東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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おりたためネクサス

ウルトラマンネクサス』感想・第13話

◆Episode13「予知者イラストレーター-」◆ (監督:根本実樹 脚本:村井さだゆき 特技監督菊地雄一
 姫矢さんの振るう変身アイテムが何か身近な物に似ている気がしてならず、ずっと考えていたのですが、ようやく気付きました。
 折りたたみ傘だ。
 これで今日から皆、家でネクサスごっこ(あまりやりたくない)が出来るぞ!
 それはそれとして、OP、「男なら……誰かの為に強くなれ」のところで、変身アイテムをじっと見つめる姫矢が、それをパッと振りかざすカットは格好良くて好きです。
 「斎田リコの一件は、彼らも注目してるよ」
 「……彼ら? つまり、来訪者達の事ですか」
 白い人と死神さんは、アグルの聖地のような場所(ニュートリノ観測施設のようなので、意図的に『ガイア』から引っ張ってきたのでしょうか)で怪しげな会話を交わし、孤門に休暇を取らせた隊長は、新変形タンクフォームについてブリーフィングを行い、ファウスト戦のダメージが抜けない姫矢は、ウォーターベッドの中で枕が合わずに苦しんでいた。
 (世の中には、自分の力ではどうする事も出来ない事がある。この残酷な現実に、僕はただ、立ち尽くすしかなかった。だが、その時僕はまだ知らなかったのだ。これが、悪魔の戯れの、ほんの始まりにすぎなかった事を)
 一方、哀しみに沈む孤門は、思い出の動物園で見かけた「リコ」という名の少女をじっと見つめる超不審者となっていた。
 ――いつか君の家族も紹介してほしいな。
 「紹介したくても出来ないの。……だって、あなたのせいでみんな死んじゃったんだもの」
 「リコ……」
 ファウストとのいちゃいちゃ回想に入った孤門の前に、リコの幻影が現れ、一家が殺されたのは半年前、リコが孤門と出会ったその日の夜であった、と、前回わかりにくかった背後のなりゆきについて説明。
 うーん……前回の感想と重なりますが、孤門を今回追い詰めていく方を重視したのでしょうが、孤門とリコの別れをより劇的にする為には、不穏な伏線を含めて時制を先に整理して、孤門とリコの関係性をもっとわかりやすく示しておいた方がよかったのでは、と思うところです。
 「リコの退場」と「溝呂木の暗躍」が作り手の前提になりすぎている事で、肝心の「孤門とリコ」の描写がところどころ抜け落ちた上に今作のモノローグ作劇も加わって、結果として「リコを失った孤門の絶望」が、受け手に対して何重ものフィルター越しになってしまった印象。
 ……まあ今作の場合、視聴者と物語の間にある“壁”を、意図的に意識させている可能性はありますが。
 「孤門一輝。やはり、心が弱いやつほどいたぶり甲斐があるな。――俺は溝呂木眞也だ。おまえの仇だよ」
 恨み言を残してリコが姿を消した後、孤門の前に現れたのは、謎の男・溝呂木。
 「……どうやら、第二幕の幕開けみたいだ」
 何かを察知したイラストレーターが呟き、溝呂木は堂々と孤門に語りかける。
 「斎田リコは、俺の操り人形だったのさ」
 「……おまえが……リコを……」
 「面白かったぞ。お前達の恋人ごっこを見ているのは」
 「ふざけるな!」
 後々言及されるかもしれませんが、これは恐らく意図的に曖昧にしている要素として、「孤門一輝が恋人関係にあった「斎田リコ」とは何者か?」というのがあって、劇中諸々から考えると生前の「斎田リコ」をベースにファウストブレンドして溝呂木の作り出した「仮想リコ人格」ではないかと解釈していますが、とすれば孤門くんの前に居たのは常に「仮想リコ人格」であったが、しかし孤門はそれを受け入れる事が出来ず(受け入れられるわけがない)、「斎田リコ」の為に怒っているというのが、一番悲劇的な気がします。
 溝呂木に掴みかかる孤門は一方的に叩きのめされ(孤門の白いシャツと溝呂木の黒ずくめの服装の対比は秀逸)、更に不思議な力で謎の空間へと放り込まれると、そこに穏やかで以前と変わらない様子のリコが現れ、動物たちの家族の絵を見せられる、と徹底的に傷を抉ってくる展開。
 リコが紹介したマネキンの両親になんの疑問も浮かべず挨拶する孤門だが、リコの姿は再びかき消え、孤門は山の中に倒れる瀕死のリコの姿を目にする。
 ……勿論、撮影順は違うでしょうが、誰が大変って、リコ役の女優さんの心に辛そう。
 姫矢は今回も孤門の精神の波長を感じ取ってうなされ、恐らくは孤門を監視していたMPから連絡を受けた副隊長は動物園で孤門を捜し回り、バラバラに砕け散ったマネキンにすがりついて涙を流す孤門は、副隊長(幻)の鉄拳制裁を受ける。
 そして一斉に孤門を悪し様に責めてる、ナイトレイダー(幻)の面々。
 「溝呂木も面白い遊びを考えたもんだな。なあ凪」
 来たれ若人! ナイトレイダーは寝食を共にし笑顔の絶えない、家族のように明るい職場です!
 「つまり溝呂木眞也は、孤門隊員がやがてナイトレイダーの一員になるという事まで知っていたと」
 「全ては、この光が降り注いできた時、始まったんだ」
 二万八千光年の彼方、M80蠍座球状星団で起こった超新星爆発の光が地球に到達した時ビーストが出現し、今も降り注ぐ特殊なニュートリノがアクティブ化したビーストの振動を感じ取る、と、死神さんと白い人のパートは、ひたすら背景設定の開陳。
 (俺は力を得た。悪魔、メフィストの力をな)
 溝呂木は動物園を走り回る副隊長にテレパシーで語りかけ、ファウストはどうしてファウストなのかと思ったらメフィストも登場し、その力でナイトレイダーをズタズタにすると宣言。
 「いったい何故?」
 「時間外勤務の連続で彼女にフられたからだよ!」「おまえの為だよ、凪」
 「私の為?!」
 「そうだ。おまえも早くこっちに来い」
 「ふざけないで!」
 「ふざけてなんていない。おまえにはその資格がある。孤門はおまえにそれを気付かせる為の道具だ」
 明らかにそういう気配のあった溝呂木は粘着ストーカー気質を露わにし、近作ではもはやお約束の域にになっていますが、ウルトラ黒い変態紳士枠は、いったいどの辺りが発祥なのでしょうか。
 「僕は……駄目人間だ……」
 かつてなく積極的に話しかけてくる同僚達の幻影に、リアルに会話の少ない職場を思い出して孤門は頭を抱え込み、悲劇の嵐に叩き込む事で感情を振り切り、前回今回と良い感じに演技の幅が広がっている孤門ですが、絶望の底で口にする単語が「駄目人間」なのは、つい吹き出してしまいました。
 ……なにかもう少し、重みのある言い回しはなかったものか。
 (闇に囚われるな!)
 背後から忍び寄る闇に肉体を侵食されそうになる孤門だが、すっかり心の先輩ポジションの姫矢が光のネクサスとして現れると、空間を浄化。
 (光を失うな、孤門)
 姫矢と孤門の急接近は、物語としての積み重ね不足は引っかかるところではありますが、構図としてはわかりやすくなり、姫矢さんのヒーロー度を押し上げているのは、プラス効果。
 (孤門は帰してやる。まだまだ遊び甲斐があるからな)
 ネクサスの位相変換を妨害した溝呂木は孤門を通常空間に戻し、脅える孤門に、副隊長、本物の平手打ち。
 「あなたの悲しい気持ちはわかるけど、いつまでもそこに留まってちゃ駄目。彼女だって、そんなこと望んでない。違う?」
 隊長ともども部下との信頼関係において起爆寸前の爆弾をトン単位で抱え込んでいる副隊長、キャラの奥行き的な積み重ねも薄いので、実に気持ちが入っているのを感じさせないありきたりで優等生的な説得なのですが、ミクロ単位でも存在しない信頼関係を捏造されて大惨事になるよりは数段マシ……
 「本当に彼女の事を思うなら、ビーストを憎みなさい」
 あれ?
 「その憎しみを、力に変えるの」
 ええっ?!
 と思っていたら、そこから力強く復讐に誘導し、説得力としてどうなのかはともかく、副隊長らしくはなりました(笑)
 やはり、復讐こそがパワー。
 俺達は戦士だ!!
 孤門が家族写真を撮影した少女リコの一家が修羅場を目撃? と思ったら既に二人で連れだっての帰り道で惜しまれますが(何が)、心の先輩の叱咤とパワハラ上司の物理により溝呂木の呪縛を脱した孤門は、自分の守りたいものを改めて見つめ直すのであった……。
 一方、死神さんは引き続き、長い台詞で背景を説明。
 「管理官は、全てを知りたいの?」
 「……いいえ。知ったところで、すぐ消されるだけですからね。でもこのままでは、いずれ誰かが忘却の海を知り、辿り着くでしょうね」
 「……レーテ(?)の解放、それが好ましい事かどうか、僕にもわからない」
 肝心の固有名詞が聞き取れなかったのですが、キーワードの流れからすると、ギリシア神話に登場する「忘却の川・レテ」に基づく名称でしょうか。MPによる記憶処置、という要素が物語の核に関係している事が匂わされ……そしてやっぱり、少女リコの一家はビーストに襲われるのであった、でTo be continued...
 1クール丸々を前振りにして謎の男・溝呂木が孤門の前に現れ、鬼畜外道の畜生働きというのは、その過激さにより一定の“面白さ”は担保されうるのですが、今のところ溝呂木、「こんなロングスパンの嫌がらせが出来たのは未来を予知できたからでーす」とあまりに何でもありすぎて、かえって悪役としての魅力が薄くなっているのが残念。
 今後、出番が増えてくると共に背負っている情念や能力の制約も見えてくるのかとは思いますが、どうも今作の、「変化球を織り交ぜる」事よりも「変化球を投げる」事を優先した作劇――今回でいえば、「セオリーの中に過激な悪役を取り入れる」のではなく、「過激な悪役の披露をメインに据えてセオリーを放り投げる」――には、ノりきれないものがあります。
 勿論、セオリーに縛られる事による硬直化や袋小路というのはあって、様々なアプローチの模索というのは必要だと思うのですが、結局この数話、姫矢さんのヒーロー度が上がる事で作品が見やすくなっている部分が間違いなくあると思うので、置いておくべき石、保持しておくべき一線、というのがやはりあるのでは、と思うところ。
 次回――俺の最高級折りたたみ傘を見せてやる! 新たなる闇の巨人の登場で、今回の分までたた……たぶん戦うと思う、戦うんじゃないかな、まちょっと覚悟はしておけ。