東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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想像の斜め上から更に上

キカイダー01』感想・第11-12話

◆第11話「怪談 地下秘密基地の幽霊女」◆ (監督:今村農夫也 脚本:長坂秀佳
 「ビッグシャドウ様、ハカイダーめは、ビッグシャドウ様にお助けいただいた事に感謝し、シャドウに忠誠を誓うと申しております」
 い、言ってない……。
 前回、無惨に焼却されそうになったハカイダーはビッグシャドウにより回収された事が早々に明かされ、ビッグシャドウが気配を現すや反射的に膝を屈するハカイダーも、上司に媚びへつらう中間管理職モードを発動するシャドウナイトも、どちらも先行きが心配です。
 一方、都内ではシャドウの怪ロボットが暗躍し、夜の闇に紛れ宙を舞う白装束の女が市民を襲う、割と本格的な幽霊描写。足下の暗がりに浮かんだ人の顔がニタリと笑みを浮かべるシーンは、普通に怖い。
 「一千万人殺人計画……この計画を完遂させる為、我々は既に5368人の人間を殺してきた」
 死者の数としてはとても無視できないが、進捗率としては0.05%という微妙な数字が明かされ、巨大コンピューター・ブラックサタンは次なる生け贄として10歳の少年を選出。
 「シャドウの掟に従って殺すのだ」
 ビッグシャドウの言葉の間、モニターに次々と年端もいかない少年少女の顔が映し出される(無作為抽出中なのか、既に処分済みなのか……)のがシャドウの邪悪さをいや増すのですが、大規模ながらもう一つ目的の見えない計画や、ビッグシャドウの言葉遣いからは、何やら宗教的秘密結社の雰囲気も漂わせます。
 なおシャドウ戦闘員はアンドロボットといまいち区別がつかず、今回の組織も駄目そう感を地味に後押しするのですが、体半分、黒にリペイントされたのか……?
 転がり込んでいた空き家で、狙われた少年の悲鳴を聞きつけたイチローはアキラ少年を放置して飛び出していき、少年に襲いかかる幽霊の顔アップの背後で、暗闇の中にトランペットを吹くイチローの姿が浮かび上がる、というのはやたら格好いいカット。
 「おまえは誰だ?! 聞こえないのか!」
 振り向くかと思いきや、ワンフレーズ追・加(笑)
 「ええーい、何者だ?! 名を名乗れ!」
 「悪のあるところ必ず現れる、悪の行われるところ必ずゆく。正義の戦士、キカイダー01!」
 「私の名は、シャドウ殺人部隊ナンバーセブン! 幽霊女ぞ!」
 怪人の名称にこだわる作品ではありませんが、もはや色名も捨てたそのものズバリな幽霊女との戦いが始まり、いきなり火を噴く幽霊バルカン(笑) 炎に巻かれたイチローはチェンジゼロワンし、呻き声をあげて姿を消す幽霊だが、そこに1ミクロンの溜めもなく出現するライバル気取り。
 ……もう少し、もう少しだけでいいので、引っ張って欲しかったな復活!
 救出した少年を抱えたまま、黒タロスと幽霊女と戦闘員に囲まれる01だが、そこにギターの音色が響き渡り、寺のお堂の屋根の上に、ジローが、兄さん直伝の書き割りで立った!
 「チェンジ! スイッチON! ワン・ツー・スリー!」
 が今作では初披露され、一週間ぶりの兄弟共闘によりシャドウ部隊を撃退。命令無視の独断専行だったハカイダーはナイトとカメに回収されていき、アキラの元に戻った兄弟は、シャドウ戦闘員に狙われるアキラをこっそりと連れ出していた女性がリエコの変装と看破する。
 「なんの為に変装したりするんですか」
 「……私がアキラちゃんの側に居ては、余計、シャドウに狙われます。でも、心配で……」
 イチロー兄さん、アキラくんの扱いがところどころ雑ですからね!
 新展開になっても、どうにも使いどころの難しい謎の女・リエコですが、敵組織に狙われるアキラくんを守りつつ、そのエピソードの事件を解決する、という今作のフォーマットの難しさも感じます。
 不完全な良心回路により空気の悪さを察知したジローがひとまず話題を変え、都内で頻発する行方不明事件を調べる兄弟は、広大な地下通路を発見。
 「東京の地下にこれだけの通路を作れるとは、シャドウ組織も、思ったより遙かに大きいぞ」
 イチロー兄さんは(くくく……こいつは基地の壊しがいがありそうだぜ)みたいな悪い笑みを浮かべ、戦闘員に追われたリエコ達が、幽霊女に襲われ地下で労働力として働かされていた人々ともども始末されそうになった時、地下空洞に木霊するトランペット。
 「どうするというのさ。ここでは太陽電池は効かない」
 「太陽は俺が連れてきてやる!」
 毎度恒例の身も蓋も無さを台詞の格好良さで誤魔化し、キカイダードライバーが岩盤をくりぬく事で射し込んだ陽光を浴び、イチローはチェンジ・01。ジローが囚われの人々を救出している間に、ゼロワンドライバーと幽霊ドライバーでそれぞれ上昇すると、地上で激突。
 幽霊女が繰り出してきた、分身攻撃によるピンクのタイツ姿の幽霊戦闘員を蹴散らすと助っ人に亀が乱入するが、これといって何をする時間も与えられないまま、必殺の事象変換攻撃・ブラストエンドにより、幽霊女と亀は諸共に爆死…………て、え?
 幽霊女が後方ジャンプで姿を消した後に亀が出てくるので、正体は亀だったの? と思いきや、ブラストエンド後に幽霊と亀が一緒に爆発しており、情報が整理しきれずに戸惑っていると、この後ナレーションさんに「大犯罪組織シャドウの殺人部隊、幽霊女とアカメンガメはゼロワンに倒された」ときっぱり断定されました!
 ……何しにきたんだ、亀。
 てっきり怪人(着ぐるみ)の正体を現すのかと思っていた幽霊女が最後まで幽霊女のまま、というのもそれはそれで凄かったのですが、そのついでに3話引っ張ったカメ怪人が呆気なく始末されるという想像の斜め上を越えて大気圏外へ飛び出していく展開で、凄い! 凄いよ『01』!
 作品に向き合う際の適切な周波数が、未だ全く掴めません(笑)
 第4話ぐらいの時に「なんとなく見方がわかってきた」気がしたのですが、幻想でした。
 キカイダー兄弟は地下通路に爆弾を仕掛けて大々的に吹き飛ばし、いいかシャドウ、これが、貴様等の基地破壊のプレリュードだ!
 シャドウの本当の秘密基地は東京都心の地下にあるに違いない、とイチローはその調査を請け負い、基地破壊ブラザーズは、いつか来るシャドウ基地大爆破の日への高鳴る期待感に、胸躍らせるのであった。
 「俺が居る事を忘れるなよ、ゼロワン。たとえ、アキラはシャドウに譲ってでも、俺は貴様に殺された、ハカイダー3兄弟の仇を……ビッグシャドウ様の命令がどうあろうと、何よりも先に、貴様を殺す。覚えておくがいいゼロワン、貴様の体は、俺が八つ裂きにしてやるのだ!」
 意外と身内への情に厚かったハカイダーは去りゆくキカイダーに怨嗟の叫びを向け、遠吠えタイムのパターンは守られて、つづく。


◆第12話「怪談 墓場の化猫呪いの生首」◆ (監督:今村農夫也 脚本:長坂秀佳
 前回から、シャドウ編突入という事でOP映像が変わった結果、OPからめっためたに殴り飛ばされる黒タロスの前振りのないクライマックスぶりに涙を禁じ得ません。
 「我がシャドウの全世界征服の為の、死体改造計画」
 と冒頭からまた強烈な言霊が叩き込まれ、計画の邪魔になる10歳の少年・杉下ゴイチが、シャドウ殺人部隊ナンバー44の標的にされる事に。学校で襲われた少年を先にジローが助けるという変則パターンで、シャドウ戦闘員もバラバラだ!
 「この怪我は、病院じゃ治せない」
 「え?!」
 「このまま放っておけば、ゴイチくんは、幻にうなされて、狂い死にしてしまいます」
 ゴイチはリエコとアキラの逗留先の知人の息子で、その怪我を目に留め、タチの悪い霊能者みたいな事を言い出すイチロー兄さんだったが、体内で特効薬を精製し、腹部をぱかっとあけて薬を取り出すというロボットぶりを発揮。
 イチローの薬により容態の持ち直すゴイチだが、屋敷の周囲に出現した空を飛ぶ黒猫の首をイチローが追っている内に、いつの間にやらゴイチ母に変化していたナンバー44が正体を現し、襖に映る人猫の怪、という今回も正攻法のホラー演出。
 「主な視聴者層と同じ年頃の子供を怖がらせて共感を強めてもらう」以上の理由は要らない、という事かもしれませんが、冒頭で示唆された「死体改造計画の邪魔になる」理由が全く説明されないままゴイチ少年が執拗に狙われる展開が続くので、物語としては入り込みにくいのが惜しい。
 リエコ達も危機に陥り、化け猫女の催眠術でまとめて眠らされてしまうが、そこへ飛び込んでくる邪気祓いの白いトランペット!
 東映ヒーロー的にはだいたい平常運行といえる投げトランペットが額に直撃した化け猫女は男声の黒猫怪人の正体を現し、怪人自体にギャグ要素は皆無の筈なのに、黒タイツの背中にでかでかと白塗りで44と書いてあるのが野球選手にしか見えなくて大変困ります。
 「貴様ぁ……名を名乗れ!」
 「俺か。俺は悪を滅ぼす正義の戦士――俺の名は……キカイダー・ゼロワン!」
 新パターンの見返り名乗りから戦闘になり、黒猫ロボは投げ飛ばされた勢いで戦域を脱出。しれっとゴイチ母の姿に戻ると、それをカメラマンがナンパし、バイクに乗せたカメラマンが振り返ると化け猫の姿になっていて気絶、でカメラマンの出番を確保。
 本物のゴイチ母は、何故か庭にあった石像の中から救出され、一方、化け猫女は墓場から白骨死体を掘り出していた。
 「これが死体改造計画だ。この者達の怨念を、シャドウの作った殺人ロボットの頭脳回路に組み込んで甦らせるのだ。全部の死体を基地まで運べ。そしてその首を、切り落とすのだ!」
 もともと死体、というエクスキューズがつけられてはいますが、蝋燭の火が照らす薄暗い室内に、老若男女の生首がずらりと並んでいるという凄い映像。
 「杉下ゴイチ、おまえは殺さねばならん。おまえは俺達の荒らした墓を見た。ゼロワンに知らせようとした。生かしてはおけん!」
 再びの襲撃でゴイチが狙われる理由が語られるのですが、「墓を見てゼロワンに知らせようとした」のはつい数秒前の出来事なので、深刻な時制の混乱が、理由付けをしようとしておかしくなったのか、理由付けをするつもりがなかったのにたまたま繋がってしまったのか、悩むレベル。
 番長に見捨てられたゴイチは通りすがりの老婆に助けを求めるが、キャットファイヤーされてまとめて危機に陥ったその時、響き渡る悪霊退散トランペット!
 駆け付けたイチローも火炎放射に苦戦するが、そこに、ゴイチ達を拘束した黒タロスが姿を見せる。
 「ふふふふふふ、化け猫ロボット、ゼロワンを倒すのは俺だ。おまえは、手を引けぇ!」
 「貴様シャドウを裏切る気か!」
 「慌てるな。おまえには二つの土産をやろう。一つはゴイチだ。ゴイチを殺せば、役目は果たせる」
 「残る一つは?」
 黒タロスが電光石火の早撃ちを見せるとカツラが吹き飛び、実は老婆の連れの少女はアキラだった……! と、わかった上で見ると格好いい立ち回りなのですが、「黒タロスが撃ったのはカツラ」「女装が解けるとアキラ」という肝心の2点が映像から大変わかりにくく、初見では内輪もめの間にイチローに変身の隙を与えてしまう安心と信頼の残念ムーヴにしか見えなかったのが、大変残念(気がつくとアキラくんが居て首をひねったので、少し戻して確認して、気付いた)。
 老婆は勿論リエコの変装であり、3人まとめて連れ去られそうになったところにジローが参上し、この世に悪がある限り、この世に敵がある限り、レッド&ブルー、レッド&ブルー兄弟が揃い踏み、泡を食って逃げ出すもサイドカーに追いつかれた黒タロスは、正義の技の鉄腕に投げ飛ばされ、あやうく仕留められそうになった所をシャドウナイトに車で回収されて辛うじて逃亡。
 一方、なかなかの身体能力を見せ、ゼロワン相手に殴り合いで善戦する黒猫ロボであったが、必殺のキャットパンチを弾かれると、キャットフライングヘッド&ファイヤーで迫るも、ブラストエンドの直撃を受けて木っ葉微塵に吹き飛ぶのであった。
 かくしてシャドウ殺人部隊ナンバー44による死体改造計画は水泡に……帰したかどうかの後処理は一切描かれず、そもそもイチローはこの計画自体を知らない筈なので、シャドウの怨念殺人ロボは今後出てくるかもしれません。
 ゴイチ少年は、土壇場で自分を見捨てた薄情な番長の子分を辞め、イチローみたいな強い男になる、とアキラ少年と握手をかわし……折角の、同年代の少年とその母親、というゲストキャラなのに、アキラの心情が掘り下げられる事もなければゲストキャラとの絡みも実質皆無であり、これといってイチローがゴイチを諭し導くわけでもない、とゲスト少年の「変化」をイチローらとの関わりの中で描く部分が物語の中で成立していないのが、引き続き今作の残念な部分です。
 走り去るイチローとアキラに向けてハカイダーは(いつもの)をキめ、復讐の為ならシャドウとの激突も辞さない、と自らの決意に酔い痴れるのであった!
 懲りない・飽きない・執念深いと3拍子揃ったハカイダーですが、ライバル(?)キャラの側が、ヒーローの原点的な動機付けの一つである「復讐者」ポジションを強調する、というのは面白いアプローチであったのかもしれません。
 次回、なんか、色々飛ぶ。
 正調ホラー演出で攻める夏の怪談シリーズですが、懐事情が厳しかったという今作の制作体制もあってか、幽霊女・化け猫女・ろくろ首、とおどろおどろしい扮装の生身女性怪人が登場するのが一つ特徴として続いており、見世物小屋の手法、と考えると、娯楽としての先祖返りとはいえるのかも。