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光戦隊マスクマン』感想・第8話

◆第8話「輝け! 花の剣!」◆ (監督:東條昭平 脚本:井上敏樹
 マスクマン5人の訓練シーンから始まり、長官はパワーレベルをチェック。
 飛来するコンクリートブロックを棒と素手で次々と弾き落とすアキラ・モモコもアレですが、一切の躊躇なくコンクリートブロックを投げつけるタケル・ケンタ・ハルカもアレで、戦士としての心構えはともかく、人間としての一線はどんどん越えていきます。
 「イアル、今日はおまえの20回目の誕生日。このめでたき日を、こんな形で祝おうとは」
 地底では、イガム王子が氷漬けのイアル姫に向けて掲げた杯を飲み干すと、空になった酒杯を投げ捨てて憎々しげに妹を睨み付け、名門のプライド・没落貴族の出世欲・妹へ向ける愛憎に加え、男装の麗人的なデザイン×大仰な台詞回し、と盛りに盛りまくられたイガムは、引き続き良いキャラの立ち方。
 「イガム家の面汚しめ! 出来るなら我が剣をおまえの胸に突き刺してやりたい」
 そこへ現れたフーミンが、地の底で10年に一度花開き、永久氷結さえ溶かすというマリアローズをイアルの氷にかざし、慌てて止めに入るイガム。
 「しかし、このままではあまりにイアル様が、哀れ」
 「言うな! 憎むべきはマスクマン! イアルよ、おまえと同じ地獄の夢へマスクマンを突き落とす!」
 フーミンはあくまでイガム家に仕える忍者としてイアル姫も主筋と考えている事が示されると共に、イガムはイアルへの憎悪ばかりではない複雑な感情を滲ませ、最終的にどう転がるかは別に、展開の幅を持たせた布石の置き方が巧妙。
 縛りの少ない“悪役の特性”ともいえますが、今のところ、タケルよりむしろ、イガムの方がキャラの芯が通っています(笑)
 マリアローズを手にしたイガムが何やら考えている頃、地上のタケルは、貴様等には 信心 集中力と根性が足りない、と少しでも集中が乱れれば崖下に真っ逆さまのイニシエーションをアキラとモモコに要求し、拳法と、パワハラは、切っても切り離せない関係なのか(遠い目)。
 なおここでは、タケルの行動は「美緒を助ける為に仲間を鍛え上げようとする狂気」ではなく「ごく当たり前の訓練の一環」として描かれているのですが、ヒーロー作品の抱えるそうした飛躍を、「地球を守るという大義名分を掲げながら、実際は恋人の復讐の為に戦士を養成しようとする一人の男の狂気」として組み立てたのが後の『鳥人戦隊ジェットマン』であり、同じ井上脚本だけに、比較対象として面白いところです。
 みんなが狂っているならば、それはすなわち正常である、と断崖絶壁の間近でバック転するイニシエーションに軽い調子で挑むアキラとモモコだが、物の見事に足を滑らせて、まとめて落・ち・た(笑)
 無理な特訓の結果、事故で転落、というまさかの展開に素で慌てる赤黒黄だが、その最悪のタイミングで、凶悪な面構えのサーベルドグラーの強襲を受ける。
 「ははははははは!」
 「イガムぅ!!」
 「マスクマン! 貴様たちに明日はない!」
 オーラマスクした3人だがサーベルドグラーの特殊能力により氷漬けにされてしまい、サーベルと凍結攻撃が繋がっていないのが惜しまれますが、造形物先にありきで、強引に脚本のアイデアに合わせて運用する事になったのでしょうか。
 崖下から復帰したアキラとモモコが目にしたのは、氷柱の中に閉じ込められ身動き一つしない赤黒黄の姿であり、光戦隊の科学力では解凍不能の大ピンチ。
 「俺達のせいだ……五人揃っていれば、こんな事には……」
 アキラは転落を悔やみ、定番なら、ちょっと間抜けなメンバーのミスから大ピンチに……とミスをしたメンバーに原因が集中するところですが、今回のこれは、どちらかというとタケルの責任ではないかというのが変化球(笑)
 「イアルよ、おまえが愛したタケルは、今やおまえと同じ冷たい眠りの中に閉じ込められた。イアルよ、奴と夢の中で添い遂げるがよい」
 イガム王子は、解凍手段をちらつかせる事で残るアキラとモモコを誘い出し、長官の制止を振り切った二人はバイクで出撃。
 「おまえ達までやられてしまったら、地球の平和は誰が守るんだ」
 「地球は私たち5人で守ります! これからもずっと、ずっと……私たち5人で!」
 ここまで、これといった個性の無かったモモコ、チームとしての台詞なのでキャラの個性としてはまだ弱いのですが、マスクマンの結束力を示す、良い台詞になりました。
 「俺達はみんなを助ける為に行くんだもんね。指一本、髪の毛一本になっても必ず帰ってきます。根性で」
 モモコがアキラ寄りのコミカル要員として描かれたのは意外でしたが、それによってハルカとの差異が明確になり、コンビを作る事でチームを2-3に分けてキャラクターを色づけする、というのは井上敏樹のさすがのセンスの良さを感じます(ちなみに、仲間の為に戦場に赴く女性コンビ、というのは井上敏樹の好きなシチュエーションの筈ですが、キャラローテ的にもハルカ×モモコのエピソードにならなかったのは、何か事情があったのか)。
 「ねえモモコ……」
 「え?」
 「あの世って、本当にあんのかなぁ?」
 「なんで?」
 「俺、死んだら地獄行きかもな。子供の頃、女の子の靴に、毛虫入れた事があるんだ」
 「私も、猫のヒゲ切った事がある」
 「やったね。二人一緒なら、地獄に行っても寂しくないぜ」
 「冗談。私は逆立ちしたって天国に行くわ」
 軽妙なやり取り、というには役者さんの演技力がまだついていけませんでしたが、実に井上敏樹らしい会話の妙味で、曽田先生とは別種のスキルが、アクセントとして光ります。
 決死の覚悟で呼び出しの場所に向かった二人は、赤く輝くマリアローズを発見するが、そこには当然、イガムの姿が。
 「私は地底王子イガム。嘘は言わぬぞ」
 だが、罠は仕掛ける!
 フーミンや地底獣の待ち伏せを受けたアキラとモモコはオーラマスクし、ピンクの個人武器・マスキーリボンが初登場。『ゴーグルV』から継承したと思われる新体操アクションにより、オーラリボンで拘束した戦闘員を、オーラファイヤでまとめて爆殺し、結構エグい(笑)
 イエローの個人武器(独楽)は、完全に『必殺!』ノリで戦闘員の大脳を破壊していましたし、姿長官は、日本全国の闇社会と繋がっているのではないか。
 「オーラ戦士にならんか?」
 戦闘員を蹴散らしてローズに手を伸ばす青だが、それは偽物で大爆発。しかし、律儀に本物を持ってきて見せつけたイガムの手元にリボンが一閃するとローズを絡め取り、「あっ?!」というイガムの表情が、本当に悲痛(笑)
 ブルーは空中でそれをキャッチするがイガムの攻撃を受けて崖から落ち、残ったピンクには地底獣らの攻撃が迫る。その間に傷だらけのアキラは本部へと辿り着き、尺の都合やCMのタイミングで仕方なかったのでしょうが、映像的には〔落下即本部〕になってしまったのは惜しく、もう少しが間が欲しかったところです。
 この後の尺の配分を見ると、持ち帰ったマリアローズで赤黒黄が復活するかのサスペンスと、怪しげな解凍マシンを操る姿長官、にスポットが当たるので、この辺りはメカニカルな要素の押し出し、という当時の作劇上の要請もあったのかもしれません。……考えてみると近年あまり、こういった機械操作シーンに尺を割く印象が無いので、時代性を感じるところです。
 孤軍奮闘するピンクが絶体絶命のその時、復活マスクマンが合流して揃い踏みから主題歌バトルに突入し、もしかしたら長石監督と東條監督が、意識的に戦闘シーンの見せ方を変えているのかも。
 ピンクマスクの活躍が描かれてサーベルドグラーは爆死し、今回は王子がオケラを召喚して巨大戦に突入。巨大十字手裏剣ことジャイロカッターが、マスキージャイロのローター部分である事に、今回ようやく気がつきました。
 多彩な飛び道具を操るサーベルドグラーに対し、グレートファイブは銃撃からゴッドハンドを叩き込み、トドメはファイナルオーラバースト。地底獣に不覚を取ったタケルら3人は、筋肉への信仰を鍛え直すべくアキラとモモコからスパルタ訓練を受ける羽目に陥り、疲れ果てて倒れ込むも最後は手を取り合って和気藹々……と思いきや、階段に向けて蹴り落とし、拳法と、パワハラは、切っても切り離せない関係なのか(遠い目)。