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犬と道具は使いよう

仮面ライダーゼロワン』感想・第4話

◆第4話「バスガイドは見た!アンナ真実」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:高橋悠也
 「まもなく見えて参りますのは、12年前、私達の歴史に、大きな爪痕を残した、負の歴史遺産、デイブレイクタウンです」
 重いな社会科見学……!
 12年前――政府と飛電インテリジェンスを中心に、様々な企業が協力して進められていたヒューマギア運用実験都市計画において、爆発事故が発生。ヒューマギア工場で発生した爆発は他の施設に次々と誘爆していき、実験都市を丸ごと地上から消滅させるという未曾有の大災害「デイブレイク」として歴史に名を刻む事になる。
 災害の発端となった事故の原因はヒューマギア工場の整備ミスとされており、学生一行の中に居たその工場長の息子がクラスメイトからの多分に悪意のある揶揄を受けるが、そのタイミングで、バスの運転手がコウモリマギアにぜつめライズ。
 生徒達を逃がすアルトが変身寸前、駆けつけた不破と唯阿がマギアを挟みながらダブル変身を行い、仕事への意欲はともかく、あまり反りは合っているように見えないコンビながらも、出し惜しみせずに共闘を見せてバルキリーの出番も巧く確保。
 「またお前か、飛電の社長」
 「…………どーも」
 コウモリマギアは空を飛んで逃走し、形としては一般市民ともども助けてもらったアルトは一応ちゃんと頭を下げ、こういう所で好感度を上げてくるのが手堅い。
 アルトは、一連の出来事に強いショックを受ける元工場長の息子・桜井少年から事情を聞き、どういうわけか(多分強引に)ついてきた不破は、自らの目で見たヒューマギア暴走説を主張。
 「そのような記録は存在しません」
 「それはお前たち飛電が真実を隠蔽しているからだ!」
 「データベースを検索……工場の爆発は、整備ミスが原因と判断されています」
 イズとバスガイドのダブルで機械的に否定され、こいつらに文句言っても糠に釘、とと怒りのぶつけどころが宙に浮いて言葉に詰まる不破さんの背中が辛い。
 「それが正しい歴史です」
 「…………正しい事が、本当の事なのかな?」
 バスガイドギア・アンナの怖い台詞に疑問を抱いたアルトは、不破と桜井の退室後、副社長を呼び出して12年前の真実について問い質すが、副社長は「記憶にございません」を連呼して口を噤み、アルトは再びデイブレイクタウンに向かう事を決意。
 自発的、というにはやや弱いですが、自らの体験と不破の発言、現在の立場と目前の脅威を考えた時、アルトがいつまでも「デイブレイク」について調べないのは非常に不自然なので、早めに手を打ってくれたのは全体の流れの中で良かったところ。
 「僕、知りたいです。本当の事」
 「そんなに知りたいか? ……俺もだ」
 一方、桜井少年に自分を重ね合わせる不破(寄り添うほど近くも無いが、突き放すほど遠くもない立ち位置の関係が、中澤監督らしい距離感の演出)は、真実を知る為に、二人でデイブレイクタウンの立ち入り禁止区域へ侵入を目論むが、その前に唯阿が姿を見せる。
 「こいつは俺だ。わけもわからずデイブレイクで人生を滅茶苦茶にされて、真実を知りたがっている」
 「…………止めても無駄か」
 諦めたように息をつくと、道を空けた唯阿は、不破に向けて新たなプログライズキーを差し出す。
 「どういうつもりだ?」
 「言っておくが、このプログライズキーはヤバい性能だ。おまえには絶対に使いこなせない」
 「だったら何故俺によこす? 口と行動が合ってねぇぞ」
 (わかってないなぁ。道具は使いようだ)
 一瞬、視線を外して落とし、有るか無いかの微笑を浮かべる唯阿の真意は窺い知れませんが、ここまでの諸々からは、何やら不破を試しているようには見えます。必ずしも不破個人に限定されるわけではなく、目的にかなう人材を探していて、不破が途中で死んだり消されたりしたらそれはそれで仕方ないか、みたいな印象。
 「……自分の仕事が何か、忘れるなよ」
 「今日、俺は非番だ」
 キーを受け取った不破はネクタイをゆるめて外すとにやっと笑い、現状、若手キャストの中では作品を引き締めてくれる良い演技。
 ゴムボートを使ってデイブレイクタウンに乗り込もうとする不破と桜井だが、暴走ギア集団の妨害を受け、そこへ飛び込んでくるアルト一行。
 「社長?! おまえも見られちゃ困るものを隠しにきたってわけか!」
 「……違う! 俺も知りたいんだ!」
 体当たりで少年を助けたアルトはベルトを取り出すと、イズの制止を受け入れる事なく不破の横に並ぶ。
 「そのベルトは!」
 「飛電の社長として誓う。隠し事なんて、俺はしない。――ヒューマギアが夢のマシンだって事を、証明してみせる!」
 第2話段階では流されるまま隠蔽工作に荷担していたアルトですが、“飛電インテリジェンスが何かを隠している”事を自分なりに確信した時、「一点の曇りもなくヒューマギアが夢のマシンだと証明してみせる」為に「隠し事をせずに真実を見出す」事こそ、アルトにとっての誠実さであり、それを不破に正体を明かす形での「変身」に象徴させる――と、ここまでのところ、ヒーローとしてのアルトを丁寧に積み上げ、そのピークに合わせた劇的な変身を毎回用意しているのが、今作の非常に良いところ。
 このアルトの、ヒューマギアへの純粋さ(純情、といっても良いかも)は、「未来テクノロジーへの子供の溢れる希望」そのままなのですが、それを貫き通すのか、手厳しい陥穽を用意しているのか、は今作の方向性として興味深いところです。個人的には、テクノロジーの肯定を軸にした未来への希望で夢一杯を貫く物語も、見てみたい気は。
 「バッタ野郎はおまえだったのか」
 つい先日、隠し事をされたような気がががががが。
 「ここは任せて。アンナ、二人と一緒に先に行って。お客様を目的地に案内するのが、君の務めだ」
 第3話の内容から、一話完結形式で、毎回毎回、ギアと職業意識とゲストの関係を盛り込むのは難しいのでは、と思っていたのですが、前回の主題だった「職能ギアとしての社会への受容」という要素は一切持ち込まずに別パターンのプロットを即座に提示した上で、洒落っ気を加えて「その職業の意味」をしっかり物語に繋げて無駄を生まないこの辺りのセンスは、抜群。
 銃を握りしめた不破(非番、とは何か)は、どさくさに紛れてバッタ野郎を撃っても許されるだろうか……と若干の躊躇を見せるも、千載一遇のチャンスを優先し、バスガイドと桜井少年と共に、封鎖区域へと上陸。廃墟と化したヒューマギア工場の中央制御室に辿り着き、埋もれた真実に繋がる手がかりを捜索する。
 暴走ギア軍団を蹴散らしたゼロワンはコウモリマギアに襲われ、こんな事もあろうかとイズが準備していた新たなプログライズキーにより、赤い仮面のファルコンゼロワンへとフォームチェンジ。
 変身隠蔽を拒絶されたイズが、ちょっぴり怒っていて200キロの豪速球でキーをゼロワンの顔面に叩きつけてくる事を少しばかり期待したのですが普通にトスされ、そういえばそもそも、イズに「怒る」機能はついていませんでした!(多分)
 宙を舞うゼロワンがコウモリと空中戦を展開していた頃、不破一行も工場内部で暴走ギアの襲撃を受け、それを必死に食い止める不破だが、桜井少年の心は諦めに侵食されていく。
 「もういいよ……爆発事故は、父さんのせい! それが本当の事なんだ!」
 「違う! 悪いのは、ヒューマギアだ! おまえの親父さんは悪くない! おまえがそう信じてあげなくてどうする!」
 不破は少年を叱咤し、“優しさ”とは別の形で、不破の人間味を出していくのは、良いバランス。少年ゲストとの、べたつきすぎない距離感も、巧く機能しました。
 「顔を背けたら、そこで終わりだ……! 顔を上げろ!!」
 “作られた正しさ”“偽りを土台にした世界”を茫洋と受け入れる事を拒絶し、立ち上がる不破は、唯阿から受け取った新たなプログライズキーに指をかけ――
 (……ちょっと待て! わざわざ手渡ししておいて、なんでロックかかってんだよあの野郎?!)
 という疑問さえ抱いていない様子で当然のようにキーをこじ開け、つまり、筋肉は真実へのパスボート。
 「変身!」
 少し余談にそれますが、作品スタイルの違いもあるとはいえ、近年の《ウルトラ》シリーズが概ね、変身シーン=バンクシーン、で演出されるのは、やはり勿体ないな、と改めて思うところ。今作ここまでを見る限り、「変身」シーンへの意識がかなり強い、というのはありますが、やはり「変身シーン(変身アクション)」を物語の中に映像として取り込む事で、劇的さが一段階上がる、というのはあると思うので(勿論、玩具の売り方や、予算規模/配分の問題も影響するのでしょうが)。
 「前だけを見て、突き進め!」
 光もとい筋肉の導くまま咆哮をあげてショットライズした不破は、鋼鉄の装甲をまとったメタリックゴリラフォームへと変身し、自動小銃をものともせず、パワフルなパンチで暴走ギアを次々と殴り飛ばしていく。
 その言葉と戦いに勇気を得た少年は、足下の瓦礫に埋もれていたメモリーカードを発見し……不破の言葉に背中を押される流れから、ちょっと探したら足下にあった、というメモリ発見のくだりは、今回の残念だった部分。大きな穴という事はないのですが、ここで「顔を上げる」と「メモリの発見」がかかれば、グッと劇的さが増してとても良かったのですが。
 少年から受け取った旧型ヒューマギアのメモリを読み込むアンナだが、空中戦でもつれあったゼロワンとコウモリが工場に飛び込んできて、もがくコウモリの伸ばしたケーブルにより、オーバーライドを受けてしまう。しかし、「土地の歴史を正しく伝えるバスガイド」としての職務を全うしようとするアンナは、滅亡迅雷精神に抵抗しながら、メモリーに残されていた映像を再生。
 そこには、工場内部の全てのヒューマギアが暴走するという非常事態の中で、工場長としての職務を全うしようとする桜井父の姿と、複数のモニターに大写しになる謎のテロリストの姿が残されていた。
 「人類よ、これは聖戦だ。滅亡迅雷ネットの意志のままに。この街を滅ぼし、人間共を皆殺しにする」
 12年前のデイブレイクには、当時から存在していた滅亡迅雷ネットが関与していた事が映像記録で明かされ、既に全職員を退避させていた工場長は工場内の全防壁を閉鎖。暴走したヒューマギアを内部に閉じ込めると、自らの責任として工場を爆発させ、つまり……自爆は宇宙最強のセキュリティ。
 MAY DAY MAY DAY サイバーテロへの最大の対策は、物理で遮断です。
 「デイブレイク、タウンの……記ロくを……コウ新……」
 「ヒューマギアの反乱を止める為、たった一人で戦った。お父さんは……英雄だったんだ」
 「……父さん」
 「ヒューマギア…………そんなものを、作るからだ」
 「……え?」
 深刻な解釈違いが発生し、ゼロワンに当たったら事故、ぐらいの勢いで放ったロケットパンチにより、バルカンはコウモリマギアを撲殺。活動を停止したアンナをA.I.M.S.として回収する事をゼロワンに告げるが、僅かに目を逸らした隙に、アンナギアは謎の攻撃を受けて消滅してしまう。
 それを成したのは、12年前のテロリストに酷似した、紫色の仮面ライダー(似)の姿に変身した、滅亡バンダナ。
 「あははっ、えぐい事するね」
 「我らがアークの存在を知られては面倒だからな」
 二人はデイブレイクタウンの闇の中に消えていき……果たして、12年前のテロリストと、滅亡バンダナは同一人物なのか? 何故、仮面ライダーに似た存在に変身するのか? やはり、どことなくジョージ真壁に似ている気がして仕方ないぞ! その正体は、未だ深い霧に包まれたままなのであった。
 飛電インテリジェンスは「デイブレイク」に滅亡迅雷ネットが関係していた事を公表し、亡き工場長の名声も回復。桜井少年は救われ、不破との約束も守るアルトだが……第2話といい今回といい、ヒーローフィクションとしては許容範囲とはいえ、アルトのやっている事は、飛電インテリジェンスから滅亡迅雷ネットへの責任の付け替えになっている面があるのは、気になるところ。
 悪いのはナイフではなく、ナイフを使った犯罪者というのは当然の理屈であり、ナイフを作った製造元でないのも確かなのですが、それで劇中世間が納得するのかどうか、という部分に切り込むのか切り込まないかのリアリティバランスは今作の舵取りにおいて気に掛かるところであり、座礁しないように巧く進んでいってほしいです。
 それと、アルトが「ヒューマギアが夢のマシン」であると信じたいあまり、「全て滅亡ギルドが悪い」で思考停止してしまわないかは、心配な部分。今回を見る限りは、その辺りの描写には気を配って注意しているようであり、カウンターとしての不破の存在もあるので、今のところは大丈夫そうですが。
 「確かに、隠蔽しないという言葉に、嘘はないようだな」
 「最後までアンナを、壊さないでいてくれたお陰だ。――オンに! 着るよ! アルトじゃーーーナイト!」
 アルトの必殺ギャグを目の当たりにした不破は、懸命に笑いを堪えてハードボイルドを保ちながら去って行き……つづく。
 「今のは、感謝の意味の「恩に着る」と、洋服を上に着る、という意味の「ONに着る」……」
 「お願いだから! ギャグを説明しないでぇぇぇぇぇ!!」
 何故かその社長命令は、受け付けない秘書子さんであった。
 早くも12年前の「デイブレイク」事件に迫り、新フォーム二つ投入というエピソードでしたが、ゲストギアを主題から外しつつも、しかし巧く物語の中に収め、“真実を求める者”というキーワードで、アルト・不破・桜井・アンナを繋げたのはお見事でした。
 そしてその中で、少年の前に立つ者、としての不破が描かれ、横に並ぶのでも手を引くのでもなく、背中を見せて引っ張る者、としての不破が、少年ゲストとの対比の中で抽出されたのが(アルトとの違いにもなって)良かったです。