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たちくらむネクサス

ウルトラマンネクサス』感想・第9話

◆Episode09「警告-ワーニング-」◆ (監督:阿部雄一 脚本:赤星政尚 特技監督菊地雄一
 東映特撮では『百獣戦隊ガオレンジャー』に参加していた赤星政尚が今作初登板。監督は、後の『ウルトラマンオーブ』に参加していたアベユーイチと同一人物でしょうか。
 亜空間に突入可能となる戦闘機の合体訓練中、今更ながら職場のブラックぶりに悩んでミスを繰り返した孤門は、久方ぶりにリコとデート。
 私がこのカップルに1ミリも興味が持てないというのを差し引くにしても、やたら長くてバランスの悪いアバンタイトル、悩める孤門の執拗なアップの繰り返し、良く言えばゆったり悪く言えばだらだらしたデートシーン、と今作にままある尺稼ぎの要素も見えますが、テンポの悪い演出で導入から非常にノれず。
 そもそもは、レスキュー隊としてハードな現場で命を張っていた孤門と、どこかふんわりしたリコで丁度良いバランス、という狙いだったのかもしれませんが、話が進むに従い孤門の脳が炎天下のアイスのように溶けていくので、ふんわり×ふんわりで浮き世離れした二人が作風からあまりに離れすぎていて、ハードな世界観の息抜き要素というよりも、描写そのものが違和感になっているのがどうにも設計ミスの一つに思えます。
 せめてリコに客観的な好感度付けが意識的にされていれば、孤門を支えるヒロイン、としてまた見方も違ってきたかもですが、周辺キャラの描写不足には定評のある今作でそこに手が届いているわけもなく、おまけに出てきた当初から不幸そうな配役&ポジションに、それを後押しする第1話モノローグも重なって、キャラクターというより“物語のギミック”にしか見えないのも輪を掛けます(この点に関しては、私の勝手なバイアスでありますが)。
 もしかすると、孤門はリコと出会って柔らかくなった……みたいな設定なのかもしれませんが、二人の関係性が物語のメリハリとして機能していないので、カップルとしても魅力的になっていない印象。
 新たなビーストが出現し、出撃したナイトレイダーは、現場で戦う二体の巨人――ネクサスとファウスト――を目撃。
 「ターゲットを、共に殲滅して下さい」
 現場要員でない白い人は適当に無茶を言うが、ファウストは何故か戦闘中に姿を消し、代わりに毒花粉を撒き散らすフラワービースト(今作にしてはオーソドックスなデザイン)が出現。ネクサスはフラワーをメタフィールドに引きずり込み、ナイトレイダーはストライクフォーメーションによる3機の合体で、メタフィールドへの突入を試みる。
 「俺は孤門を信じる!」
 隊長がいきなり、守るべき者の為に孤門ならやれる筈、みたいな事を言い出すのですが、長らく副隊長に丸投げしていて実質的に先週初めて会話したような関係なので、何を言っているのか大変困惑します。
 男女の隊員二人も今回冒頭で珍しくたくさん喋った(今作比)のですが、孤門が合体フォーメーションの操作に失敗すれば下手をすると巻き添えで墜落死という状況にも拘わらず、信頼も不信も一切のリアクションが無いので、“兵士として覚悟が決まっている”というよりは、“心を失った泥人形のよう”で、何もかも空転。
 まあ、ティルトの兵士としては、あらゆる命令に疑問を持たず人形のように任務を遂行するウォーマシンこそ理想なのかもしれませんが、だとすると隊長の「信じる!」という言葉を劇的に盛り上げようとする展開と噛み合わないので、物語の構造がちぐはぐ。
 一方、亜空間内部ではネクサスとビーストが激しくぶつかり合っていたが、画面手前の地面に穴を開け、低い嗤い声と共に内部に侵入してくるファウスト……の姿は、本編で見てもやはりちょっと間抜けでした(笑)
 腕を振り上げたファウストは内部から亜空間を闇属性に変更し、ネクサスはビーストとファウストの挟撃を受けて大苦戦。
 外部では守りたい者の為に戦う意志を取り戻した孤門がストライクフォーメーションを主導して3機の戦闘機が変形合体しようとしていたが、ここまで、孤門と副隊長の面倒くさいやり取りを除くと、隊員間のドラマ皆無・キャラクターの掘り下げ皆無・合体訓練は雑なアリバイ作り程度なので見ていて盛り上がりようもなく、投じた一球は、ストライクゾーンを外れるどころか外野グラウンドを転々とするすっぽ抜け。
 ファウストの放った光線が亜空間の壁を突き抜けて外に飛び出し(そんな事でいいのか……?)、急激な回避挙動によりストライクフォーメーションは失敗。墜落しかけた衝撃で気絶した孤門が目を覚ますと、不時着した機内に副隊長の姿は無く、副隊長を探して外へ出た孤門は、何故か山中で気絶していたリコを発見するのであった……。
 (どうしてリコがこんな場所に居るのか、その時の僕には、目の前で起きている事が、まるで理解できなかった)
 何もない空間からリコ目がけて落ちてきた窓枠の正体は?! 謎めいた「警告」のメッセージは何を意味するのか?! そして、今回も明らかに独断専行している副隊長にとっての「信頼感」とは何か?!
 今回ばかりの問題ではありませんが、間延び&ガタガタした脚本と演出に加えて、2対1+闇のフィールド効果で苦戦していた筈のネクサスが気がつくと攻勢に転じていて、そのビームを足に受けたファウストの悶絶がやたらと強調される(まあ伏線なのでしょうが)亜空間内部の成り行きがまるっきり腑に落ちない為、(目の前で起きている事が、まるで理解できなかった)という視聴者と孤門の同調に関してはかつてなく成功しているのですが、それでいいのか『ネクサス』。
 現状、ある種のW主人公体制が群像劇として成立せず、孤門サイドも姫矢サイドも焦点が中途半端なだけになってしまった挙げ句、スパイスとしては面白いと思っていたファウストの乱入が、対ビーストという軸さえ不明瞭にしてしまうという状況を生んでおり、すっかり物語が乱視状態に陥っているのですが、度の合った眼鏡はどこだ。