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狂った時計はジャイアントデビルの夢を見ない

キカイダー01』感想・第34話

◆第34話「呪いの大時計 ビジンダー危機」◆ (監督:畠山豊彦 脚本:長坂秀佳
 大変ナチュラルに公園で寝泊まりしているミサオ達、イチロー兄さんはもうちょっと、支援の手を差し伸べてあげてもいいと思います。
 カメラマンの消滅とリエコダーの爆死退場を経て、「これまでの筋書き上、出さないわけにもいかないのでコメディリリーフ要員に転向」したのが案外うまく回っていたアキラ達ですが、ビジンダーのレギュラー化にともない「出来る範囲で持っていたドラマ性を消化して一つの区切りをつけた」結果、特に出なくても良くなってしまったものの、シャドウ組織から身を隠す流浪の旅はまだ続いている模様。
 持っていたドラマ性は既に消化されてしまった為に三人一組という縛りがなくなり、「必然性をどうにか組み込むキャラクター」から、「都合の良い時に出し入れするギミック」に扱いが変わった事で、かつてのカメラマンと似たような存在になりつつあるのが、どうにもこうにも、巧く回ってくれません。
 出すなら出すで、アキラ&ヒロシがマリと新たな関係性を構築するなどあれば物語上の意味合いも生まれたのですが、それはゲストキャラに振り分けられる為、持て余し感も悪目立ちする事に。
 シャドウ組織は腕時計を触媒にして人間の凶暴な逃走本能をかき立てる儀式魔術を発動し、腕時計をはめた人間が大暴れする乱闘事件が各地で勃発。死者13人、重軽傷者3万人を超える異常事態となるが、さすがのイチローも、集団で暴れ回る市民達を前に、ゼロワンドライバーで端から気絶させていくわけにもいかず歯噛みする。
 「もう少し見ていよう。この子供達の内何人死ぬか、はははははははは、はははははは!」
 その被害は子供達にまで及び、やんやとはしゃぐビッグシャドウが、虫歯菌のコスプレイヤーではなく、世界的犯罪組織の首領らしい外道悪辣ぶりを発揮。
 腕時計を外す事で子供達の乱闘を止めたマリだが、保護者から誤解を受けて警察のお世話になりそうになり、善意の行動が社会からの罵声に曝されるその姿にビッグシャドウは大喜び。イチロー兄さんには一欠片ほどしか存在しなかった、世間に受け入れられない異端としてのヒーロー像が盛り込まれ、カーニバルのフィナーレはイカす核爆弾だぜ! とビッグシャドウはザダムに命じて激痛回路もといボタンを外して回路をスイッチON。
 ……ところで、シャドウ組織における「核爆弾」の認識が、マリ周辺の親子をまとめて爆死させる程度、なのですが、やはり内臓されているのは、「核(熱属性の魔法)爆弾」なのでは。
 マリが時計をプレゼントした少年が、激痛にのたうつマリを介抱しようとして核爆発危機一髪のその時、イチローが駆け付けてそれを阻止。
 「くそー、ゼロワンめ。また邪魔をしにきやがって、くそぉ……」
 観客席のビッグシャドウは身をよじって大興奮し、スタッフがそろそろラスボス候補らしく押し出していこうとしているのか、演じる八名信夫さんの自主的なものかはわかりませんが、前回-今回と、だいぶビッグシャドウがテンション高く動き回ります。
 ……まあ、どちらかというとリアクション芸の方向性なので、やればやるほど、ボスキャラとしての格は下がっていくのですが(笑)
 ゼロワンの介入によりザダムは作戦を変更し、今回、シャドウ組織のシーンに全く登場しないのでそろそろ廊下のゴミを拾う係に降格されたのかとドキドキしていた、毎度お馴染みお邪魔虫、使いっ走りダー登場。
 マリがハカイダーの銃撃から子供達とその親をかばい、ハカイダーを叩きのめしたゼロワンは、シャドウ組織の呪術を打ち破ろうと調査中、巨大な時計に扮していたシャドウ怪人キチガイバトを発見する。こうなっては計画の続行は不可能、とビッグシャドウは鳩にビジンダー抹殺を命じるが、そうとは知らぬマリ/ビジンダーは、思うにならない自らの存在に思い悩んでいた。
 「私はシャドウで作られたくせに、不完全な良心回路を持っている、中途半端なロボット。ああ、私も早くゼロワンのように、強く正しい人造人間になりたい。その為には、どうしたらいいの」
 やはりここは、基地破壊では。
 「クークル~~、居たなビジンダー。ここは貴様にはふさわしい死に場所かもしれん」
 曖・昧。
 キチガイ電波によりビジンダーを爆死させようとする鳩だったが、そこにトランペットの音色が響き渡り、ゼロワン参上。火を噴き軽快に飛び回る鳩に対し、カットカットドライバーそしてブラストエンドの連続攻撃で大爆殺するのであった。
 「僕、僕も、ビジンダーみたいな、立派な人間になる」
 「……あたしみたいな、立派な人間」
 少年の感謝の言葉に力づけられたマリは、自らの進む道は間違っていないのだと前を向いて一歩を進み、困っている子供を助ける→誤解を受ける→それを解消する→子供の抱える問題を心理的解決に導き自らもフィードバックを得る、とマリと少年の正攻法の交流エピソードの一方で、このところ戦績の微妙だったイチロー兄さんが鬼畜ヒーロー無双を発動し、キチガイと核爆弾とザンネンダーの扱いはともかく、セオリーでまとめた一本。
 そのザンネンダーは久しぶりに遠吠えタイムを取り戻し、ビジンダーを加えた上で今作の約束事を忠実に配置し………………あの、満足げに走り去っていくイチローサイドカーに、思い切りアキラくんが乗っているんですが!(笑)
 ラストがまるまる使い回しの映像(+新規アフレコ)の為ですが、そういう、作風の雑さまで忠実に再現しなくてもいいと心から訴えたい。……ところでOP映像に始まり毎度毎度、サイドカーに乗せられたアキラ少年が振動で物凄く揺れているのがドキドキして仕方ないのですが、実際の撮影時は人形だったりしたのでしょうか(70年代なのでその辺りが不安を誘うわけですが)……て、待てよ、アキラくんは俺と一緒に行動しているから狙うなら俺を狙うんだなシャドウ! と、イチロー兄さんが敢えてデコイのアキラくん人形を乗せて走っている、という解釈はあり、か……? 一歩間違えなくても、通報案件なのがやはりドキドキしますが。
 なお今回、ミサオはともかく、アキラを完全無視してイチローが走り去る、というかなり衝撃的なシーンがありました(笑) 誰よりも、イチロー兄さんの中でアキラくんの問題が終了しているのではないか。
 次回――振り袖般若!!
 このところ順調にシャドウ怪人が登場していたので完全に油断しており、路線復活のインパクトが、心臓に突き刺さるダメージ(笑)