東映特撮に踊らされる駄目人間の日々のよしなし。 はてなダイアリーのサービス終了にともない、引っ越してきました。
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遊戯するネクサス

ウルトラマンネクサス』感想・第12話

◆Episode12「別離-ロスト・ソウル-」◆ (監督:小中和哉 脚本:長谷川圭一 特技監督小中和哉
 「1年ぶりだな、凪。またこうして会える日をずっと楽しみにしてた」
 「ふざけないで!」
 「怖い目だな。あの姫矢という男を見る時と同じ目だ。……俺と奴とを一緒にするな。凪、俺はおまえの心を――」
 「溝呂木」
 ドッグタグ交換といい、なんとなく過去のロマンスを漂わせる二人ですが、いつものように銃を構え、いつものようにぶったぎる副隊長。
 「そこで何をしてるの?」
 「……ゲームだよ」
 「……ゲーム?」
 「ああ。俺は今、楽しい遊びをしている最中なのさ」
 副隊長を挑発して背を向けた溝呂木は、姫矢の持つ変身アイテムと似たマジカルステッキで、背後からの弾丸を弾き飛ばすと姿を消し、直後に観測されるビースト反応。ところが、孤門を除く4人が踏み込んだ地下室で発見したのは、ダミー信号を取り付けられた一般市民。溝呂木の関与を探り出そうとする隊長は、何も知らないと言いつのる市民を恫喝し、隊長も副隊長も、溝呂木が絡んで冷静さを失っているという意図なのかとは思うのですが、二人とも普段から駄目人間なので、溝呂木の存在感が特別強くならない、というのは困ったところ。
 「溝呂木は楽しんでるんだわ。あたし達の怒りや、恐れを」
 一方、失意の孤門の精神に何かが接触し、リコ一家の惨殺シーンがフラッシュバック。緊急出動命令を受け、リコの命が危ない、と妄想力を発動した孤門くんが車で急ぐと、その道中で、ネクサスと初めて出会った日と同じように、路肩に停車したマイクロバスを発見する、というのはいやらしくて良かったです。
 無人のバスの中に落ちていたパスケースを手にした孤門は、心中に溜め込んでいたティルトのやり方への不満を弾丸に乗せてぶちまける。
 「違う! 嘘で塗りこめられた秩序……そんなものを守る為に、僕は戦っているんじゃない!」
 (……駄目だ、孤門。怒りに支配されてしまっては、駄目だ)
 そして何故か、トゥルース○ーパーでお休み中の姫矢さんが、そんな孤門の精神状態を感じ取っていた(以前に、孤門が石棺に触れた際の影響か……?)。
 「砕け散れ……この世界から消えろ。消えろ……消えろ! ……消えろ!!」
 「目を覚ませ、孤門!」
 怒りに任せ、山林の中でビーストの幻影を相手に銃を振り回す孤門を止めようと姫矢が現れ、突然、やり取りの距離感がやけに近くて困惑。
 孤門はウルトラマン(姫矢)にずっと好意的ですし、副隊長の凶弾から姫矢をかばった事もあれば、亜空間での戦闘によるアイコンタクトもありましたが、姫矢サイドからの孤門認識はこれまでほとんど描かれていないというか、むしろいつもそそくさと早退していたので、いつどこで孤門の名前を知ったのか(戦闘中のウルトラ聴覚?)を含め、これまでほとんどまともに会話した事のない筈の二人が、いきなり週末にはよく二人で飲みに行く先輩後輩みたいな雰囲気を醸し出しているのは、だいぶ違和感。
 瞳に狂気を宿す孤門(この部分は、役者さんの引き出しを広げて良かった)は姫矢にさえ銃を向けるも、姫矢のマジカルビームを受けて正気に戻り、宿主の怒りや憎しみを吸収し幻覚を見せるビーストに取り疲れていた事を教えられるが、そこにフラフラと現れるリコ。
 駆け寄る孤門だが、再び不協和音が鳴り響くホラー展開で、リコの姿はファウストへと変貌する!
 「私はファウスト。光を飲み込む、無限の闇だ」
 「なら俺は、その闇を打ち払う!」
 予告では格好良かったのですが、3秒前まで孤門を軸としていた話の流れから飛躍しすぎて、どうにも漂う、両者揃って突然何を言い出しているのだ感(笑)
 ファウストとネクサスは巨大化して激突を開始し、その戦いを、木の陰から溝呂木が見ていた。
 「始めようぜ、デス・ゲームを」
 だから、そのセンスは、どうなんだ溝呂木。
 「今日こそ貴様を倒し、私の一部として取り込む。更に無敵となる為に」
 拡張した亜空間に取り込まれた孤門を巻き込むのを避け、攻撃をためらったネクサスの背後に回り込んだファウストはぐいぐいと首を締め上げ…………「さ・ら・に」?
 自己認識能力の著しい欠陥は、残念な悪役に大切な条件です!
 孤門は二人の巨人の戦いを絶望の表情で見つめ…………僕の唇を! 青春のときめきを返せ!と、先日、甘酸っぱいキスをかわした相手はファウストの擬態だったという史上最大の悲劇に機能停止していた。
 「やめるんだ……リコ」
 孤門は声を絞り出してファウストに呼びかけ……うーん……どうも作り手サイドとしては、「ファウストとリコの同一視」を当然の前提として話を動かしているようなのですが、個人的に、ファウストとリコの間の距離がありすぎて同一視しづらく、孤門くんの置かれた状況と感情に同調しにくかったです。
 足の怪我など正体を匂わせる伏線は張られていたのですが、稲田声の傲岸で残念な俺様系悪役とリコのキャラクターがあまりに離れすぎていて、偽装としては完璧でも、ファウストをリコとして見る孤門くんの感情への同調を期待するには、演出効果として弱くなってしまった感。
 「孤門……くん……?」
 孤門の叫びと銃撃による刺激で、ファウストの中に眠っていたリコの記憶が蘇り、ビーストを操れるらしい溝呂木は、亜空間にネズミビーストを送り込む。
 「そいつはもういい、消せ」
 だが、巨大な爪で孤門くん惨死の寸前、身を挺してネズミの爪からかばったのは、ファウスト
 「なに……?!」
 う、うーん……溝呂木、前回の今回にして、操り人形に思わぬ行動を取られて動揺する、という物凄いチープな悪役に転落したけど、大丈夫か……?
 捨て身のファウストが作った時間に立ち直ったネクサスが、必殺光線でネズミビーストを撃破するも、力尽きて亜空間解除。通常空間に戻った孤門は、血に濡れて地面に横たわるリコに必死に呼びかける。
 「孤門くん……私……後悔なんてしてないよ。孤門くんと会えた事、後悔なんてしてない」
 今回、「孤門と姫矢の関係」「リコとファウストの同一視」に加えてもう一つ、個人的に認識の掛け違いが発生して話にノれなかったのが、「リコと孤門を巡る時系列」で、前回からずっと、〔リコ一家死亡する→溝呂木、人形をキープ→孤門に接触させる〕だと思い込んで見たのですが、どうも今回の溝呂木の台詞などからは〔孤門とリコが出会う→リコ一家、殺害される→ファウストリコと孤門のいちゃいちゃタイム〕だったようで、この時系列はもう少し、わかりやすく見せても良かったかな、と(家にばらまかれていた絵の量も、孤門に出会う以前に死んでいたイメージを強めましたし)。
 そもそも溝呂木が孤門に嫌がらせをする理由が不明(想定されるのは、謎の適性数値に関係する事ですが)のまま進んでいる為、溝呂木による「おまえと出会ったから死んだ」発言は“信用できない語り手”によるものですし、リコの最期の言葉で劇的に着地させるならば、台詞のやり取り以外での、明確な時系列の整理が欲しかったところです。
 ……よくよく考えてみると、孤門くんを見つめる謎の視線伏線があったので、リコ一家は孤門の訓練期間中に殺害されたという事なのかもですが、〔孤門は訓練期間中ニュースを見ていなかった(のでバス事件の後処理について知らなかった)〕自体がそもそも無茶な状況設定なので伏線というにはかなり苦しく、こんなところでもティルト訓練期間問題が火を噴いたとも言えそうです。
 話の構造としては、「人形である事を隠していた」メリットよりも、「時系列その他が曖昧でわかりにくくなった」デメリットの方が大きくなって劇的さを削いでしまったように思え、これならいっそ、孤門くんが気付かないままにリコサイドの悲劇を暗示しておいて、それがここで全部オープンになる、という方が良かったのではないかとも。
 どちらにせよ、1クールかけて純然たる悲劇を見せつけられるのは楽しいものではないですが、果たしてゲームの行方や如何に。次回――追い打ち、そして、姫矢さんは枕が合わずに苦しんでいた。