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気! 気! オーラパワー!

光戦隊マスクマン』感想・第1話

◆第1話「美しき謎の逃亡者」◆ (監督:長石多可男 脚本:曽田博久)
 ――人の体には、未知の力が秘められている。鍛えれば鍛えるほど、それは無限の力を発揮する――
 三角形に組まれた印・半身機械の如来の画・弾けるマッスル・氷柱を叩き割る……のではなく、触れずに粉々にする!
 と大変激しい導入で、もしかして、「光の波動=筋肉」のはしりは今作なのでしょうか?(笑)
 物語は、1987年・早春――サーキットにおけるレースシーンから幕を開け、レーシングドライバーであるタケルに必死に呼びかける女・美緒の、マンホールから顔を出した所をバイクで走っていたタケルにバッタリ、という衝撃的な二人の出会いの回想から始まる、なかなかの変化球。
 素足の女の為にタケルはギターケースの中に仕込んだハイヒールをプレゼントし、いったい何が夢で、何が現実なのか、全てが曖昧だった……。
 回想に入る前に、側溝にはまって脱げ落ちた赤いハイヒールが強調されており、ロマンス方面に振った時の長石監督らしい演出ではあります(笑)
 (タケル、大変な事が起きるの、タケル)
 そして、ハイヒールからカメラを“下”へと引いていき……
 「地の底奥深く……我が地底人が生まれて5000年。我らは光を嫌い、冷たく暗い闇の中にひっそりと生きてきた。だがその歴史も、今終わろうとしている!」
 地球の地下――赤黒い闇に包まれたその世界には、地底帝国チューブが存在していた!
 「かくも壮大なる帝国、地底帝国チューブをお築きになられた我らが王が、光溢れる世界を、征服するとのたもうたのだ! おお、なんと偉大なる王よ……全知全能の王よ、我らを導かれるその尊い、御方の名前を――地帝王ゼーバと申すなりぃ」
 穴熊怪人の朗々と響く気持ちのよい口上に重ねて、地帝城に集ったチューブ上層部が紹介されていき、最後にキラキラした衣装に黒い仮面を被った、地帝王ゼーバが降臨。
 スケール感は前作の首領であったラー・デウスと似たような感じで、完全な置物系ではないものの自由に動き回るのは難しそうな雰囲気ですが、仮面の下に人間の瞳が見えるなど、ラー・デウスよりは、生もの寄りのデザイン。
 「地上をこの地底と同じ、冷たく暗い闇の世界に変えるのだ。その時こそ、地帝王ゼーバが、全地球の支配者となるのだ」
 一方、地上では思いあまった美緒がレース中のコース内に飛び出し、タケルは急停車。
 「逃げて! 私と一緒に逃げて!」
 「いったいどうしたっていうんだ」
 「地底帝国チューブが攻めてくるんです」
 「なんだって?」
 だがその動向は、穴熊怪人に筒抜けであった!
 「地上のスパイに、裏切り者が出ました」
 穴熊怪人、アナグマスという豪快なネーミングから第1話のやられキャラかとばかり思っていたら、我が帝王を朗々とたたえる他、スパイの管理までしていて、割と有能な気配。
 「いつの世も愚か者は居るものだ。地上に未来など有り得ぬものを」
 ゼーバは地表への総攻撃を指令し、冷凍洞窟に眠る闇の地底獣覚醒の他、王子率いる戦闘機部隊と、ハゲ将軍率いる歩兵部隊が、次々と地上への侵攻を開始。
 その頃、タケルはバイクでタンデムし、レースを放り投げて普通に逃げていた(笑)
 (どうか、早く遠くへ連れて行って……誰も居ない、私と貴方だけの世界に)
 侵略者の脅威を裏切った敵スパイの切迫感で示し、そこに男女のロマンスを濃密に振り掛けるという変則的な見せ方ですが、権藤権藤雨権藤ならぬ曽田曽田曽田曽田曽田曽田だからこそ出てきたアプローチではありましょうか。
 だが逃げる二人は戦闘機部隊の攻撃を受け、派手な爆発の中を疾駆するも地割れに飲み込まれて、地下洞窟に落下。美緒は怪人の作り出した蟻地獄に飲み込まれ、タケルに首飾りを託して地底の闇の中に消えてしまうのであった……。
 「殺戮せよ! 破壊せよ! 地上を地獄の荒野と化せ……その地獄から! 闇が生まれるのだ」
 吹き飛ぶビル! 逃げ惑う市民! チューブの暴威が地上を焼き尽くさんとしたその時、ヘリメカやドリルメカが次々と出現して迎撃を行い、ヘリのローターを止めて急旋回で敵機後方に回り込んだり、急降下からの地上掃射など、仮面の戦士達が華麗な空戦テクニックを披露。
 力強い空中戦を描きつつ、女性戦士のマスクにはイヤリングがついており、それが印象的に示されるのが、軽やかなアクセント。
 「ブルーマスク!」「イエローマスク!」「ピンクマスク!」「ブラックマスク!」
 地表に降り立った4色の戦士達は合体怪人の火球攻撃を受けて大ピンチに陥るが、もう一機のファイターメカがそこに駆け付け、陽炎たちのぼる道路の向こう側から徐々に姿を見せる赤い戦士のヒロイックさ、そして、その行く手を塞ぐように黒いズボン(王子)の両足が映り込む、というのが大変、長石監督らしい映像。
 「タケル……!」
 「無事だったんだ!」
 ……え、いや、その男、レースを放り投げて彼女と逃げていたのですが、や、優しいなみんな……(感涙)
 「何者だ?!」
 「レッド・マスク!」
 「おのれぇ!」
 「よーく覚えておくがいい。地球人の中にも、地底帝国チューブの侵略を予期していた者がいたのだ! そして、密かに結成されたのが、俺達5人の戦士。――光戦隊・マスクマン!」
 冒頭の穴熊の時もでしたが、台詞の合間に、別場面のカットを挟み込む演出が、サスペンスを盛り上げて格好いい。
 5人揃ったマスクマンは拳法アクションで戦闘員を蹴散らし、幹部クラスとも軽く一当たり。怪人の分裂攻撃に苦しみ、やたらに強い火球攻撃に追い詰められるマスクマンだったが、美緒の復讐の為、憎しみを力に変えたレッドマスクが爆発をものともせずに駆け抜けて放ったジャンプ突きがクリティカルヒット
 基本武器の剣と銃を組み合わせて5人揃って放つレーザーマグナムで弱らせると、大型兵器・ショットボンバーを構え、多分、電池係という事なのでしょうが、砲身の後ろで巨大なバックパックを背負って立っているだけのリーダーが、割と間抜け(笑)
 バズーカに手を触れてさえいないのですが、これが、無限の力なのか!
 必殺ボンバーの直撃を受けて怪人は消し飛び、幹部クラスは撤収。地底帝国チューブの侵略を阻止したぞ、と意気揚々と帰還するマスクマンだが、暗がりにグラサンをかけて座り込んでいた姿長官に一喝される。
 「地底帝国チューブの力はあんなものではない。……このままではチューブには勝てん」
 「……長官。長官、じゃあどうしたら勝てるんですか」
 「オーラパワーを引き出すのだ」
 「オーラパワー?」
 「え?」
 「オーラパワー?」
 全員がきょとんとする中、長官がリモコンを操作すると部屋の壁に隠されていた様々なパネルが姿を現し、長官はピラミッド型のエネルギー枠の中に座り込む。
 ナレーション「姿長官は、いったい何をしようとしているのか。本当にこの人についていっていいのか?オーラパワーとは何か? そして、美緒とは何者か? 果たしてその運命は。地底帝国チューブの挑戦を受けて、5人の若者は、今、想像を絶した、未知の世界への入り口に立ったのである!」
 ED映像がいきなり、いちゃいちゃ回想から始まって、辛い、とても辛い……!
 と同時に、氷漬けの美緒?のカットが入り、美緒は一発退場では無さそうな事が示唆されたのは、先の展開に興味を引く形に。また、クレジットによると美緒と王子が同じキャストというのも、何か仕掛けがあるのか気になるところです。
 メインライター連続6年目(!)に突入し、疲弊と表裏一体ながら爛熟期に入った曽田脚本と、『電撃戦隊チェンジマン』でシリーズ初参加、戦隊3年目にしてパイロット版を任された長石多可男の演出が濃厚に噛み合って、本編約17分ながら、かなりの情報密度。
 「侵略者は地底人」とか「長官は恰幅のいいオカルトかぶれ」とか、シリーズ過去作を彷彿とさせる要素がブレンド風味ながらも、そこに主人公ポジションのレッドと女スパイのロマンス要素を絡めて特色となる軸を示し、憎しみを力に変えて地底帝国チューブを倒すのよ!
 と、改めて《スーパー戦隊》における80年代戦隊の存在の大きさというか、スタッフの満身創痍の度合いが増してはいくものの、作り続ける事でこの時代に形成された《スーパー戦隊》の<コア>要素が、後代へ繋がっていく影響、後代を支える地盤の力を感じます。
 タケルと美緒のロマンスを押し出す尺を確保する為に、戦隊メンバーは選抜・訓練済みであり、4人だけで先行して登場するという思い切った采配も、劇中要素のメリハリ強化に効果的に繋がり、二人の関係の重要性を示す事に成功。
 副作用として、仲間も地球の危機もさておいて、とりあえず彼女と逃げるレッドが誕生しましたが、選抜・訓練は済んでいるが真の力には目覚めていない、というスパイスを含め、次回どう進んでいくか、主題歌以外ほぼ知らない作品なので、展開が楽しみです。