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ひとまずネクサス

ウルトラマンネクサス』感想・第10話

◆Episode10「突入-ストライク・フォーメーション-」◆ (監督:阿部雄一 脚本:赤星政尚 特技監督菊地雄一
 山中で目を覚ましたリコは、副隊長の名前が入ったドッグタグを握りしめており、それを見て何故か激しく動揺した副隊長はリコを問い詰める。
 「会ったのね? ミゾロギに」
 ……まあ、副隊長がヒステリックなのはいつもの事なのですが。普段、冷静な人が感情的な部分を見せるのではなく、普段から沸点の低い人が事あるごとに沸騰している為、物語の本筋を動かしていくに際して、どうにも副隊長のリアクションが劇的にならない、というのは今作の大変困ったところ。
 病院に収容されたリコは孤門と別れた後の記憶が全くなく、脅えるリコを励ます孤門、というシーンの位置づけ自体は構わないのですが、とにかくあらゆるシーンのテンポが悪くて、正直、孤門とリコのいちゃつくシーンは、東映特撮ばりに三倍速ぐらいで良いと思うのです。
 じっくりと見せて感情移入させるというよりも、間延びしてしまう事でかえって一つ一つの場面の印象が弱くなっている感。
 「制服姿の孤門くん、格好良かったよ」
 そしてその記憶は、消さないと駄目なのでは。
 ビースト関連の記憶は無かったので処理の必要が無かったとのたまうMPさんですが、あの恰好で山中を徘徊していたのを目撃された時点で、十分に問題なのでは。冷静に捉えても、「孤門くん……本当は仕事をクビになったのを隠して、毎日サバゲーしていたの?!」案件であり、般若副隊長に至っては、拳銃握ったまま孤門の顔面を張り飛ばしているのですが、それを「上司と上手くいってないの?」で済ます、リコの脳の具合も深刻に不安になります。
 ナイトレイダーでは花ビーストの解析により、ウルトラマンの亜空間に閉じ込められた状態で倒す事により、強い可燃性を持った毒花粉の拡散を防ぐ、という作戦が立案される。
 「ウルトラマンは僕らの……人間の味方です」
 「根拠は?」
 「僕はそう信じてます!」
 「そんなものが根拠になるとでも思ってるの?」
 副隊長を相手に一歩も引かずにウルトラマンの側に立つ孤門くんが信念を見せ、主人公らしくなってはくる一方、「ウルトラマンを利用しよう」とする白い人の作戦と、「前回、亜空間への突入を妨害しようと攻撃された」と認識している孤門以外の隊員の、ギャップの摺り合わせが一切描かれないまま、作戦方針が承認されるので、孤門と副隊長を除く隊員は、ますます泥人形のように。
 《ウルトラ》的なお約束でありつつ、今作のリアリティ志向におけるディテール強化の補助輪として繰り返し挿入される出撃シーンも、ただ出撃シーンが描かれれば盛り上がるわけでなく、そこに出撃していく人達のドラマが乗るから出撃シーンが盛り上がるわけですが、戦闘機に乗っているのが泥人形ばかりでは物語が乗らず、ただの尺潰しにしかなっていないのが残念。
 花ビーストが出現し、ファウストを警戒しつつも変身した姫矢は、亜空間を展開。現着したナイトレイダーズはストライクフォーメーションを発動すると、副隊長の一声であっさり合体し……え、あれ、前回、そこに合わせていた焦点はどこに……。
 亜空間の突入シーンは特撮的に盛り上げるのですが、前回の「合体」といい、今回の「突入」といい、主にナイトレイダーズの描写不足により、物語の集約として機能していないので、派手な映像が空回り気味。
 「ここが……メタフィールド」
 ネクサスと花ビーストが戦う亜空間への侵入に成功する合体戦闘機だったが、またもお邪魔虫が乱入すると、暗黒フィールドで上書き。これで俺の戦闘能力は3倍(ぐらい)! と意気揚々とネクサスに殴りかかるファウストは、さっそく腹パン受けて悶絶しており、タイミング的にどうしてもサタンダークネス(『キカイダー01』)を彷彿とさせて仕方ないのですが、前世はブラックハカイダーだったの?!
 一方、亜空間の属性が変わった事により合体戦闘機は不具合を起こし、ビースト殲滅の為に撃てる弾丸は一発限り。ネクサス、花、ファウストがもつれ合う中で、隊長からガンナーに指名された孤門が撃つべき敵は……
 「孤門撃て! おまえの信じるウルトラマンを援護してみせろ!」
 前回、ごく普通に、「ウルトラマンまとめて殺っちゃって下さい」という白い人の指示にイエッサーしていた隊長が、個人としても隊長としても一切態度をハッキリさせないまま、唐突にウルトラマン擁護派である孤門を支持するという意味不明の展開で、段取りすっ飛ばしすぎて、唖然。
 基本的に、“防衛隊(ポジション)が、ウルトラマンの善意を信じる”という、ある種のシリーズお約束の部分を、じっくり時間をかけて掘り下げる狙いがあったのかと思うのですが、あまりにもすっからかんな内容で、10話かけてこれなら、2話ぐらいでお約束で済ませた方がよほど良かった、のではという惨憺たる出来。
 また、前回はチームとしての孤門への信頼(と孤門からチームへの信頼)を「合体」に象徴させようという構造(あくまで構造)で、今回はその孤門の信じるウルトラマンと共闘出来るか、を亜空間突入からの戦闘で劇的に切り取る構造なのですが、前回の問題が解決していないのに、今回の段階に進んでしまった為に、副隊長の個人的反発は別枠にするとしても、隊員の視線が一致していないのに隊長の独断で孤門に一蓮托生するという、全方位に大惨事が発生。
 何より、そこに至る隊長の思考が120%ブラックホールなので、脳髄に痺れが走ります……そもそも孤門の「真っ直ぐさ」を危惧していた隊長が、孤門の「真っ直ぐさ」にナイトレイダーズの運命を任せるとか、何が信じるべき現実なのか、目の前で起きている事が、まるで理解できません。
 戦場における副隊長の操縦技術は信じている孤門と、ネクサスとビーストの間に飛び込んだ戦闘機のコックピットの中で、孤門とネクサスがアイコンタクトをして通じ合う、というシーンはそこだけ取り出すと格好いいのですが、基本的に孤門からネクサスへの信頼感というのが、宗教的熱狂に近い強すぎる思い込みなので、それは素直に推進していいものなのか。
 折角、孤門が自ら調べた「ネクサス=革ジャン=姫矢准?」という情報があるのだから、「姫矢准」という人間をどう考えるか、といった要素が入っても良かったのでは、と思うところ。
 合体戦闘機のビームが突き刺さって花ビーストは大爆発し、それに巻き込まれて悲鳴をあげながら無様にのけぞるファウストさんには後ほど、全宇宙残念ライバル協会から入会申請用紙をお届けします!
 亜空間を辛くも脱出した戦闘機は墜落寸前にネクサスに救われ、ウルトラマンは味方という確信を強める孤門だが、ビーストとの戦いは果たしてどうなっていくのか?
 「ミゾロギ……シンヤ……」
 副隊長は二つのドッグタグを見つめて呟き、記憶の混乱に脅えるリコは、孤門と口づけを交わす、が……To be continued...
 ファウストの闇を警戒しながらもビーストに挑む事からは逃げない姫矢が自分の意志を見せるなど、全体的に前回よりはマシでしたが、前回-今回で、合体戦闘機の投入を軸に二つの「信頼」を描く作劇は大失敗。
 とはいえ、このぐらいの惨状はもはや『ネクサス』標準になっているので、淡々と面白くない出来(という現状が辛い)。