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人は不思議な力秘めてる

光戦隊マスクマン』感想・第2話

◆第2話「怪奇!闇の地底城」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 姿長官は無念無想の境地に入った!
 ピラミッドスペースで気を高めた長官は、座禅を組んだ姿勢のまま浮き上がり、地底帝国チューブとの戦闘より驚愕する面々(笑)
 「はははははははは……これがオーラパワーだ」(※効果には個人差があります)
 正直、口から火を噴く連中が出てきた後なのでインパクトはそれほどでもないのですが、姿長官は、タケル達5人を戦士として鍛えてきたのは、オーラパワーを引き出せる資質の持ち主と見込んだからである、と説明。
 「人はその体を鍛えれば鍛えるほど強くなる。そして人知を越えた力、想像を絶した力を引き出す事が出来るんだ。タケル、ケンタ、アキラ、ハルカ、モモコ。なんの為に今までその体を鍛えてきたんだ。己を信じて、更に鍛えるんだ。君たちなら引き出す事ができる、オーラーパワーを」(※独自の研究です)
 長官の主張するオーラパワーは、超科学でも外的に与えられる能力でもなく、“人間の秘めた内的な力”と位置づけられ、特訓モードに入る5人。レオタード姿で忍者と戦う特訓が割と謎ですが、チューブにも凄く普通に忍者が居たので、忍者は万国共通の超人なのです。
 地底では幹部陣が帝王ゼーバのお仕置きを受け、心の広さが内部分裂の温床を生んでしまった、前作のラー・デウスを反面教師にしてか、ゼーバはスパルタ路線。赤い光線が目から入り込んでいるのが、凄く痛そうです。
 幹部陣が適度にのたうち回ったところでアナグマがなだめに入り、コメディリリーフも兼ねていそうですが、大臣ポジション、といった様子。アナグマは裏切り者のスパイこそ粛正すべきだと進言し……地底獣に飲み込まれたかと思われた美緒は、地帝城の牢獄に囚われの身ながら生きていた!
 そして空手着を身につけ特訓中のタケルは、託された首飾りを通して届く、美緒の声を耳にする。
 「美緒は生きている……美緒!」
 速攻で、特訓を放棄して、走り出す(笑)
 その姿に戸惑う仲間達、そして、凄く慌てる姿長官。
 「タケル! 戻るんだ!」
 ……もしかしてこの島、特訓中の逃亡を許さない為に、そこら中、地雷だらけだったりするのか。
 「タケル……好きでした。初めて会った時から」
 囚われの美緒のいちゃいちゃ回想が始まり、前回に続いて二人の関係性を念入りにフィーチャー。正味17分時代の戦隊作劇というのもありますが、繰り返されるあははうふふもテンポが良くて間延びしないのが、長石演出の良いところ(個人的に長石監督の演出とリズムが合う、というのはありますが)。
 「短かったけど、素敵な思い出をありがとう……。……さようならタケル、もう二度と会う事は無いでしょう」
 「……何故だ……何故なんだ!」
 「何故って……何故って私は……私は……」
 美緒の正体は、チューブの軍指揮官の一人であるイガム王子の妹、イアル姫であり、帝王ゼーバの前に引きずり出されたイアルは、ゼーバによる冷凍系の処分を受けてしまう。
 「イアル……地獄で眠れ」
 氷漬けの状態で永遠に悪夢を見続ける恐るべき刑が執行され、美緒の正体と現状を見せつつ、没落貴族と罵られるイガム王子(ゼーバの血縁ではないらしく、チューブに降伏した一族、といったところでしょうか)と、貴族に対しあからさまな敵意を向ける姿が叩き上げの軍人めいたハゲ将軍の対立関係を盛り込むのが、手堅い。
 「生きていてくれ……必ず助けに行く。たとえ地の底へでも」
 通信の途切れた首飾りを握りしめたタケルの呟きが格好良く、美緒以外は何もかも後回しという私情を基準に行動しつつも、要所要所でタケルをヒロイックに描き出す事で、主人公としての存在感を失わせないのが、巧い作りです。
 目線を砂浜にやったタケルは過ぎ去りし美緒との日々を思い返し、タケルと対応してのイメージカラーなのか、赤い靴、赤い帽子、サボテンの赤い花が印象的に強調。
 「いつの日か必ず、また会えると信じてるよ」
 思い出チャージを終えたタケルが、希望を込めた呟きの際に僅かに微笑を浮かべているのが、美緒との思い出は悲劇ではなく美しく穏やかなものであり、その背を突き動かすのが復讐の狂気だけではないというラインを示して、大変いい表情。
 開始時点で出来上がっていた恋人関係が、悲劇的な別離を通して敵味方の関係性に一本の芯を通したところから、生存の希望をそのまま戦う覚悟に結びつけ、シンプルながら要点を押さえた作りが鮮やかです。
 ……それにしても、微妙に邪悪な文様の首飾りですね!(左右を向いた人の顔の意匠か?)
 タケルが誰も居ない海で二人の愛を確かめていた頃、ハゲ将軍率いる部隊が、地上に出現。
 ナレーション「マスクマンは、バラバの挑戦を受けた」
 4人で(笑)
 …………君ら、ホントいい奴だな……(感涙)。
 この1-2話、タケルと美緒を中心にしていて残り4人は潔くキャラ回待ちという描き方なのですが(アキラだけ、コメディリリーフ的な扱い)、タケルが愛のソルジャーすればする程、暖かい距離を取る4人の好感度が自動的に上がっていくミラクル(笑)
 だが、特訓半ばの4人は待ち受けるチューブ軍の攻撃を受けて斜面を転がり落ち、更に、前回妙に強調されていた怪人の手の残骸は、なんと伏線だった!
 エネルギー獣オケランパ(結構凝った造形)が地上に送り込まれると、その放出したエネルギーを受けた地底獣が、腕から巨大化復活。
 そして、長官の呼び出しを受けて仲間の元に駆け付けようとしたタケルの前には、イガム王子が姿を見せる!
 美緒を救い出してみせる、と決意も新たにタケルが振り向いて走り出そうとするとそこにイガム王子が! というドラマチックな演出も合わせて非常に格好いい展開で、イガムはタケルの握りしめるペンダントに目を止める。
 (妹をたぶらかした男とは、こいつだったのか)
 イガムの攻撃をかわしたタケルは、若干オーラパワーが洩れ気味のスーパージャンプから空中変身。
 「レッド・マスク!」
 「貴様がレッドマスク! なんということだ! おのれ倒す! 絶対に倒す!」
 両者は激しく空中で切り結び、妹へ対する愛か憎しみか、汚名を雪ぎたいという家名へのこだわりか、王子が妹に対して終わった話として無感情でない事が示されると共に、タケルと王子の因縁も構築され、いやぁ手堅い、実に手堅い。
 地底くノ一が王子の援軍として乱入し、第1話時点では、敵の幹部クラスが多すぎでは、と思ったのですが、王子-くノ一、ハゲ-赤タイツがセット、という図式が判明して覚えやすくまとまりました(なお赤タイツを演じるのは、宇宙海賊ブーバやカウラー部長の右腕ボー・ガルダンなどの岡本美登さん)。
 口から火を吐いたり短刀を吐いたりするビックリ人間のくノ一の攻撃を受け、二対一で苦戦するレッドは、本部の指示を受けて仲間の救援を最優先とし、レーザーマグナムで目くらましをすると、シューター(各所に配備してあるらしいマスクマン移動用ポッド)に乗り込み格納庫に到着。
 巨大戦闘母艦ターボランジャーが滝を割って出撃するとチューブの戦闘機を蹴散らし、地底怪獣に追い詰められていた仲間達の元へ辿り着くと、ファイター(赤)・ジェット(黄)・ジャイロ(桃)・タンク(青)・ドリル(黒)の出撃シーンに主題歌が重ねられて大変格好いいのですが、第1話の戦闘シーンでは使用しなかったので、劇中初使用が合体メカ→巨大ロボ誕生のシーンという事に。
 「合体・ファイブクロス!」
 5機のメカが変形合体し(5つのメカが合体ロボになるのは今作がシリーズ初だそうで、やたら「ファイブ」を強調しているのは、その為か)、ちょっと中年男性顔のグレートファイブが誕生する!
 「やられてたまるものか……美緒を助けるまで、死ぬものか!」
 分離合体を繰り返す地底獣の変則的な攻撃に苦戦するグレートファイブだったが、愛のパワーを振り絞ったレッドの操縦で立ち直ると、シールドから光電子ライザーを引き抜き、光子斬りで成敗。
 だが地底では怒りのゼーバがダークホロンのエネルギーを放射し、地底城(の影)がいきなり地表へと浮上する――。
 「ふふははは! 殺戮と破壊で地上がこの世の地獄と化した時、我がダークホロンの妖気が、暗黒の地帝城を生み出したのだ。今こそ地上は冷たく、暗い闇の世界に変わっていくのだ」
 何が「我がダークホロン」なのかは現時点ではさっぱりですが、もしかして、ゼーバの衣装の上半身前面から両サイドに突き出している飾り部分は、ホルン(角笛)モチーフなのか? 
 ナレーション「遂に、恐るべき暗黒の地帝城が出現した。果たしてマスクマンは、地上に光を取り戻す事ができるのであろうか」
 体当たりを敢行するも弾き返され、デビュー戦を華々しく飾った巨大ロボが、その余韻も冷めない内に敵の居城に完敗を喫してしまう衝撃の展開で、つづく。
 彼女の為に敵前逃亡を繰り返すレッド・フル名乗りの5人揃い踏み無し・巨大ロボットいきなりの敗北とここまでのシリーズで固まりつつあった定石に崩しを入れつつも、要所のヒロイックな見せ方、マスクアクションとロボアクション、悪の脅威と因縁構築、と押さえるべきポイントはしっかり押さえてヒーローフィクションとしては非常に洗練されており、曽田脚本の匠の業前とテンポ良くドラマ性を深めていく長石演出がガッチリ噛み合って、今回も濃密な一本でした。
 正直ちょっと、想定外の濃さ。
 チューブ陣営の場面ではしばしばキャラの目元にカメラを寄せて、顔の隠れた悪役陣にも目で芝居をさせようというのは長石監督らしい見せ方ですが、敵側のデザインに関して、監督の要望もあったりしたのかどうか。
 第2話においてもオーラパワーに覚醒せず、5人のフル名乗りも無い、というのは意外でしたが、その分しっかりと巨大ロボでヒーローの見せ場は確保しているので物足りないという事はなく、型と型破りを同居させるバランス感覚が巧妙(この辺りは、スタッフが連続している事のメリットといえましょうか)。今後もこのテンションが持続していくかはわかりませんが、パイロット版としては、かなり好感触でした。
 過去数年のシリーズ作品と比べて1話ごとのギミック量を減らし、その分タケルと美緒の物語を濃密に描く、という導入はこの先に興味を持つのに十分なフックになりましたし、長編の中で巧く結実してくれる事を期待したいです。
 次回――美緒への気持ちを雑念として消されてしまうタケル! 本当にこの人についていっていいのか?! 出るか、オーラパワー?!