東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
旧ダイアリー保管用→ 〔ものかきの倉庫〕
特撮作品の感想は、順次こちらにHTML形式でまとめています→ 〔特撮感想まとめ部屋〕 (※移転しました)
HP→〔ものかきの荒野〕   Twitter→〔Twitter/gms02〕

今年もいつもの長いやつ

2019年を振り返る:特撮編

 今年も、〔東映特撮YouTubeOfficial〕〔ULTRAMAN OFFICIAL by TSUBURAYA PROD.〕を中心に色々踊らされた日々でありました。
 年末恒例、今年も各部門に分けてランキング形式で振り返ってみたいと思います。対象エピソードは、昨日の更新分まで。対象作品は、“それなりの話数を見た上で、今年、最終回を見た作品&劇場版&現在見ている作品”という事で、以下の通り。
〔『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』『ウルトラマンルーブ』『電光超人グリッドマン』『スーパー戦隊最強バトル!!』『電撃戦隊チェンジマン』『ウルトラマンガイア』『ウルトラマンネクサス』『キカイダー01』『光戦隊マスクマン』『仮面ライダーゼロワン』『炎神戦隊ゴーオンジャーvs獣拳戦隊ゲキレンジャー』『動物戦隊ジュウオウジャーVSニンニンジャー』『炎神戦隊ゴーオンジャー 劇場BANG!』『仮面ライダー1号』『仮面ライダーキバ 魔界城の王』『仮面ライダーZ0』『仮面ライダーエターナル』『ゴジラvsヘドラ』〕
 『騎士竜戦隊リュウソウジャー』『ウルトラマンタイガ』の2作は、長らく視聴中断している為、今回のランキングからは対象外としました。
 性質上、上記作品のラストにまで触れている場合がありますので、ご了承下さい。
 昨年のランキングはこちら→〔2018年を振り返る:特撮編/ものかきの繰り言〕
 まずは、帰ってきたこの部門。

☆残念部門☆
1位 ハカイダー (『キカイダー01』)
2位 藤宮博也/ウルトラマンアグル (『ウルトラマンガイア』)
3位 イカルス (『電撃戦隊チェンジマン』)
次点  高山我夢/ウルトラマンガイア(『ウルトラマンガイア』)

 2014年2位ウルザード、2016年2位ブラックビート……これまでもランクインのあった、“悪い意味で本当に残念な”ライバル悪役の源流にして真打ちが、堂々第1位を獲得! その名を、CLIMAX四人衆筆頭、ハカイダー(『01』仕様)!
 最凶のライバルの肉体と悪魔の天才科学者の頭脳が融合し、同じタイプの3人の幹部を従えて世界征服を目標に掲げ、まさに恐怖のハカイダー部隊、恐るべき悪魔の使い! たまたま潜り込んだ少年一人を炙り出す為に原子力研究所を壊滅させる華々しいデビューを飾るも、その時、仁王像の中から恐怖のヒーローが誕生する!
 かくして、第1話にしてヒーローに正面から殴り負け、基地を破壊され、以後延々と現実を見失う、という残念すぎる宿敵が誕生。今思えば、子供一人を捕まえる為に原子力研究所を吹き飛ばす、という破壊活動は単に計算が出来ないだけであり、その無駄な活力が無ければゼロワンの起動も無かったのでは……? と戦慄の真相が浮かび上がり、最初から最後までクライマックスだぜ
 最前線に立たないと気が済まない体質や毎回恒例の負け犬の遠吠えなど、とにかくあらゆるムーヴで自分から格を下げまくるのですが、デザイン自体は格好いいので、後半戦の巻き返しに、一応、期待したいです。
 「この恨みきっと晴らすぞゼロワン!」
 第2位は、90年代を総括するにふさわしい正統派の環境テロリストにして、もう一人のウルトラマン、藤宮博也。主人公と同質の力を持ちつつ強烈な思想性で対立する、という押しも押されぬ美形ライバルポジションながら、初の本格戦闘において、格好良くポーズを決めている間に思わぬ反撃を受けて「ふぉ?!」を披露。クールなようで割と力任せ・盛り上げてからのガックリ体質・致命的な詰めの甘さ、の3点セットに加え、筋トレハッキング、玲子の出演番組チェック、端々の自己陶酔、と年間通して安定な残念ぶりで、近年の後輩達に、その存在感を見せつけました。……フェニックス!
 「地球にとって人類とはガン細胞だよ! 増殖し続け、地球を汚し続けるだけの存在」
 第3位は、星王バズーの王子、イカルス。伝説の残念王子を彷彿とさせる風貌・予告時点で迸る残念オーラ・開始3分で期待に応える会心の残念ムーヴ、と単発のゲストキャラながら極めて高い残念ポイントを稼ぎ出し、堂々のランクイン。藤井先生お得意の悲恋プロットをベースにしつつ、作品の重要なテーゼをまとめ上げるエピソードも終盤の名作で、印象深いキャラクターに。
 「渚さやか…………母上」
 次点として、主人公特性でブリッジクルーとなんとなく雰囲気を出しながら、筋肉と梶尾さんに魂を引かれてしまった高山我夢。我夢自身の残念度はそこまで高くないのですが、敦子との合わせ技だと思って下さい(笑)
 「はっはーん…………はっはーん」
 東映ヒーロー残念男子の系譜として正統派の残念美形だった疾風は、我夢に頭一つ差で敗れる形になりましたが、つまりこれは、梶尾さん大好き同盟(本人含む)の勝利だ!

☆助演部門☆
1位 チーム・ハーキュリーズ (『ウルトラマンガイア』)
2位 千葉辰巳(参謀) (『ウルトラマンガイア』)
3位 伊吹長官 (『電撃戦隊チェンジマン』)
次点  夜野勝利(『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』)

 第1位は、筋肉……じゃなかった、チーム・ハーキュリーズ。正直、『ガイア』全体を支え、その物語構造と深く関わり合った「筋肉」でもいいような気はしたのですが、キャラクターではないので自重して、そんな「筋肉」のポイントも含め、『ガイア』における「筋肉」代表としてハーキュリーズの栄誉を称えたいと思います!
 既にゲシュタルト崩壊が起きそうなほどネタにしておいてなんですが、チーム・ハーキュリーズが優れていたのは、如何にもネタ先行になりそうなビジュアルながら、決してネタ専用チームではなかった事。空戦特撮がシリーズの華という事もあってエリート感漂うファイターチームに対して、たたき上げの陸戦部隊という存在自体のアクセントを始め、ひ弱なルーキー我夢に対して“大人”のポジションから気を配り、ファイターチームとは全く違う距離感で接する事が我夢周辺のみならずXIG全体の人間関係に厚みを与え、全編通して大きな存在感を発揮。筋骨隆々の3人組を安直な単細胞集団と描かずに絶妙な愛嬌を与えた原田監督の演出も大きいと思われますが、『ガイア』という作品の完成度を引き上げる、非常に貢献度の高いチームでした。今作の陰の功労者といえる存在だと思います。ウクバール回の筋トレしながらのやり取りとか、ホント好き。
 「そ、我夢のピンチを助けたのは、俺たち」
 「「「チーム・ハーキュリーズ」」」
 第2位は、陰に陽にXIGを支える千葉参謀。当初は、軍隊的組織の象徴としての厳しい上司、或いは難解な用語の説明され役といった程度の扱いだったのですが(思わせぶりな事を言う役はコマンダーが担当)、スポットの当たった第22話「石の翼」で大化け。各方面との交渉のみならず、現場の実務でも有能な所をさらっと見せると共に、甥っ子との関係を通して未来を担う子供達への想いが語られる事でキャラクターへの芯が通り、劇中で確固たる立場を確立したというのが、大変大きかったです。同エピソードで市民視点から描き出された「破滅招来体が存在する世界」のパラダイムシフトと、それと向かい合う参謀の考え方は物語のラストまで今作を支える太い柱の一本となり、まさにXIGと物語の屋台骨。当初はそのポジションから、適当に都合のいい役回りになりそうだなぁ……と思っていたのが良い意味で裏切られたのも含め、印象深いキャラクターになりました。
 「君が空を見るのをやめた時、君がなくしたものは、本当に失ったものはなんだ?」
 第3位は、電撃戦隊の鬼軍曹、伊吹長官。アサルトライフルを構えてヘリコプターから身を乗り出しているOP時点で既にどこかオカシいのですが、上空からの銃撃、地雷の起爆、背中に向けて発砲、と好き放題を繰り広げた挙げ句、電撃流の歓迎を経て着任した隊員達へ向けて遠くを見ながら信念を持ってオカルトを語り聞かせる姿が、80年代の狂気全開で実に壮絶な立ち上がり。
 自ら物語を動かす事はあまりありませんでしたが、恰幅のいい親分肌の狂人として若者達を導き続けた末に明かされる正体が物語の構造とピタッとはまったのも大きく、良い戦隊指揮官でありました。
 「おお……! これはアースフォース! 遂に出たぞ! やっぱりアースフォースはあったのだ!」
 次点として、主人公・夜野魁利にとっての動機であり劣等感の対象であり圭一郎との関係性におけるキーマンとして、物語の通奏低音となり、最初から最後までひたすら二枚目だった勝利兄さん。出番は多くありませんでしたが、格好いい兄キャラ好きの私のツボに、大変突き刺さってくるキャラクターでした。
 「そんな事ない。魁利は偉いよ。我慢して、待っててくれたじゃないか」
 今年は他にも、瀬沼さんや梶尾さん、米田さんに田端さんなど、おいしいセミレギュラーポジションが多かったのですが(これは圧倒的に『ガイア』の長所)、作品を盛り立てるに欠かせない存在として、キカイダー01』ナレーションの名調子を特筆しておきたいと思います。
 「ダブルマシンが地雷を踏む。そして、地雷が爆発するまでの速さより、ダブルマシンのスピードの方が遙かに勝っていたのだ」
 「雷と雲の発生装置、サタンサンダーメカは、キカイダーに爆破された」
 「イチローはゆく、果てしなき、巨大な悪の組織との、戦いの道を」

☆メカ部門☆
1位 ホームジム (『ウルトラマンガイア』)
2位 エリアルベース (『ウルトラマンガイア』)
3位 電撃基地 (『電撃戦隊チェンジマン』)
次点  ルパンマグナム(『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』)

 第1位は、今年を象徴するマシンといえば、これしかない。貴方のハッキングを3倍速にする、一家に一台ホームジム! 厳密に言えば、藤宮が使っていたマシンがいわゆるホームジムなのか断定できないのですが、エリアルベースや光戦隊ジムにあったものも含めて、トレーニングマシン総合、という事で。肉は光! 光は肉だ!
 「物事の基本は、体力……!」
 第2位は、まさかのホームジムに負けてしまったエリアルベース。普通に、特撮メカ、という扱いでは、今年ぶっちぎりの存在感だったのですが(笑) 存在そのものが劇中スーパーテクノロジーの象徴、天空要塞という位置づけの格好良さ、劇中における「天」の視点の意味づけ、という、ただの母艦に収まらない役割から、数度の墜落の危機の末、基地破壊イベントによる殉職までしっかり使い切られ、大変良いベースでした。
 「おまえ一人が戦ってきたわけじゃない。そして、おまえ一人が戦えば済む事でもない」
 第3位は、メカ、というにはちょっと苦しいですが、序盤は悪の組織の目標として物語を転がすギミックの一つとなり、最終盤は決戦の地として機能した、電撃戦隊の象徴、電撃基地。秘密基地の所在を巡る攻防、というのは初期作品ではしばしば見られますが、そのセキュリティ体制が電撃戦隊の特徴を示すのに一役買い、重要性が維持される事で最終章においてアハメスの墓標にふさわしいものとなって名悪役の退場を彩り、更にそこから、電撃基地は失ったがシャトルベースと仲間達はまだ健在だ! と最終決戦への気運を高める、ヒーローの秘密基地として、実に充実した使い切りぶりでした。
 第2位のエリアルベースと合わせ、『ガイア』『チェンジマン』、完成度の非常に高いこの両作における、劇中ギミックの使い切りの巧さが、両ホームベースが組織の象徴として強く機能している点に示されているように思えます。
 「まあ俺達にとって、安らぐのは風呂だけだからな」
 次点として、持て余しがちな3クール目の追加武装が、近年最高峰の殺陣で見事な決定打となったのが印象深い、ルパンマグナム。デストラ戦は厳密には昨年末なのですが、終わってみれば実質的な最終決戦だったので、遡って作品全体で光ったアイテムという事で。個人的には、兄も、仲間も、圭一郎との絆も失い、銃へのフェチズムに目覚めてしまう魁利も見たかった……ような、なくて良かったような。
 「それに……俺もけっこう好かれたみたいよ。なあ、ルパンマグナム」
 続いては……やはりあの作品が強かった!

☆悪の組織部門☆
1位 大星団ゴズマ (『電撃戦隊チェンジマン』)
2位 根源的破滅招来体 (『ウルトラマンガイア』)
3位 シャドウ (『キカイダー01』)
次点  地底帝国チューブ(『光戦隊マスクマン』)

 第1位は、悪の組織としてシリーズ史上屈指の圧倒的完成度を見せつけた大星団ゴズマ。脅威としての存在感・個性豊かな幹部陣・テーマ性を深める二重構造……その存在が物語構造と密接に絡み合い、最終的にチェンジマンが立ち向かうべき真の敵を浮かび上がらせる、というのが実にお見事。また、劇中の様々な描写によって、全宇宙を支配しつつある強大な組織、としての説得力を保ち続けていたのも、非常に素晴らしい悪の組織でした。
 「許せないのは、そういう宇宙人を戦いに仕向ける、星王バズーと大星団ゴズマだ!」
 第2位は、厳密には組織化していませんが、『ガイア』に登場する“怪獣”の総称として、根源的破滅招来体。後半、地底怪獣はあくまで“地球の生き物”である、という扱いの変化からカタルシスの減少に繋がり、ギミックを突き詰めていく過程でのややこしさが若干出てしまいましたが、年間通してバラエティー豊かで、“キャラクターとしての怪獣”の存在感があったのが素晴らしかったです。
 「確かに街を破壊する怪獣は恐ろしい。でもな、本当に怖いのは、人の心が壊れてしまう、ていう事かもしれないな」
 第3位は、希に見るポンコツ系悪の組織から、ブレーキの無いキチガイ系組織への脱皮を見せ始めている世界犯罪組織シャドウに後半戦への期待も込めて。ポンコツぶりはポンコツぶりで3周ぐらい回って面白いかもしれない領域に達しつつあるのですが、作戦の危険ドラッグ感も、怪人や幹部クラスの雑な扱いも、ロボットの定義への疑問も、ビッグシャドウの扮装も、何もかもが組織を支配する濃厚な狂気の産物になりつつあり、このまま飛べる限り飛んでいくと大化けしてしまいそうな気もして参りました。組織運営の駄目さ加減はともかく、科学力(というか呪術力)は意外と高い、というのはおいしいポイント。ロボットは、人間の血で急成長し、超能力を使うのです。
 「シャドウの一番目の目的は、一千万人殺人計画なんだ」
 次点として、これも来年への期待票も含めて、地底帝国チューブ。帝王、太鼓持ちの気配もする大臣ポジション、指揮官-忍者×2、巨大化要員、と派閥抗争の要素を含めて安定した組織形態と、立ち上がりからそれぞれキャラの立った上層部の描写で、今後の躍進に期待を持たせます。大変ナチュラルに、忍者が存在しているのも大きい(笑)
 「地底帝国チューブの力はあんなものではない。……このままではチューブには勝てん」
 来年への期待という点では、滅亡迅雷ネットも高いのですが、現状、突出したリーダー格だけで構成されていて、組織としての面白さは出ていないので、ZAIAとの関係性含め面白く転がってほしいです。

☆悪役部門
1位 女王アハメス (『電撃戦隊チェンジマン』)
2位 魔王カーンデジファー(『電光超人グリッドマン』)
3位 星王バズー (『電撃戦隊チェンジマン』)
次点  宇宙海賊ブーバ(『電撃戦隊チェンジマン』)

 第1位は、圧倒的な脳内得票数で、女王アハメス様! 本編感想で繰り返しましたが、とにかく、キャスティングが会心でした。常に高所に立って他者を見下し高笑いで現れながら決して下品にはならない、黒田福美さんの演技が素晴らしかったです。そしてその、他者を見下しながらも、より強い者には服従する精神性が演出面で徹底され、終盤の「転落」に至る……という描かれ方も絶妙で、狂死を迎えるラストまで、実に名悪役。今年の視聴作品を代表するキャラクターでした。
 「アマゾ星の女王――アハメス!」
 ゴズマ勢の大攻勢の中、第2位に食い込んだのは、救えぬクズの吹きだまり・桜ヶ丘に降り立った魔王カーンデジファー様。現地人の憎悪を煽って怪獣を作らせつつその精神的保護者に収まる、という立ち位置の面白さが、悪役サイドの魅力で引っ張る作品を最後まで牽引。もともと異世界からの逃亡者&現地人1名、という小粒な組織形態も、悪役としての格をあまり下げない方向に上手く働いてくれました。そして何より最終決戦、適当な光線技でお茶が濁されるだろうと思っていたらまさかの肉弾セメントマッチを展開し、大満足。
 「ふふふふふふ。今日もまた学校から、憎悪と悪意を抱えてきたか」
 第3位は、大星団ゴズマを率い、全宇宙の征服を目指す星王バズー。悪の組織部門1位のゴズマと重なりますが、とにかく、ラスボスの造形として大傑作。侵略組織の二重構造で格を保った上で、チェンジマンが打破すべき“世界の理”そのものの象徴として高い説得力を発揮し、素晴らしいボスキャラでした。
 「この儂に逆らった者の、哀れな末路を全宇宙の見せしめにするのだ」
 次点として、宇宙海賊ブーバ。ゴズマの現場指揮官として最前線に立ち、ドラゴンのライバル・軽くコメディリリーフ・節操なしの小悪党、と紆余曲折を辿り、終盤、ゴズマレギュラー陣がそれぞれの立場に揺れる中で、これといった背景の主張されてこなかったブーバは捨て駒のような扱いになるのかと思いきや、根無し草ゆえの元・宇宙海賊として「自分」を貫く姿が描かれて、ならではの存在感を発揮してくれたのが、大変素晴らしかったです。ジール編-退場編の、ブーバ二連作の繋がりが実に劇的だったのですが、最後の最後、締めのナレーションが本当に完璧な一押しで、これまで数多く見てきた悪役の最期の中でも、極めて印象的な一つとなりました。
 「綺麗だぜ……やっぱりおまえは、お姫様だ」
 ゴズマ勢だと、ギルーク/スーパーギルークも好きだったのですが、最終盤の扱いの良さで、ブーバを上に。来年はチューブ勢の躍進に期待が高まりますが、特にイガム王子がどう転がっていくのかは楽しみです。

☆ヒロイン部門☆
1位 烈鷹 (『炎神戦隊ゴーオンジャー 劇場BANG!』)
2位 立花藤兵衛 (『仮面ライダー1号』)
3位 佐々木律子 (『ウルトラマンガイア』)
次点  ギョダーイ(『電撃戦隊チェンジマン』)

 第1位は、TV本編において女性メンバー二人からそれとなく好意を向けられるも全く気付かない小学生男子系リーダーだった走輔の心をバッチリ掴み、夏の劇場版で真ヒロインの座をもぎ取っていた、たっくんこと、炎衆のリーダー烈鷹! 會川脚本らしい「正義」とは何かの問答を経て互いの魂を共鳴させた末、クライマックスの劇的なキセキ、そして走輔の心の中で永遠になるという極めて高い芸術点を叩き出し、劇場版ヒロインとしてまさにパーフェクト。……もしかして、一歩間違えると『ボウケンジャー』の真ヒロインは映司(ないし明石パパ)になっていたのだろうかと會川脚本の抱える業に戦慄しつつ、そういえば、『コンクリート・レボルティオ』の裏ヒロインは柴刑事でした。
 「思い出したのではなかったのか。誰かの為に、戦うという事を」
 第2位は、作品の内容はともかくヒロインとしてはそれなりに頑張っていた孫娘のヒロイン力を一瞬で上書きし、本編に1秒も登場していないのにメインヒロインと化してしまった立花藤兵衛。さすが、栄光の7人ライダーを統合する伝説の真ヒロイン。その力、圧倒的……!
 「……おやっさん、一緒に行こうぜ」
 第3位は、正統派薄幸系美人の律子さん。そうなったらいいのになぁ……とあまり期待せずに考えていたら本当に公式化してしまった点も含めて、梶尾×律子は、今年最も、ツボにはまったカップリングでした。ありがとう、本当にありがとう原田監督……! さすがに終盤は、エピソードのメイン扱いになる事はなくサブストーリーに終始しましたが、それでも、走り抜けてくれた事に大感謝。
 「…………梶尾さん。あなたは……必ず帰ってきてくれますか?」
 悪役部門で1位に輝いた女王アハメスを筆頭に、邪悪策士さやか、炎の体当たり麻衣、家畜化光線サクラ、準レギュラーとして獅子奮迅のナナ、キャラ付けの面白かったシーマ、と多士済々だった『チェンジマン』ヒロイン勢ですが、それらを抑えて次点に選んだのは、巨大化担当宇宙生物ギョダーイ。ギョダーイさえキャラクター化してみせる『チェンジマン』の手管もさる事ながら、最終回のミラクル及び敬礼の可愛げで、全て持っていきました(笑)
 「ギョダーーイ!」
 来年は、イズがどこまで頑張ってくれるか、期待。
 ヒーロー部門と作品部門の前に、新設、というか、これは毎年やっておけば良かったな、と今更ながら悔やんでいる2部門を。

☆印象の強かった脚本家部門☆
1位 藤井邦夫 (『電撃戦隊チェンジマン』他)
2位 曽田博久 (『電撃戦隊チェンジマン』他)
3位 太田愛 (『ウルトラマンガイア』)
次点  荒川稔久(『スーパー戦隊最強バトル!!』)

 初見・既知に関係なく、今年見た作品の中で、印象的だったスタッフを取り上げようという新設部門、第1位に輝いたのは、『電撃戦隊チェンジマン』において、サブライターとして万全の仕事を見せた藤井邦夫。
 《メタルヒーロー》シリーズでは程々良い仕事を見せるも、趣味嗜好に偏りすぎる傾向も影響して、短い時間にノルマの多い戦隊作劇とは相性の悪いイメージが強かったのですが、そういった部分が出る事もあったものの、呼吸が合ってきた中盤以降は秀逸回を連発。初登板の第7話を皮切りに「地球を攻撃してくる獣士も広い意味ではゴズマの犠牲者である」というチェンジマンの根幹要素をテーマとして掘り下げていく事で、曽田脚本を補う形で『チェンジマン』の物語を構築していき、それが得意の悲恋プロットを交えつつバズーの作る宇宙の否定へと昇華される第41話に到達したのは、大変素晴らしい仕事でした。また、得意技から離れても第37話で傑作回を送り込み、長所と短所が表裏一体の印象はそのままながら、今年は藤井先生に最も唸らされた1年となりました。
 第2位は、80年代戦隊の中核・曽田博久。連続メインライターの上に担当本数も多いので、もちろん出来不出来はあるのですが、改めて、この生産力とアベレージの高さは凄まじく、特に『チェンジマン』では年間トータルでの完成度も極めて高く、メインライターとしての曽田さんの筆力を、改めて見せつけられました。
 第3位は、『ウルトラマンガイア』の誇る変則左腕、太田愛。一話完結性が強く、敵サイドの縛りが緩い『ガイア』は脚本家の個性が出やすい作品だったのですが、その中でも特に変化球担当を自認していた節があり、ノスタルジックなファンタジー「遠い町・ウクバール」、大きくコメディに振った「怪獣の身代金」など、1年間の物語の中で貴重なバリエーションになりました。またそれらが、XIG内部で閉じる事なく、『ガイア』という物語世界を市民目線まで広げる事に一役買っており、特に第22話「石の翼」は、「破滅招来体が存在する世界」に、常とは違う角度からスポットを当てる事で物語後半にまで良い影響を及ぼし、お見事でした(個人的にこの手の、中盤の箸休め的な内容かと思ったら、実は物語全体の芯に深く関わっていた、的なエピソードが好きだっり)。
 次点として、思わぬ秀作だった『スーパー戦隊最強バトル!!』及び(ランキング対象作品からは外しましたが)『リュウソウジャー』において、特撮ヒーロー物の文法を踏まえた上で、“キャラクターの魅力を引き出すとはどういう事か”を見せつけてくれたベテラン、荒川稔久。改めて、希有な人材。

☆印象の強かった監督部門☆
1位 山田稔 (『電撃戦隊チェンジマン』)
2位 原田昌樹 (『ウルトラマンガイア』)
3位 杉原輝昭 (『仮面ライダーゼロワン』他)
次点  長石多可男(『電撃戦隊チェンジマン』他)

 第1位は、『チェンジマン』全55話中、なんと31話を担当した、山田稔。これまで山田監督というと、ヒーローの外連味重視のオーソドックスな演出で、判りやすさが大きな武器だが、特徴的な面白さはそこまででもない、という印象だったのですが……今作では、山田監督ここまで面白かったのか! というレベルの出来が連発。一本調子にならない絵作りの工夫から、行き届いた細かい描写まで、『チェンジマン』の完成度を大きく高める、素晴らしい活躍でした。
 脚本部門の藤井先生と合わせて、そこそこ本数を見ていた脚本・演出の、期待を遙かに上回る仕事、というのが今年は印象に残ったな、と。
 第2位は、溢れる遊び心で『ウルトラマンガイア』に一つのカラーを作った原田監督。サブキャラクターへの目配り、連続性への細かい意識など、重視してくれるポイントが私好みで、(役割は違いますが)90年代《メタルヒーロー》を支えた脚本家・扇澤延男と、印象の近いところがあります。もし原田監督が参加していなかったら、『ガイア』のキャラクターはここまで活き活きと広がっただろうか、と思わせる存在であり、1年間、非常に楽しませてもらいました。第1位こそ山田監督に譲りましたが、今年最も、担当回を楽しみにしていた監督。
 第3位は、初のメイン監督作品となった『ルパパト』を走り抜け、その同年に『ゼロワン』で近年屈指の傑作パイロット版をものにしてみせた俊英・杉原監督。期待の大きかった上堀内監督が『リュウソウジャー』で苦戦の真っ最中だったので、戦隊とライダーを入れ替えての大抜擢がどう出るか非常に不安だったのですが、蓋を開ければ大当たり。劇場版を経て、TVシリーズへの帰還が楽しみです。
 次点は、長石監督。もともと好きな監督でしたが、今年は戦隊初参加となった『チェンジマン』、そして初の戦隊パイロット版を担当した『マスクマン』を見られて、長石多可男成分が大充実の1年でありました。この調子で80年代戦隊後半戦が配信されてくれると、しばらく長石多可男成分に事欠かなくて有り難い。
 ヒーロー部門は、今年も5位から順に。

☆ヒーロー部門☆
5位 ハルカ(『光戦隊マスクマン』)
 年末ギリギリで第5位に飛び込んだのは、光戦隊の誇るオーラニンジャ・ハルカ。
 取り立てて劇中で強調される事ないまま、朝食のパンを食べるように手裏剣を投げる女、というのが私の忍者趣味のツボに突き刺さり、今の今までハルカの存在を知らなかった事が、大変悔やまれる思いです(笑) 初のメイン回となった第12話も出来が良く、あまりにもスタートダッシュが強烈すぎたので、この上のステージに飛び上がるのは難しいかもしれませんが、来年も活躍に期待。
 「本当の忍びがどんなのものか、見せてやるの!」

4位 伊賀崎天晴 (『スーパー戦隊最強バトル!!』)
 第4位は、今年最大のダークホース! 戦隊マイスター荒川稔久の筆により、ヨゴレも辞さない陽気なお馬鹿の立ち位置がメンバー内部で見事にはまり、その上でしっかりと見せ場も作る絶妙なバランス感覚により素晴らしく男前だった伊賀崎天晴!
 『ニンニン』本編のタカ兄は正直あまり好きなキャラでは無かったのですが、本編における強引なリーダー持ち上げの軛から解き放たれ、スペシャル戦隊のイエローポジションに収まった事でその自由な陽気さが良い方向に転がり、好感度が急上昇。また、持ち前のスタイルの良さが立ち回り重視の坂本演出とも相性が良く、勿論、本編1年間の蓄積を踏まえた上ではありますが、心身両面で、今作の天晴は大変格好良かったです。
 「そ、忍びなれども忍ばない! リーダーなれども、らしくない」

3位 グリッドマン (『電光超人グリッドマン』)
 第3位は、夢のマシンに宿った正義のハイパーエージェント・グリッドマン
 当初こそ色々と身勝手な言行に信用していいのか不安を誘いましたが、基本的に必要以上に出しゃばらないので、暗黒メンター化を回避。一方で、普段は別空間に存在・戦闘中は基本的に喋らない為に、触媒にしている直人ともどもヒーローとして個性は薄め、という弱点があったのですが、それが逆に最終決戦においてグリッドマン個人が強く顔を見せる「それが、私の使命だ!」を劇的にし、ジャンプアップ。また、少年少女のある時期に寄り添い、やがて去って行くが、しかしいつでも見守っている、という最終的なテーゼが私好みで、作品としてのラスト2話の出来の良さが、ヒーローとしても非常に美しい到達点になってくれました。グリッドーーー腹・筋!
 「説明は後だ」

2位 剣飛竜/チェンジドラゴン (『電撃戦隊チェンジマン』)
 第2位は、魔球ドラゴンボールの使い手、高所転落の匠・剣飛竜。
 強烈な個性があるわけではないのですが、エピソードの積み重ねを通してチェンジマンのヒーロー性を象徴していくレッドであり、ドラゴンボール回で野球に懸けた汗と涙と青春を崩れた豆腐のようにされたりしたものの、反重力ベルト回で見せた仲間への信頼、そしてチェンジスーツが「苦痛に歪んだ顔、傷だらけの体を、隠してくれている」からこそ、なんでもない事のように立ち上がり続けるのだ、という仮面のヒーローの生き様の見せ方が大変格好良かったです。
 第3位のグリッドマンとも通じますが、「“去って行く”が、いつだって“必ず来る”」ヒーロー像をチェンジマン代表として貫き、年間通して安定した主人公ポジションでした。
 「ああ。今度ばかりは俺達は無力だ。それでもやってみせるのがチェンジマンじゃないのか!」

1位 高山我夢/ウルトラマンガイア (『ウルトラマンガイア』)
 第1位は、体を鍛えて心を繋ぐ、筋肉という名の光に導かれた量子力学の天才・高山我夢……というか、ウルトラマンガイア。
 率直なところ我夢への思い入れはそれほどないのですが(嫌いではないですが)、年間通して工夫を凝らしたガイアのアクションは素晴らしく、特に、うにょんバスターとアグトルニック(共に勝手につけた名前である)は、非常に強い印象になりました。また、我夢も、ガイアも、誕生時点では非常に未完成なヒーローで、それが藤宮と衝突する事によって力について考え、肉体を鍛える事で頭脳と心を支える理想に近付いていき、共に戦う仲間達との信頼関係を築き上げ、そして、TVを通して世界に希望を与える「ヒーロー」になる……という1年間の旅路、我夢/ガイア(そして藤宮/アグル)というヒーローの完成と、『ウルトラマンガイア』という物語の到達点が重なる、というのが本当にお見事でした。総合力の勝利。
 「わかったよ藤宮。僕は、一人なんかじゃない」

 前年、猛威を振るった朝加圭一郎ですが、今年はヒーローとしての爆発力よりも、ヒーローとしての苦悩に焦点が当たっていた事もあってその印象が強く、好きなキャラではありましが、ランク外となりました。悩めるヒーローも嫌いではないのですが、多分、私が好むヒーローというのは、そこからどう“突き抜ける”かに重点があって、その意味では圭一郎が“突き抜けない”ところで終わるのが『ルパパト』だったのかな、と。そして、では誰が一番“突き抜けた”のかという、二代目ルパンレンジャー(笑)であって、私があの3人の登場シーンが好きなのは(それ故に、『ルパパト』最終回の孕むねじれがある程度は流せるのは)、そういう理由なのであろうな、と今更ながら自己分析。
 それから、本編感想では言及の多かった梶尾さん(『ウルトラマンガイア』)が結局どこにもランクインしませんでしたが、残念部門・助演部門・メカ部門・ヒロイン部門・ヒーロー部門、数多くの部門に影響を与えているといってよく、つまり梶尾さんは主人公の我夢よりもむしろ、『ガイア』世界に遍在している存在なのであります!(そいや!) 地球防衛の先達であり、花形エースパイロットであり、ラブロマンス担当であり、藤宮とは別の形で、“もう一人の我夢(可能性世界でのウルトラ主人公、ともいえましょうか)”なのだな、と改めて。
 最後に作品部門……の前に、ある意味、今年一番の衝撃であり、今年最もツボに刺さったこの人に、特別賞を授与したいと思います。
 特別賞 名護啓介/仮面ライダーイクサ
 実は当初、勢いでヒーロー部門の1位でした(笑) ただ、2014年のランキングで第3位になっており、TV本編をベースにした番外編的な作品の瞬間最大風速で第1位というのもいかがなものであろうか、という脳内会議の末、こういう形で。
 劇場版『魔界城の王』はとにかく予想外の秀作だったのですが、名護さんが本編の至る所で見せていた“人間として駄目な部分”が軒並み切除された結果、“格好いい成分”が濃縮された超・名護さんになっており、名護さんは、最高です! ……まあ、パーフェクトすぎる名護さんはそれはそれで名護さんではないのでは、という説もありますが、最初から最後までイクサ祭の劇場版仕様という事で、物凄く格好いい名護さんに大満足でした。
 「その命、神に還しなさい!」
 さて、名護さん旋風が吹き荒れた所で、今年の作品部門ベスト3は、こちら。

☆最優秀作品部門☆
1位 『電撃戦隊チェンジマン
2位 『ウルトラマンガイア』
3位 『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー
 今年の第1位は、80年代半ば、セオリーの固まりつつあった戦隊シリーズが到達した一つの精髄にして、後年の作品への影響も随所に見られる傑作『電撃戦隊チェンジマン』。
 とにかく全編通して、「表現したい事」-「その為に必要な描写」の関係に手落ちがなく、今見ても抜群の完成度。特に大星団ゴズマという敵に説得力を持たせて最後まで走り抜けたのは実にお見事で、それが、最終的に到達するチェンジマンが戦うべき真の敵の姿にも強い説得力を与え、物語に一本の芯を貫き通しました。設定・構造・描写のどれもが手抜かり無く良く出来ていて互いを補い、史上最大級の“悪”と戦うに至るテーマ面も完成しており、見事な一作でした。今作から継承・発展したと思われる要素が90年代以降の作品に幾つも見られ、後世の戦隊シリーズに影響する存在の大きさという点でも、見る事ができて良かった『チェンジマン』。
 「レッツ・チェンジ!」
 惜しくも『チェンジマン』の前に敗れましたが、負けず劣らずだった第2位は、平成ウルトラ三部作の最後を飾り、90年代~00年代へ、という世紀の変わり目に燦然と降臨した『ウルトラマンガイア』。
 一話完結を基本としてバラエティ豊富なエピソードを展開しつつ、年間を貫くストーリーラインもしっかりと構築され、各話のアベレージと全体の完成度が共に高い、非常に素晴らしい作品でした。リアルタイム当時に『ティガ』がもう一つ肌に合わず、小中和哉・千昭への苦手意識も加わってこの時期(とそれ以降)のシリーズ作品に若干のアレルギーがあったのですが、それを覆してくれた、名作。
 「ガイアーーーーー!!」
 第3位は、上位2作の圧倒的完成度の高さに後塵を拝したものの、大胆なセオリー崩しに挑戦する中で、香村純子のキャラクター描写が冴え渡り、波乱万丈の展開で年間通して楽しませてくれた『快盗戦隊ルパンレンジャーvs警察戦隊パトレンジャー』(タイトル長い)。
 凄く好きな部分と、納得のいかない部分とが複雑に混在していて最終的な評価が難しい作品になっているのですが、最初から最後まで、“ワクワクドキドキさせてくれる”作品であった、という一点に関しては揺るぎありません。また、3×3(+1)という構造を活かし、1年物のシリーズとしては、近年最高峰の殺陣を見せてくれたと思います。願わくは、戦隊シリーズの歴史において、“この先”の果実がいつか実らん事を。
 「予告する。あんたのお宝、いただくぜ!」
 「国際警察の権限において、実力を行使する!」
 それから、ベスト3には入らなかったものの、今年、特筆したい作品として、お祭りスペシャルだと思ったら予想外にストーリー面も面白く、戦隊バトルを嫌なものにしない為の細かい配慮、キャラクターの魅力を引き出す熟練の手際、と望外の出来だったスーパー戦隊最強バトル!!』と、TV版の面倒な要素を大胆に省き、パラレル的な世界観にサービス要素をガンガン突っ込んだ結果、本編のエッセンスを組みつつ独特の面白さを得るに至った劇場版仮面ライダーキバ 魔界城の王』をあげたいと思います。
 -----
 集計期間の関係で、年明け数話の最終章で終わりを迎える前年度戦隊が印象度で不利なのは毎回の事なのですが、今年は特に、力作『ルパパト』の終了後に配信が中盤に入って完結を迎える、というただでさえ有利な立場だった『チェンジマン』『ガイア』の完成度が抜けて素晴らしく、実質二強のランキングとなりました。
 そして、その二作の性質から、作品の完成度を高める、ないし、作品の高い完成度の象徴、といえる人や物が多くランクインする傾向になったかな、と思います。……その中で、あまりにも群を抜いて軌道を外れている為に、変なところでポイントを稼いだのが、『キカイダー01』(笑)
 というのもまあ、巡り合わせというものでありましょうか。
 二強に関しては、主人公を支える周囲の要素が多くランクインした『ガイア』、主人公達と敵対する悪の側が多くランクインした『チェンジマン』、というのが、同じトータルの完成度の高さでも、この2作品のアプローチの違いが現れて、個人的に面白かったところです。
 振り返って今年の印象をまとめると、第一に“完成度”の年でありましたが、同時に“予想外”の年でもあり、『スーパー戦隊最強バトル!!』(伊賀崎天晴)、『 魔界城の王』、藤井邦夫、山田稔、そして、『01』(笑) と、不意打ちを受ける年であったな、と。
 あと、作品部門で名前を挙げた5作品はいずれもアクション面が充実していた、というのは大きなポイントでした。Bパートはほとんど主題歌バトル、というパターンを貫きつつも様々な工夫の見えた『チェンジマン』(反転バズーカは忘れられない衝撃)、90年代円谷特撮の精髄に加え、光線技のみならず肉弾ファイトも熱い『ガイア』、二戦隊の特性を活かしたアクションの工夫が冴え渡っていた『ルパパト』、坂本監督らしいサービス精神溢れるアクションに見応えがあった『最強バトル』、そして、最初から最後までふんだんな戦闘シーンにそれぞれ意味を与え、クライマックスまできちっとエスカレートさせて“アクション映画”としての完成度の高い『魔界城の王』。
 特に『魔界城の王』は、TV本編の作風もあって雑な部分は物凄く雑なのに、アクション映画としては凄くきっちり作ってあって、ラスボスが格好いい点も含め、割と真面目に評価高いです。
 そんなわけで、年内の配信作品もまだありますが、ひとまず、今年の特撮振り返りでした。現行『リュウソウ』と『タイガ』から脱落気味で共にリタイア方向に傾いているのですが、現状のまま順調に公式配信が進むと来年の配信作品がかなり充実しそうで、ますます現行作品にしわ寄せが行きそう、というのが正直なところです。なるべく現行作品は見たいのですが、その中で『ゼロワン』は楽しんでいるので、年末年始で追いつきたい予定。
 後は新戦隊に光を見たく、来年も皆様に、良き特撮ライフのあらん事を――アースフォースとオーラパワーと筋肉を信じるんだ!!
 今年もご愛顧、ありがとうございました。