンを、援護せよ」
 隊長の命令でチェスターは攻撃を開始し、例えばここで、無言で命令に従って援護攻撃する副隊長は本当になにを考えているのか? というのが、TLT側における致命的なドラマ/キャラクター性の不足といえます。
 「セラ…………俺は誰も救えなかった。……誰一人!」
 「准……まだ終わってないわ」
 「え?」
 チェスターの攻撃を受けた触手は亜空間に引っ込んでいくが、ネクサスは早くも変身解除。セラの幻影に導かれた姫矢は、海の中から複数の牙が突き立っているような不気味な情景と、戯画化された怨嗟の叫びが集合したような不気味なビースト、そして佐久田の姿を目にするが、気を失っていたところを孤門に揺り起こされる。
 「何故そうまでして戦うんです?! いったいなんの為に?!」
 「理由は、俺にもわからない。だが、光は俺に……この力を与えた。……だから、俺は……」
 「でも! そんな体で戦えば、あなたは死んでしまう! 僕らだって戦えます! だから……」
 「行かせてあげない」
 なんか突然、スッキリした表情で孤門を制止する副隊長(笑)
 「彼が望むようにさせるべきだわ」
 あまりにも積み重ねがなくて、ほとんどギャグというかもはやギャグですが、そうそう、「笑い」というのは、「突拍子もない飛躍」や「互いの齟齬」から生まれるものなのだなと別の部分でしみじみ頷いてしまいます。
 孤門は、石棺戦闘機に乗り込んで去って行く姫矢を見送る事しか出来ず、一応その後、孤門と副隊長のやりとりが入るのですが、何しろこの数話、会話という会話がなかったので、会話している事自体に違和感が発生してしまっており、「副隊長が姫矢に一定の理解を示す」シーンの為に「孤門と副隊長の会話を重ねさせ、副隊長から姫矢への心情を明言しないまでも表情などから視聴者に推察させる要素を散りばめておく」といった仕込みを全くせずに、「孤門と副隊長が数話ぶりにまともに会話を交わし全て後付けで説明する」ので、序盤からのあれこれを考えればそれなりに劇的な意味づけを持った筈のシーンが全く劇的にも効果的にもならない、という『ネクサス』作劇の悪い所が濃縮されたような数分間。
 少年期に宇宙人に命を助けられた(と信じている)体験を、ネクサスに助けられた出来事と重ねていた事を孤門が明かし、副隊長の抱える少女時代のトラウマと対比されるのは、今作では数少ない真っ当な布石が活用されているのですが、その前置きとなる副隊長の姫矢に対する認識の変化があまりにも虚無な為、「副隊長が姫矢に一定の理解を示す」という本来は相応に劇的な筈のシーンが、伏線の踏み台にしかなっていないのは、大変残念です。
 むしろ伏線の踏み台でしかない、というならば、そんな物語の作り方自体にガッカリですし、どちらにしろ残念。


七つ目の封印が解かれし時、深夜0時、闇の扉は開き、終焉の地へと通じる。

 「終焉の地……?」
 「黙示録に記された、最終決戦の場所だ」
 ビースト襲撃を利用した溝呂木からの暗号メッセージに対し、隊長がこれもまた突拍子もない発想のコメントを述べるのですが、例えば、黙示録にまつわる溝呂木の言動の共有などが描かれていればこれもスムーズになるのに、とにかくそういう仕込みが総合的に不足しすぎています。
 同じ頃、根来を匿うUFO研究所の面々も暗号を解読しており、市井の変人集団が実は隠された秘密に辿り着いている、というオカルト要素は面白いといえば面白いのですが、積み重ねと愛嬌が無いので、物語の都合による超有能集団、にしかならない出し方がまた残念。
 UFO研究所から情報を得た根来は、地下に潜り込むもビーストに襲われていたところを姫矢に助けられ、目と目で語り合ってなんだか盛り上がる二人。
 「おまえはいったい、何と戦ってるんだ?!」
 「俺が戦っているもの…………それは……宿命です」
 迫り来る触手に対してダッシュから変身を決める姫矢さんは格好いいのですが、それを見届ける役は本当に根来で良かったのか(笑)
 何度か似たような事を書いていますが、ドラマの構造だけでいえば、根来の位置に孤門(姫矢に憧れる後輩ジャーナリスト役)を入れるのが、改めて一番スッキリしたのでは、と。
 「見ろ、あれが姫矢だ」
 佐久田を捕らえた溝呂木の待ち受ける闇の空間へとネクサスは突入し、触手の本体である、実に気色の悪いデザインの亡霊ビーストと激突。
 「遙か宇宙から飛来した光。奴はその光に選ばれ銀色の巨人となった。だが奴はその力の価値をわかっちゃいない」
 満身創痍のネクサスが瘴気のガス攻撃に苦しむ一方、暗号で予告された時刻に開くであろう位相空間へのゲートに向けて、飛び立つチェスター。
 「開け、闇の扉」
 真剣な顔のイラストレーターが絶妙に間の抜けた台詞を口にし、伝奇的ごった煮感を出したかったのかもしれませんが、作品キーワードの雰囲気が統一されていない上に、キャラ描写の不足から「そのキャラにあった言い回し」も確立されていない為、要所要所でどうにも締まりの悪い事になっています。
 「奴の戦いは終わる。姫矢准はその役目を終えたのさ。……ははっ、はははははは」
 闇の世界ではモノトーンの荒野の中で倒れたネクサスの瞳から光が消え……終焉の地に突入したNRが目にしたのは、小山に磔にされたネクサスの姿、でTo be continued...
 2クール目の終わりを前に大きな一山を迎えそうな流れの中、行間を埋めようにも文字数が足りなすぎて行の間が存在しない、という今作の短所が煮詰められたようなエピソードでしたが、次回――溝呂木ジャンプ!